無駄なコントを目の前でおこなわれつつ、ついに始まってしまった取調べ…

はたして俺はちゃんと帰れるのだろうか……不安だ……







時空を駆けちまった少年



第3話








目の前で繰り広げられてたコントも終わり、やっと取り調べが始められた。

今目の前には金髪の外人のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンさんと、ここの部隊長で関西弁の八神はやてさんがいる。



関西弁って異世界にあったんだ……ツンデレといいどうなってんだよ。

取り調べなんて初めて受けるから結構緊張してたけど、さっきのコントのおかげでほとんどなくなってしまった。

もしかしてそれを狙ってしていたのだろうか?





「じゃあまずは…」

「スバルの胸とティアナのおしりの感触はどうやった?触ったんやろ?」





訂正、さっきのはこの人の地だ。

ものすごく嬉しそうに身を乗り出してまで聞こうとしてくる。

正直一瞬すぎて覚えてねえよ。

しかもハラオウンさんはものすごく疲れてます的な顔をして頭を片手で軽く抑えている。





「はやては無視して……とりあえず出身世界の名前を教えてくれるかな?」

「出身世界の名前といわれてもここじゃどう言われてるのか分かんないですけど」

「もしかして管理外世界からかな? 住んでる場所の地名を教えてくれる?」



「…無視ですか…ウチは無視ですか…」



なんやら八神さんが座った机にのの字を書いたままいじけている。

声をかけて欲しい的オラーが出ているが、逆にハラオウンさんからは無視しろ的なオーラを出ている。



……無視を続けた方がいいな…



「一応、国でいえば日本ですけど」



「「えっ!?」」



「な、なんっすか!?どうかしたんですか!?」



日本て言ったら2人して驚いていた。

八神さんもいじけてたはずなのに普通にもどって驚きの顔をしている。



そこまで驚かれるって……なんかまずいことでもあるのか?



「い、いやな。名前の響きから日本人っぽいな、思たんやけど……」

「まさか私たちの世界の人だったなんて」



「マジっすか!?」



マジかよ。異世界に行ってた人なんていたんだ。

正直俺が初かと思ってたのに……ちょっと残念だな。

けど同じ世界の人がいるなら



「じゃあすぐ帰ることってできるんですんね? よかった〜」



そう言って安心したが、今度は何かまずいことでもあったのか2人は苦い顔になった。



「い、いやなそれが……」  

「ええっーーー!」 

「まだ何もいうてへんやろーー!!」



冗談で驚いたらどこからか取り出したハリセンでツッコミをいれられてしまった。



「が、がはっ い、いいツッコミ……間違いなく俺の世界の関西人だ……」



きれいに俺の脳天にハリセンの一撃が入りきれいな音が部屋に響いた。

こんなツッコミをするのだから間違いなく日本の関西人だ。



するどいツッコミにボケ……なかなかにハイレベルな芸人だこの人。

デビューすれば結構売れるんじゃないのか?





「ま、真面目にしてくれないかな?」

「「ごめんなさい」」



真面目にやらないから困った様子で注意をハラオウンさんがしてきた。

つい八神さんと2人して座ったまま速攻で、しかも同じタイミングで頭を下げて謝ってしまった。

正直その困った顔も美人だから効く奴には効くんだろうな……



「とりあえず帰るにしても事件中に現れたから事件の関連性を調べたり、帰る手続きとか申請で結構かかちゃうんだよ。だからすぐにはちょっと……」

「どんくらいかかりそうなんですか?」

「ん〜2、3週間くらいかな」

「長っ! 学校の出席日数どーしよ!?」



頭を抱えてしまう。



一応毎日遅刻とかなしで学校行ってるけどさすがにそんだけ学校を休むと不安だ……

留年はさすがにないと思うけど内申が一気に下がってしまう…受験の年にそれは痛いな。

何より3年間の皆勤賞が無くなる。





「大丈夫だよそういうのはこっちでうまくやれるから」

「ど、どうやって?」

「「聞きたい?」」

「け、結構です」



2人揃って裏がありますよって感じの笑顔で聞いてきたためビビってしまった。

汚い大人の世界の匂いがしてきてしまった……正直ビビるぜ。

しかも想像ができない。

きっとそういう部署があってそこの黒服サングラスがなんかするんだろ。俺は知らなくていいことだ。そう信じよう。

ちょっぴり怖くなった俺はこのことは聞かなかったことにして話を変えた。





「そうなると俺はその間どこにいればいいんですか?」

「ん〜地上本部に連絡して保護、ってしたいとこやけどうちの部隊は新設したばっかやであんまそれはしたくないんや。

 ほんで六課で保護みたいな形にしよか思っとるんやけど……どないやろ?」





なにやら苦虫を噛んだように八神さんは苦笑いで答えた。

はっきりいって仕事の上下関係は知らないけれどなんとなく掴めた。

ここはできたばかりの部署だから嫌われていて、その地上本部とかいう相当上の部署にいきなり迷惑をかけて睨まれたくないってとこだろ。





「じゃあ、それでお願いします」

「ん、了解や」



とりあえず寝泊まりできるところは確保できた。

ここにすら泊まれなかったら公園とかで段ボールで生活決定だったかもしれないし、この世界の金なんか持ってない。

……この歳でホームレスまで経験はしたくない。



「それじゃあどうしてあんなところに来たのか教えてもらえる?」



うげぇ!

ついに聞かれちまった。

いやだ……正直話したくない……

恥ずかしすぎる。

生きていたのはいいけどいくらなんでもあの理由はねえよ。けど言わんと話が進まんか……

とほほ……



「……実は俺自身が知りたいんですよ」

「とりあえず分ることでええから」



あ〜〜……もう言わねえとだめな空気だなこれ。



「……わかりました。とりあえず俺は学校も部活も終わっていつもどおり自転車で帰ってた途中だったんですが……」

「それで?」



俺はつい苦い顔でためてしまった。

ハラオウンさんは「そんな何か大変なことでも起きたのか?」的な心配そうな顔で追及をしてきた。

そんな目で見ないで言いづらくなるから。



「……いきなりクマがあらわれてダッシュで逃げてたらカーブを曲がり切れずに崖にぶっ飛んぢまったんです。そんで気づいたらあそこに……」



「「「…………………………………」」」



そんなにたいして広くない部屋に沈黙がつづく。

……痛い。

この沈黙の空気が俺には痛い。



「ぶひゃひゃひゃひゃっ!? ごほ、っごほ あは、あはははーーー」



あんまりにも間抜けな話に腹に手を当てて爆笑の八神さん。

しまいにはむせてまで笑い続ける。

ああ、あんたならそういう反応しそうだなと思ってたさ。

こんちきしょう!

ハラオウンさんも笑いを堪えているよ。口に手を当てて目線を俺から逸らしてぷるぷる震えてる。



「ちょ、笑うなよ! マジ恐かったんだぞ!? しかもそいつ喋ったんだぞ!」



「「…………………………………」」



この一言で笑うのをやめて神妙な顔になる2人……

しまった!!これは言わん方がよかった!!俺の頭の中がおかしいって思われる!! 



「フェイトちゃん、救急車1台呼んで。ほんで精神科に運んだって」

「うん、あっ、もしもし119番ですか?」

「ちょっとまてぇぇぇ!」



いきなり精神病患者にされてたまるか! 俺は普通だ! ノーマルだ!

ハラオウンさんが携帯取り出して電話かけてるよ。

マジでやめろ!



「まあ今のは冗談やけどほんまに大丈夫? クマは喋らへんよ?」

「えっ!? 今の冗談だったの!? 救急車呼んじゃったよ!?」

「「はあっ!?」」



ほんとに呼んだらしいハラオウンさんだった。

どうしようどうしよう言いながらあたふたしている

こんな人がよく警察?になれたな…… ってそんなこと考えてる場合じゃない。



「ちょっ、取り消して、取り消して! 俺精神病じゃないから!」

「ハァー、ほんまフェイトちゃん、オッチョコチョイやな〜」

「もしもし?さっきのやっぱりなかったことに……」



とりあえずもう一度119番にかけて謝っている。そして怒られているハラオウンさん。

「いい歳こいてイタズラ電話すんな」とかいう大きな声がこっちにまで聞こえてるよ。

あっ…そのまま愚痴聞かされてる。



もう勘弁してって顔でそのまま電話で聞いてるハラオウンさんだった。

……けど119の受付の人仕事しろよ。長電話してないで。





〜10分後〜





「ううう……」

「あははっ……げ、元気だしてな……」



結局次の通報のあった10分後に電話での愚痴はおわった。

一方的に怒られ愚痴られたため、眼尻にちょっと涙をためて軽く凹んでいるハラオウンさんだった。

そしてそれを励ます八神さんだったが……

八神さん、そもそも原因はあんたです。





「もう! 変なこというケイが悪いんだよ!」

「俺のせい!? つーかホントに喋ったんだぜ!?」

「クマが喋るわけないでしょ! 幻聴聴いてないでよ!!」



なんで俺に逆切れ!? そりゃ確かにこの会話の発端は俺だろうけど119は八神さんが言いだしたんでしょうが!

それにちょっとそうなのかなって思ってたキツイことをツッコムな!



「まあまあ、多分テンパリ過ぎたんやろ。その辺にしとこ?」



それには賛成だがあんたが言うことに納得がいかんぞ。

とりあえず話はそのまま進んだ。

俺はこの世界のこと、次元世界同士の関係、ロストロギアに魔法やデバイスについて、そして此処六課での簡単な仕事の役割。

俺が最初にきたときみたダンゴについての説明をしてもらった。

さすがに機密事項にまで行きそうなことまでは聞けなかったがこの世界の一般人が知っているらしい常識までなら聞かせてもらえた。

そして落ちてきた理由のことについての質問となった。



「多分次空の穴に落ちたんやろな」

「次空の穴?」



なんじゃその某ネコ型ロボットがタイムスリップしてた時に事故った原因にありそうな単語は。



「うん、次元世界がたくさんあるのはもうわかったよね? その次元世界にたまに不安定になったりすると穴が空いたりするんだよ」

「で、そこに俺は落ちたと……」

「まあ、かなりアホな理由やけどな」

「そこ! 蒸し返すな! 俺だって恥ずかしいんだ!」



もう完全にタメ口になっちゃてるけどいいやもう。この人腹立つな、馬鹿にしおって!



「ま、まあそのおかげで助かったんだから」

「……! うわっ」



そう言われて時空の穴に落ちないで崖に落ちてミンチになった自分を想像して顔から血の気が引いてしまう。

同時に凹んだ。

かなりグロい……生きてて良かった…



「しかし穴に落ちるだけでもすごい確率なのにクマに追っかけられ、さらにガジェットの真後ろに落ちるなんてほんま凄いわ。世界初やな」

「そんな世界初なりたくない……」



八神さんの追い打ちにさらに凹んでしまう。

どうせならもっと凄いことで世界初になりたかった。

まあたしかにすごい確率だけどさ……



「とりあえずこれで取り調べは終了だね。部屋はあとで連絡するね」

「あっ、よろしくお願いします」



はあ…やっと終わったか。



「お疲れさん。もう晩になったし食堂でご飯でも食べてきねん。……それにしても、もう完全に馴染んどるなぁ。タメ口にもなっとるし」

「あっ、……すんません。興奮してタメ口になって」



そう言われると最初にあった緊張感は結構消えていた。タメ口まで結局途中から使ってしまっていた。



「いや、ええよ いつも敬語の人ばっかやから」

「でも一応目上には普段は敬語じゃないとダメだよ」

「了解しました」



まあ一応それが礼儀だもんな。

上下関係がないからって年上にいつまでも使うわけにはいかんか。

とりあえずこうして取り調べが終わり俺たち3人は部屋から出た。



「じゃあ飯食いに食堂いかしてもらいますけど……金がないんです」



この世界に来たとき俺の持ち物は消えていた。鞄の中の教科書は学校の机だし部活の道具も部室に置きっ放しだからよかった。

今あるのは日本円が2千円とちょっとの小銭があるだけ。

……どう飯を食えと?



「食堂はタダだから大丈夫だよ」

「よっしゃ! 待ってろ! 俺の晩飯!」



俺はタダ飯とわかった瞬間駆けだしていた。待っていろ!

今腹いっぱい食いに行ってやるからな!





     

                      

つづく

 



〜おまけ〜



「そういえば食堂の場所知ってたのかな?」

「いや、普通に知らんやろな。教えとらんし」

「いいの?」

「ええやろ。そっちのほうがおもろいやん。……いや〜、ケイ君か〜……いい暇つぶしの対象ができそうやわ♪」

(……ご愁傷様)







   あとがき



関西のみなさま一方的な勘違い台詞をいれてしまい申し訳ないです

こっちも基本HTML化を変えてみたのと誤字を修正したものとなりました。









作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。