「ゼスト……お前達と同じ……犯罪者だ」



なんで旦那がここに……











時空を駆けちまった少年



第27話












「ゼスト……まさか首都防衛隊のストライカー魔導師……馬鹿な!? 相当前に死んだはず……」





旦那の名前を聞いて驚く敵。

死んだはずって……だけどここにこうして生きてる……足もしっかりあるし。





「貴様には関係ない」

「な、嘗めるな!」





敵は一気に魔力を解放し、その余波のような風と埃が舞う。

魔力でけえ!

俺より多いぞこれ!



解放した敵はそのまま上空に飛翔する。

杖に魔法陣とバレルを展開、砲撃魔法の体勢に移る。



ディバインバスターよりでけえ!! 嘘だろ!?





「Sクラス魔導師だろうが関係ない! 今の俺は魔力値が以前の数倍にブーストされてるんだ! 死」





「……すまんな。付き合う義理はない」

「……ね?」





上空に上がって砲撃撃とうとしてた奴に一瞬で詰め寄ってそのまま腹に槍の刺突……

初速が速すぎる……

多分AAAランクまで魔力上がってた敵が数秒で……

マジかよ……



「むん!」





そのまま槍を引き抜く。

死んだ敵はそのまま地面に落下。完全に絶命していた。

落下により頭蓋骨が割れ、内臓も傷口からやや出ている。

焦点の合っていない目が俺の方を見ていた。



うっ……



つい手で口を押さえてしまう。

人の死を直接見るのは初めてだ……くそ……俺の生きる障害になるなら殺すとかのたまってたのにこれかよ……

これが……死……





「大丈夫か?」

「少し……吐き気が……」





動物や魚を狩るのとは違う……今まで同じだと思ってた……

生きるために狩りをしたりもした。

普通の生活の頃でもスーパーでバラされた肉も魚も食ってた。

マグロの解体ショーだって普通に見てきた。

だけど人の死は違う……



そう思うのは人間のエゴだと思ってたけどやっぱり全然違う……





「……殺しを見るのは初めてか」

「ええ……」



はっ!? だけど今はショックを受けてる場合じゃねえ!

ウェンディは!?





「はあ……はあ……」

「大丈夫か!? しっかりしろ!」

「うぇっへっへ……まだちゃんと生きてるっスよ……」





息も意識もある……だけど顔色が悪すぎる。

すぐに医者に見せねえと……







「やっと入れたーーー! 誰だよ結界張ってた……ウェンディ!? どうした!?」





結界解けたのか!

セインも入って来れたってことはそういうことだな。

だったら今すぐセインにウェンディを運んでもらわねえと。





「セイン! 今すぐスカのとこにウェンディを!」

「わ、わかったけど……なんでこんなことに」

「全部俺のせいだ! だけど今は説明の暇ねえ! 頼む! 大至急!」



セインの肩を掴み必至の形相で頼む。



「わ、わかった! だけどお前まで運ぶとスピードが……置いてくとドクターに怒られるし」

「逃げねえよ! だから!」



「……行け。俺がこいつを見てる」

「ゼスト様が見ててくれるんなら……よっしゃ! 行くぞウェンディ」





そのままISは発動してアジトに急行していった。

その場に俺と旦那だけが残される。





「……ついてこい」



背を向け歩き出す旦那。



「えっ? でもここで待たないと……」

「結界がなくなったことで局員が来る。さっきまでの結界はサーチされていなかったから来なかったのだ」

「……うっす」



その背中に重い体を動かして小走りでついて行くのだった。













地下に下りて下水道を1時間ほど歩いている。

マンホールから下水道に入るときにヘリが見えた。

多分六課のヘリだろう。

他にも十近くの飛行魔法を使う魔導師が見えた。こっちは航空魔導師部隊だったと思う。



……合流したかった気もしたけど……それをしようとしてあんな出来事になったんだ。

考えるな。







「出るぞ」





そう言われ梯子を上りマンホールから外に出る。

ここも廃棄都市区画かな……廃墟が多い。

だけど少し先の方に森も見える。

廃棄都市の端っこのほうのかな……





「もういいだろう……ここなら追手も来ない……武ノ内」

「は、はい」

「何があったのか言え」

「……はい」





何故か旦那には話さないでおこうという気になれなかった。

さっきの状況は俺の勝手な保身が招いた結果だったけど仕方ないって言い訳をしたかったのかもしれない。

それ以前にこんなことになってまだ誰にも愚痴を言っていなかった。

同情されたかったのかもしれない。

本当に情けない。





「……それで……六課に連絡して……盗聴でもされたんだと思うんですけど……ああなって……」

「……そうか。歯を食いしばれ」





っーー!?

話を終えると右の拳が思いっきり顔面に叩きこまれた。

その勢いでこける。





「……立て」





襟元を掴み俺を起こす。

そのまま逆側の頬に拳を入れられる。





「なっ……」

「この大馬鹿者が!」

「ひっ……」





「お前はナンバーズの1人が瀕死のときどうだった」

「どうだったって……」

「心配だったのか? どうなのだ? お前が言う敵なのだぞ?」





それは……そうだけど……だけど……ウェンディは俺のことをそこまで嫌ってないように感じた。

俺の周囲でそう思ってくれるやつは俺は嫌いたくないと思ってる。

俺を何らかの形で認める、好いてくれる奴を周りにどう言われてようが、関係なしで大切に付き合っていきたいと思う……

逆に認めてくれない、嫌ってくるやつ、害を出す奴には無関心でいるって決めた……





「……それでも……あいつは俺を好いてくれてたと思うから……心配で」

「その好いてくれてる相手を殺そうとしたのはお前だ」





っ――――。





「お前自身にその意識がなかったにせよ、結果がそうなった。お前の軽率な行動のせいでな」



それは……



「お前の行動は無計画な上に運に頼っている。詰めに対する考えも甘い」

「だけど今まで……」

「今まで何だ。俺が来なければどうなっていた。今までの話を聞いた限りお前自身だけで最後まで解決できていたのか?」



それも……



「結局は周りに迷惑をかける行動しか起こしていない。

行動を起こすにしても時期を見計らう力がない。ただ目の前に現れた障害をその場しのぎでなんとかしているだけだ」



だ、だけど……





「……だよ……」

「何だ?」

「そんなの無理だっつってんだよ!!」



半分泣きながら俺は旦那に叫ぶ。



「まだ15の子供で世間を知らないで、そんな状況なのに異世界でこんな状況になって助けてくれる場所にも行けなくて、

それどころか自分の命の危機みたいな場所にしかいられない! そこからなんとか自力でどうにかしようとしてもこんなことになって!」



「甘えたことを抜かすな!!」



怒りの形相をさらに強くして怒鳴られる。





「甘えてなんかいねえ!」



「ならばルーテシアはどうなる!」





ルーテシア?



「あの子は物心つく前に母親と共に管理局の実験素体とされ普通の子供のように感情を表すこともできず、

俺のいる犯罪者の世界でしか生きていけない!」





そ……そんなときから……





「目的のために殺しの場にもあの歳で出なければならない。それでもあの娘は自分の母親に会うために進んでいる!」





なっ……あいつの目的って……





「15で子供? ふざけるな! お前の世界での価値観で物を言うな! ここはお前の世界ではない!」



……じゃあどうしろっていうんだよ……

地球の常識で育って、20かそこらまでは親に世話してもらって勉強とかして仕事に就いて恩返しするっていうのが

なんとなく昔から感じてた俺の未来図だった……

なんとなく普通でつまんないなって……

マンガみたいなことが起きてここにいて……それでこうなって……

それを望んでもいたりしたけどもっと色々うまくいってって思って……





「お前はこれからどうしたいのだ。自分のすべきこと、為さねばならんことは何だ」

「……………」





沈黙しかできない……







『やあ、騎士ゼスト。』

「……なんだ」





スカか……通信パネル開いてくるってどうした……





『いやね。私の大切な娘を救ってくれてありがとう、と礼を言おうと思ってね』





ニヤニヤといつもの悪役ヅラな顔で言う。

……本心丸見えだな。

俺の人生もここまでか。





「……そうか。では用は済んだな。切るぞ」

『はっはっは。まあそんな焦らなくてもいいじゃないか。いくつかそっちの少年に言いたいことと聞きたいことがあってね』





……やっぱりな。





『まずウェンディだが無事だよ。傷は深かったが今はポッドに入って容体も落ち着いている』





そうか……まあ、無事でよかった。

原因は俺だけど……

聞きたいことってのも何となくわかる。





『さて……聞きたいことと言うのはね……なぜあんな場所で改造魔導師と交戦していたのかということだよ』





……改造? そういや、やたら魔力高かったな……バリアジャケットの強度も高かったし……

普通の魔導師じゃないのはわかったけど……

そういやそれっぽい会話があったような……





『死体を解剖したいところだったがそれもできないようでね……回収しようにもその死体がどこかに自動転送されてしまってね……

 私の技術部分のようなものもいくつか見られたのだが……』





知るかよ……つうか俺が管理局呼ぼうとしたからああなったって思ってたんじゃないのか?





「知らねえよ……」

『そうかい……それじゃあ次の質問だけれども……私はあれは管理局の回し者だと思うんだが……なぜああも君たちの合流場所に現れたのかな?』





ああ……やっぱバレてたか。





「それは」

「街中をあれだけ堂々と歩いていたのだ。裏の者に見つかっても不思議はない」

『だが君とルーテシアもそうだろう? それに人手不足の管理局に裏といっても実行部隊事態は数が少ない。

それなのにたった1人の標的を見つけてその目的地もわかったと?」



「ああ、そうだ。偶然そうなったのだろう。目的地も会話を盗み聞きでもして偶然知ったのだろう」





だ、旦那……





『つまり君は偶然ケイクンは見つかって、偶然目的地も知られたのだろうと言うのかい?』

「ああ、そうだ」

『……ふう……まあいいだろう。この話はウーノしか知らないしね。クアットロあたりは気づいてるだろうけど』





……なんとなくチンクやセインに知られなかったことにホッとした俺が情けない。

結局他人に嫌われたくないって自分勝手な俺がいる。





『これで変な行動をしたらどうなるかわかっただろうしね……私としては少々残念だけれどね。かわいい娘が街に出られなくなるのだから』



「お前のことなどは知らん。いい加減切るぞ」

『おっと待ってくれたまえ。セインがもうすぐそちらに向かう。ケイクンを迎えにね』





……会わせる顔がねえな……それに……気づいてそうな気もする……





「その必要はない。武ノ内はこちらで預かる」

「えっ……?」

『それは無理な話だよ。彼は一応同盟者だからね』



「はっきりと実験動物だと言ったらどうだ? 俺もルーテシアもそうしか思っていないのだろう?」



『ひどいね。私はそう思ったことはないよ。これでも生命というものを重く感じているのだよ?』





……だったら生命操作技術の研究なんてするなよ……





「それ以前にこいつにはルーテシアとの約束がある。そちらを守ってもらう」

『それは知らなかった。…………うむ……そうだね……かわいいルーテシアに免じて君に預けよう。だがルーテシアと共に検査には来てもらおう』

「いいだろう。では切るぞ」



『ああ、それでは御機嫌よう。ルーテシアによろしく伝えてくれたまえ』



その一言を残して通信パネルは閉じられた。

俺はさっきの会話の流れについていけずに呆然としかできなかった。





「……旦那……さっきのって……」

「スカリエッティの件は忘れろ。それよりお前はこれからどう行動する気だ」



……わからねえ……頭の中ごちゃごちゃで……

というより答えなんか出ねえよ……ここですぐ出るようならとっくに出てるよ……





「……わからないっす」

「……だろうな」





わかっていたとその目を閉じ静かに、深く息をする旦那。





「ここから先はお前の考えた行動ですべてが変わる。お前は被害者だったが今はもう当事者の1人になっている」



…………



「その行動の結果の先に何があるかは誰もわからない。思惑通りいくか、予想外の助けが出るか、

それともそのまま思惑が外れ死ぬか。それ以外の可能性もある」



今までは……本当に運良く助けが来た……



「どのような道があるのか、選択した道が正しいのか、自分で見極め、そして進め」

「……旦那は……選択したんですか?」

「俺は死人だ……生前のことで知らねばならない真実と、為すべきことをするだけだ」



……旦那は選択したのか……死んだ後でも……

……あれ? 死んだ? でも生きてるし……



足を見る。

……ある。

顔を見る

……少し青いけど正常だよな……





「なんだ?」



……今ってどう考えても聞くタイミングじゃねえよな……

今度にしよう。





「いえ、何でも……」





しかしこれからどうするか、か……





「……………………………」





空を仰ぎ見る。

……いい天気ってわけじゃねえな……

はあ……マジでわっかんねえ……





「旦那……」

「なんだ」

「……まだ全然答え出そうにないっす。……だから……しばらくついて行っていいですか?」

「……好きにしろ」





そう言って旦那は森の方に向かって歩き出す。





「あざーす!」



その背中に一礼をして、その背中についてくことにした俺だった。









***************************************







「よろしいのですか? どう考えてもあの少年が何かしたと思うのですが?」

「どの道いつかはそういう行動すると思っていたよ」





まあ……もう少し後で起こすかと思ってましたけどぉ。

お馬鹿な実験素体ですわん。

自分の身の危険を感じての行動なのはいいですけど失敗しますし〜。





「ゼストに預けるのは少々残念だが……まあ定期的には調査もできるからよしとするさ」





ドクターも心が広いですわねん。

私だったら戻してすぐに解剖してあのクソ餓鬼をバッラバッラのミンチにして豚の餌にでもしてやりますのにん。

実験とかそんなの別にどうでもいいですから〜。





「それにルーテシア、アギトといる方が彼は下手な行動はできなくもなる。どうやら子供に甘いみたいだしね」

「手綱……といったところですか」





別段手綱を締めるほどの存在じゃありませんよ。

ただのその辺の餓鬼と同じ、1人じゃ結局なんにもできない駄目な奴。

正直あの希少性の高いコアさえなかったらここに現れた時点で殺してますし〜



……あ〜、あのときのこと思い出すと腸が煮え繰りかえる……





「他の姉妹には? 彼が何かしたのではと疑っていますが」

「……クアットロ……そこにいるのだろう? 君はどう思うんだい?」





あらん? 姿消してたのに気づいていらっしゃいましたの。





「そうですね〜 チンクちゃん達以下の姉妹じゃそのこと知ったら顔に出てあの餓鬼を避けるんじゃありません?」





戦闘面に関しては問題ないとは思いますけど、あの甘っちょろい性格はねえん。





「手綱とかは別にして逃がしたくない素体なら、あの子たちにそういう態度とらせないようにした方がいいと思いますわん」





周りのご機嫌を窺うような部分があの餓鬼にはあるみたいですし。

あーいうタイプはこっちが構わないと離れてってどうでもよくなってくタイプなのよねん。

だったら気を許してるチンクちゃんとかセインちゃんが仲良くしてる方がこっちから離れづらくなるし、手綱も強力になりますわん。





「そうだね……ではクアットロ。他の子たちにうまく言っておいてくれるかい?」

「了解しました〜」





まっ、あの子たちには適当に理由付けときゃ信じるでしょ。









ウェンディちゃんの入ってるポッドにみんないるわねん。





「は〜い、みんな集合〜」

「……んだよ。何でウェンディがこうなったかわかったのかよ?」





あらん、意外と勘が良かったりするのかしらん。





「まさかケイが管理局にリークでもしたのか?」

「それが〜ドクターの付けておいた発信機でも、盗聴器でも特にそれらしい証拠ないのよん。だから〜何かしらの形でああなったしか予想できないのん」





ドクターの言うことって言えば大抵この子たち信じるから便利なのよねん。

まっ、管理局潰すって理由がドクターに作られたからって理由だからそんなものでしょうけど。





「そうか……」





あんな嘘でホッとするなんて……お馬鹿ねん。





「それならいいけど……あっ、そういえば食糧」

「セインに取りに行かせたらいいのではないか?」





あ〜あ、ディエチちゃんも……人間臭い部分出てきちゃって……





「そんなの信じろってえのかよ」

「ノーヴェ?」





あらん、さっきから意外にもノーヴェちゃんが鋭いわね。

まあ信じろってのがおかしいんですけどぉ〜





「そんなこと言ったって事実証拠がないんですし〜」

「じゃあ偶然でこうなったってのか」





ありえないでしょうね〜





「う〜ん、それ以外の可能性だってあるんですから〜、そんな怒られても私も困ります〜」

「ちっ……」





はあ、お馬鹿の相手は疲れますわん。

まあ私の理想像のドゥーエお姉さまみたいになるためにも姉妹は大事にしないとねん。





「ノーヴェ落ち着け。偶然でないにしろクアットロのいうことも一理ある」

「だけどよ……」

「それにあいつが証拠も上手く残さないでリークできるような器用な奴に見える?」

「……見えねえけど」





あら? 変なとこで説得力ある言葉が出たわねん。

というかこの子達、証拠とか云々より、そっちで納得してるんじゃないかしら?

まあいいわん。

とりあえずうまく丸めこめたし良しとしときましょ。











********************************************















森に入って少し進むと湖があった。

うわぁ……綺麗な水だな……

ん? なんか魚を焼く匂いが……





「今戻った」



「あっ、旦那おかえり〜……あっ」

「……おかえり……ケイ久しぶり」





アギトとルーテシア……なんかすっげえ久しぶりに見た。





「ケイーーー! てめーーー!」

「危なっ!?」





いきなり火の玉飛ばすなよ!?





「てめえ! よくもアタシ以外にデバイス作ったな! 焼き入れてやる!」

「作ったけどもう持ってねえよ!? それにさっきので焼かれたら死ぬぞ!?」





ひでえ出迎えだな!?





「ケイ……久し振り」

「おお、しばらく振りだな、ルーテシア」





相変わらずっだなこいつは……

相当ハードな人生をこんな子供が物心つく前から……か……





「? どうかした?」

「いや、なんでもないよ」





手をその頭に置いて撫でる。

……ごめんな。俺より辛い人生あるいてるのに、さっきみたいな俺だけが被害者だ、みたいな独りよがりしてて……





「そう……」

「ったく……無事でよかったぜ」





無事でよかった?





「アギトとルーテシアがさっきの結界を見つけたのだ。表の方は元々結界を張るポイントが決まっていたからうまく誤魔化されたのだろう」

「アタシも行こうと思ったんだけど……旦那にストップかけられた」





ルーテシアを1人にするのは心配だったんだろうな。

多分……旦那のすべきことってのにこいつが入ってるんだろ……





「そっか……ありがとな」





つくづく……俺は1人じゃ何もできないんだなって思わされるな……

修行もしたけど……成果が全然出てないし……





「うん……前に助けてもらったお礼……」

「……でっけえお礼を貰ったよ」





前……結局死にかけた俺に治癒魔法かけてくれてチャラかなっと思ったけど。

結構義理深いやつだ。

俺より相当歳下なのにな。





「まあいいや。それより旦那、はい晩飯」





ああ、さっき焼いてた魚は晩飯だったのか。

……俺も腹減った。

俺の分はねえな……数的に





「? どこ行くんだよ?」

「魚採ってくる」

「竿ならそこにって……持ってかねえのかよ」

「ああ、いらん。いらん」





靴を脱いでズボンの裾を上げて、湖に静かに足の膝まで浸かる。



……いた。

気を静めろ……まだだ……もう少し待て……手が届く範囲に来るまで……



来た!!





「しっ!」



1匹ゲット! 次!



「しっ! しっ!」





空いてた片手でもう1匹捕まえて、口で最初の1匹加えて、また空いた手で捕まえた。

3匹まずゲット。

結構でかいし……これでいいか。





「アギト、これ焼いてくれるか?」

「……お前……器用なことできるな……」



「ああ、これか……まあできるようになるのに苦労した」





食糧集めで釣り竿使えなかったから……覚えるの必死だった……

よくできるようになったと思うよ。



無明を抜いてそのまま内臓を取り除く。

ついでに午前の買い物で入手した塩をかける。



あっ……そういや買い物した食材どうしよ……収納空間の中で腐る……



ちょんちょんと背中を突かれる。

ん?





「うっす」

「……うおおおお!?」



なんでセインが!?





「食糧貰いに来たよ〜 ディエチがとって来いってうるさくてさ〜」



ああ、成程……ってウェンディの件で……





「ウェンディも無事だったよ。いや〜焦った、焦った。ん? どしたの?」

「えっ、だって……」



「ああ、ウェンディの怪我のこと気にしてんの? 運が悪かったよねー。いきなりケイを攫おうとしてたやつに襲われるなんて」



へっ?



「うん。うん。だけどまあ2人とも生きてるしいいじゃん。むしろワタシはウェンディ守ってくれたことに感謝してるからさ」





もしかして……





「なあ……なんで襲われたんだ?」

「知らないよ。あれじゃないの? 前攫われてたし、それで顔割れてて見つかったとかじゃないの?」





……本当のこと知らないでいる!?

……き……気まずいけど……今本当のこと話すの得策じゃねえよな……

真実を知るのはウーノさんとクアットロだけか……





「最初はなんか変な行動起こして失敗したからなったのかと思ったけど……ドクターが盗聴記録とか発信機とか調べて、

特にそういうのなかったって言ってたから、それしかないかな〜って」





……そこだけうまくいったんだな。

とりあえず助かった……





「んじゃあ食糧貰ったし行くなー」

「気いつけてな」





馬鹿でかいリュックでかついで去って行った。

……いつかちゃんと本当のこと言わないとな……今は……せこいだろうけど内緒でいよう。





「お前便利なの持ってるなー」

「まあこれはマジで便利だぞ。食料は冷蔵庫みたいに保存はできんけど」



「……荷物持ち決定」

「ああ、そうだな」





いつの間にか変なポジショニングになってるし……

まあいいけど。

一緒に行動させてもらうんだ。それくらいしねえと。









夕食後、空が暗くなると旦那は調べ物があるということでまた出かけた。

ルーテシアは少し眠くなってるようだ。

まあ……10歳じゃこの時間はな。





「寝るか?」

「うん……」





そう言って木の根元に寝転がる。

……待てそのまま寝る気か。





「ちょっと待ってろ」

「何するんだ?」

「テント張るからその中で寝ろ。風邪ひく」





え〜っと……テントは……あった。あった。

色々買い込んだからな……

もはやドラえ○んと化してきたな俺。

あんなすげえ道具はねえけど。





「ほれできた。寝袋は俺使うからお前はその布団で寝ろ」

「……布団まで入ってるのかよ……」

「どこでも寝れるようにって買った」





あっ、呆れた目で見てくる。





「……おやすみ」





そのまますぐに布団に入って寝息を立て始める。

ぷっ……戦場に出てても子供なんだなマジで。

前に会った時は無口で子供っぽくないと思ったけど全然そんなことねえ。





「おい、どこに行くんだよ」

「テントの外で寝るだけだよ」

「ふ〜ん」









テントから少し離れて森の中に入る。

よし……



そのまま無明を取り出し抜く。



今日……結局あの魔導師を倒せなかった……

ジジイは現段階でできることは教えたと言った。

つまりそれを実践できるだけの力は俺にはまだないってことだ……



どんなことだって反復練習をしないとできない……

地となるものがねえのにできるわけがねえんだ……



ただの馬鹿力でも、スピードだけがあってもダメだ。

今日の戦闘で身に染みた……面倒だけどやらねえと死ぬ……それにルーテシアとも行動する上で足手まといは御免だ。

あんな子供を危機に晒したらそれこそ俺は駄目野郎だ。





ゆっくりと……流れるように……刀を振る。

重心の移動……関節を使っての振り抜き……そこから徐々に振りの速さを上げる。





思い出せ……言われたことを……それを実行できてるかどうかを試す方法がなくても……





「……なーにしてやがる」





声がした方を見るとアギトが腕組んで浮いてた。





「寝たんじゃねえのか?」

「外見たらいねえから来たんだよ」





そっか。





「何でこんな時間に振ってるんだ」

「今日……俺は完全に死んでた。このままじゃ」



「次襲われたら死ぬってか?」

「……そうなりたくねえし、お前やルーテシアにまで迷惑かけたくねえ」

「もう掛かってるけどな」



うぐっ……





「別にお前1人じゃねえさ。アタシだって戦える。それに……ユニゾンすりゃお前はもっと強くなる」

「ユニゾンて……お前……」





こんなに醜態晒しまくって迷惑掛けてるのにまだそんなこと言ってくれるのか……?





「んだよ。そのハトが豆鉄砲喰らったような顔……」

「いや……まだユニゾンしてくれるんだな……って」





なんか……ジ〜ンと来た……





「はあ? 前にお前がロードになるって約束だろうが。

それにルールーとも探し物手伝うって約束しただろうが。だったらお前も戦えねえでどうすんだよ」



アギト……





「一度約束したんだ。それくらいぜってー守れよ。それすらできねえならアタシはお前を見捨てるからな」

「……わかった。マジで……ありがと……」

「おいおい……泣くなよ……」





泣いてねえよ……目がちょっと滲むだけだっての……





「ったく……それより、これから魔法の練習すっぞ。ユニゾンしてだ」

「ばれねえのか?」

「お前の頭の中でシュミレーション訓練するんだよ。そうすりゃ感知できる程の魔力でねえし」





実際の体のトレーニングはその前と……あとは朝のあのアホな基礎トレで十分過ぎるな……

……近接訓練もできるかな。





「わかった。頼む」

「任せな。それじゃあ……行くぞ!」

「おう!」 





「「ユニゾン……イン!!」」















つづく







おまけ





  シュミレーション





「敵が飛んだ! 飛行魔法!」

「飛べねえよ!?」

「アタシがサポートするってば!」



「バ、バランス感覚が掴めん!? うおっ!? 落ちる!!」

「ま、待て待て!? つうかそこからか!?」

「そこからって何だよ!?」

「才能る奴だったら一発で飛ぶぞ」

「才能ねえよ……どうせ」



「とりあえず……シュミレーションじゃなくてリアルで浮遊だけでも練習すっぞ……」

「……おう」







   おまけ2





「おはよう……」

「おう……」

「ね……眠い……」





ジリリリリリリリイ!!



「げっ!? こんな時間!?」

「あっ?なに……『起きろオオオオ! 走り込みじゃああああ!』



「うわあああああ!!」

「『はーーーっはっはっは!!』」



「「……………」」



(ケイ……うるさい)

(あ〜……夜の練習とかはある程度密度濃く、短時間でやったほうがいいな……あれじゃ体持たねえわ)





「『次は組手!』」

「どりゃあああ!」

「『いちいち叫ぶな! 素早く無駄なく打ちこめ!』」



「ぎゃああああ!!」



「「あっ……飛んだ」」







   あとがき





ナンバーズとの生活で書いて行くつもりでしたがやはり話的展開で無理が生じて断念……

けどルーテシア一向との行動でまだちょいちょい書けるかも。

そしてドンドン原作のストーリーをややこしくしていく主人公。

まあこんな展開になってもそんな奴を見捨てない原作キャラの心の広さに感服しつつ書いてます。

現実だったらとっくに捨てられてますよこいつ……

戦闘でも修行の成果は未だパッとしないです。つうか実戦はほとんどしてないのに発揮できるとか……多分ないだろうなーと思いつつ書いてます。

そろそろちゃんと成果を出さないといけないんですけどね。いい加減死にます。

それではまた次回もよろしくお願いします。





   Web拍手返信





※ケイってまだ自由に鬼の力を扱えないのですか?



>27話で自分の意志で発動しています。だけど一瞬くらいしか出してません。

>コントロールできる範囲はまだ狭いですね。





※ナチュラルボーンジャージマンなケイ君に乾杯ですw 

アギトとユニゾンしたときのスカさんご一行のリアクションに期待w



>そのうちネタにして話に書く予定ですw

>短かったりしたら掲示板にかな?



※なんだ…このドクター一味は…なんか六課にいた時よりほのぼのになってる気がします。

しかし師匠、なんつーもんを残していったんだw



>無茶苦茶な周りに慣れてきました(ギャグ的)w 

>でもシリアスな展開の無茶苦茶はまったく慣れてないので必死です。



※ケイってまだリミッターついたままなんですかねぇ?  



>リミッターはもう外してます。というかジジイに外されました。修行SSを書くときにそこら辺も書くつもりです。



※緋炎って、ツバサの小狼の刀じゃん、ケイと年齢大差なしだけど、格の差はダンチなのでケイには勿体無いぞ絶対



そんなすごい武器だった!? 確かに勿体ない!

あれ……でも黒刀ってのも十分勿体ない気が……ダメだこの主人公……



※色んな意味で不幸な武之内ケイ君に幸あれ!!というか彼に春を!!



ケイ「ありがとう……ホントにそう言うこと言ってくれてありがとう……」

ファリン「が、がんばってください!」

ケイ「はい! がんばります!」





※数の子との共同生活ある意味すごいっすね、というか物体Xつよっ!それとケイにぴったりな武器を

 つ童子斬丸(ゲッター線100% つ神殺しのチェーンソー



ウェンディ「そこまでスゴイんスか?」

ケイ「自分のこと解剖するかもしれないとこにいるんだぞ」

ウェンディ「あ〜、それは嫌っスね」

ケイ「つうかチェンソーって……むしろ俺扱い失敗して自分の足斬りそうでこええ……事故でとかよくある話だし」

ウェンディ「それ言ったら刀もじゃん」

ケイ「あっ……」





※面白かったです。続き期待しています。がんばって下さい!!



>あざーす! しばらくギャグまた書けませんが話の中でナンバーズと仲良くなれたら書くかもです。



※スカさんもマッドサイエンティストな所を除けば父親ですねえ。ところでルーテシア御一行は?



>今回登場ですw これからはしばらくメインで出るかもw



※ケイサンヘ ライトセイバーはフォースの導きを受けた者以外が使うと自分の身体を傷つけて死ぬのが落ち



ケイ「ライトセイバーでブラスター跳ね返すよりラケットの方が打ちやすい」

ティアナ「……そのガットごと貫通させてやるわよ」

ケイ「ガット切れたらアウトだな……」





※ケイさんへ 新撰組って、新しい時代の中での日本の為に頑張ってた人達を惨殺した旧体制の狗じゃないの?



>う〜ん……あの時代は色んな思想が混じってましたが共通してたのは日本を列強諸国の植民地にさせないことだったと思います。

>その中で明治政府側か幕府側を立てるかで別れてしまった結果でそうなったと思います。

>そんな時代でしっかりとした意志で元農民の侍であった近藤、土方はあんな大組織を立て、日本のために戦ったと自分は考えているので

>明治政府側も幕府側も尊敬しています。



※新キャラ(?)MISOSIRUですが、トーレにライバル視されてますねw と言うか私見なのですが、、ケイより強そうに見えるのは幻ですかw?

もしそうならば、かなり『痛い』ですね……



>ぶっちゃけケイの理想の素手での戦闘図を行うのがMISOSIRUだったりw

>つまり『痛い』お話になります。でも後悔はないです。



※最後のMISOSIRUの部分、ギャグ単体としては面白かったですけど、唐突で脈絡も無さ過ぎなのがちょっと…



>唐突に感じたでしょうね……でもギャグはギャグで自分自身楽しく書きたくてああなってしまいました。



※ドクターは自分の欲望にまっすぐな人なだけで命を尊重してる所もあるし極悪人ってわけじゃないからなケイは意外とうまくやってけると思うな。



>うまくいくのはこれから先ですね。最初の状況が実験する側される側ですから。

>それなりに時間かけていきます。











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