『ジョジョの奇妙な冒険外伝 SNOW MEMORYS
第16話 地獄にも似た芸術A』




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あゆ視点
あゆは空を飛んでいた。そう、空に飛べたつ能力を持たない人類にとって、ありえないことだ。
しかし、彼女は今、空を飛んでいるのだ。

「……スゴイ……ホントに飛べたよ……」

あの状況で、この方法で逃げるしかないと思ったがため……一つの賭けだった。
現在……賭けは成功し、名前は知らないが、建物の屋上に到達した。
そして、着陸した。栞も降ろし、逃げ切ったと確信した。
しかし、逃げ切った訳ではない事を、まだあゆは知らない。

雹視点 
彼は逃げられた。
あの状況で、まさかスタンドが覚醒するとは思っていなかった雹は、逃げられた事に多少の驚き、
そして尊敬の念をあゆ達に送ったのだ。

「……逃げられたのは、この俺の慢心が引き起こした事……だが!逃がしはしない!命令を遂行してみせる!
この俺を信じたあの御方のために!」

そして、過去の出来事を思い出した。


彼は芸術家だった。将来を有望視された。大学の在学中に賞を総なめにした。
彼を、天才と称された。ただの天才ではない。本物の……そう、完璧な天才芸術家だったのだ。
彼が絵を描けば、画家たちの間で騒がれ、像を作れば、それもまた騒がれる。
それほど、才能豊かな芸術家だった。否、今もその才能は色褪せていないだろう。
しかしあの日に彼の運命は終わってしまった。そう……あの日まで……

彼は現代の芸術家の巨匠にスカウトされた。
その巨匠は確かに才能があり、その絵を全ての者を魅了できる実力がある。しかし、悪い噂も後が絶えない。
曰く、賄賂を受け取る。曰く、麻薬王である。曰く、奴隷証人を家に招き入れる。
等、裏で悪事を尽くすタイプだった。
所詮、噂だが火の無い所に煙は立たない。ため、彼は芸術家の間で、最悪の評価を受けていた。
しかし、何故そんな男が巨匠の一人に名を連ねているか……
それは前述した通り才能の桁が違うのだ。そして、そんな男が欲しがったのは、雹のような才能である。
雹の才能が喉から手がでるほど欲しかったのだ。
しかし、雹は

「お断りします」

彼は断った。雹は目の前の男の才能は認めるが、人格的に最低であると見込んだのだ。
しかし、その事が彼の不幸の始まりだった。
その日を境に、彼の回りに不幸が押し寄せる。
なぜか、絵を描こうとする時に限り、邪魔が入るのだ。それもかなり執拗にだ。
騒音……それは芸術家にとって、それは最大のタブーである。そのため、彼はスランプに陥った。
その犯人は、前述した巨匠だが、証拠も無くストレスが溜まり、そのため絵を描けず、
絵を描こうと筆を走らせようとすれば、邪魔が入る。これがエンドレスで続いた。
そして、彼は業界から、徐々にその記憶から消えていった。

それから、約半年……一人の男と出会う。

「君は……芸術を極めたいのかい?」

男は、この街の偉い人物とは聞いていたが、詳しい事は知らなかった。

「ああ……そうだ……だが、創作意欲が湧かないんだ……」

雹はその執拗な妨害で、絵に対する意欲がまるで湧かなくなっていた。
いや、絵は描けた。だが、そこに迫力などというものが無く、ただの絵なのだ。
絵には見るものを魅了するような、迫力などが無くてはならない。
それは、一種の才能だが、彼はその才能は失われてしまった。一人の巨匠の手によって…

「ふふふ……安心したまえ……」

目の前の男はテレビのチャンネルを手に取り、そして、電源を入れた。

「次のニュースです……画家の○○容疑者が、脱税などの容疑で逮捕されました。
更に家で未成年とおぼしき、少女が大量に見つかるという不祥事が……」
「ふふふ……君を苦しめた存在はもういない……よければ、私の所に来たまえ……
君のような男は歓迎しよう。そこで、君の芸術を極めたまえ」
「なにも……しないのか?」
「ふふふ。当然だ。君が望むなら君専用に宝石なども作らせて用意しよう。金も用意する」

男の魅力的な提案……だが

「断る!俺はそんな物が欲しくは無い。ただ、己の芸術を極めたいだけだ!」

雹はその提案を断った。俗人ではこんな事を言えないだろう。己のために邁進する。それが雹なのだから……
そして、男は雹に対して賞賛の拍手をした。

「その台詞が聞きたかった……ただ物や金が欲しいような芸術家はいらない……君のように常に自分を磨く。
そんな芸術家が欲しいのだよ」
「……俺を試したのか?」
「いや、確認をしたかったのだよ……君も腐った芸術家を知っているだろう?
そんな男は私も手元におきたくないのだよ……」

男は軽く笑った。そして……

「改めて……私のところに来て欲しい。君が望む静かな山の中で、芸術を極めたまえ」

そして、雹は男についていった。そして、彼は己の理想に邁進し、ついに氷の雹像に行き付いた。
これこそが、彼が求めた芸術だから……そして、現在に至る……

「あの方は、俺に生きる場所をくれた!その恩義を返すために俺は闘う!」

彼はスタンドを出した。言わずと知れた『ヘルアーティスト』だ。
死闘再開はもうそこまでに迫っていた。

栞視点
栞はあゆの羽とその全身を覆う、白い鎧のようなその姿を

(か、かっこいいです……)

見惚れていた。元来、あゆの姿は相当かわいいが、今のあゆにはかわいさとともに、少し凛々しくも見える。

「栞ちゃん?どうしたの?」
「あ、かっこいいから見ていたんですよ」
「うぐぅ。照れちゃうよ……」

話してみると、いつものあゆだ。2人は逃げ切ったと思ったためか、少し明るくなった。

「どうします?とりあえず、逃げましょうか?」
「そうだね……とりあえず、学校に戻ろうか?」

そして……学校に戻ろうと準備をしたその時に

「ふん!いい度胸だな……逃げずに待っていてくれるとは……」

二人に緊張が走る。その声は先程まで、自分達に恐怖を与えていた存在だから……

パリッ!パリッ!

どこかからか、妙な音が聞こえた。聞こえた場所は先程あゆが飛んだ場所から聞こえた。
そして、雹が姿を表わした。

「逃げるなよ!おまえらは俺の崇高な夢の礎とさせてもらう。」
「な!な!」
「ど、どうやって上ってきたんですか!?」

疑問点だった。ここは普通に壁を伝って上れる距離ではないのだから……

「そんなことは気にする必要は無い。お前らが危険分子だという事はよく分かったからな。
殺すことになった。」

淡々と言われて、栞は意味が分からなかった。隣のあゆも同様だ。
2人とも思考が纏まらない。だから、気付かない。
雹の靴が凍っていたことにだ。そう、雹は壁につけた瞬間、凍らせ、解除する。を繰り返したのだ。
だから、登ってこれたのだ。
呆然とする栞。しかし……

「栞ちゃん!さっきと同じ様に逃げるよ!」

その言葉を聞き、栞は硬直状態から脱出した。
しかし、冷静な雹の声が響いた。

「無駄だぞ。お前が最初に逃げたとき……僅かだが、お前の足に掠ってな。
だから、足が凍っているはずだ」

冷静な声とは反対に、栞達は焦ってあゆの足を見た。
そこには、両足が踝の部分まで凍っていた。

「俺の氷は、お前らの仲間の北川潤と違い、じわじわと凍る作用がある。
このまま離れればお前の身体ごと氷漬けになるぞ。お前にできる事は俺を倒すか。それとも逃げるしかない」

冷静に聞こえるが、実体はかなり焦っていた。
雹のスタンドは確かにジワジワと凍るが、射程距離を離れても凍るかといえば、そうでもない。
腰の辺りまで凍れば、問題無いが、今の状態で逃げられれば凍っていた部分は解除される。
雹自身それが分かっているので、こんな話しをしたのだ。
しかし、2人は最初の言葉……北川の名前に注目していた。

「き、北川さんがどうかしたんですか?」
「知らなかったのか?北川と相沢祐一、水瀬名雪、そしてお前の姉である美坂香里はすでにスタンド……
俺の能力と同じような物にすでに目覚めている。」

2人は驚いた。全て自分の友達の名前だ。
しかし、雹は言葉を続ける。

「そして……月宮あゆ!貴様も目覚めた!その羽が証拠だ!美坂栞!貴様も俺のスタンドを見えているな!
だから、殺すのだ!」

それと同時に雹は身体ごと突っ込んできた。

「ヘルアーティスト!」

雹のスタンドがあゆ達に襲いかかる。

「あ、あゆさん!きましたよ!」

未だに放心していたあゆが正気に戻った。
あゆは栞を掴み、左に跳躍する。かなり速い。
ヘルアーティストの拳のスピードに比べると、僅かに遅いが、
それでも身体ごと移動しているにしてはかなり速い。
あゆが移動した軌跡に羽が舞っていた。幻想的な光景だが、一歩間違えれば死の運命。
それが分かっている以上、栞は避けた事に喜ぶ事が出来ない。
なぜなら、それはまだ続いているのだから……

「かなり速いな……俺のスタンドの拳とほぼ同じか……だが、状況は俺のほうが有利だ。
貴様についた氷は俺を倒さない限り解けない。そう、俺を倒さない限り解けないのだ」

焦りを誘発させるかのような言葉だが、実際は、今逃げられれば凍っている部分は解除されるのだ。
氷が解けない部位……ようするに、膝辺りまで侵食したら、解けなくなる。
嘘の情報を教え逃げないようにしたのだ。ハッタリだが効果は絶大だ。
あゆは目覚めたばかりで、栞は目覚めているかもしれないが、まだ自身のスタンドを出していない。
よって、このハッタリの効果は絶大だ。

「あ、あゆさん……闘いましょう。このままだとあゆさんが凍っちゃいます。」
「……やるしか……ないの?」

あゆは不安だった。今の今まであゆは喧嘩などした事はないし、その上、目の前の男は相当危険なはずだ。
あゆが気圧されるのも無理はない。

雹は別の思考を巡らせる。

(しかし……いつもより氷の進行スピードが遅いな?)

あゆの足についている氷の侵食スピードがいつもより遅いのだ。現在、踵に差しかかろうとしている。
本来なら、既にふくらはぎ辺りまで侵食してもおかしくないはずだが……

(……足に当たったのが僅かだったからか?……まぁ、いい。すぐに凍る)
「来ないのか?考えている間にお前の氷は進行しているのだぞ?」

内心の動揺を悟られないために、挑発をした。
それを聞き、あゆは決意する。そう……闘う決意を……
闘いは本格的な死闘に変わろうとする。
静寂の中、あゆの微かな呟きが聞こえた。

「……いくよ……」

ヒュンッ!

目の前のあゆの姿がいきなり消えた。雹は訳が分からないが、消えた瞬間に危険だと判断し、
ガード態勢に入った。

ドガッ!

そのガードの上からあゆの体当たりが襲った。
一瞬の気の緩みであゆの姿を見失っていた雹は、内心で自分を罵倒するも、すぐに体制を立て直す。
目の前にいるはあゆの姿。
そして、すぐさま自分のスタンドでのラッシュを敢行する。

「ヘルアーティスト!そこだ!」
シュッシュッ!

流れるような連撃が、あゆに襲いかかる。
しかし、あゆはそれを横に避けれないと判断すると、高飛びのように上に跳躍した。
そのまま雹の5m後方に着地する。その跳躍した空間にも羽が舞い落ちる。
そして、あゆはそのまま飛び越えた雹の方向に向き直り、そのまま体当たりをした。
しかし、雹はその攻撃を予測していたのか、すぐに

「甘い!」

ブンッ!

その場から裏拳を放った。
しかし、完璧には当たらなかった。
あゆのスピードが予想外に速く、本来なら手の甲に当てるはずが、肘の辺りに当たった。

「チィ!」

それでも、あゆは3mほど弾かれ、その場を離れた。近距離型のパワーは伊達ではない。

「うぐぅ。ま、また凍っちゃうよ!」

あゆの焦る声が聞こえるが、雹にとってその部分は特に意味のない部分だった。
なぜなら、雹のヘルアーティストは拳を当てる事により、氷を発動させるのだから。
肘の部分では、ヘルアーティスト本来のパワーでしかない。
近距離型のため相当なパワーのはずだが、あゆの纏った白い鎧は硬く、決定的なダメージを与えていない。
この攻防だけなら互角だろう。そして……

「あゆさん!肘の攻撃で凍っていません!凍らせる事が出来るのは、拳だけみたいです!」

栞の予想だが、雹は内心焦る。自分のスタンドの特性を当てられたのだ。動揺して当然だろう。
表情が歪むのがあゆにも見えた。

「うん!わかったよ!」

栞の予想が当たっていると確信した事で、僅かながらあゆに明るさが戻る。
その表情を見て、雹は悟った。
焦る必要が無い事に……

(そうだ……落ちつけ……状況は俺のほうが有利なんだ。
侵食するスピードは遅いが、それでも俺の方が圧倒的に有利なんだ。無理に攻める必要は無い)

今の状況にしても、互角の攻防という事に過ぎない。
しかも、相手は速く倒すというような状況において、こちらは凌ぐだけではなく互角の攻防なのだ。
まだ、こちらには心の余裕があるのだから……

闘いはまだ始まったばかりだが、栞の身体にも異変が起こる

(な、なんですか!?これは!?か、身体の中が……す、スゴク寒いです!)

栞の異変を知るものは、まだ本人のみ……
そして、原因は誰にも分からない……

祐一視点
祐一はあゆ達の追っていた。
しかし、窓から追った先は人気の無い所なので、どこに行けばいいか分からない。

「どこだ?どこにいる?」

辺りを見渡しても、あゆどころか人の姿が無い。
途中まであった足跡もすでに無い。完璧に見失ったのだ。
彼は考えた。そして……

「いちかばちか……リトルミラクル!」

祐一は自身のスタンドを出した。そして、ホコリが沢山ある場所を叩いた。
そして、二秒後……そこに地図が出来た。
矢印はここを右に行ったと記されていた。

「成功だ……本当に成功するとは……」

祐一は地面に、こう命令した。
あゆの居場所を記せ、とホコリに命じたのだ。
意思が無いものにも命令できるスタンド……
そして、その方法を見つけた祐一自身の頭は以前には無いほど、覚醒していた。

「……このまま残して、北川にも分かるようにしておこう。」

そして、祐一は地図の場所に向かった。この時、戦闘開始の10分前の出来事だ。

北川視点
彼は自分のスタンドの熱で、氷を溶かしていた。
氷を溶かすと水になるため、美術室はビショビショになっていたが……

「ふー……やっと、終わった……けど、追わないとな……」

北川も追おうとしたその時……

「栞……って、北川君……どうしたの!?この部屋は!?」

そこに現れたのは、栞の姉の美坂香里だった。
後ろには名雪の姿もある。

「……栞ちゃんに敵が襲われている。今から追跡する」
「し、栞ちゃんが!?香里!?」
「ど、どこにいったの!?」
「あそこの窓から逃げた。幸い、まだ足跡があるから、急げば間に合う。相沢はすでに追跡している。行こう」

そして、3人も追跡を開始した。間に合うのだろうか?

後書き
祐:ふっかつ!俺が相沢祐一だー!
作:……相当、テンパってるようなので、無視しましょう
祐:おい!
作:(無視)あゆとの戦闘シーンを見る限り、今回は動きのある戦闘です。
祐:こらっ!
作:(さらに無視)とりあえず、まだまだ引っ張ります。
祐:イジイジ!(地面にのの字を書きながら、泣いている)
作:……人間はどこまで嘘泣きが出来るか、見物するか
祐:この、悪魔〜!(泣きながら去る)
作:やれやれだぜ……悪魔って言ったから祐一は次回から後書き不参加……と

作者の陰謀(?)により後書きの降格が決定的になってしまった、祐一。
次回はどうなる!しかし……こんな事で降格させる作者も悪魔だと本気で思ってしまう。




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