オレは、闇の中をさ迷っていた……
「あー……えーっと、どうしたんだっけ? オレ」
上下前後左右……どの方向にも何も無く、なのも見えない全き闇……
その中で直前の出来事に思いを馳せる。
「あぁ、気を失ったのか、そうだな……んじゃ、ここは夢の中か?」
しかし、夢……と言うには意識がハッキリし過ぎている気がする。
……それにこの感じは、どこかで感じた事のある……
「あぁ、そうか、ここは……」
思考がそこに辿り着いた途端、辺りに無色の光が溢れだす……
「えいえんのせかい……」
第2話 えいえん再び
「あ、こうへい、おかえり〜」
「………」
久しぶりに(といってもそんなに時間は経ってないが)訪れたそこは、俺が居た頃とは、えらく変わっていた……。
四畳半の部屋(といっても壁は無く、唯、何も無い空間に畳が四枚半敷いてある)の中央にはちゃぶ台がおいてあり、
その上の菓子箱には煎餅が入っている。
みずかは、畳の上に寝そべって、煎餅をかじりながら、部屋の隅においてあるテレビを見ていた。
「ん〜……どうしたの〜? あぁ、みさおちゃんなら居ないよ〜」
「ん……あぁ、そうなのか?」
「うん、シュンくんとカラオケ行っちゃったの。わたしはお留守番だよ〜」
……氷上の野郎、人の妹ナンパしやがって……今度会ったら、叩っ殺す……
「で、みずかは何見てんだ?」
「ん〜? 昔やってたドラマの再放送だよ。一回見出したら止められなくなっちゃってね〜」
「……電波、届てんのか?」
「そんなわけないよ」
「……だよなぁ」
「うち、ケーブルだし」
「いや、同じ事だろ……」
「全然違うよぉ、そもそもケーブルTVってのはね……」
みずかは、何を思ったのか、ケーブルTVに関するうんちくを、訥々と語り始めた……
〜体内時間、30分経過〜
「……と、言う訳なんだよ、判った?」
「……はい」
オレはそうゆう事が聞きたかった訳じゃ無いんだが……
お陰でケーブルTVに関する無駄な知識は増えた。
「……っあぁ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「ど、どうしたんだ?」
「もうっ!! こうへいが邪魔するから、ドラマ終わっちゃったじゃない!!」
「あ、わ、悪ぃ……」
お前が余計な事ぺらぺら喋ってるからだろう……と思ったが、口には出さなかった。
オレって大人だな。
「もぉ〜……まぁ、ビデオ撮ってるから別に良いけど……」
……ビデオもあるのか……
「それでだな……」
りぃ〜〜〜〜ん……りぃ〜〜〜〜〜ん……りぃ〜〜〜〜……
「な、なんだ?」
「でんわ、多分みさおちゃんだよ」
みずかは、茶箪笥の上に置いてある、今時珍しい(この場所でこの表現は変かもしれないが)
黒電話の受話器を取る。
「……はい、もしもし〜……」
「うん……あ、えっとね、今、こうへいが来てるんだよ……」
「……あ、うん、わかったよ……うん、それじゃ、かわるね?」
「……こうへい、みさおちゃんだよ」
「あ、ああ……もしもし、みさおか?」
『あ、おにいちゃん、久しぶりだね〜〜』
「ああ、そうだな、元気でやってるか?」
『うん! げんきだよ。あのね、最近はよくシュンお兄ちゃんが遊びに来てくれるんだ〜。
今日もカラオケに行ってたの♪ 今からもっと楽しい所に連れてってくれるんだって。』
「……そうか〜、でも、あんまり遅くなる前に帰ってくるんだぞ?」
『うん、わかったよ! それじゃあ、また今度わたしが居る時に会いに来てね』
「ああ、そうだな…………なぁ、そこに氷上……いるんだろ? ちょっと替わってくれるか」
『え、うんっ………』
「……」
『……や、やあ折原君、久しぶりだねぇ』
「おう、ほんとひさしぶりだな……最近、姿を見ないと思ったら、人の妹にちょっかいかけてやがったわけだな?」
『な、なんの事だい? 僕は別にそんな……』
「そうか、それならいいんだけどな? お前とは今度じっっっくり話がしたいから……
帰ってきたら、すぐオレん所に面ぁ出せや、な?」
『え……』
「な?」
『は……はぃ……』
「おう、じゃあ、会える日を楽しみにしてるぞ? ……言っとくけど逃げられると思うなよ? んじゃぁな」
チンッ
受話器を置き、みずかの方に向き直る。
「さて、みずか」
「ん、なに〜」
……やけに静かだと思ったら、さっきのビデオ見てたんだな。
「オレはそろそろ帰ろうと思うんだが」
「ん〜……じゃ、ばいば〜い……」
みずかはテレビに夢中で、振り返ろうともしない。
……ちょっと切なかった……
「あ〜、帰り方が、わからないんだが…」
「ん〜……今、良い所だから、もうちょっと待ってて〜……」
「………」
「………」
オレはしばらく黙って待っていた。
みずかの隣に座り、なんとなくドラマを眺めていたりもしたが、
途中からでは何の事やら判らないのですぐに諦めた。
なんかする事ないかな……とも思ったが、ここには、何もない。
あまりに暇なんでなんとなく思った事を聞いてみる。
「……なぁみずか…ちょっといいか?」
「ん〜〜?」
「お前、武具とか持ってない?」
「あるよ〜?」
「そうか〜、やっぱりな〜…ってはい?」
「そこの押入れの中に入ってるから、てきと〜に持ってって良いよ」
オレは、端から、まるっきり期待して無かっただけに、少々面食らってしまった。やっぱ言ってみるもんだな……
「あ、あぁ……でも、押入れなんて……」
みずかが指差した方向には、ふすまが有った。……さっきまで何も無かった筈だが……
……ま、気にしだしたら切りが無いので、さっさとふすまを開けることにする。
押入れの上段には、布団が敷いてあった。きっとみずかは某猫型ロボットのように、ここで眠るのだろう。
だが、みずかの寝床なんかこの際関係無い。見た所、上にはそれらしきものは無いので、今度は下段を探す。
「……これ、か?」
そこには確かに、色々な物が乱雑に詰め込まれていた……中には、攻撃に使えそうなものも幾つか有るが……
武具と表現して良いかどうかは、微妙なところだ。
「えっと……ピコハンに……ハリセン……なんだこりゃ? まじかるロッド?
後は…………お、これなんか良さそうだな!」
オレが手にしたのは、120pほどの長さの、小振りな片手剣だった。
純白の淡い光を湛えたそれは、驚くほど軽く、しっくりと手になじむ。
「へぇ、それにするんだ……良い目してるね」
いつのまにか、みずかはオレの隣に立っていた、どうやら、ドラマは終わったらしい。
「良い目……っつーか、まともなのこれしかないしな。これ、貰ってって良いのか?」
「もちろんだよ。でも2つだけ注意」
「なんだ?」
「1つは、絶対に他の人に渡さない事。その剣はこうへいに渡したんだから、もし、要らなくなったら、返してね」
「おう。……でも、返すって、どうやったら良いんだ?」
「呼んでくれたら、そん時は、取りに行くよ……それともう1つ。それは、こうへいの力量に合わせて、形が変わるの。
つまり、こうへいが強くなればなるほど、剣も、それに合わせて強くなるんだよ」
「ほぅ……それはお得だな」
「だから、剣の形を取るとは限らないから……注意してね?
とは言っても、こうへいに合わせて変わる訳だから、そんなに問題無いと思うけど」
「わかった、ありがとな。 ……それで、こいつ、なんて名前の武器なんだ?」
「『みずかの剣』だよっ♪」
……だせぇ……たのむよ、みずか……
「あ、本当は『えたーなる・ふぇざー』って名前なんだけど、ダサいから変えちゃった」
「エターナル・フェザー……『永遠の羽根』か……」
在り来たりだが、『みずかのけん』よりはマシだと思う。
「みずかの剣だよっ! あ、こうへいの剣にする? それもかっこいいかも……」
「いや、いいよ、それで……ところで、そろそろ戻りたいんだが…」
「あ、そうだね、それじゃあ送るよ……えいっ」
ピコっ!!
みずかはいきなり後ろ手に持っていたピコハンで俺の頭を殴った。
……直後、目の前がぼやけて行き、どんどんみずかの姿が遠くなって行く。
「それじゃ、またね〜〜〜」
声が徐々に遠ざかっていき……
(あ…どうやってケーブル引いてるのか聞くの忘れた…)
……そんな事を考えながら意識を失った……
つづく…
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【折原 浩平】 高校生 Lv.1
HP 48/48 力 知 魔 体 速 運
MP 0/0 5 3 2 5 5 3
攻撃 7(10) 防御 6(9)
魔攻 4(4) 魔防 4(14)
命中 84% 回避 5%
装備 みずかの剣
てつかぶと
かわのよろい
所持金 502円
2003/06/07 黒川
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