魔法少女リリカルなのは―――くらひとSSS―――
―れっつ、ふぇいすてぃばる! 後夜祭編―
「みんなぁ――――ッ!! 盛り上がってるかぁああああああああッ!?」
≪おおおおおおおおおおッ!!≫
「お〜…」
「楽しんでるかぁああああああああああああッ!?」
≪おおおおおおおおおおッ!!≫
「お〜…」
「ちょっと提督! もっと嬉しそうにしてくださいよ!」
「――――努力します」
マイクを切って自分に文句を付けてくるアナウンサー役の女子局員に、リュウトは引き攣った笑みを浮かべながら何とかそれだけを返した。
彼が非常に疲れているのには理由がある。
「これからがメインイベントなんですよ!? 本局・地上本部を使った鬼ごっこバトルロイヤル! その名も第一回『逃亡者エースオブエース! 戦技教導官とリュウト君を探せ!!』」
「名前的にはそのまんまですね」
「内容的にもそのまんまです! 分かりやすくていいじゃないですか!」
「私にとっては何がいいのかさっぱり。というか、叫ばなくても聞こえますよ」
すでに祭も五日目、『陸』『海』『空』の依頼を終わらせて久しぶりの休息を楽しもうとしていたリュウトに今度は時空管理局そのものから命令が下った。
内容はイベント参加。
その命令書を開いた瞬間、リュウトは意識が遠のくのを感じた。
ちなみに命令書に書かれた管理局員なら誰もが知っている三つの名前に殺意を抱いたりしたが、それは別の話だ。
「――――参加者何人ですか?」
そう呟くリュウトの目の前には黒山の人だかり、ざっと見るだけでも三千人は下らないだろう。
額にいやーな汗を浮かべるリュウトに、女子局員は男を魅了してやまないであろう笑顔で宣告した。
「分かりません。参加自由ですから」
「――――」
固まるリュウト。
それはつまり――――
「本局と地上本部、その中のどこに行ってもいいですが、一般人立ち入り可能区域内でお願いします!」
「――――今日の来場者数って何人でしたっけ?」
「ええと、支局を除くと約三十万人ですね!」
「――――死んだ……」
全員が参加することはないだろうが、それでも三分の一程度は参加するだろう。そのために来た者もいるはずだ。
つまり、十万人を二十名――待機中や派遣されている教導官の除く人数――の戦技教導官で相手にしなくてはならないということだ。
「五千対一って…」
「ミナセ提督にはたくさん来ると思いますよ。捕まえたら一緒に写真撮影出来ますから」
「――――」
いっそ、いっそ一思いに殺せぇええええええッ!!――――古馴染みの教導官が叫んでいた言葉の理由をリュウトは知った。
「魔法は使ってもらっても構いません。もちろん変身魔法もいいですよ。そうしないとすぐに掴まっちゃいますから。でも、転移魔法はスタート時以外やめてくださいね。あ、あと飛行魔法は原則禁止ですので、ジャンプはいいですけどね」
「――――サバイバル訓練より辛い…」
密林を歩く事よりも、砂漠を横断する事よりも、氷原を走ることよりも、超高空を超音速で飛ぶよりも辛いイベントだった。
――――『航空』戦技教導隊の教導官に飛ぶなとはこれいかに。
「向こうのルール説明も終わりそうですね」
「――――」
死んだ魚のような目で群集を見遣るリュウト。
彼らの前では別の女子局員がこのバカイベントのルールを説明していた。
「――――ですのでぇ! 捕まえたら十分間独占できます! 写真を撮る、抱き締めてもらう、キス――これは頬や手でお願いしますね――してもらう、何でも結構です! でも変なことしたら逮捕しますよ――――ッ!!」
≪おおおおおおおッ!!≫
参加する教導官の半数は女性だ。普段は一般に顔を出さない教導官と『色々』出来るというこのイベントは、男女分け隔てなく受け入れられているようだ。
――――教導官は別にして。
「今日こそはあの人に手を握ってもらうぞぉおおおおおッ!」
「ああ…お姉さま…!」
「主人に忘れ物を届けたときに、私はあなたを――――うふふふふ…」
「若くてぴっちぴちのイケメンから渋めのおぢサマまで……じゅるり」
「十分かぁ…何とかいけるかな?」
「主殿ぉおおおおおッ!!」
「あのバカ…またこんなイベントに巻き込まれて…!」
「――――仕事、溜まってますからね…?」
「おーおー、やってるやってる。さあて、ギンガたちはどうするかな…」
「――――あれが、リュウト・ミナセ…」
純粋に祭を楽しむ者からそれぞれの思惑を持つ者まで、様々な人々がステージ上のリュウトに視線を向ける。
そして――――
「――――それでは! 第一回『逃亡者エースオブエース! 戦技教導官とリュウト君を探せ!!』スタァ――――トッ!!」
司会が競技――ということになっている――開始を告げた瞬間、リュウトは叫んでいた。
「ファ、ファントムゼロッ!」
<yes,my lord.>
<Phantom Zero.>
『幻の零距離』という名を冠された高速移動魔法によって、リュウトはステージから飛び出した。ステージに迫る群衆を知覚外の速度で飛び越えると、すぐさま会場の出口へと走る。ひたすら走る。
「おい! あっちだ!」
「くそっ! いきなり転移しやがった!!」
「転移じゃないですよぉぉぉぉ〜〜〜〜……」
空間そのものを跳躍する転移魔法とは違い、高速移動魔法はあくまでも『速く』動いているに過ぎない。術者の技量や設定によってその速度は違うが、障害物を透過することは出来ないし、極端な話、足を引っ掛けられればこける――引っ掛けた方もただではすまないが――こともある。
転移魔法とは違って魔力の消費もそう多くないので、長期戦が予想される今回のイベントでは最適な逃走手段といえた。
「とりあえず、変装しましょう」
『賛成です。その格好ではすぐに見つかります』
航空戦技教導隊の制服はこの場合最悪の衣装だ。
『だったらあれに変装しましょう!』
いいことを思い付いたといった様子のラファエルの明るい声に、リュウトは嫌な予感を覚えた。
「おとうさん! すごいひとだね!」
「――すごいねぇ…」
「ああ、迷子にならないようにしっかり手を握ってろよ?」
「は〜い!」
二人の娘の言葉に笑みを浮かべながら、彼は周囲を見回した。
何処も彼処も人だらけ、自分の娘たちのような小さな子供ではすぐに迷ってしまうだろう。
「毎年のことながらよくやるもんだ」
「おとうさんは出ないの?」
上の娘の言葉に、男は苦笑いを浮かべる。
「俺は祭に客として参加するのは好きだが、やるのはちょっとな…」
「ふ〜ん……あ! あれ見てみたい!」
「ん? どれだ?」
娘の心変わりの早さに苦笑を深めながらも、男は男なりに祭を楽しむ。
「ほら、あそこ! おかあさんの服に似てる!」
「ほんとだ!」
娘二人が見る先では、『陸』の女子局員たちがバリアジャケットを纏って魔法の実演をしていた。
空中に浮かんだ的に誘導操作弾を当てるその技は、彼女たちの今までの修練が見えるような素晴らしさだった。
「――ほう…訓練校出たばっかって割にはたいしたもんだ」
男は彼女たちが訓練校を修了したての新人であることを見抜いていた。
新人独特の初々しさは、男が何度も見てきたものだ。
「あのお嬢ちゃんたちがベテランになる頃には、俺もおっさんかねぇ…」
娘たちを授かってからは特に時の流れが早く感じる。
以前は二人まとめて抱き上げるなど大したことではなかったのに、今では僅かながら苦労を伴う。
「――ま、今でもおっさんか…」
様々な色の魔力弾が的に当たり弾ける。
その度に周囲からは歓声が上がっていた。いつしかその中には愛娘たちの声も混じっている。
「すごーい! ね、スバル!」
「うん!」
人見知りする下の娘も、周囲の雰囲気を楽しんでいる。
連れてきてよかったと男が自分の判断を賞賛したとき、彼の耳によく知っているような――それでいて初めて聞く声が自分を呼ぶのが聞こえてきた。
「――――一尉! ナカジマ一尉!」
「ん?」
自分と同じ『陸』の制服を着た二等陸尉。だが、男――ゲンヤ・ナカジマはその人物を見た事がなかった。
「あ〜…と」
自分の記憶を漁る男の様子に、その二等陸尉は何かに気付いたように笑みを浮かべた。
「あ、すみません。私です『ゲンヤさん』」
「――――ああ! リュウトか! そういやイベント中だったな」
特徴的な長髪を消して二等陸尉の制服を着たリュウトは、目の前にいる知人に笑いかけた。
「はい、今のお仕事はこれです」
リュウトは自分の腕に付けられた腕章を示す。
そこには『案内係』の文字があった。
「なるほど、それならそう簡単にはわかんねぇ。奴さんたちが探しているのは案内係のにーちゃんじゃねぇしな」
「ええ、何度か道を聞かれたりしましたが、概ね平穏です」
「あっはっは! そうか! 平穏か!」
ゲンヤとリュウトは、リュウトが陸士隊に所属していた時、複数部隊の共同任務で知り合った。
お互いの名前――この世界では珍しい日本語の響き――に気付き、それをきっかけとして個人的な付き合いをするまでになったのだ。
現にそれ以降も、リュウトはゲンヤやその妻と何度か会っている。
「――おとうさん? だれ?」
「――――」
父の笑い声に気付いた娘たちが傍へと寄ってくる。
姉は好奇心に満ちた視線をリュウトに向けてくるが、妹は姉の背中からリュウトを伺うだけだ。
「おお、そういえばこの子らが大きくなってからは直接会った事はなかったな。生まれたときは祝いの品も貰ったし、赤ん坊の頃には二人とも会ってるんだが…」
「そうですね、小さかったから憶えていないんでしょう。――――あ、リュウト・ミナセです。お名前は言えるかな?」
膝を落とし、周囲に聞かれまいと少し声量を落としたリュウトの言葉に、姉妹は父へと視線を向ける。
その視線を受けたゲンヤが頷くのを見ると、姉妹はリュウトの前に立って口を開いた。
「ギンガ・ナカジマ! 八歳です!」
「――スバル…ナカジマ。ろくさい」
二人の対照的な自己紹介に、リュウトは優しげな瞳を向けた。
「ギンガちゃんにスバルちゃんか……お名前、よく言えたね」
リュウトの手が二人の頭をゆっくりと撫でる。
髪が乱れない程度に力を加減するのは意外と面倒だが、こういう面倒ならリュウトにとって何の苦労もない。
「えへへ……」
「ん〜〜……」
始めは逃げようとしたスバルも、目を細めて笑みを浮かべるギンガの様子を見て大人しくなる。その顔は最初の怯えた様子など感じさせない穏やかなものだった。
「――そこまで小さくはないぞ。だが、さすがだな、保父か学校の先生でもやったらどうだ?」
「それはなかなか魅力的ですが、私にはこちらの方が合ってますから」
手のひらに伝わる暖かい体温に、リュウトの顔には自然と笑みがこぼれる。
そんなリュウトと娘たちの様子を見て、ゲンヤはポケットの中の感触を思い出した。
「おい、折角だから一枚撮らせてくれや」
「え?」
「捕まえたら写真も撮れるんだろ? 捕まえたのは娘たちだから、三人で、な?」
ゲンヤの笑みに、リュウトは小さく嘆息した。
だが、その顔には小さな笑みがある。
「――分かりました」
そう答えたリュウトに、ゲンヤは二人を抱き上げるように指示する。
「そうそう、スバルもっとくっつけ、落ちるぞ」
「――うん」
「うわ〜おとうさんよりも高〜い」
「いたた…」
「ギンガ、お前は少し大人しくしてろ。あとリュウトの髪引っ張るな」
双剣・双銃使いであるため両利きであるリュウトには、どちらの腕に重いギンガを乗せるという区別はない。ただ、二人に任せているだけだった。
「よし…」
「あ、じゃあ、変身解きますね」
「いいのか?」
周囲には大勢の来場者がいる、その中にはリュウトを探している者もいるだろう。ゲンヤはそういう意味を込めてリュウトに問う。
「構いません、認識阻害効果は残りますし」
「そうか…」
「では――」
リュウトの体を一瞬だけ光が包む。
抱き上げられた二人は驚いた様子だったが、すぐに光が消えた事でバランスを崩すこともなかった。
「わあ! しっぽだ!」
「しっぽ!」
「――あはははは…」
こうして幼い姉妹に喜んでもらえるなら、自分の長髪も無駄ではない――リュウトは心の底からそう思った。
「おい、しっぽ触ってないでこっち向け! 撮るぞ!」
「ほら、二人とも…」
「は〜い」
名残惜しそうにカメラへと向き直る二人の様子に、リュウトは苦笑する。
「こっち見ろ、そう――――二人とももっとくっつけ、俺とは違ってそいつは若いからな。多少重くても大丈夫だ」
「おもくない!」
「分かった分かった」
自分にくっつく子供らしい高い体温と柔らかい髪の感触に、リュウトは昔を思い出した。
(私も、こうして抱き上げる歳になったということかな…)
当時は抱き上げる事などできずに、お互いひたすらくっついているだけだったというのに――リュウトは己の腕に掛かる重さを噛み締める。
「よし! 撮るぞ!」
「ええ」
「うん!」
「はーい!」
二人が自分の顔をリュウトのそれに寄せた時、彼は気付いた。
今、自分の顔に浮かんでいるのは本当の笑顔だと。
「それじゃ、気をつけろよ」
「はい、奥様によろしくお伝えください」
「分かった。じゃあな」
「またねー!」
「またね…!」
「ええ、また…」
祭の喧騒の中へと消えていく三人の姿に手を振り返しながら、リュウトは次の逃げ場所を考える。
そんな時、リュウトの目に自分を探す集団の姿が見えた。彼の名前を口々に叫び、周囲に注意深く視線を向けている。ひょっとしたらリュウトが変装しているという情報を掴んでいるのかもしれない。
「不味い…!」
その様子にリュウトは慌てて近くの仮設案内所へと向かう。そして、案内所へと入ろうとした瞬間、航空隊の制服を着た男性局員と衝突しそうになった。
「おっと…」
「すまない! 急いでるんだ!」
男性局員はリュウトに謝罪の言葉を告げると、すぐさま人々を避けながら駆けて行った。
「今のは……ティーダ?」
リュウトが呟いた名前、それは彼が本局付きの執務官となったあと知り合った航空隊の魔導師の名前だった。
地上本部へと仕事で赴いた際、相手側の担当者として現れたのがティーダだった。
同じ歳であり、ティーダが執務官志望だったことから二人は友人と言ってもいい間柄になったが、お互い忙しく、最近はほとんど会っていなかった。
「ふむ…?」
リュウトは友人の慌てように首を傾げつつ、案内所へと入る。
そして――
「ちょっとランスターさん!! ってあれ?」
怒鳴られた。
「す、すみません! 同じ制服だったもので…間違えてしまって」
「いえ、いいですよ。今の方は?」
人違いだった事に気付き慌てる准陸尉の階級章を付けた女子局員に、三等空尉の制服を着たリュウトは問題ないと手を振りながら問い掛ける。
「ああ、航空隊のランスターさんです。妹さんが迷子になったらしくて…」
「――『あの子』が? 大丈夫なんですか?」
リュウトはその妹とも面識があった。
兄に懐いていたその姿を知っているため、リュウトの顔には心配そうな表情が浮かぶ。
「ええ、見つかったみたいです。それで――」
「ああ、飛んでいったと」
リュウトは安堵と同時に、納得したといった様子で頷く。その時、女子局員はリュウトの腕章に気付いた。
「あ、休憩時間ですか? わたしも休憩するところなんでお茶淹れますね」
「あ、いえ…」
「丁度良かったです。ここってわたし一人しか居なくて…」
確かに女性一人では不安があるだろう。本来なら複数名の人員が配置されているのだろうが、外で仕事をしている可能性が高い。
「――――ご苦労様です」
「いえ、好きでやってることですから」
「そうですか…」
女子局員の笑顔に笑みを返しながら、リュウトは少しここで休憩していこうと決めた。
「わたしって今年士官学校を出たばかりなんですよ。なのに、一人っきりで仕事させられて…」
「はあ…」
「最初は緊張感もあったから良かったんですけど、今じゃ別の意味で緊張するだけで…」
「ふむふむ…」
「さっきみたいに迷子を探しに来るならいいんですけど、ナンパしに来る人とかもいて…」
「それは…」
「あ〜あ、同期の子なんて巡航L級艦所属ですよ? まぁ、下っ端もいいとこですけど。でも、この扱いの差はなんなんでしょう…」
「ええと…」
「本当なら技術職志望だったのに、希望が通らなくて……」
「はあ…」
リュウトはひたすら愚痴に付き合っていた。
今まで一人だけで仕事をしていた反動か、女子局員はひたすら喋り続けていたのだ。
「ほんと、どうしましょう…」
「さぁ…」
本当にどうしたものか――リュウトは真剣に悩んでいた。
ここで彼女を放り出すことはできない。
だが、このままここ居てはいつか見つかる。主に捕食者に。
「あの…」
「あ! すみません――」
「いえ…」
そう考えたリュウトは、女子局員にこの場を辞することを伝えようとしたのだが――
「――お茶なくなりそうですね、すぐに淹れてきます」
女子局員はリュウトの意図を完全に潰してしまった。
「――――――――ありがとうございます」
「はい! どういたしまして」
違うのに違うといえないリュウト。自分がいることで笑顔になってくれる存在がいう事実に、彼の口は貝のように固く閉じてしまう。
――――単にヘタレなだけかもしれないが。
「そういえば、三尉はどこの部隊なんですか? どこかの航空隊ですか? ここにいるってことは本局勤務ですか?」
「ええと…」
咄嗟に上手い言い訳が思いつかず、リュウトは言葉を濁す。
リュウトのその態度に、女子局員は苦笑いを浮かべた。
「――すみません、わたしがあんな話しちゃったら言い難いですよね」
「そんなことはないですよ」
「ふふふ、ありがとうございます」
そう言って女子局員がお茶を机に置いた時、案内所に訪問者が現れた。
「あの…すみません、B‐]Tステージはどう行けばよろしいのでしょう?」
「あ、はい!」
案内所の奥に座っていたリュウトは、新たな訪問者に視線を向ける。
そこには自分やクロノと同世代の少女が立っていた。
「――――この区画から二ブロック進んで……」
「――――はい、はい……」
長い金髪を揺らし、意志の強そうな瞳で女子局員の指の先を見詰める。
明らかに一般人のそれとは違う立ち姿に、リュウトは小さな違和感を覚えた。
「――――お分かりになりますか?」
「――――はい、なんとか…ありがとうございます」
どうやらリュウトが自分の中に渦巻く違和感の正体を探っている間に話は終わったらしい。金髪の少女は手に案内用の地図を持って女子局員に礼を言っていた。
そのまま案内所を出て行こうとする少女の眼が、一瞬だけリュウトの視線と重なる。
その瞬間――――
「――――私が、案内しましょう」
「え?」
自分の中の何かに突き動かされ、リュウトはそう申し出ていた。
女子局員は驚いたような顔をしているが、少女は小さく眼を見張るだけだ。
「――――B‐]Tステージはここから少し距離があります。それにこの人出だ、すぐに道なんて分からなくなる」
「そう、かもしれませんね…」
少女は地図を抱えてリュウトの眼を見詰める。
その視線には、リュウトがよく知る種類の『それ』がわずかながら含まれていた。
「休憩も済みましたし、あまり長く休んでいると怒られますので」
「――すみません、お願いできますか?」
「ええ、それが私の仕事です」
申し訳なさそうな少女の問い掛けに、リュウトは笑顔で答える。
「そういうわけですので、これで行きますね」
「あ、はい」
リュウトは椅子の背もたれに掛けていた上着を着ると、女子局員に礼を言って案内所の出口へと歩き出す。
「お茶、美味しかったです」
「い、いえ! お仕事頑張ってください!」
わたわたと手を振るその姿に、リュウトは口の端を持ち上げる。
「――――あなたも頑張ってください」
「そ、そうですね。わたしも頑張らないと…!」
「ええ、それでは…」
小さくガッツポーズする女子局員に笑みを向けると、リュウトは少女を伴って案内所を出る。
「行きましょう」
「あ、はい――――ありがとうございました」
リュウトに遅れまいと、少女は女子局員に再び礼を言って案内所を後にした。
一人残される女子局員。
そして――――
「――――あ、名前……」
彼女はリュウトに自分の名を名乗る事も、名を訊くことも忘れていた事に気付いた。
「――――ま、いっか」
案内所の奥へと眼を向けた彼女の視線の先には、すっかり冷め切ったティーカップが残されている。
「わたしは憶えてるし、今度あったら名前を聞こうっと」
そう呟いて、彼女は仕事に戻る。
「ごめんアンナ! 大丈夫だった?」
「もう…! でも大丈夫だったよ。今まで別の案内係の人が応援に来てくれてたから」
『これがわたしの仕事です』と胸を張って言える日を目指して――
「すみません、お手間を取らせて…」
「お気になさらず、これが私の役目ですから」
「はい…」
案内所を出た後、二人は時折肩が触れる距離で人々の間を歩いていた。
先ほどまではあまり人通りもなかったのだが、この先では『陸』の各種装備の実演展示が行われている。そこを目指す人々で二人の周囲は混雑していた。
「――――」
「――――」
二人は無言で歩き続ける。
険悪な雰囲気ではないが、どちらも遠慮しているといったところだろうか。
「――――あの」
「――――あの」
そんな状況を打開しようとしたのか、二人は同時に相手に向か言葉を発していた。
二人は顔を見合わせると、お互いの顔に浮かぶポカンとした表情に笑みを零す。
「くく…ッ! すみません、そちらからどうぞ」
「ふふふ…。そちらからで構いません」
「そうですか、それでは――」
「はい」
リュウトは笑いを抑えると、少女に自分の中で感じた違和感の正体を告げた。
「――――ひょっとして、教会の方ですか?」
「え!?」
少女は心底驚いたといった風に口と眼を開く。
「違っていたらすみません。知っている教会の方に雰囲気が似ていたもので――それに……」
「それに…?」
「言葉に、少しベルカの名残を感じたもので…」
「――――ひょっとして、あなたもベルカの…?」
「いえ、昔から馴染みが深かっただけです」
少女は驚きを宿した眼でリュウトを見詰める。
だが、リュウトにとってベルカ語は珍しいものではない。両親の仕事の関係上海鳴に住んでいた頃から――それこそ言葉を覚え始めたときから――外国語には縁が深かったし、七歳の頃からミッドチルダ語とベルカ語を習っていた。そのため、リュウトはミッドチルダ語とベルカ語――或いは英語とドイツ語――をほぼ完璧に扱え、母語である日本語を含めれば三ヶ国語を操るトライリンガルということになる。
他の言語にもある程度の造詣はあるが、それほど深くはない。せいぜいが日常会話と簡単な読み書き程度だ。それでも含めるとなれば、マルチリンガルといえるかもしれない。
余談だが、リュウトの両親は感情が昂るとお互い別の言語で夫婦喧嘩をするという不思議な夫婦だった。
「親が翻訳なしでも問題なく過ごせるようにと…」
「それは――面白いご両親ですね」
「ええ、面白い親でしたね」
リュウトの傍に親と呼べる存在はもういない。
それでも、両親の遺したこの身はこうして生きている。
「――――すみません」
リュウトの言葉の裏に気付いたのか、少女はそれだけを言って黙り込む。
「いえ――――それで、あなたは何を?」
リュウトは少女の様子に一切触れず、ただ質問の先を促す。
その言葉に背を押され、少女はゆっくりと口を開いた。
「はい、わたしが教会の人間である事は確かです。それで――――」
「ふむ…」
「――――あなたは先の事件のことを何か知っているかと…」
「先の事件とは?」
リュウトの言葉に数瞬だけ躊躇いを見せると、少女はリュウトの様子を窺うようにその言葉を口にした。
「『マンティコア事件』です」
「――――なるほど」
リュウトは目の前の少女が聖王教会の関係者であると確信する。
事件関係者かそれに近い人物しか使わない『マンティコア事件』という呼び名、それは確かに少女が教会関係者であるという証拠だった。より知っている人間が少ない『<メイガスの鍵>事件』という名で呼ばないということは、直接関わっておらずただ知っているというレベルだろうが。
少女はリュウトのその様子に顔を俯かせる。
「――やはり、ご存知でしたか……」
「ええ、まあ…」
リュウトはある意味事件の当事者だ。そして、最大の当事者である少女の保護者でもある。
「今回の一件で教会も随分慌しかったんです。義弟にも苦労を掛けてしまって…」
「――――」
「きっと、あなたにも迷惑を掛けてしまったんでしょうね…」
「いえ…」
時空管理局・聖王教会双方の一部の人間が起こした先の事件は、二つの組織に大きな傷を負わせた。この二つの組織は現在も傷を癒す事に力を注いでいるのが現状だ。
この傷が癒えるのには、少なくとも数年の時を要するだろう。
「――――すみませんでした」
「え…?」
「――いえ、気にしないでください」
リュウトは謝らずにはいられなかった。
自分の詰めの甘さが多くの人々に影響を与えた――その事実がリュウトの口から謝罪の言葉を生み出したのだ。たとえ、それが的外れの謝罪であっても。
だが――――
「――わたしもすみませんでした。わたしが謝ったらあなたも謝らないといけないですよね……」
「いえ…」
「――――」
「――――」
その後、二人はただ黙って歩き続けた。
「あ、義弟です」
「ん?」
少女が示す先には、目的のステージ入り口。
そして、その柱に寄り掛かる少年の姿があった。
少年は義姉に気付いたのか、こちらに向かって手を振る。
「――よかった、ちゃん合流できて…」
「それは何よりです」
「わたしも何度かここに来ているんですが、今日は人が多くて」
少女はリュウトを見上げると自嘲気味に笑う。
「――そうですね。私もこの仕事をしていなかったら迷っていたかもしれません」
今の本局や地上本部は普段は存在しないような建物も臨時に設営されている。そのせいで土地勘のある者でも容易に迷ってしまうのだ。
「そう言っていただけると気持ちが楽になります」
「いえ――ほら、義弟さんが待っていますよ」
リュウトの視線の先では明るい髪色をした少年が義姉に向かって手招きしている。その視線がリュウトに向いているのは、義姉といる存在に対する興味ゆえだろうか。
「――はい、お世話になりました」
少女は義弟に手を振って答えると、リュウトに感謝の言葉を伝えて歩き出す。
だが、少女は数歩だけ歩くとすぐに立ち止まった。
「――?」
リュウトは少女の行動に首を傾げる。
何か言い忘れていた事でもあっただろうか――リュウトは自分の記憶を走査する。
しかし、次の瞬間発せられた少女の言葉にリュウトの思考は停止した。
「――――先の事件を含めて、大変お世話になりました」
「あ、いえ…」
少女は背を向けたまま、リュウトにだけ聞こえる声で言葉を発する。
その内容はリュウトにとってそれほど不可解ではないが、それでもやはり違和感を覚えてしまう。
少女の口調がまるで事件のすべてを知っているようなそれだったから――――
「聖王教会はあなたに深く恩義を感じております。管理局との関係もあなたとその部下の方たちの仲介で良好な状態を保つ事が出来ました。その見返りといってはなんですが、今後我々の力が必要な事態が起こった場合は可能な限りの支援をするとのことです。――――たとえ、それがあなた個人の問題だとしても」
「――――」
そう、少女はすべてを知っていた。
「それでは、ごきげんよう――――リュウト・ミナセ提督」
「――――」
少女は黙ったままのリュウトその場に残し、ゆっくりと義弟の元に歩いていく。
リュウトはその後姿に様々な想いを込めた視線を送る。
そして、リュウトの口がわずかに弧を描いた。
「――――――――なんとも、敵に回したくないお嬢さんですね……」
リュウトが少女とその義弟の名を知るのは、その数日後だった。
「うーん、リュウトは見つからないかぁ…」
エイミィは休憩スペース――ちなみに、このようなスペースの内の何箇所かに限って飲酒可能――に設置された大型モニターを見ながらポツリと呟いた。
そこに映っているのは現在本局・地上本部で行われている壮絶な鬼ごっこの一部始終だ。
もちろん、そのカメラは追い手側のみで、追われる戦技教導官からの情報は一切ない。だが、どの位置で誰が捕まったかは記録されており、追い手の貴重な情報源となっていた。
「――リーゼから逃げ回っていたからな、支援――というか隠密系の魔法はリュウトの方が僕の何倍も上手いぞ」
クロノは兄弟子の受難に内心笑みを浮かべながら後輩たちに講義をしている。
「ああ…! だから突然背後に現れたり出来るんだ」
「いままで知らなかったのか? エイミィ…」
その後輩たちはテーブルに並べられた軽食や菓子をつまみながらモニターに見入っている。完全無欠の観客状態だった。
「あ、また一人捕まった。おばさんに頬擦りされてる…」
「――すごい……あっちの人、普通の人に向かって魔法撃ってる…」
「おしい! そこは挟み撃ちにするんや!」
分割表示されているモニターの中の地獄――教導官にとっての地獄――を、少女たちはこれ以上ないほど楽しんでいるようだ。
「む? あの教導官、なかなかできる」
「あら、このお菓子おいしいわね……すみませーん! このお菓子五人分持ち帰りにしてください!」
「もぐもが! むぐむぐ!」
「――――食べながら感想を言うなヴィータ」
守護騎士たちも各々この状況を楽しんでいるらしい。シャマルなど菓子の持ち帰りを頼んでいる。
「もう……本気で逃げてるわねあの子。これじゃあお客さん怒っちゃうわ」
「――リンディ、そのグラスの中身どれ……おいし〜?」
微妙に顔を赤らめた奥様提督二人は、弟分の戦いを肴に酒精の摂取に勤しんでいるらしい。勤務時間外を素晴らしくエンジョイ中だ。二人とも酒を飲んで色気倍増中だが、それに引き寄せられている周囲の男どもの視線など気にするはずもない。
「あぁ〜…るぅ〜…じぃ〜…どぉ〜…のぉ〜〜〜〜……」
「うるさい! そんなに心配なら助けに行きなさい! 私はこれから仕事よ!? せっかく提督のお供から解放されたのに!」
「――――いい気味だわ。いっそこのまま行方不明になったらいいのに……」
シグレ、アンジェリーナ、リンディに捕まったエヴァ・ヘンリクセンの三人は同じ男の話題でまったく噛み合っていない会話を繰り広げていた。その顔の赤みを見るにしっかりと飲酒しているらしい。七歳、十八歳、十七歳と日本では未成年だが、この三人の中に日本に住んでいる者などいないので関係ない。
「――――残り時間は一時間か…」
クロノはモニターの隅に映るタイマーを確認すると呟いた。実は周囲の状況から逃げているのかもしれない。
悲喜交々の鬼ごっこもすでに終盤。一度も捕まっていない教導官――籍を残しているリュウト含む――は四人で、いずれも教導隊でも上位の能力を持つ歴戦の勇者たちだ。最低でもAAAランク、トップはSSランクの教導官たちは、己の色んなものを懸けて逃げ回っていた。
この鬼ごっこの最大の恐怖は、教導官たちの命が保障されていないことかもしれない。
一方その頃、リュウトは――――
「はい、そちらの会場はこのブロックを抜けて――――」
すっかり道案内が板についていた。
これが時空管理局の若き勇士――養父であるギル・グレアムの歴戦の勇士という二つ名と対応したもの――かと思うと、泣く人間も多いかもしれない。
「ええそうです、あちらの局内軌道に乗っていただければ――――」
実は教導隊で一番変装が得意だったりするが、その事実に本人も周りも誰一人として気付いていなかった。まさか母親から逃れるために覚えた魔法が、時空管理局で最高レベルのそれになっているとはリュウトも考えのはるか外だったのかもしれない。
「そうだ! あたしらでリュウト捕まえよう!」
「なに?」
突如立ち上がって提案するエイミィに、クロノは驚いたような視線を向けた。
「ほら、捕まえてボーナス増やしてもらおう」
「――――この間減らされたままなのか……」
ここ数ヶ月の騒動で減りっぱなしのエイミィの賞与。それを回復するため、白衣の魔王を倒すため、彼女は立ち上がる!――――らしい。
「いーじゃん! この間の買い物もリュウト奢ってくれなかったし」
「当たり前だ。祝い事でもないのに意味もなくそんなことするはずがない」
ついでに言うなら『女性に贈り物をするのは挨拶と同義』とリュウトに誤った知識を教えた報いだった。
「どうする? リュウトさん探してみる?」
「――――これ以上はリュウトが嫌がると思うからやめた方がいいと思うけど……」
「そうやねぇ……今でも結構大変みたいやし」
後輩三人の暖かい想いを知ったら、リュウトは感動してかもしれない。
だが――――
「――――でも、ここで戦うのが後輩としての礼儀や」
「え!?」
「はやて!?」
「わたしは――わたしらはリュウトさんと戦って勝つんや〜〜ッ!!」
「ちょ、えええ〜〜ッ!?」
「ああ!? なのはッ、これお酒!」
どうやらジュースと間違えて飲んでしまったらしい――――お酒は二十歳になってからだ。
慌てる親友たちを無視して、酔いの回った夜天の主は守護騎士たちに出撃の命を下す。
「みんな! リュウトさんに日頃の恩を返すべく、全力で『さーちあんどですとろ〜い!』や!!」
「は…!」
「――いいのかしら…」
「もご〜〜〜〜!!」
「ヴィータ、とりあえず口の中のものを飲み込んでから叫べ」
守護騎士たちは主の命を受け、古からの戦士となる。
「シャマル、魔力パターンの共通情報からミナセを特定しろ、幻術魔法を使っていても共通点はあるはずだ。ヴィータはその情報を元に先行偵察、ザフィーラはあいつの行きそうな場所をしらみつぶしにあたれ」
「――――分かったわ。はやてちゃんの望みだもの」
「おう! 今度こそ勝ぁ――――つ!!」
「――――――――すまんミナセ、俺には止められん」
将として主――但し酔っ払い――の命に応えようとするシグナム、前向きなはやて――だから酔っ払い――の望みを叶えようとするシャマル、いつぞやの雪辱を誓うヴィータ、リュウトとの間に少しだけ芽生えた男の友情から苦悩するザフィーラ。
守護騎士たちの戦いは始まった。
「あら? みんなどこ行ったのかしら?」
「――りんでぃ〜、そのボトルとってぇ〜」
「あ、これ? はい」
「ありがと。りゅうとぉ、がんばれ〜〜い」
酒宴の会場と化したテーブルだが、その周囲には二人によからぬことをしようと近付いてきた男どもの屍が転がっている。――――どうやら酒を飲むと戦闘力が増加するタイプらしい。
「リュウトざまぁ〜〜〜〜……」
「ひっく! なんだってのよぉ〜〜! わたしのどこがこわいのよ〜〜ッ!」
「あのバカ、どうしてなにも言わないの……いやならいやって言えばいいじゃない!」
「うるしゃいだいへいげんむすめ! そこがこわいの!」
「にゃんですってぇ〜〜!? ポンコツチキン! あんたこそ、こんなとこでくだまいてないでさっさとたすけにいきなさいよぉ!!」
「リンクきられてて、いばしょがわからないのぉ〜〜〜〜! うわぁ〜〜〜〜んッ!! りゅうとさまぁ〜〜〜〜!! どこぉ〜〜〜〜ッ!?」
「ぴーぴーなくな! とりじゃあるまいし!」
「どうしていいともわるいともいわないのよ〜〜! はやくきめなさいよぉ〜〜!」
泣き上戸、怒り上戸、絡み上戸の三人の周囲には、リンディたちを超える酒の残骸が転がっている。本来なら注意するべき事態だが、怖がって誰も近付かない。現に注意した局員はトラウマを負ってしまった。
「――――リュウト、お前って偉大だったんだな……」
このメンバーを一人で抑えていたという事実に気付き、クロノは空に浮かんだリュウトの幻に視線を向ける。その幻はぐっと親指を立てると空に消えた。
「…………――――――――死んだ?」
「む、何故か急に寒気が…」
風邪でもひいたんでしょうかねぇ――――そう呟くリュウトより数百メートル、彼に対する最強の刺客たちはその獲物に向かって一直線に突き進んでいた。
時空管理局祭は成功裏に終わり、この年の各訓練校入校希望者、士官学校入学希望者、そして入局希望者の数は大きく伸びた。だが、その影で戦った者たちの記録はどこにも残されていない……
ちなみに『逃亡者エースオブエース! 戦技教導官をリュウト君を探せ!!』がこれ以降行われたという記録もない。
ないったらない。
――――本当にない。
目覚めたオマケ
一方、その頃ユーノは――――
「スクライアさ〜ん?」
「あ、はい」
「ミナセ提督からお届けものですよ」
「なんだろう?」
「さぁ? 今日はお祭りですからそのお土産かもしれませんね」
「――――最初になのはが来て以来、誰も誘いに来なかったなぁ……」
「来ててもこの惨状を見れば帰りますよ。書庫の整理なんて、今やらなくてもいいのに…」
「そうだよね……でも、もう少し頑張って誘ってくれればぼくも行く決心が付いたのに――『仕事の邪魔しちゃだめだよね?』って……」
「――――――――で、中身はなんです?」
「ええと……――お好み焼き?」
「へぇ…! 見たことないけど美味しそうじゃないですか!」
「――――食べようか?」
「はい!」
「あれ…? すごく美味しいのに……しょっぱい…」
「泣いてる!?」
END
〜あとがき〜
皆さんこんにちは、悠乃丞です。
祭りの後の寂しさといいますか、実はオールスター勢揃い? ちなみにユーノ君は無限書庫で缶詰です。
でも、ユーノ君の台詞量はなのは嬢たちとそれほど変わらないんですよね…
さて、今回の目玉は三組の三期キャラ――とその関係者です。
私は考えました。第三期のキャラ、それも管理局員ではないメンバーを出すにはどうしたらいいか…?
そして気付いたのです!
祭りだ!!
これなら一般人も管理局にたくさん入れるし、キャラとの出会いも上手くいくはずです。
今回登場したメンバーの内、ナカジマ親子はお分かりになるでしょうね。そして聖王教会の義姉弟、ティアナ・ランスター嬢の兄ティーダです。
ティーダ君の歳がリュウトと同じだというのなら、これは使わない手はありません。同じ歳のキャラって原作には居なかったですし……
他のキャラは出すのが難しいので、これくらいですね。だって、キャラの年齢が分からないんですもん。特にカリムさん。
きっと、他のキャラもいたんでしょう、どこかに。
そして、今回初登場のエヴァ・ヘンリクセン嬢!
実はこれ以前になのはさんたちとは会っております。それは過去篇扱いなので近いうちにお届けできるでしょう。その時の話で、なのはさんたちはドレスを着ております。
絡み上戸な彼女ですが、リュウトが居ないところでは比較的面倒見のいいお嬢さんです。ですが、リュウトがいると大変怖いです。
さあ、ここで感想への返事と行きましょう!
>全部読みました〜〜……の方
※ありがとうございます。
一週間も私の文章を読んでくださったという事実がなんとも恥ずかしいような、嬉しいような気分です。
最強かどうかは教導隊の人たちの実力が分からないので何ともいえませんが、設定としてはそれなりに頑張っております。
ですが、リュウトはレアスキルなどを持っていません。融合機能付きのデバイスも条件さえ揃えば、理論上他の人間が扱う事は可能です。
リュウトが最初から持っていた能力は高い魔力だけで、それ以降の技能習得はリュウトの努力の賜物です。クロノも努力型とリーゼに評されていますが、リュウトは自分の力を信用していなかったための努力型です。その理由は過去篇で明かされますが、高い魔力という力の無力さを嘆いていた子供がいたということです。
それでは、これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
>細い細い塔を建て〜〜……の方
※感想ありがとうございます。
リュウト君の塔は恐ろしく危ういバランスで建っておりますので、周囲の人々は心配してそうです。
耐震補強工事が間に合うかどうかは定かではありませんが、もしも間に合う事ができたなら、リュウトは過去から未来へと歩きだせることでしょう。
リュウトに戦いの才能がなく、小さな塔しか建てられなかったら、それが崩れても大したことはなかったのかも知れません。ですが、リュウトには平和な世界では無用の才能があった。それが巨大な塔となり、そこに立つリュウトを殺す凶器となったのでしょうね。
次に、拍手の返事をさせていただきます。
>リュウト君を構成する過去がまたひとつ出て来ましたね。ほんと、最後はどうなるのでしょうか?楽しみです!
※リュウト君も管理局では十年のキャリアをもつベテランですからね、過去には色んな部隊に所属していた事があります。
それに関しては過去篇で書かせていただきますので、どうぞ楽しみにしていてください。
そして、最後がどのような結末になるのかも是非お楽しみに。
>4話は、休日なのに翠屋で働くリュウト君・・・楽しみです!!
※休日じゃないじゃないかというツッコミは兎も角、接客には向いていると思います。
翠屋のエプロンを着て店を駆け回る現役提督――う〜ん、なんともいえませんねぇ。
少なくとも副官に怒られる心配がなくなり、リュウト君の心は浮き立つことでしょう。
>なのはSts第九話を見ての感想ですが、こんな話どこかで読んだ事があると思っていたら「暗き瞳」でした。
あの頃はなのはが怪我をしたことすら分かっていなかったので、純粋にすげーと思います。
そういう意味では、リュウト君はなのはの先輩なんですね。リハビリの先輩。
※私は第三期をリアルタイムで見る事ができないので詳しい事は何とも言えませんが、そういう話をリアルでも頂きました。
『十年前までは普通の子供だった。そのまま家族との普通の生活が続くと思った。だが、ある事件で魔法を知った。普通の子供だったその子はたった数ヶ月の間に命懸けの実戦を何度も潜り抜けた』
なのはさんの人生をそう話していたそうで、リュウトと比較した方もいたようです。大怪我の理由もよく似ているということで驚かれた方も居たらしく、リアルではえらい目に遭いました。
ただ、話で聞く限りなのはさんが一度の無茶で学習したのに対し、リュウトは最低二度同じ無茶をやらかしています。それは今後の過去篇で明らかになりますが、根本的にリュウトはバカだと思います。他人のふり見て我がふり直せと言いますが、リュウトは無理無茶無謀に関しては自分の姿が見えなくなるタイプらしいです。――――こんな主人公ですが、応援してやってください。
とゆーか、嫌な先輩ですね……経験だけは豊富ですが…………まあ、私もですがね(ぉ
以上で返事を終わらせていただきます。
今回はお返事が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。
モチベーションが下がったときも皆様の感想で再び筆を取る事ができていますし、皆様に助けられて書いていることを実感いたしました。
今後はできるだけ早く返信できるように努力することをお約束いたします。
ここで次回のお話のことを少しお話しましょう。
次回はリクエストいただきました温泉編です!
色気はともかく、笑いあり、涙あり、流血ありの珍道中。元教導隊最強の歩く性欲がなのはたちに魔の手を伸ばす!
リュウト、クロノ、ザフィーラ、ユーノ、士郎、恭也の守護者同盟は次元世界最強のエロ魔人の魔の手から高町家、八神家、月村家、バニングス家、ハラオウン家の至宝を守れるのか!!
つーか、守らなきゃ色んな人に殺されるぞ!?
次回、くらひとSSS7『くらひとサスペンス 〜魅惑の湯煙に映る殺意〜 前編』
訳の分からない次回予告ですが、こんな感じかと。
それでは皆さん、次回のお話で会いましょう。