「――――――――」
「――――――――」
「――――――――何か喋らんのか?」
「――――――――」
「――――――――はぁ」
「――――――――」
「――――――――」
「――――リョウスケは……」
「うん?」
「――――リョウスケは、わたしの事キライなんでしょうか…」
「――――答えが出ている問い掛けほど、つまらんものはないぞ」
「――――――――」
「――――――――難儀な奴らだ」
魔法少女リリカルなのは―――くらひとSSS 特別編―――
―蒼天の妖精と氷結の戦姫 StrikerS―
〈彼女たちの生きる道〉
ふむ……
とりあえず自己紹介といこうではないか。
時空管理局の備品、完全自立行動型警備端末『ブレスト』だ。
「――――――――」
隣で不貞腐れているのは知り合いのデバイス――蒼天の妖精姫であるミヤ嬢。
こうしてクラナガン郊外に向かっている車にどうしてこの娘が乗っているのかというと、簡単に言えばいつもの喧嘩だ。
――――いつもの、ではないか。
まあ、うちの創造主も一枚噛んでいるようだからこうして同乗させるのは構わんがね。
「――――行ってもしょうがないと思うがな。我の仕事は奥方様にマスターの伝言を伝えるだけだぞ」
「――――いいんです。しばらくお世話になるだけです」
「――――――――家出か」
家出なんだろう。
奥方のことだから歓迎するだろうが――
「家出じゃありません! こういうときは実家に帰るものだとアンナさんから聞きました! でも、はやてちゃんの所に帰るみんなが心配するので、こうしてアニーさんの所にお世話になるんです!!」
「――――貴様らはうちの関係者の迷惑は二の次なんだな」
「へ?」
「――――――――いや、いい」
よく似たデバイスとその主だ。
まあ、宮本と比べてミヤ嬢は問題を起こす回数が少ないからな、連れて帰っても問題はあるまい。
――――奥方は本当に可愛いものに目がないから、このまま『げっと』しそうだがな……
「――――ていうか、ブレストさんって車運転できたんですね〜」
「――――審査はそれなりに厳しかったがな。人間と同じだけの能力があると認められたのだ」
「リョウスケの運転ってすんごくむちゃくちゃなんですよ!」
「だろうな」
「この間も管理局の装甲車勝手に持ち出して壊したんです! アリサさんがいなかったらわたしも借金のかたに連れて行かれてたかもしれません…」
「――――いつの時代の話だ」
「でも、借金は残っちゃいました…」
「装輪式装甲車一台いくらすると思っとるんだあのバカは」
「さあ…? 『これも仕事達成のための必要経費だ!』って言ってましたです…」
「――――奴の頭には何が詰まってるんだ」
「――――――――わたしのことも、少しは詰まってるんでしょうか…?」
「さてな、本人に聞け」
「――――――――」
全く、本当に難儀な連中だ。
「IDナンバー一四五六−二二三四五−ED」
<認証しました。お帰りなさいませ、ブレスト様>
「うむ、ご苦労」
門に据え付けられた制御卓に身分証明のデータを送ると、こうして屋敷の門は開く。
他の人間は身分証を制御卓に通し、声紋やら魔力紋を認証に使うのだろうが我にはそんなものなどないからな。暗号化されたデータを送信することで個別認証を行っている。
さらに――
「ゲスト証を発行してくれ。宮本良介のデバイス、ミヤ嬢だ」
<承りました。――――ゲスト登録を完了、ようこそいらっしゃいましたミヤ様>
「えへへ〜…」
VIP扱いなど珍しくないだろうに、ミヤ嬢の顔はなかなか緩んでいる。
だが、これでミヤ嬢を構成する情報自体が身分証となるはずだ。屋敷に入った途端に侵入者に間違えられることはない。
「――――何度見ても大きいおうちですねぇ〜」
「クルス・ミナセ家の本家本邸だぞ。別荘やら別邸と一緒にするな」
警備も凄まじいぞ。
以前に宮本が追い掛け回されていたのを見たことがある。百人に届こうかという警備員から必死で逃げる宮本はなかなか傑作だった。
――――不用意にマスターに報復などしようと考えるからだ。
「ほれ、さっさと降りろ」
「は〜い」
駐車場に車を止め、ミヤ嬢を降ろす。
この娘も大概図太い神経をしている気がするな。
――――アポイントなしでこの家に来るものがどれだけいるというのだ。
「――――さて、ホーキンスはどこにいるか…」
「ホーキンスさん?」
「知っているだろう、ここの執事長だ。奥方様がどこに居られるか訊かねばならん」
奥方が生まれた頃から知っているというからやつもそれなりの歳だろうに、未だに現役を退かん。
「ブレストさん」
「ん?」
む? 特徴的なあの姿。
玄関にいきなりいるとは思わなかったぞ。
というか、その真っ黒い服に真っ白い髭はなにかの呪いか?
似合いすぎて恐ろしさすら感じるぞ。
「はえ〜〜」
「――――ぼけっと口をあけるな、嫁入り前の娘が…」
「む…」
ここの光景など、月村家の屋敷を知っているお前ならそれほど珍しくもないだろう。
たしかに地球とは違う美術品もあるが、想像し得ないというほどとんでもないものがあるわけでもない。
「――――ブレスト、旦那様はどうなさったのです?」
ああ、ホーキンスのことを忘れていた。
「エヴァ様と会食なさってから帰るとのことだ。奥方にも伝えるようにと」
「――――」
どうした? お前がそんな複雑そうな顔をするなど、明日は流星雨か?
「――――アンジェリーナ様は屋内修練場だ。旦那様から贈られた例のものが大層気に入った様子でな…」
「――ああ……あれか……」
「――?」
「――――見れば分かる」
「はあ」
マスター、あなたは確かに奥方の好みを正確に把握しておられる。
だが――――あれはどうかと思うぞ!?
擬似的に作られた訓練場は珍しくはあるまい。
機動六課の訓練場然り、この修練場然り。
確かに、あらゆる事態を想定して訓練を行えるこのような施設は管理局でもそう多くはないがな。
だがしかし――――
「が、ガジェット…!?」
「――――――――はぁ」
誰だ!? ガジェットドローンのデータを持ち込んだバカは!!
「ど、どうしてここに……」
「擬似標的だ、本物ではない」
「え…?」
「――――――――」
しかし、T型のみとはいえ、数は――――って爆発!?
「わきゃッ! ――――あ! アニーさんです!」
爆炎から飛び出した小さな影――――確かに奥方だ。
その四肢に装着された黒い装甲が恐ろしい……って――
「――――ああああああああああああああああああッ!!」
と、飛び込んだぁあああああああああッ!?
が、ガジェットの集団に飛び込みおったぁああああああああああああッ!
「あわわわわ……!」
「だ、だ、大丈夫だ…」
飛び込んだ瞬間手近な一体に肘を叩き込むと、次の瞬間には背後の一体に踵がめり込んでいる。
回し蹴り……
「――――」
言葉を失っているミヤ嬢は放っておくとして――
「ッ!! ああッ!!」
さらに背後から迫ってきた二体に裏拳、そのまま上空から迫る一体を蹴りで上空に帰す。
一瞬で身体を回転させると、その勢いを利用して三体をまとめてスクラップに――
「――――」
すまん、我もコメントのしようがない。
AMFがあっても相手の身体の中の魔力まではすぐに無効化できんからな。時間をかければ可能かもしれないが、こんな戦いでそんなことができるとは思えん。
「――――」
そこでようやく爆発――――だが、奥方の動きは止まらん。
近距離戦は不利と判断したガジェットが距離を取る。
そして放たれる攻撃、が――――ガジェットから放たれた光弾は、奥方に届かなかった。
「い、今――!」
「う、うむ、こ、拳で散らした…な」
攻撃に向かって真直ぐ繰り出された拳が、その光弾を砕いた。
――――――――誰だ!? あの方をF−ランクとか判定した特大馬鹿は! 六課の新人たちより遥かに強力な魔導師――じゃないかもしれんが、途方もなく大きな間違いを犯したぞ貴様は!
奥方はガジェットに向かって手を翳すと――手招きした。
「――――来なさい」
お、漢らしいぃ――――――ッ!?
「――か、カッコイイです」
「ううむ……」
それは否定せんが――――あれはV型じゃないか?
「――――あなたが最後です」
その言葉に応えるように、V型の周囲にいたT型が奥方に迫る。
だが、数合の打ち合いでそれは残骸へと変貌した。
切り裂くような手刀、身体の力を結集した貫き手、的確な角度で叩き込まれる膝、すべてがガジェットを破壊する。
「――――」
「――――」
そして、残ったのは――奥方とV型のみ。
「――――確か、高い防御力を持っているとか」
確かにその通りだが――――
「――――そうでなくては、面白くないわね」
――――――――
――――すまん、本気で恐ろしい笑みだった。
「行くわよ」
その言葉が届く前に、奥方はV型の下に潜り込んでいた。
先ほどまで奥方が立っていた場所には陥没した地面があるだけだ。
「あああああああああああああッ!!」
奥方は雄叫びを上げると――――V型を上空に蹴り上げた。
まさか自分が蹴り飛ばされるとは思っていなかったのだろう、V型は空中で動きを止める。
だが――――その一瞬が奴の運命を決めた。
「しッ!!」
V型を追いかけるように飛び上がる奥方――そして、空中のV型すらも足がかりにしてさらに上空へと昇る。
天井に届こうかという位置で、奥方は自らのデバイスに命を下した。
――――そう、敵を貫けと。
「ガングニール!! ブーストオン!!」
<Yes,your Highness.>
「『PoTOS』…」
「え?」
マスターが開発したデバイスの新機構、Power Take Off System――――略称PoTOS。少ない魔力を大きな力――例えば推進力などに変換するシステムだ。
本来は魔力の効率的な使用を目的に開発されたものだが、少ない魔力で大きな力を使えるという点では確かに奥方に相応しいものだ。
そんなことを思っている間に、奥方からは群青の魔力が溢れ出ていた。
「打ち貫け! ガングニィイイイイイイイイイイイイイイイイイルッ!!」
<Boost!!>
奥方がV型に向けた右足の装甲から、群青色の爆炎が噴き出す。
その反発力により、小さな身体は弾丸と化した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
雄叫びと共にV型の装甲にめり込む群青の弾丸。
それは確かに装甲を破り、その身をV型に埋め――――
「――――」
「――――」
――――貫く。
空洞と化したその身を晒していたV型は、わずかな空隙を空けて爆発した。
奥方は屈めていたその身を伸ばすと――――
「――――――――ふう……いい汗かいたわね」
「お――――いッ!?」
はッ!?
思わず主君の奥方にツッコミを入れてしまった!
「――――あら? ブレストに……ミヤちゃん?」
「こ、こんにッ――い、いたいですぅ〜…」
噛んだ。
完全無欠に噛んだ。
怯える気持ちはよく分かるがなッ!!
「ごめんなさい、気付かなくて。少し身体を動かそうと思ったら、夢中になっちゃって…」
「――――――――」
「――――――――」
気付いてなかったのか……
というか、夢中って……
「遅れたけど――いらっしゃい、どういった用件かしら? 私としては遊びに来てくれたっていうだけで嬉しいけど…」
「あ、あの――――」
「――――アンジェリーナ様、お客様を迎えるにはいささかお召し物が……」
「ホーキンス……――――確かにそうね。ミヤちゃん、少し待っていてもらえるかしら?」
ミヤ嬢の言葉を遮ったホーキンスの言葉は、確かに的を射ている。
どれぐらい修練していたのか知らないが、その小さな身体は砂やら汗やらで汚れているように見えるからな。
「は、はいです!」
「ごめんなさいね。――――ホーキンス」
「はい、ご入浴の準備は整っております」
「ええ、ありがとう。でも残念」
「は?」
なんだ奥方。
「こんなに汚れていなければ、ミヤちゃんと一緒に入れたのに……」
――――今、限りなく本音だったな。
「それじゃあ、先にくつろいでいてね」
「ありがとうございますぅ〜」
ホーキンスを従えて修練場を後にする奥方。
が――
「――――――――」
「どうした?」
何をそんなに見ておる。
「――――アニーさんってあんなに小さいのに、すごく大人っぽいです……」
「――――二八だぞ」
見た目は中学生だがな。
とゆーか、リンディ女史とは別の意味で若いままだな奥方。
「なるほど、しばらくうちに置いてほしいってことね」
「はい! 掃除洗濯ちゃんとできます!!」
「ふふふ……頼もしいわね」
まあ、奥方がミヤ嬢に仕事をさせるとは思えんがな。
それにしても――――いない。
いつもなら屋敷中を縦横無尽に駆け回る二つの影が、今日に限って姿を見ていない。
「――――アンジェリーナ様、若たちは何処に?」
「あの子たちなら訓練校に見学に行ったわ。旦那様と同じく、士官学校の前に訓練校を出るつもりみたい」
この家族はどうしてこうわが道を行くタイプが揃っているのか……
長男であるリョウヤ様が訓練校に入って数ヶ月、その下の子供ら――長女マリアベル様、次女ミヅキ様の二人は訓練校志望だそうだ。一番下の次男ユキオミ様は小さすぎて判断できん。
――――それならそれで構わん、か。
「――――局に戻ります。マスターへの伝言は?」
「あら、戻るの?」
「――――――――戻ります」
「しばらくお待ちなさい。――――ね、ミヤちゃん」
「もが!?」
驚いてるぞ奥方。
突然話を振るな奥方。そして、出された菓子はもう少し小さく砕いて食べろミヤ嬢。
――――リスかお前は。
「そういう訳だから、しばらく待ちなさい」
「――――――――御意」
意味が分からんが、『待て』と命令されればそれに従うほかあるまい。
「おいしい?」
「はい!!」
「それはね……桃子さんに教わったの、他にも色々教えてくれたのよ」
「へえ〜〜」
「ミヤちゃんも頑張ってるみたいね」
「はい! リョウスケはわたしがいないと何もできませんから!」
「――――でも、喧嘩しちゃったのね?」
「あう……」
形状モードY。
我は話に参加せんからな。猫で十分だ。
それにしても――――十年の時は長いものよ。
結婚何年目かは思い出せんが、四人の子供が産まれ、こうして奥方が家にいることにも慣れた。
宮本との付き合いもそれなりの長さになり、ミヤ嬢がここに来るのも何度目か思い出せん程度の回数だ。
我が生まれて三〇余年、これほど日々が忙しくなるとは思ってもいなかった。
「――――――――」
――――楽しいものだ、こうして成長していく人間を見るのは。
レイジングハートもバルディッシュも、我と同じことを思っておるのやもしれん。
妹たちもマスターが成長していくのを見守っていた。それこそ今の若より小さい頃からだ。
人として生きられぬ身なれど、人と共に生きることはできる。
あの時――我がこの身体を手に入れた時、マスターは我に問うた。
『ブレスト、君はどれくらい生きたい?』
愚問だ、マスター。
我は何百年、何千年でも生き続けるぞ。
デバイスでもなく、人でもないこの身。
マスターたちが刻んだ記憶を辿り、未来永劫見守る。
それが我――AG−〇〇一〇〇『ブレスト』だ。
『絶対なる守護者』の名を冠された、我の生きる理由だ。
「――――――――」
共に死ぬことが喜びであるのやもしれん、だが、我は見たいのだ。
マスターや宮本が遺すであろうものたちが、この世界で耀く様を――――
「――――リョウスケが悪いんです! 他のデバイスは使わないって約束してるのに、他のデバイスを作る手伝いなんてしてるんです!!」
「うんうん」
「やめてって言っても『仕事だから』って! 」
「大変ねぇ」
「わたしはあんなリョウスケ知りません!! 他のデバイスと仲良くやればいいんです!!」
「――――ブレスト、ミヤモトさんが手伝ってるデバイスって……」
む、耳打ちするな。ミヤ嬢に気付かれぬように答えよ、ということか。
「――――ご想像の通り、マスターが開発している魔力が少ない魔導師のためのデバイスです」
「あら、やっぱり」
マスターは少しでも多くの魔導師を志す者に可能性を与えたいと願っておられてからな。
いくつかの機構を内蔵したデバイス――今回奥方が使ったような『PoTOS』の量産型や、シグレの『月光』搭載のクロックアップ機能、カートリッジシステムとは運用思想が異なる蓄魔力器――さまざまな試行錯誤を繰り返し、つい先ごろ試作機が出来上がった。
それが――――
「ミヤちゃん」
「――――――――」
拗ねとる。
「ミヤちゃん、これ見て」
「――――?」
そう言って奥方が指し示したのは、己の右手薬指に着けられた黒水晶の指輪。
「さっきのデバイス『ガングニール』よ」
「――――それが…」
奥方、それは確か……
「結婚記念日に旦那様から頂いたの」
「――――――――へ?」
――――――――マスタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
け、け、けけ結婚記念日に、な、な、な、な、なななな、なななな何を渡しとるかぁあああああああああああああああッ!?
奥方に渡したのは知っていたが、結婚記念日にガジェットV型を破壊可能な攻撃力を持ったデバイスを渡したのかあの大ボケマスターは!!
「昔から少し変な人だったけど……ねぇ?」
「――――変です」
「――――変で済むか、あのボケマスター」
苦笑いしている場合じゃないぞ奥方。
場合によってはクルス一族がマスターに喧嘩売るぞ。
「ふふふ……確かに変。――――でもね、嬉しかったの」
「え…?」
何と。
「あの人は知っていたの。私があの人の隣で戦えないという事実を憎んでいたって」
奥方の格闘術の力量が高いことはよく知っているが、それが実戦で役に立つとは限らない。
実際に戦闘に出たのは、それこそ若が生まれる前が最後だ。
だが、マスターは奥方に『力』を贈った。
「始めは何の冗談かと思った。でも、あの人は言ったわ――――『これを持って待っていて欲しい。私が貴女に帰るために』って」
――――分からん。
マスターは何を考えているのだ?
「『ガングニール』はあの人との絆の名。片時も離れず、共に在ろうというあの人の意思」
「絆……」
「――――ミヤちゃん、最初に謝るわ。そのデバイスの開発にあなたの大切な人を巻き込んだのは、うちの旦那様よ」
「え!?」
「事実だ。宮本は魔力が少ないだろう?」
「――――はい、いつも苦労してます……」
うむ、だから最適だったのだ。
「奴が実戦で扱える程度の性能を持っていれば、それは完成品といえるだろう。だが、マスターの事だから直接扱わせる事はないはずだ。お前の意思をマスターは無視せんよ」
「ええ、あの人は他人の約束に干渉しません。おそらくミヤモトさんのデータを取り、それを魔導師の基礎モデルとして模擬実験を重ねたのでしょう」
新たなデバイスの開発にはそれこそ数百パターンのデータが必要になる。宮本が忙しいと言ったのも嘘ではなかろう。
「――――そう、だったんですか……」
「本当にごめんなさい。今の私は旦那様の仕事に一切口を挟めないの」
開発段階のデバイスの情報など外に漏らせるものではない。
宮本も口止めされたのだろう。それに――――
「――――――――」
「宮本は自分の過去の姿を見た。ミヤ、お前と出会う前の自分の姿を」
己の姿すら見えていなかった自分を導いた『蒼天の妖精』という存在。
「本人がどう思っているか知らんが、我に宮本の考えはこう見える――――他の者にも自分にとっての『ミヤ』という存在を、と」
「リョウスケが…?」
「どれだけ口が悪かろうと、奴はお前を信頼しておるよ。だから真実を話さなかった」
「――――」
「奴は信じている。自分が自分の覚悟を裏切らない限り、お前は自分の傍に在ると」
奴は己に恥じることをしていない。だからこそ――――
「奴を信じろ」
「わ、わたしは……」
「――――怖いのね」
「ッ!?」
奥方――?
「あなたは怖いのね。自分の知らない彼が増える事が、彼が自分を必要としなくなる事が――――」
「ち、ちが……」
「いいえ、違わない。――――あなたは気付いているのよ。自分は彼以外を選べないし選ばないけど、彼は自分以外を選べるという事実を」
「奥方」
「――――――――ひっぐ、えぐ……」
泣くなミヤ。
奥方とてお前が憎いわけではない。
「――――私も同じだった」
「――――」
「異世界発祥のクルス家には未だに側室の概念が残っているわ。そもそも一族の始まりが初代当主とその異母兄弟。だから、側室という文化を否定することは自分たちの始まりを否定することにもなりかねないの」
マスターが以前宮本に紹介するといった一夫多妻の世界、それはクルス家が生まれた世界だ。あの世界は争いが多く、未だに一夫多妻の習慣が残っている。
まあ、次元世界全体で見ればそんな世界は珍しくはない。無論、数が多いというわけではないが――
地球にも一夫多妻の国は存在するはずだ。
「地球の――いいえ、ニホンの法概念ではおかしいのかもしれないけど、私たちにとってはこれが当たり前だった。でも――――」
「納得…できなかった、ですか…?」
「――――ふふ、ちょっとだけね、欲が出ちゃったの。この人は私だけのものだと」
マスターも一夫一婦が当たり前の感覚だったから、余計にそう思ったのだろう。
「現当主である旦那様にはこのミッドチルダでもその権利が与えられる。そう、既得権みたいなものかしら。クルス家は管理局と比べ物にならないほど歴史が古いから……」
「アニーさん……」
「幸い旦那様はその権利を行使する気はないみたい。でも、あの人が必要と判断したら、それを私が止めることはできない」
「――――――――どうして、ですか…?」
「――――私は憎んでいたの、シグレも、ラファエルも、ルシュフェルも。だから、あなたが羨ましかった。すごく、すごく」
「え――」
驚くことでもない。
客観的に物事を見ることを役目としてきた我は、奥方の視線の意味に気付いていた。
「シグレは使い魔、魂を分け合った絶対なる存在。ラファエルとルシュフェルは融合型デバイス、魂を重ねて共に戦える存在。どれも私にはできないことだった」
「はい…」
「だから羨ましかった。あなたが――――彼の魂の伴侶たるあなたが」
「――――わたしは、わたしは……」
「彼に、たくさん言いたいことがあるんでしょう?」
ミヤ嬢はいつも宮本に文句を言ってばかりだ。だが、言ってないことも多い。
その目に溜まった涙のように、心に溜めた言葉が――
「――――リョウスケは――リョウスケは――」
「うん」
「――――リョウスケは無茶ばかりすんです! わたしが知らないところで、わたしが何もできないところで、わたしがどれだけ頑張っても頑張っても! リョウスケは無茶して無茶して、また無茶して!! ――――――――それでも、帰ってくるんです」
「――――男って大抵バカな生き物。でもね――――」
「――?」
「私はそのバカを好きになったの、他の誰でもない世界一素敵なバカをね。あなたもそうでしょう?」
「それは……」
「ふふふ……――あなたも誇りを持ちなさい。伴侶としての誇りをね」
「伴侶…?」
「さっき言ったでしょ? 魂の伴侶――――彼に想いを寄せる人たちの中で、あなただけが為せること、あなただけが彼のデバイス」
「わたし…だけが…」
「――――私は旦那様の伴侶たることを誇りに思っているわ。あの人の子を産み、育て、支え、共に泣き、共に笑い、喧嘩して、仲直りして、あの人が生きた記憶をこの世界に残す者。それが私――――リュウト・クルス・ミナセの妻、アンジェリーナ・クルス・ミナセ。あの人の絶対なる伴侶――その決意は、誰にも否定させない」
――――人間とは、不思議な生き物だ。
唯一つの護るべきものがあるだけで、こうも強く気高く輝ける。
「――――辛くないんですか? リュウトさんはアニーさんに話してないことがたくさんあります。きっと、今も秘密が増えてます。自分の知らないリュウトさんが増えるのは――辛くないですか?」
マスターの仕事はそういうものだ。
誰一人としてマスターのすべてを知ることはできん。
だが、奥方はそれを知っておられる。
「うふふふ……」
「な、なんですか…?」
「ミヤちゃんはまだ若いから分からないのかもしれないけど…」
――う〜む、中学生が大人の色気を出しているぞ。
「あの方の秘密が増えるなら、私があの方の秘密を知る喜びも増える。それは――すごく幸せなことなのよ?」
「え?」
「相手を知ること、それは相手に近付くということ。私は絶対にあの人に近付いてみせる。世界の誰よりも、シグレよりも、デバイスたちよりも、もちろんエヴァさんよりも――ね?」
「――――――――」
いや、マスターはエヴァ嬢と何もないぞ。
本当だぞ。
「――――分かりました…!」
「そう」
うむ、よかったよかった。
これで帰れる。
「わたしは――――リョウスケのこと全部全部ぜ〜んぶ知って、わたし以外パートナーはいないって教えてあげます!!」
「うん?」
「あら?」
今、何か危険な香りのする宣言が出なかったか…?
「わたしはリョウスケの魂を守るんです! 他の人には絶対できないことで、リョウスケを守ります!!」
「あ〜〜……」
落ち着け、目がちょっと怖いぞ。
ほら、人間とは秘密があってこその生き物だろう。
いくら宮本に人権があるかどうか怪しいとはいえ、やりすぎは困る――――っておい!?
「そうよ!! あの人は私だけのもの! 『ヘンリクセン』が何!? 魂が何!? 絆が何!? あの人は私を選んだの!!」
「そうです!! 愛は力です!!」
「――――――――」
――――どうしろと?
「そうそう、均一に混ぜてね」
「はい!」
ううむ……
何故に料理教室か。
「料理は妻の絶対兵器! 己の料理で餌付――――もとい魅了すれば、男は決して私たちから離れられないわ!!」
「はい! 師匠!!」
「――――――――」
誰か助けろ。
「――――まあ、楽しいからやってるだけだけど」
「へ?」
「料理の好みを知っているだけでちょっと嬉しくなったりするものなのよ。調味料の量とか、焼き加減とか、食べやすい温度とか、他の人は知らないようなことも私は知っているって思える」
「なるほど…」
メモるな。
書が泣くぞ。
「基本は三つ。食事中の微妙な表情を見分けること、お世辞と本音を見分けること、同じ失敗をしないこと」
「はい!」
なんと言うか――――戦場だ……
血飛沫舞い、炎が照らし、戦士が戦いを繰り広げる戦場だ。
「幸いミヤモトさんは好き嫌いが少ないようだから、逆に好みを際立たせるべきね。どんな時の食事にも、ミヤモトさんが好きな料理を混ぜる! それだけであなたの存在感はぐぐっとアップ!!」
「はい!」
言ってることは正しい。だが、どうしてこう背中が寒いのだろうか?
変わられたなぁ奥方。昔は台所を四回も破壊したのに――
「だけど好きなものばかりじゃダメ。飽きられたらそれで終わりだから、最低でも一週間周期でミヤモトさんの舌を書き換えなさい!」
「はい!」
士官学校でもここまで真剣な訓練はないぞ。
「食材選びの基本は無駄をなくすこと! 欠片も無駄にせず、すべてを使って最高の料理を作る! それができれば、あなたは台所の女王よ!」
「はい!」
人間とは、暴走し始めると止まらない生き物のようだ。
いや、ミヤ嬢はデバイスだが……
「次に、相手の体調を瞬時に見抜く目が必要。それに合わせてメニューを変え、相手が最も求める料理を出す! 妻以外にそんなことができる存在はないわ!」
「はい! ――――あ、でも、ノエルさんとか……」
「くッ…! 周りに料理上手が多すぎるということね」
確かに多いな。
宮本は食い意地で生きているような男だから、料理は大きな武器になる。
問題は自分よりも強大な武器を持つ者が多いということか……
「だ、大丈夫よミヤちゃん。ノエルさんの料理を毎日食べることはありえないわ」
「何故ですか?」
「ノエルさんの料理を毎日食べたら、月村さんが大人しくしていないわ。ミヤモトさんもそれは良く知っているはず」
「なるほど!」
「唯一の問題はメロンだけど……これは諦めるしかないわ。彼の本能だもの」
「わ、分かりました」
本能イコールメロンの男……
そういえばメロンで宮本を釣るマスターを見たことがあるな。
「さて、料理教室は終わり。汗かいたからお風呂にしましょう」
「は〜い!」
ふう、終わった終わった。
この隙に自己診断を済ませるか。
「――――あああああああ〜〜〜〜可愛いぃいいいいいいいい……」
「あうあうあう〜〜」
「いいわねぇ……肌綺麗なままで、人間は歳を取るたびにいろんなこと気にしないといけないのよ」
「あうあうあう〜〜」
「結局胸は小さいままだし、どうしてこうリンディさんみたいな大人の女性になれないのかしら…?」
「わかりません〜〜」
「この間なんか、なのはちゃんたちより年下に見られたのよ〜〜」
「すごいです〜〜」
「嬉しいような悲しいような気分だったわ〜〜」
「わかります〜〜」
「はやてさんも私の胸は揉まなかったわ〜〜」
「そうですか〜〜」
「小さいって悪いことばかりじゃないって言うけど、もう少し夢を見たっていいじゃないの〜〜」
「わたしはおおきくなります〜〜」
「頑張ってぇ〜〜」
「はい〜〜」
「あら〜〜目が回る〜〜」
「ぐるぐる〜〜」
――――おいコラ! 何をのぼせとるかぁッ!?
「でね、旦那様とくっついて眠るといつも同じ夢を見るの」
「そうなんですか?」
「ええそうよ。なーんにもない一面の草原を、ずっと二人で歩くの」
「ほえ〜〜」
「雲が流れていくのを眺めたり、風が歌うのを聞いたり、ずっとずっと」
「でも、楽しいんですか?」
「もちろんよ。他に誰も居ないからずっと手を握っていられるし、歩きつかれたら抱き上げてもらえるし」
「いいですねぇ〜〜」
「それでね、一度同じような草原に行ったのよ」
「ふむふむ」
「やっぱり現実は違うと思ったわ〜〜。悪い意味じゃないけどね」
「――――?」
「ふふふ、夜の草原で見る月は綺麗だったわよ?」
――――ミヅキ様の名の由来だな。
どうしてその由来なのかは聞かないでくれ。
いや、心から頼む。
「ふふふ……たまには気分を変えるのもいいわよね」
聞かんでくれ!!
「アニーさん! リュウトさんのプロポーズの言葉はなんですか!?」
「あらあら、ミヤちゃんも女の子ねぇ」
「教えてください!」
「いいわよ、でも――――」
「でも?」
「私って、プロポーズされてないのよ」
「へ?」
「だから、プロポーズされてないの」
「えええええええええええええええええええええええええッ!?」
「親が見合い相手を選んできてね」
「――――はっ!? ふむふむ……!」
「その人と結婚しないのなら管理局に圧力を加えるって言うのよ」
「せ、政略結婚ですか!?」
「多分ね。で、その人と結婚することになったんだけど――――」
「だけど?」
「仕事で出席してなかった旦那様が結婚式の途中に来てこう言ったの」
「ごく……」
「『彼女が居ないと仕事が溜まる一方なので、ここで連れて帰ります』」
「おお……かっこいいです!」
「『それでも納得できないなら、私が面倒を見ますのでご心配なく』ですって」
「ええと……それじゃあ――――」
「ええ、次の日には夫婦になってたからプロポーズはなし、代わりに随分凛々しい顔で攫ってくれたから満足だけどね」
「――――変な人ですねぇ」
「――――そうねぇ。それから二ヶ月くらいは夫婦のはずなのに何もなかったわね」
「に、二ヶ月……」
「仕方がないから仮眠室の旦那様のところに行ったの」
「あわわ……」
「そしたらね、旦那様なんて言ったと思う?」
「わ、分かりません」
「『これでしばらく静かになるでしょう。誰か好きな人ができるまでは、私の隣でゆっくり待っていてください』ですって」
「――――――――」
「私もそればっかりは納得できなかったから、こう言ったの」
「は、はい」
「『だったら一生このままで結構です。私が隣に立ちたいと思った人はあなただけですから――――お分かり? 旦那様』」
「カッコイイです!」
「その時の旦那様の顔は面白かったわ〜〜」
「どんな顔ですか?」
「ひ・み・つ」
楽しそうだなぁ奥方。
マスターによる花嫁強奪事件は管理局の語り草になっているし、未だに女子局員たちの会話に出てくるらしい。
まあ、当人は優秀な副官を取られたくなかっただけだろうが。
「――――――――遅い」
「あわわわわ……」
「――――お、落ち着けミヤ。アンジェリーナ様は我らに怒りを向けているわけではないぞ…!」
現在時刻二三時二一分。
主は未だ帰らず、だ。
約ひと月振りに自宅に帰ってくるマスターだが、こうして未だに帰ってこない。
我に連絡がないところを見ると帰宅しない訳ではなかろうが、こうして帰宅予定時間になっても帰ってこない。
どうしてか分からんが帰ってこない。
――――奥方の怒りは最高潮だ。
「まさかエヴァさんと会ってるんじゃないでしょうね…? ――――――――そうだったらどうしてくれようか……」
「〜〜〜〜………ッ!!」
「ミヤ!?」
奥方の障気に中てられて気絶した!?
現在時刻午前五時〇二分。
マスター未だに帰還せず――
「――――う〜〜ん……だんなさま……」
「リョウスケぇ……わたしとメロン…どっちがだいじですかぁ〜〜……」
ついでに二人ほど脱落した。
ミヤ嬢とセットで寝ていると、奥方の年齢が分からなくなる。
軽く十歳は若く見える上、場合によっては――――いや、考えるな。
「――――というか、いつの間に服脱いだこの二人」
寝たときは着てたはずだが――――謎だ。
「マスター……今何処におられる?」
――――む?
「マスター?」
屋敷の制御システムから主帰還の報告が上がった。
だが――――同行者あり。
「ゲスト登録ナンバー、四五三二‐二三三四――――宮本良介」
なるほど、そういうことか……
ならば、迎えに行かねばな。
「宮本、珍しいな」
「なッ!? スーパーボール!?」
「驚いてどうする。貴様のデバイスをここまで連れてきたのは我だぞ」
「――――ち」
マスターにミヤ嬢の居場所を聞いたのだな。
迎えに来るとは殊勝な心構えではないか。
「――――アニーさんはどうです? ブレスト」
「――――――――つい数時間前まで怒っておられたが、今行って目覚めの口付けでもすれば機嫌も直ろう」
「――――さすが年の功。それでは良介君、お仕事ご苦労様でした。報酬はいつものところに」
「おう」
珍しく慌てた様子を見せつつ、マスターが屋敷の中に消えていく――――
宮本よ――
「貴様はどうする?」
「あ?」
「ミヤ嬢はしばらくここに居座るそうだ。衣食住はこちらで保障するし、仕事のときだけそちらに送り届けても構わんぞ?」
「――――――――」
悩め悩め、どうやってミヤ嬢を連れ戻すかしっかり悩め。
「お、俺は――」
「――――リョウスケッ!!」
ん?
屋敷の二階から飛び出してきたのは――――ミヤ嬢か。
「よ、よう――ってぇええええええええええええええええええッ!?」
「リョウスケ、リョウスケぇええええええええ〜〜〜〜ッ!!」
「だああああッ! やめろ! 暑苦しい!!」
「どうして夢にまで出てくるんですかぁ〜〜〜〜ッ」
「はあ!?」
「どうして喧嘩してる時に限って夢では優しいんですか!? いつもはあんなに嫌なことばっかり言うのに、どうして!?」
「い、いや、意味分からん…!」
「いつもははやてちゃんとかが夢に出てくるのに、どうしてこういうときだけあなたが出てくるんですか!?」
「お、おい…」
「――――うわぁあああああああああああああんッ!!」
――――どうしていいのか分からんと見た。
とりあえずそのまま抱き締めておけば良かろう。
「どういうことだ?」
「我に他人の夢を覗く機能はない。マスターなら使えそうだが……」
「趣味悪」
「否定はせんよ」
「うええええッ!」
ふむ――――結局、一泊二日のお泊り会だったか。
「局まで送ろう」
「――――――――ああ、頼む」
「なに、迎えたのなら送る。最低限の礼儀だ」
うん? 屋敷の窓――あれはマスターと奥方か。
――――こうなると分かっていたのだな。手まで振っておるし……
「さて、行くぞ」
「分かった――っていい加減にしろよ!」
「うああああんッ! リョウスケぇえええええええええ!!」
「だあッ! 放せぇええええッ!!」
――――にぎやかな連中だな、全く。
だが――――
「――――――――存外悪くは、ない」
これぞ、我が生涯に相応しい喧騒ではないか。
なあ、我が創造主よ。
我を生み出してくれたこと、心より感謝する。
我に心を与えてくれたこと、心より感謝する。
我に永の命を与えてくれたこと、心の底から感謝する。
「あああああッ! おまッ! エライ事になってんじゃねえか!?」
「びえええええええええッ!!」
我はここに在り、ここに生きるものを見守ろう。
なあ、我が創造主よ――――
この世は、存外悪く――ない。
「手間をかけたようだね。アンジェリーナ」
「いえ、旦那様が直接手を出せないと仰られるから、どんなことかと思いました」
「――――彼らは魂を共有するものだ、共に在るものだ。他人の干渉は相応しくない」
「私も他人です」
「そうだね。だが、君は母だ。私の知る中で最高の母だ」
「――――ご冗談を」
「不必要な冗談は言わない」
「旦那様…」
「――――さて、朝ご飯は何かな…?」
「ふふふ……――――ちゃんとお作りします。でもその前に――」
「その前に?」
「ミヤちゃんみたいな女の子も――――欲しくないですか?」
雪解けのオマケ
「おい…! なんかパワーアップしてないか!?」
「してるぞ」
「な、なんか魔力が溢れてるし!」
「奥方に魔力の制御法を教わったのだろう。少なくても強い力となる使い方だ」
「止めろよ!」
「理由がない」
「――――――――くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「――――逃げるんですか?」
「逃げるわボケぇ!!」
「――――そうですか。わたしが作った料理は食べないのに、アリサさんと料理は食べるんですね……」
「こえぇええええええッ!?」
「せっかく一生懸命作ったのに、せっかくできたてを食べさせてあげようと思って待ってたのに……」
「仕方がねえだろうッ!? 向こうで野郎が奢るって言うから…!!」
「マスターのせいにするな」
「お前はどっちの味方だ!?」
「ミヤだ」
「お、お前らみんな敵だぁあああああああああああああああああッ!!」
「敵でいいです。――――ブーストスタンバイ」
「なあッ!?」
「――――てやああああああああああああああああああッ!!」
「昇ったぁ!?」
「ミヤキィイイイイイイイイイイイイイイック・ドラァ――――――――イッ!!」
「うぎゃああああああああああああああああッ!!」
「うむ、奥方直伝の蹴り技。見事だ」
ただ――――生きてるか宮本…?
END
〜あとがき〜
ジーク・キャロ! ハイル・ミヤ!
同志よ! 我は帰ってきたッ!!
数多の同志たちに支えられ、我はここに新たな力を生み出した!
今回のヒロインはミヤ嬢! 蒼天の妖精!!
この世の理の中でもっとも無垢な存在! あらゆる穢れを雪ぐ姫君だ!
さて、ここで拍手返信と行こう!
>グレイト、グレイトであります。まさに幼女キラー・・・やっぱ、リョウスケはこうでないとね。
※確かにそうだ! これぞRSS同盟が主張する宮本良介の姿! おそらく風呂で背中を流させたりしているに違いない!! いっそ書くか!?
>悠乃丞さんの作品のキャロがものすごく可愛かったです、次のミヤの話も楽しみに待ってます
※ミヤ編の完成! 次はヴィータだ! 期待していてくれ!!
>悠乃丞さん!!次!次を激しく希望する!!!
※第二弾の完成だ! 希望に添えるかは分からんが、こうして諸君の許へと確かに届けたぞ!!
それでは、次のヴィータ編で会おう!!
オール・ハイル『生まれたての風』ぇッ!!