ONE PIECE 〜外伝〜
ユウイチは黄色の鉄を取り出した。
目の前にある物は大事な人から貰ったモノだ。
「何をするかはしらないが……そんなのでオレを止められるのか?」
「言ったろ?切り札だって」
不敵な笑みだった。
それを見て、キタガワも笑う。
「上等だ……いくぜ!!」
またもや、踏み込んできた。一歩、一歩近づいてくる。
一瞬、ユウイチは思考の海に入っていた。
ユウイチもすでに敵の技の特性に気づいている。
相手は拳法をベースにし、体の内部を破壊するタイプ……いわゆる、柔拳とよばれるタイプの技を使う。
しかし、キタガワは柔拳を使うにも関わらず、剛拳も取り入れている。
ある意味、最も完成されているかもしれない打撃系の格闘技だということだ。
しかし、重要なのはそれではない。
拳法の弱点としては、お決まりの決闘しかしらない手合いが多いという事。
しかし、キタガワは海賊を狩る、賞金稼ぎのため、どんな相手でも対応するだろう。
ならば、キタガワが闘ったことがないタイプで相手になるかというと、現在の苦戦の状況を見れば分かる通り、柔軟な思考もあると考えられる。
この年齢にして、完成された格闘家だということだ。
勿論、まだまだ伸びるを持っている。
しかし、それでも基本的な能力を見る限り、完成に近い状態であると推測される。
そこで、ユウイチは考えた。
(小細工は無意味!全部の力を使う!!)
そう結論した。
だから、彼は自分の手札を曝け出した。
そう、自分にとって最強の、そして、なによりも信頼できる獲物を持って……
「貴様を……倒す!!」
激闘は再開しようとしている。
現在から、約15分前
時間でいえば、まだ闘いが始まったばかりの頃。
マッシュは心配していた。
ユウイチには悪いが、彼の頭にはユウイチが五体満足で帰って来れるか……
それが彼の心配の種だった。
無論、ユウイチの強さを疑ってはいない。が、それでも彼が知る限り、最強の賞金稼ぎのキタガワに通用するかといえば、疑問だった。
「や、やはり止めるべきじゃな……」
そう。彼は止めるべく外に出た。
向かうべくは、ユウイチ達が向かった山。
しかし……
ドゴン!
突如として、山から悲鳴が聞こえた。
「な、なんじゃ!!」
マッシュの悲鳴にも似た叫び。
マッシュは迷った。当然だ。
山で、なにかとんでもないことが起きている。
普通の人間なら近づきたくない。
しかし、ユウイチを救いたい。
人としての良心が勝ったのか、決意した。
「い、いくぞ!」
その瞬間
ドゴン!
またも山から悲鳴が聞こえる。
今度は縦一文字に山から黄色い線が召喚された。
そう見えるぐらいに、見事な黄色いモノが山を縦断した。
マッシュは固まった。
まだ、迷う。
そこに……
ズガガガァーン!!
またも、山から悲鳴が聞こえた。
先程の、縦断された黄色い線とは比べるべくもないが、それでも、細い黄色い線が山を走ったのだ。マッシュは
「……ワシはなにも見なかった。そういう事じゃ」
現実逃避した。人間誰しも自分が可愛いのだ。
ついでに、彼の心の中を見ると……
(あんなところにいったら、死んじまう確率、100%じゃ!)
と、心の中で叫び続けた。
しかし、その異常自体に気づいた者たちがいた。
山の中に入ろうとしている者たちが沢山いることを……マッシュは知らない。
2人は睨み合う。
硬直状態は1分にも満たない。しかし、彼らの体内時計では、もう1時間にもなっているような感覚を受ける。
動いたのは、キタガワだった。
「トリャァ!」
ユウイチ目掛けて駆けてくる。
ユウイチも重心を落とす。
しっかりと相手の眼を見ている。
ユウイチは、突っ込んでくるキタガワ目掛けて、突きを入れた。
ユウイチの、クヌ!という掛け声と共に突き出した腕は速かった。
キタガワはそれを一瞬だけスピードを落とし、やり過ごす。
そして、また一瞬でトップスピードに戻す。
ユウイチは下から足を蹴り上げた。ここまではユウイチとキタガワの予想通り。
それを、キタガワは右に体をずらし、避ける。ここも2人の予想通り。
しかし、どちらかは、ここから読み違えた。
キタガワがそこで止まり攻撃を加えると予想していたが、キタガワは左足を支点に避けると同時に廻し蹴りを繰り出していた。
攻防一致……防御の動作と、攻撃の動作が直結していた。
キタガワはしてやったりという顔をしていた。
この蹴りの直後に、彼独特の拳法からなる衝撃を起こして、KO勝ち……
これがキタガワの予想。しかし、ユウイチは笑っていた。
同時刻
彼女は研究していた。
しかし、その研究も今は手を休めている。
先程からの山の悲鳴(ユウイチの雷撃)によるためだ。
(……どこのバカかしら?知りあいだとキタガワくんしか思い浮かばないけど……)
そう思っていた。
しかし、彼にそんな力はない。
確かに、人として、なんか間違った身体能力を持っていて、拳法で振動を起こせるけど、ここまで、ド派手なことは出来ないはずだ。
……彼女もキタガワと同類に近い身体能力を持っているが、それを無視している。
まぁ、人間以上と化物とでは、普通の人にとっては同じように見えるかもしれないが、本人にしてみれば、切実な問題でもある。ちなみに、人間以上は、この女である。
(……キタガワくん以上の化物がいるってこと?)
彼女は迷う。自分の好奇心を満たすために、危険を冒して近づくか、
それとも、このまま見て見ぬフリをするか……
(今ごろ、海軍も山に入ってきた頃かしら?……ここの海軍は普通じゃないから……)
彼女は考える。
だから、一瞬の間が空いた。
そして、彼女は立ち上がった。
「栞!!ちょっと、出かけるから!!」
自身の妹にそう伝え、彼女は出ていった。
彼の廻し蹴りは当たったはずだった。
確かに手応えは抜群だった。しかし、当たっていない。
木に当たったというオチはない。確実に本人に向かって廻し蹴りが飛んでいたのだ。
そして、ここが重要。
蹴りをユウイチは避けていないのだ。
しかし、当たっていない。
キタガワは当たっていない理由はわかっている。
しかし、認めたくない。魔法……いや、手品だ。
なにせ、その場にいきなり盾が現われたのだから。
キタガワはその場を離れた。
「な、なにをした!?アイザワ!?」
「……言っただろ?切り札だって」
不敵に笑って返した。
キタガワは迷った。離れて、また攻撃を再開するかを、一瞬、考えるかを……
それがハッキリとした隙になった。
彼はユウイチに間合いを詰める隙を与えた。
「遅いんだよ!」
ブンッ!
「なッ!!?」
キタガワは混乱する。
彼の手には、すでに剣が握られていた。
その剣の姿はまさに名剣だった。剣の形が、純粋に真っ直ぐだった。素晴らしい剣だ。
剣身が光を反射し、キラキラと光っている。
そして、ユウイチはその剣を片手に、キタガワに襲いかかる。
ブッ!ヒュンッ!
「クッ!」
その剣のスピードは恐ろしく速く、まさに熟練の剣士の姿だった。
流れるような連撃……それをユウイチは繰り返し、攻撃する。
キタガワは先程まで、ユウイチの素手での闘っていた時のスピードが眼に焼き付いているため、避けるのに苦労している。
いや、完璧に避けきれていない。
「グゥ!」
所々、浅く斬れている。
それだけでなく、電撃による痺れもある。
この剣自身が、電撃を帯びている。
「くそ!喰らえ!!」
意を決して、彼の懐に飛びこむ。
先程、ユウイチに当てた、……それをしかけた。
しかし、
ガキッ!
「ガッ!か、硬ぇ!!?」
またしても、キタガワの前に現れたのは盾だった。
「中途半端な攻撃はやめな。ムダな……!?」
ドウンッ!
しかし、衝撃がユウイチの体に響く。
「ヘッ!忘れたか?衝撃がオレの武器だ!!」
(ま、マジで忘れてた!!)
後廻し蹴り……話している最中にキタガワがしかけていた。
ユウイチはそれを、盾を作った。
(意味がねェだろ!!)
しかし、ユウイチは同じ失敗をしない。
ユウイチは盾を放した。
「なッ!!」
「盾を放しても衝撃がクルかな?」
答えはNOだ。
ユウイチは盾ごと、蹴り飛ばした。
キタガワは軽く吹き飛び、ユウイチは盾を手にする。
しかし、キタガワはこれを僅かだが、好機と見た。
(拳にしても、剣にしても、間合いは近くないと使えないはず……)
キタガワは
(なら!!をしかけたと同時に、飛び込む!!)
そう、考えた。
ユウイチの雷を放出する攻撃は空気が乾くため、至極、読みやすい。
しかし、読めるのと避けるのとでは話しが違う。それを気づいてないが、彼はそれをかわせてしまう。天然とは恐ろしい。
難なく、かわし、攻撃を加えることができる。それが、キタガワの予想。
しかし、予想を裏切った。
ヒュッ!
「どうした?体が反応してよかったな?反応しなければ、おまえの負けだった」
「………」
キタガワが先程までいた所に、槍が突かれていた。
キタガワは眼に見えぬ、槍の軌道を勘で避けたのだ。
毎日の修練の賜物だった。無意識で避けていたのだ。
キタガワは槍を手で払いながら、体を横にずらしていたのだ。
無意識でこれだけ動けるのだから素晴らしい。
ユウイチの謎はまだ増える。武器がまた一つ増えた。
中距離は確かに、剣より槍の方が優れている。しかし、槍がここにある理由が説明できない。キタガワは焦ったのか、飛び蹴りをしかける。
「喰らえ!!」
飛び蹴りをしかけるキタガワを待ち構えていたのはユウイチだ。
「甘いな!!」
ユウイチが持っていたのは槍ではなく、剣だった。
ブンッ!
ユウイチが横に剣を振るおうとするべく、振りかぶる。
しかし……キタガワは焦って、飛び蹴りをしかけたのではなかった。
「甘いのは……おまえだ!」
キタガワは木に捕まり、強引に方向転換した。
そう、ユウイチの隙を作り出すために、わざと飛び蹴りをしたのだ。
ユウイチの剣は当然、空振った。
「チィ!」
キタガワは着地し、ユウイチに向かい、一足飛びで近づく。
両手で左右の2連撃をしかける。
ユウイチも態勢を整え、剣で電撃を纏った縦一文字の一撃を放つ。
「!!」
「!!」
2人が交錯する。ユウイチの雷の光が明るい朝の光を、さらに眩しくを照らす。
結果は……
ドンッ!ドンッ!
2人共吹き飛んだ。
キタガワの方が速く当たった。しかし、ユウイチはそれを気にせず、剣を振るったのだった。意志の力だ。
結果的に、相打ちに持ちこんだのだ。
「ハァ!ハァ!」
「フゥ!フゥ!」
二人の息は荒い。二人とも、全力で30分以上闘っている。
加えて、二人とも攻撃を喰らいまくっている。
二人は吹っ飛んだ木の下で、まだ立とうとしていない。
打撃のダメージと、体力の消耗が激しい。
「あの鉄が……剣になったり、槍になるのか……」
ようやく、気づいた。
「ああ……そうだ。っていうんだ。電気で形状を自由に変えられる。武器の形ならなんにでもなる。特訓したからな。それに一定以上の電撃を纏わなければ、電撃も付加できる……これが俺の武器だ」
説明する必要がないところまで話してくれた。
「……そうか……でも、驚いたのはそこじゃない……拳でも剣でも槍でも……おまえは基本的な腕は全部均等だ」
「それは……中途半端ということか?」
「違う……全部……とんでもない強さと言うことだ」
今回で言えば、拳。拳の対決ではほぼ互角だった。
技の質の違いで多少、優劣が出たが、それでもほぼ互角だった。
ユウイチはそれだけではなく、剣でもそれと同等の強さを誇り、さらに槍術でも同等。
恐らく、他の武器でもそれは同じだということ。
つまり、ユウイチはこの世の武器を全て使いこなせる男だと言うことだ。
電気がどうということではなく、ユウイチ自身、すでに戦闘において弱点がないということだ。
はそのユウイチの特性を完璧に補助する。
まさに、究極の戦闘者……そう形容できる。
「……つえェ訳だ……」
「なんか言ったか?」
「いや………」
そう言って、キタガワは立ち上がった。
ユウイチも立ち上がる。
「どうだ?最後の勝負で……一技勝負といかないか?」
「……いいね。最強の技で勝負!!ってことか?」
「そういうことだ……これで決まる。決着だ」
キタガワは両の手を拳にし、振りかぶった。
ユウイチは剣だ。剣の形で最後の勝負に挑む。
『いく……!!』
二人の声が重なる。
その瞬間……
ヒュン!ヒュン!
二人の間に何かが投げこまれた。
ドカーーン!
その投げこまれたものは突如、大爆発を起こした。
煙が立ち昇る。
投げこんだ女高い所に立っていた。
「……スゴイわね……あの一瞬で二人とも木に飛び移るなんて」
女の目線は、木に飛び移った二人に向いていた。
その女は、白衣を着た女。後にユウイチは語る。あの髪型はメデューサだという女。
「て、てめェ!!誰「ミサカ!!死ぬかと思ったぞ」だ?」
キタガワの怒鳴り声だった。
「……知り合いか?」
「……ミサカ・カオリ……あれでも医者だ」
ユウイチは心の中で思った。
医者って……爆薬投げるのが仕事だっけ?
と。思ったのも束の間。
「あんたたち……逃げないと海軍がくるわよ」
「海軍が?なんで?」
ユウイチの問いに呆れたカオリが……
「バカなこと言ってないで、逃げるわよ」
「だから、なんで?」
「アイザワ……いいから、逃げるぞ。後で説明してやる」
二人に急かされ、逃げることになった。
数分後、海軍が到着した。
「大佐!!どうやら、逃げたようです」
「逃げただと!?クソッ!!今から捜しても意味がないな……後日、調査する!!それまで待機だ!!英気を養っておけ!!逃げたクソッタレ野郎どもは俺たちの手で始末する!!いいな!!」
『サー!!イエッサー!!』
その声は正義に溢れた声ではなく……
ただの人殺しの声に似ていたという
TO BE CONTINUED
この闘いで出てきた技の解説
使用者 ユウイチ
雷を纏ったキックを出す。
なお、似た技でがあるが、それは雷を纏ったパンチである。
使用者 ユウイチ
火拳のユウイチバージョン。
強力で、山の森林を吹き飛ばす。アースのせいで空気が乾く弱点あり。(バレる)
使用者 ユウイチ
全身から雷を放出する技。
命中率が悪いが、全体に行き渡るため、それなりに当たる。
アースのせいで、空気が乾くという弱点あり。(バレる)
使用者 ユウイチ
剣に雷を纏い攻撃する技。
剣の状態の基本技でもある。
龍牙 使用者 キタガワ
本来は、上と下から蹴りを出し挟む技(今回の、横と横の蹴りは挟む場合は裏・龍牙)
その後、衝撃を加え相手を倒す技である。
使用者 キタガワ
腹に正拳突きの攻撃を与え、そこから中心に両肩と両足の付け根を攻撃する技。
衝撃と衝撃が波紋のようにぶつかり合い、体の内部を破壊する。
双蓮華 使用者 キタガワ
跳びこみながら、左右のニ連撃を加える技。
他の技と同様に衝撃が後からくる。
道具解説
使用者 ユウイチ
希少価値が高い、黄色い鋼。滅多に取れない。
ユウイチの拳ほどある、は中々無く、相場で二億近い額になる。
特徴として、ダイヤと同じ位硬いが、電気で加工しやすい特徴がある。
後書き
第三者の横やりです。これで、一応の決着です。
まぁ、途中から出てた女の招待は分かりやすかったかと思います。
次回から、栞も登場の予定。
感想を待っています。
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