この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件・地名等とはいっさい関係ありません。

 

        第二話

 

 

 

<時空管理局・会議室>

 

「それでは、今日の事後会議はここまでとする。皆、ご苦労だった。各自体を休めておくように」

会議室の席の一番前に座る男の声で、部屋のなかの空気が緩む。緊張が解けたと言ってもいいだろう。

 

いまこの部屋では、ある次元犯罪についての事後会議が行われていた。

「闇の書事件」以降一年、大きな次元犯罪は起きていなかったのだが、今回のはかなりの規模に上った。

検挙された犯罪者や重要参考人の数もだが、活動していた組織の規模がかなりのものだったのだ。

それはいくつもの小さな組織が徒党を組み、活動していた複合型の組織だった。

だが、優秀な管理局のメンバー達のおかげでさしたる被害も起きず、事前に食い止めることに成功した。

 

大きな会議室の席からは何人もの人が立ち上がり、解散をはじめている。

その人々のなかに、周りの人々と比べると小さな少女がいた。明るい栗色の髪をリボンで二つに結っている。

年のころは十歳前後。普通に考えると場違いな気もするが、少女の着ている服は管理局員の制服。

そう、彼女はこうみえて立派な管理局員なのだ。そして、今回の犯罪事件の功労者の一人でもある。

名を、高町なのは、という。

 

「高町、ご苦労様」

 

会議の解散の声を掛けた男が少女に声を掛ける。

 

「あ、疲れ様です、ハワード隊長」

「今回の事件、本当に助かったよ。ありがとう」

「いえ、そんな…。私だけじゃないですよー」

 

照れたような表情を見せるなのは。それを見たハワードは軽快に笑った。

 

「はっはっはっは! 謙遜するな。君の活躍は皆が認めているのだ。それに、君には指揮官としての才能もあると思うのだがね」

「いえ、そんな…。私なんか、まだまだです。それに、指揮とかの経験は全然無いですし…」

「たしかに、君は指揮官よりも前線に立つほうが似合いそうだな」

 

にかっと笑いながら言うハワード。それを見てなのは「あはは…」と少し乾いた笑いを返す。

 

「それに、君は戦技教導隊の教導間を目指してるんだろ。だったらもっと自信を持ちたまえ」

「あ、あのー、それは…」

 

なのはには夢がある。それは「戦技教導隊の教導官」。

最高の戦闘技術を身につけ、その技術を局員達に教え導く、管理局の中でも最高峰に位置するものだ。

それを目指し、なのはは武装隊の仕官として管理局の仕事を勤めている。

さきはまだまだ長いだろうが、必ず実現するつもりでいる。

そして自分の技術を、魔法を、新人の魔導士たちに教えていきたい。

 

「おっと、もう行かなきゃな。まだ私にはやることが残っているのでね。それじゃあ」

 

ハワードの声にはっと我に返るなのは。

どうやらしばらくの間、ぼーっとしてしまったようだ。

 

「は、はい! お疲れ様でした!」

 

ザっとなのはは、ハワードに管理局員として敬礼をする。

それを見たハワードも敬礼で返し、「じゃあ」っと踵を返し去っていった。

ハワードを見送ったなのはは、ふうっと息を吐く。

もう会議室には人はまばらにしか見えない。

ままり時間は経っていない気がしたが、どうやらそれなりに時間は経っていたようだ。

急がなきゃいけない。

この後、中央広場でフェイトやはやてと一緒に会う約束をしていたのだ。

 

フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウン。八神はやて。

 

ふたりともなのはとは親友同士で同じ魔導士である。

フェイトとは、「ジュエルシード事件」の際に、はやてとは「闇の書事件」の際にと、それぞれ魔法関連の事件で知り合い、友達となったのだ。

現在はなのはを含めた三人は管理局の局員として、日々訓練や事件に出動している。

だが同じ職場の仕事で一緒となることはそうそう無く、こうして休みの時間に落ち合うことにしているのだ。

 

《マスター、そろそろ行かなければ遅れてしまうのではないでしょうか?》

 

不意に、なのはの胸元から声が聞こえる。だが、なのはには普通のことだ。

声の発信者は、なのはの胸元に輝く宝石。いや、宝石ではなくデバイスとよばれるものだ。

名前は「レイジング・ハート」

なのはがジュエルシード事件に巻き込まれたときからずっと一緒にいるパートナーだ。

 

「あー、本当だ! 急がなきゃ!」

 

レイジング・ハートの声に、あたふたしながらなのはは部屋を出て行った。

 

 

 

 

 <???>

 

「いいか? ちゃんと手筈どおりにな」

「分かってるって。そう言わないでよ。大丈夫、けが人は出さないようにするから」

 

アズマの言葉におどけたように千歳がそう返事する。

 

「でも…、もし、そうしなくちゃいけない状況に陥っちゃったら、その時は・・・」

 

目を細めながらアズマのほうを見つめる千歳。

 

「そうならないよう、何回もシミュレーションしただろう?・・・・・・まあ、所詮あれはシミュレーションだしな・・・。本当にやばくなったら、しょうがない…」

 

ため息交じりでアズマが言う。

できればそんな状況にはなりたくはない。だがほぼ無理だろう。なにしろ自分達はこれから、管理局の遺失物管理部の保管庫から「ジュエルシード」を奪おうとしているのだから、邪魔が入らないほうがおかしい。

それに、ものごとが全てシミュレーションどおりにいくことはまずない。シミュレーションはあくまで目安だ。

 

「ま、折角こんな状況になったのだから、おまえが張り切るのはなんとなく分かるが・・・」

 

実は、アズマは千歳にあんなことを言ってはいたが、心の奥ではこの状況を楽しんでいる自分がいることに気づいている。

もともと面白いことに率先して突っ込んでいたアズマには、今回のことはまたとない「面白いこと」だ。

千歳の前ではその感情を押し殺していたのだが。

 

「あら、あんたも楽しんでるんじゃないの? この状況?」

 

その言葉にアズマは千歳のほうへ「なぜそれを?」という顔を向けてしまった。

 

「あ、その反応は正解?」

 

手を口元に当てながら微笑む千歳。

どうやら、鎌をかけられてしまったようだ。

 

「ああ、そうだよ。楽しんでるよ・・・」

 

開き直ってしまった。だが、その言葉を聞いた千歳の表情はなんだか嬉しそうだ。

 

「なんだ? 軽蔑するんじゃないのか?」

「違う違う。なんか、ようやく本音を言ってくれたかなーって感じてね。それに、私と同じってことも分かったし」

 

軽蔑するのではなく、同じだといった。

つまり彼女も自分と同じように「面白い事」が好きということだ。

たしかにそれらしい動向を見せてはいたが・・・。

 

「ま、これ以上問答していたってしょうがないじゃない? 早く行動しましょ」

 

アズマは一瞬いぶかしむ様な顔を千歳に向けたが、「ふっ」と小さく笑う。

 

「・・・そうだな、始めるか」

 

そのとき、アズマの顔には「面白い事」に挑むときの笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

<時空管理局・中央公開広場>

 

 

なのははあの後すぐにこの広場へやってきて、フェイトとはやてと合流した。

少し遅刻してしまったのではとなのはは思っていたが、どうやらフェイトもはやても会議が長引いて、来たのはなのはとほぼ同じくらいだったそうだ。

 

それからはずっととりとめもない話を続けていた。

今回の事件のこと、入局してからのそれぞれの一年間のこと、果ては学校生活のことまで、幅広いお題で盛り上がった。

最近は、管理局の仕事が忙しく、こうしてそろって話すことはあまりなかった。

いや、学校などではあるのだが、局勤めの間ではなかった。

 

そうして、楽しい時間が過ぎていくと3人とも思っていたのだが、それは唐突に終わりえを告げる。

 

 

「な、なに!?」

 

なのはもフェイトもはやてもあたりを見回す。

広場全体、いや管理局全体に非常事態を知らせる警報が鳴り響いている。

何人かの局員が慌しく動いているのが広場からも見えた。

 

「ぼーっとしとっちゃあかんて! なのはちゃん、フェイトちゃん。あたしらも早う行かな!」

 

はやての言葉になのはとフェイトは見詰め合ってうなづく。

 

「うん、行こ、フェイトちゃん!」

「うん、なのは!」

「あ、でもあたしは今車椅子やから、二人は先に行って。あたしは後から皆と行くから」

 

はやての言う「皆」とは、はやての家族でありはやてが主である“闇の書”もとい“夜天の書”の“守護騎士プログラム”とよばれる守護騎士4人、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、のことである。

 

「分かったよ。はやてちゃん、また後でね」

 

そうして、はやては本局の中へ戻っていった。途中局員の一人が車椅子を動かすはやてに声をかけるが、はやては遠慮する素振りをみせて、ひとりで戻っていった。

 

 

「よし、なのは、私達も・・・」

 

フェイトがなのはに話しかけようとしたそのとき、空中に一つのモニターが浮かび上がった。

 

『なのはちゃん! フェイトちゃん! はやてちゃん!』

 

そう呼びかけてきた画面上の人物、それはエイミィだった。

エイミィは艦船アースラで通信主任をしている少女で、なのはやフェイト、はやてとずいぶん付き合いが長い。

 

『あれ、はやてちゃんは? 三人一緒にいると思ったんだけど・・・』

「はやてちゃんなら、さっき局の中のほうへ戻っていきました」

 

なのはが説明する。

 

『そう、なら先に二人に言っておくね。今何が起こってるか・・・』

 

それはなのはもフェイトも知りたかったところだ。

 

「一体なにが起こってるんですか?」

 

フェイトが緊張した面持ちで聞く。もちろんそれはなのはもおなじなのだが。

 

『二人とも、落ち着いて聞いてね。実は、局の遺失物管理部の保管庫から“ロストロギア”が強奪されちゃったの。今、保安部と情報部が合同で調査してるんだけど』

 

「そ、そんな・・・」

 

エイミィの言葉に、なのはもフェイトも驚きを隠せない。

管理局の遺失物管理部はロストロギア専門の部署だ。

ロストロギアは、ほとんどのものが危険度の高い代物で、使用を誤れば世界が一つ吹き飛んでしまうことだってある。

そのため、管理は厳重かつ厳密に行われる。

特に保管庫には多重のセキュリティが設けられている。

入るためにはいくつもの許可、もしくは提督クラスの認証が必要なのだ。

その場所へ侵入することだけでも難しいのに、盗み出した。

それを行った者、もしくは者達は只者ではないだろう。

 

「そ、それで、いったいどんなロストロギアが強奪されたんですか?」

 

先に声を発せたのはフェイトだった。

だがモニター越しエイミィは、すこし表情を暗くする。

それほど危ないものなのだろうか。

なのはとフェイトは顔を見合わせる。

やや間があって、エイミィは口を開いた。

 

『・・・落ち着いて聞いてね、二人とも。強奪されたのは・・・“ジュエルシード”なんだ・・・』

「・・・!」

 

フェイトの表情が強張るのをなのはは見逃さなかった。

“ジュエルシード”。

まだなのはが管理局に入る前に起こった事件“プレシア・テスタロッサ事件”の際に挙がったものだ。

なのははこの事件の際、フェイトと“ジュエルシード”を巡ってぶつかり合ったのだ。

そのときのフェイトは、プレシアの命令で“ジュエルシード”を集めていた。

最終的にはプレシアに、用なしと見捨てられ、見も心もボロボロになってしまった。

なのはや周りの人々のおかげで立ち直れたのだがそれでも尚、フェイトにとって“ジュエルシード”は忌むべきものでもあるのだ。

 

 

『犯人は黒いコートで身を包んだ二人組み。保管庫のモニターに写っていたから、間違いないよ。でもね・・・』

 

エイミィの言葉になのはもフェイトも顔を上げる。だが、エイミィの言葉には多少困惑の色がみえる。

 

『センサーに引っかからないの。今も広域探査でサーチしてるんだけど、どこからも反応が無いの。そんなに遠くへいけるはず無いんだけど・・・』

 

――なんだけおかしな犯人達だ。

なのははそう思った。

保管庫に気づかれないように侵入できるほどの実力の持ち主なのに、内部カメラには姿が捉えられる。

姿は捉えられたのに、今現在はセンサーに反応無し。

どう考えてもおかしい。

特殊な魔法でも使っているのだろうか。

だがここは仮にも管理局の中だ。

いくら耐探査魔法を使用しようとも、局内部ではすぐに発見できるはずだ。

 

「エイミィ、私達はこっちで行動していいんだね?」

 

フェイトがたずねる。

 

『うん、犯人達はまだ遠くへ行ってないはずだから、ふたりで周囲を捜索して。こっちでも引き続き捜索するから。なにか分かったらまた連絡・・・』

 

 

ドガーーーーン!!

 

 

突然背後から響いてきた爆音に、三人とも振り返る。

局の入り口の一部から黒煙が立ち上っている。

このタイミングで爆発が起こるなど、犯人以外には無いだろう。

局員達の怒号や悲鳴があたりに響いている。

もくもくと立ち上る煙の元からは火の手が見える。

 

『二人とも!!』

「「はい!!」」

 

エイミィの言わんとすることは二人にはすぐに分かった。

 

「レイジングート!!」

Ok,my master

「バルディッシュ!!」

Yes sir.

 

なのはとフェイトの呼びかけに、ふたりのそれぞれの相棒であるデバイスが強く答える。

一瞬で魔導士の防護服と呼ばれる“バリアジャケット”に身を包む。

なのはは白を基調とした、フェイトは黒を基調としたものだ。

デバイスを構え、爆心地へと飛翔していこうとする。

すると、その黒煙の中から、二つのなにかが煙の尾を引きながら飛び出してきた。

遠めだがはっきり分かる。黒いコート身にまとっているのが。

 

「なのは! あの二人!」

「うん、たぶんそうだと思う」

《この状況から考えて犯人である可能性が高いですね》

《追ったほうがよろしかと思われます》

 

フェイトの言葉に、なのはとレイジングハート、バルディッシュも返答する。

 

運がよかったのか悪かったのか、それは分からないが、とにかく犯人達と接触できる。

 

―――話を聞かせてもらおう。なんでこんな事をしたのか

なのははそう思い、犯人であろう二人をフェイトと共に追っていった。

 

 

 

 

「いくらなんでもありゃねえだろ・・・」

「しょうがないでしょ!? 確実に逃げるためには目くらましと、長時間の足止めは必要よ。あれならしばらくは負ってこれないって」

 

はあ、と低空飛翔しながらアズマはため息をつく。

ここまで事を大きくするつもりはもともと無かったのだが、如何せん、優秀な局員がいたためやむ終えないことはアズマにも分かっている。

 

―――死人が出ていなきゃいいんだが。

 

そう考えたアズマは心の中で自分の考えを嘲笑する。

行動と考えが矛盾しているからだ。

心の中では、この状況を楽しんでいる。それで他人の、ましてや「敵」の心配をするなどお門違いもいいところだ。

 

「アズマ! なにか追ってきてるよ!」

 

千歳の言葉に後方を振り返る。

たしかに白と黒の何かが負ってきているのが見える。まあ、管理局員なのだろうが。

あの炎と煙を潜ってきたのだろうか?

いや、ほかの場所からの増援がはやく到着したのだろう。

ここまで早いのは予想外だった。ずいぶんと目を誤魔化せたと思ったのだが・・・。

 

―――本当に優秀なやつらが多いな。まあ、その分・・・

 

「で、どうするの? このまま逃げ切れるとは思えないよ。あの二つってか二人? 大きな力を感じるよ」

「仕方が無い。いったん二手に分かれよう。お前が足止めしてくれ。その間に、俺がアジトから“長距離ゲート”を開く。扉が開いたらすぐさま飛び込め」

 

相手が一人なら撃退なり撃墜なり出来ただろうが、今追ってきている相手が二人となるとそれは厳しい。

アズマにはそれが感じられる。ほとんど直感なのだが、こういうときのアズマの勘は外れたことが無い。

 

「分かったわ。・・・ちゃんと迎えの扉開いてよ。あの二つ相手にどこまで持つかわかんないから」

「分かってる、信用しろ」

 

千歳は頷きで答えると、追跡者達を迎え撃つために反転していった。

目だけで千歳を見送ったアズマは、そのままアジトまで一直線に飛んでいった。

その背後では、天まで立ち上るかと思うほどの巨大な火柱が大地から生まれていた。

 

 

 

 

 

 

なのはとフェイトは突然目の前に発生した炎に足を止めていた。

突き抜けようとしたのだが、炎は近づくとまるで生き物のようにそれを拒み、纏わりつこうとしてくる。

しまいには、なのは達の周囲を完全に取り囲んでしまった。

目測で直径約50メートルとちょっとぐらいのサークルを描くかのように炎は吹き上がっている。

 

 

「な、なんなのこれ〜!?」

《ミッド式ともベルカ式とも違います。魔力反応はありますが・・・詳細が分かりません》

 

さすがのレイジングハートもこの現象が分からないようだ。

フェイトのほうへ目を向けてみる。

むこうもこの壁を抜けることが出来ず、四苦八苦しているようだ。

 

「なのは」

 

フェイトがこちらへ飛んで地面に着地する。なのはもそれに続き、フェイトの横に降り立つ。

 

「フェイトちゃん、なんなのこの炎の壁?」

「分からない・・・。でもこっちの足止めが目的なのは間違いないね。応援を呼ぶにも、通信妨害もかけられてるみたいでエイミィ達にも繋がらない」

 

どうにかしなくては。

このままでは犯人達が逃げてしまう。

いづれ追撃の魔導士達が来るだろうがそのときにはもう遅い。犯人達はいずこかへ消えてしまってるはずだ。

局のセンサーすら通り越すほどの実力の持ち主だ。見失えば追跡は難しいだろう。

 

『ふふふ、まんまと足止めが出来て、私嬉しいな』

 

突然、どこからか声が響いてきた。軽い口調で高い声。おそらく女性だろう。念話ではない。この空間全体に響いている。

と、目の前の炎の壁の一部から、黒いコートを纏った人物が現れた。

頭にも黒いフードをかぶり、顔は判別できない。

だが、この人が犯人の一人なのだろう。

 

「時空管理局、執務間補佐、フェイト・T・ハラオウンです」

「同じく時空管理局、武装隊士官候補生、高町なのは」

 

ふたりが名乗るのを、コートの人物は静かにたたずんで聴いている。

 

「あなたには、ロストロギア“ジュエルシード”強奪の容疑がかけられています。今すぐ投稿して“ジュエルシード”渡してください。そうすれば弁明の余地があなた達にはあります」

 

フェイトが相手に向かってそう問いかける。

だが相手からの反応はなにもない。

なのはがもう一声かけようと口を開こうとした。

 

「弁明の余地・・・ねえ」

 

不意に相手が口を開いた。先ほど聞こえた声と同じ軽い口調で高い声。

 

「そんなものわたし達にあるの? アレだけのことをしでかしたわたし達に? 管理局からロストロギアを強奪したわたし達に? こうして“犯罪”犯してるわたしたちに?」

 

まるで攻めるかのような口調で淡々と喋ってくる。心を揺さぶるような喋り方だ。

そ、それは、とフェイトが言葉に詰まる。

 

「話を聞かせてください!」

 

なのはが声を上げた。

 

「なぜこんなことをしたのか、訳を聞かせてください。そうすれば・・・」

「ぷっ、あははははは!」

 

突然相手が笑い出し、なのはは口をつむぐ。

なにがおかしいのだろうか?

 

「はあー、君達面白いね。普通、犯罪者に現場で理由を聞く? でもいいよ、面白いってのは。人生の中で大事なことの一つだよ。その面白さに免じて、顔と名前ぐらいは教えてあげようかな?」

 

フードに手を伸ばし、バサっとそれをとる。

中から出てきた顔はやはり女性、エイミィと変わらないぐらいの少女だった。

口元は微笑を携えていて、瞳は強い意思を感じさせる黒い瞳。髪の毛は全体的にぼさっとしているが、それでなんとなく纏まって見える。色は黒。

 

「あなたが・・・?」

 

「そう、ロストロギア強奪の犯人の一人“高村 千歳”よ。でも残念ねー。わたし持ってないんだー、ロストロギア。全部もう一人に預けちゃったから。・・・信じるか信じないかは君達しだいだけど」

 

フェイトのつぶやきに千歳は淡々と、だがこちらを混乱させるようなことを話してくる。

だが、なのはにはそれよりも気になることがあった。

彼女の名前だ。

 

“高村 千歳”

 

明らかに日本人のような名前だ。ミッドチルダにも似たような発音の人は少なからずいるが、ここまで日本人っぽい名前の人はいなかった。

だからなのはは尋ねずにはいられなかった。

 

「あなた、地球人・・・日本人なんですか?」

 

「さあ、どうだろうね? それは自分達で考えたら?」

 

またこちらを煽るような、ちゃかすようなことを口にする。

そこにフェイトが強く割り込んできた。

 

「なのは、これ以上足止めされたら、手遅れになるよ!」

 

確かにそうだ。これ以上足止めを食らえば、本当に手遅れになってしまう。

なのははレイジングハートを千歳となのった少女に向けた。

フェイトもバルディッシュを構えている。

 

「これ以上足止めするなら。そこを力づくでどいてもらいます」

 

フェイトが強く言い放った。

だが、

 

「残念だけど、これ以上は行かせないわよ。絶対にね!!」

 

千歳の腕の周りに炎が収束し、大きくなっていく。

収束魔方かと、なのはとフェイトは身構えた。

だが違った。炎はそのまま腕の周りを旋回している。

そして炎が晴れると同時に千歳がバッと腕を振り払う。

 

「え、な、なに?」

「・・・武器・・・だね」

 

その両腕には、まるで太陽を模したような形のチャクラムが握られていた。

 

「さ、始めようか? そう簡単に倒れないでね?」

 

天まで燃え盛る巨大な炎を背に、千歳は口に微笑を携えながらそう口にし、チャクラムをなのはたちに向けて突き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第二話 完

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

はい、というわけで第二話投稿できました。

微妙なところで終わった感じもしますが、これ以上やると終わらなくなってしまいそうで、一応ここまでと。

 

話の展開がめちゃくちゃで速い感じもしますが、それはところどころが即席で考えたものだからです(本音)

もともと文章力は皆無に等しい僕が、僕なりに一生懸命小説という形になるように考えたのです(汗)

今は一生懸命いろんな小説やらなんやらを読んで勉強しながら執筆しているので。

 

分からないところがありましたら、掲示板なり、感想版なりで叩いてください。出来る限りお答えしようと思います。

でもあまりに細かいところは答えられないかも・・・すいません・・・。

 

さて次回は、もう展開から分かるように初戦闘シーンが出ます。

僕に書けるかどうか、すごく不安な部分が多大にありますが、なんとかやってみます。

 

なのはとフェイト、はやてとエイミィは登場させました。

そのうちにはやても戦闘に出しますし、守護騎士の皆さんや、クロノやリンディも出します。

・・・すごく後になるかもしれませんが・・・。

 

 

それでは、次回にまたお会いしましょう。

 

最後に。ここまで読んでくれた方々、本当にありがとうございます!!

 

 

 

 

 

 




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