なんというか……2ヶ月前の時点で常識はずれな生活をしていたけれど、犯罪者のアジトに来てさらに悪化したような……
まあ何だかんだでここに落ちてきて数日経った。
……ずっと地下かどこか知らんが真っ暗な所にいるから気が滅入る。
寝るのには最適なんだがな。
時空を駆けちまった少年
第26話
基礎トレが終り、シャワーを浴びて飯を食ってからまた寝た。
学校も関係ないし、特にすることがない。
じゃあ寝るしかない。
スカはこの前のスキャンしたコアをまだ見ていて実験もねえし。
なんとなく牢獄の天井を見る。
暗い場所な上に岩肌のような天井だ。コウモリとかいても不思議……ではあるか。
人の手がかかってる感じはなんとなくするから。
しかしここ最近ドタバタしたり修羅場だったり……現在進行形でピンチだし。
……なんてかな……まあセインやウェンディの俺の評価はまあ知らんが悪くはないっぽい。
だけど問題はその他だな。
呼ばれ方は実験素体。もしくは完全無視。後者として特に上げられるのがノーヴェ……だったか。
まあこっちも話すことないから特に話しかけない。
けどこう……空気同様扱いとか、そーいう視点で見られてるのはやだよな……
てかなんでこんなことになったんだっけ……
……
…………
………………
……………………
…………………………
………………………………
「!? ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
そーっだった! ここに来たらもう人質で六課行けないとか思ってたけど、普通に海鳴のアリサさんとすずかさんとの約束あったんだった!
六課に連絡とらねえと俺はよくてもあの2人にだってまた被害でるかもしれないんだった!
つうか俺が生きてるかどうかも心配してるだろうし……
やっぱなんとかしねえと駄目だな……
けどうまくいったとしても犯罪者のとこにいましたって言うとどうなるだろ……
ああ……なんでこの前外出れたときに思い出さなかった……
逃げるチャンスあったじゃないか……アホなくらい。
ウェンディはほとんどお出掛けでしか考えてなかったし……
……よし。次の食糧調達時までに考えよう。
マジで真剣に考えよう……
「それじゃあ行って来るっス〜」
「行ってくるな」
数日後、早速チャンスが来た。
食料もそうだが、料理道具で足りないものがあるとかでディエチがスカに相談。
任務外で外によく出ていたウェンディがまた買いに行くことになった。
荷物持ちは前も俺だったしという理由を託けてついていけるようになった。
セインに以前同様送られ、ウェンディと街に向かいながら数日間考えたこと、わかったことを振り返る。
手を組んだとはいえ俺は実験体扱いでもある。
俺自身今の立ち位置というのがよくわからない。
実験体として身が保証される理由となった、以前飲み込んだレリック。
検査もしていく過程でわかったことはある。
まず自然に大腸を通って出ることはないようだ。
レントゲンのような内臓器官や骨を写すものでは確認もできなかった。
詳しいことは聞いたけど俺じゃ理解しきれなかった。
結果だけをいうと、俺の肉体が物理的にどうにかなっても爆発などは起きないらしい。
レリックはエネルギー結晶体であるが、適正ある人間に埋め込むことでそれを力にできるとかなんとか……
ただ俺の場合その兆候は見られない。
まあ……そこは様子見だとかいわれた。
つまり現時点では俺の中にはレリックがある。だけどそれで拒絶反応は出ていない。しかし得られるはずの力も得られてない。
……パワーアップしろよ俺……
拒絶反応起きて死ぬのも嫌だったけどさ。
「さー、お買いものっス〜。ふっふふ〜ん」
「ノリノリだな」
「シャバはいいもんっスからね〜」
「そこはそう思う」
レリックのことはある程度わかったし、俺のスキルもある程度はうまく行ってるから拒絶が出ないんだと思う。
血については俺はスカに話さなかった。
スキルのこともだ。
多分変わったコアがなんか作用して血とかがどうこうなってるのかも。とジジイが言ってたと嘘をついた。
だから俺のスキルが体細胞変化を起こすっていうのは知られてない。
現時点でわかってることを嘘で固めた。
これなら実験というより、観察、検査の時間が稼げるはずだ。
多分だけど俺のスキル、血、そのことを全部わかったら解剖される。
されないようにと思ってナンバーズと仲良く……などとも考えたけどやっぱ無理だ。
ウェンディもセインとも仲良くはやれてるが、他のが無理だ。どうなのか微妙な奴もいるが不安の方がでかい。
最終的にやっぱり六課に行くのがいいのかもしれない、という考えに至った。
レリック爆発っていう心配も消えたし……
六課の人たちに管理局の裏のこともやっぱり話す。
ただし保護はしてもらわない。話すだけ話して俺は身を隠す。
六課のみんなには公での調査、俺のことの公表とかさせなければ、裏のことを知ってるとバレないだろう。
そして六課からクロノさん、リンディさん、カリムさんとか偉い人に話してもらって、陰で調査して発覚っていう形にしてもらえればいい。
スカのとこに居て、管理局潰すとかいうの待つか、協力よりそっちほうがいいと思う。
そのためにも絶対に今回の計画を成功させないと……
「何ムズかしい顔してるっスか? 似合わねえっスよ」
「……別に」
こいつを裏切る形……になるんだよな。
罪悪感もあるけど……けどこいつもそのうち犯罪するんだ……いや、もうしてるのかもしれない……
それに俺が止めることもできない……
「なあ……」
「ん〜? 何スか?」
「こーしてっとさ。お前ってホント普通の人間だよな」
「そりゃ〜そーっしょ。それにアタシは美少女っスしね〜」
……それは関係ないと思うぞ。
「……普通に暮らせばいいんじゃねえの? 誰も気づかねえぞ」
「あー、そりゃ無理っス。アタシらは戦うために生み出されたし、それ以外の生き方わからねえっス」
……ただ楽しくってのは無理なのか?
「上のお姉……クア姉やウーノ姉は完全にドクターの考えに賛同してるし、アタシやセインも生みの親のドクターの言うこと聞くだけっス。まー、多少の我儘は言うっスけどね〜」
……やっぱり確認してみても俺のできることはない。
止めることもできない。
「なんでいきなりそんなこと聞くんスか?」
「いや、あんまりにも普通にしてるから」
「ふ〜ん……アタシはそうは思わないっスけどね」
十分普通にやっていけてるって。
……裏切ることの罪滅ぼしになるかはわからないけど……もし俺の考えがうまく行ったらこいつらも被害者だって言えば刑が軽くなるかな……
解剖もありそう……だと思うけど六課の普通じゃないやつは普通に生活してるし……公にこのことが出れば裏で解剖ってのは避けられるだろ。
恨まれるだろうけど……それはそれだ。
俺自身が考えて俺の安全が確保できそうな案だと思うんだ。
うまくいけばこいつらだって逮捕はされるだろうけど、細かくは知らないけどでかい組織にテロみたいな行動しなくて済むはず……
「とりあえずお菓子も買い込むっス!」
「太るぞ」
「その分動くから問題ねえっス!」
……連絡とる方法……うまくいかせてやる。絶対。
買い込みを済ませ計画を開始する。
「さて……ウェンディ。時間相当あるけどどうする?」
「早く戻る……じゃつまんないっスし……ゲーセンっス!」
「じゃあこの前の商店街のとこいこうぜ」
「ん〜……入店お断りにならないっスか?」
「3ヶ月近く前だぞ……流石にねえだろ」
というか覚えてる地理があそこだけだからそこじゃないと困る。
「じゃあ行くっス!」
「おう」
ゲーセンは予想通り入れた。
喧嘩は過去にここでしたけど……こっちが被害者だし。
まあ店員からはいい顔されなかったので以前はすいませんでしたとだけ謝っておいた。
そのまま普通にゲームで30分ほど遊ぶ。
……よし、そろそろいいかな。
「ウェンディ。ちょっと俺トイレ行ってくる」
「了解〜っス。ほっ! このっ! うりゃ!」
ウェンディはシューティングのゲームに集中。
今がチャンスだ。
俺はトイレの方に向かう。
そしてそのトイレの近くの休憩所にある公衆電話を見つける。
以前ここに来て店内を見回したときあったのを覚えていたのだ。
うっし。さっそく電話だ。
電話と言っても普通にはかけない。
俺自身に発信機とか盗聴器とかの類がついてる可能性もあるからだ。
確かに以前は見張りでウェンディもいた。
問題も特になかった。
だけどどう考えても、逃げる可能性のあるやつをそれだけで外に出すわけねえ。
まあ多分1度外に出たらどう動くかを試したかったのもあったんだろうな。
逃げたら逃げたで解剖。怪しい動きを感じたら即解剖。
連絡とろうとしたら解剖。
まあ電話したかどうとかは盗聴器とかでも俺につけん限りわからんだろうが、ついてるだろうから電話で話せない。
だけど……スカは俺があるものを持ってることを知らない。
俺は収納空間に手を突っ込み、黒い玉を出す。
……まさか前にアギトと戦った男のデバイスを使う日が来るとはな……
回収した後、デバイスは勝手にこの形状に戻っていた。
中身のデータとか設定とかはは六課でのデバイスルームで初期化した。
あの時はアギトとルーテシアのことが漏れないようにと思って消しただけだった。
だけどそのおかげで以前の持ち主がどうとかの設定も魔法も消えてるから普通のメモリ程度の扱いしかできないが今は十分。
機動六課の番号を調べさせ、電話にデバイスを接続させる。
……超ハイスペックなパソコン気分だな。これだと。
機動六課の番号は……出た。出た。
すぐに番号を押しコール。
受付が出る前にデバイスに入れておいた録音データを流しっぱなしにする。
『魔王に喧嘩売ったやつだ。廃棄都市区画北に2時間後にいる。師範1人で来てくれ』
……具体的な名前は出せなかったけど、六課の人ならこれでわかる。
廃棄都市区画北はセインとの合流場所。
これならここから予定通りに動いても合流できる。
あとは運を天に任す。
その後トイレから出たかのようにウェンディと合流。
セインとの合流ポイントの場所でもあり、師範と合流するための場所でもある廃棄都市区画北に向かうのであった。
……おかしい……
廃棄都市だから人気がねえはずなんだが空気がなんか……
セインとの合流もそろそろ。
師範もそろそろ来るころなんだが……連絡に失敗したか?
交戦になったら師範とできるし、セインがいればウェンディもうまくすれば逃げれるだろうし。
……まあ、そのまま捕まえてってのは……裏切るのが申し訳なく感じるからしないようにすっけど。
「…………」
「何怖い顔してるっスか? はっ!? まさかアタシをここで……」
とか言いながら身を守るように腕を組む。
「……そこまで獣じゃねえよ……」
つうかなんだ……なんかマジで嫌な感じだ……
「ぶー、反応つまんねえっス……」
「すまん。ちょっと……!?」
ウェンディをおもいっきり突き飛ばす。
そしてその反対方向に俺自身も飛び退く。
そしたら俺たちの立っていた場所を魔力弾が通り過ぎる。
そして空の色が突然変わり、周りが少し暗くなる。
「うおっ!?」
「なんスか!?」
これが結界っていうやつか!?
てか、なんでいきなり!?
殺気!? 後ろか!?
右斜め前に体を反回転させながら飛び退き、敵の姿確認と回避を……
誰もいねえ!?
そして俺の振り返った方向から、複数の魔力弾が連続で飛んでくる
すぐさまラケットを装備する。
バックステップをしながら直撃しそうな魔力弾を弾こうとするが、高確率で直撃コースに飛んでくる。
必死で避けて、避けきれなさそうなものだけ打ち返すようにする。
弾はどこから飛んでくる!?
12時方向、100メートル先のビルの5階からか!?
ってもう一か所からも発射されてる!?
こっちは10時方向のビルの屋上から!
後者の弾は別のとこに……ウェンディの方向!?
「大丈夫か!?」
慌ててウェンディの方を見る。
ウェンディはライディングボードを装備して盾にして防いでいる。
「こっちは大丈夫っス! って危ない!!」
「うおっおお!?」
あ、あっぶねええ!? 普通に頬掠めてった。
よそ見してる暇はねえ!
ダッシュでウェンディのボード陰に入れてもらう。
「なんでこんなことなってるっスか!? つうか誰が撃ってきてるっスか!」
おかしい……六課を呼んだはずなのに……
まさか盗聴された!?
つうかどうなってるんだよ!?
だけど色々考えてる間にも魔力弾はボードに直撃していく。
俺がこっちに来たせいで被弾数も倍になって負荷が相当掛かる。
「くっ……これじゃいくらアタシのボードでも……」
くっそ! あれこれ考えてる暇はねえ。今は現状をどうにかしねえと。
「俺がボードから出て一気に接近戦で叩く。お前はそのまま……」
「おっと、嘗めねえで欲しいっス。これでも戦闘機人の狙撃型っスよ? 後方支援くらい任せるっス」
そういや前なんかスフィア出してたな……
けどこいつも女だ……ぞ?
この瞬間に俺の脳裏に初めて会ったときすげえ殺気を出してたのと、俺を他のナンバーズとで囲んだシーンが掠める。
「任せた!!」
「おうっス!!」
グッと親指を立て合い、次の瞬間にはボードの陰から出て一気に12時方向のビルに駆ける。
当然狙撃は俺に集中。
嘗めるなよ!
足で魔力放出することでスピードアップ。
さらに正面に飛んでくる弾をラケットで打ち、サイドステップを混ぜたりしてジグザクに走ることで回避と防御をしながら進む。
そして後ろからウェンディのスフィアが発射され、俺に飛んでくる弾を撃ち落とし、そして俺が向かっている12時方向のビルの狙撃手に向かって発射。
よっしゃ! おかげで目的の射撃が止まった!
外から一気に窓まで駆け上がってやる!
普通にジャンプしても2階までが限界だ……
おもいっきり放出して跳んで壁蹴りで上に行くにしてもそこまで無理……せいぜい4階まで……
だったら……!
もう一度収納空間を開けラケットをそこにしまう。
そして黒塗りの鞘に収まった刀を引き出す。
跳んだのと同時に刀を引き抜き、その刀身が露わになる。
黒く、鈍く光る黒刀。
銘は“ 無明 ”その黒の刀身から夜を連想した俺がつけた名前だ。
ジジイから貰ったときに銘が付いていなかったから勝手につけたのだ。
こいつの能力は魔力を食うことでも、俺の魔力を吸収して斬撃を飛ばすことでもない。
炎とか氷とかそういのを出すものでもない。
刀自身が魔力を帯びていて、それにより切れ味が落ちず、斬っても油や血のりで斬れなくなるということがない。
魔法に対しても普通の刀なら6,7発のスフィアを斬ったら折れるがこいつは耐性があるおかげで折れない。
戦国時代ならありえないほどの名刀ではあるが、魔導師との戦闘に限ると普通の刀と大して変わらない。
「うおおりゃああああ!!」
魔力放出も使って跳ぶが4階あたりで勢いが落ちる。
その瞬間に抜き放たれた鞘をビルの壁に思いっきり刺し、その上に乗りもう一段ジャンプをする。
よっしゃ! このまま5階の窓に突入だ!
「うおおおおっ! ……っていない?」
さっきまで狙ってたやつがここにいたはずなのに……
ちっ……狙撃が止んだと思ったら別の場所に移りやがったが……
《 ケイ! すぐにそこから出るっス! 上から砲撃魔法で狙ってる! 》
何だこの頭に響く声は!?
って上から狙ってる!? やべえ! 下敷きにされる!
急いで窓から脱出と同時に俺のいた部屋が上からの砲撃で一瞬で潰れる。
外に飛び出た俺は刺した鞘に捕まるが、部屋だけでなくビル自体も倒壊しようとする。
やっば!!
両足を壁につけ鞘を支えにしながら壁を蹴り、反対側のビルの壁に跳ぶ。
そして刀を刺してブレーキングをかけながら地面に着地。
倒壊したビルを見る。
なんだあの威力は!? なのはさん程じゃねえにしろAAクラスはあるぞ!?
前会ったAAクラスのやつより威力高いんじゃねえのか!?
「ケイーー!」
「ん? うおっ!?」
後ろから狙撃されつつ、ボードに乗って飛んでくるウェンディに引っ張られて俺も宙に浮く。
怖っ!?
「ちょっ!? 何ボードの後ろに乗りながら抱きついてくるっスか!?」
「アホか! 捕まらんと落ちるわ!」
くそー! なんか情けねえ状況だ!
「それよりさっきのは何だ? 頭の中に会話が来たぞ」
「念話っスよ。細かいのは後で説明っス」
それもそうか。
そういや砲撃撃ったやつは……ちっ、またどっかに隠れやがったか……
しかもいつの間にか狙撃も止んでる。
移動してるか、こっちの動きを見てるか……
ウェンディも狙撃が止んだことで一旦物陰に隠れて浮いたまま止まる。
「くそ……どこにいるかわかったら接近してぶった斬るのに……」
「……あそこのビルの3階とあっちの5階……陰に隠れてこっちの様子見てるっス」
ウェンディが小さな声でそう言う。
3時の方向、約57メートル……6時の方向、約48メートルってくらいか……
「何でわかる?」
「アタシの目は特別製っス。体温で感知したっスよ」
目まで機械かよ……義眼の人にとったら滅茶苦茶欲しいだろうな。
それより問題は距離と高さかだな……
どうやってあの高さに……よっしゃ。思いついた。
「ウェンディ。作戦を思いついた。位置さえわかるなら2人一気にぶっ叩けると思う……」
「……大丈夫っスか? それ……バリアジャケットとか着てるわけでもないのに……」
「……多分」
作戦会議をした直後、2人でボードに乗り一直線に空に向かって上がる。
それと同時に2か所から狙撃と距離が出るせいか砲撃魔法が大量に放たれる。
ウェンディがそれを回避しつつ、俺がバックを見ながらそれを再び出したラケットで打ち返す。
ちっ、数が多いから狙って打つ暇がねえ!
だけど作戦はこっからだ!
「はーっはっは! 空を飛べるんだったらサッサと逃げさせてもらうぜ! こっちには結界破壊の武器があるからな!」
真下に向かってそう叫ぶ。もちろんハッタリだ。そんないいもの持ってねえよ。
だけどあっちはそんなの知らねえしな。
こっちは魔法を打ち返すラケットがあるから、そういうの持ってても変じゃないとは思わせられるはず。
その瞬間狙撃手1人は本当に逃げられると焦って窓から身を乗り出し飛行し、追おうとする。
もう1人は隠れたままで砲撃、スフィアを交互に発射してくる。
ちっ……2人とも追ってくると思ったけど1人だけか!
予定は狂ったけど……
「貰ったあああああ!!」
身を乗り出してきた方に向かって、ボードから飛び降りる。
刀を鞘にしまった状態で落下。
右の腕で柄を握り、その右腕に力を溜める。
「居合一刀……」
「なっ!? プロテクション!」
男はシールドを張って防ごうとする。
だけどそんなの無視だ!!
刀を鞘から抜き放ち
「 【戟墜】!! 」
敵との激突の一瞬で落下した力と全体重、そこに怪力気味な腕力を衝撃を加えた一撃。
無明はその刀身でシールドを砕き、敵のバリアジャケットをも砕く。
「うおおおおおおおお!!」
そのままおもいっきり無明を振り抜く。
剣撃は男の体だけではなく、そのまま建物の壁を砕き、床を抜く。
やっば!! 勢いつけすぎた!!
1階まで床をぶち抜きながら俺も、さっき斬った敵ごと落ちる。
その衝撃のほとんどを放出で殺すけど、やっぱり少し俺自身にもダメージがくる。
いつつ……
上空からでかい岩が落ちたような状況からの一撃のせいでストップできず、建物の数階分のフロアの一部を抉るような形で敵を斬っちまった。
まあそれが狙いだったし、そういう技だから仕方ねえけど着地をもっと考えないとな……
起き上がり敵を見る。
デバイスの杖は全壊。腕などが一部変な方向を向き、白目を剥きながら気絶している。
……ほっ……生きてた生きてた。
斬撃は峰打ちだったけど、物理的に威力ある技だからな……そこに俺の腕力だからな……刀自身も魔力帯びてるから威力あるし……
よく生きてるな……シールドとジャケットの強度が半端なかったからか?
さて……もう1人の方に攻め込んでるはずのウェンディの方はどうなったかな。
崩れた壁から外に出て、ウェンディが攻め込んだであろう場所を見る。
お〜お〜、向こうも派手にぶっ壊……し……て
俺の視界に写ったのは壊れた壁と、建物から引きずり出した狙撃手の止めに入ろうとしていたウェンディが後ろからナイフで刺された光景だった。
―――――――――っつ!
「どけええええええええええええええええええええ!!!!!」
頭が一気に沸騰する。
地面をおもいっきり蹴り、魔力も使ってこちらに気づいたナイフを刺した男の顔面に裏拳を叩きこむ。
そのままビルの壁に吹っ飛ぶ。
だけど俺は確認しないで倒れたウェンディに駆け寄ろうとするが背中に数発の魔力弾が直撃し、さらに追い打ちを掛けてくる。
っーーーー! 邪魔だああああ!
瓦礫となり地面に無数に落ちていたコンクリートを思いっきり狙撃してきた方に蹴り飛ばす。
狙撃手はそれを数発被弾しつつもシールドで防ぎ建物の中に消えて行った。
ウェンディをその隙に抱え、こちらも物陰に隠れる。
「しっかりしろ! おい!」
「あ、あはは……油断したっス。まさかもう1人隠れてたなんて……」
くっそ。なんでその可能性考えなかった……
とにかく止血しねえと……
ジャージを脱いでウェンディの傷が隠れるように縛る。
「セインは来れねえのか? 地面から脱出できるだろ……そうすりゃお前もすぐ治療を……」
「セインは……魔力通った場所とか無理……っス。それに……アタシも戦闘機人……これくらい……っ〜〜〜」
「アホ! でっけえ傷あるのに動こうとするな!」
確かに戦闘機人だから致命傷ってのはないっぽいけど……常人じゃ死ぬ傷だぞ……
「てかケイも被弾……」
「ああ、もうメチャクチャ痛えよ。だけどお前ほどじゃねえ」
「……殺傷設定攻撃なのに頑丈っスね……」
軽口叩けるなら大丈夫だな。
「……そういえばさっき眼が……」
「気にすんな」
そのままウェンディを背負う。
まずはここを離れて動けねえこいつをどっか安全な場所に……
!? 来た!
刀で魔力弾を防御するが次々と弾が来る。
くそおお!
ウェンディを抱えねえとだめだから防御し辛れえ。
ラケットに装備を切り替え弾く。
そして抱えたまま物陰から出て一気に距離を稼ごうとする。
ジグザクに走ったり、後ろからの弾をかわしながら距離が開くと、砲撃に切り替わる。
くっそ! 抱えたままで後ろ見ないで逃げるとか辛すぎ!
「ウェンディ! 前方後方とかに敵は!?」
「……一応確認したっス。敵はさっきの2人だ……っ!?」
……へっ?
「厄介なのは潰したな……次はお前だ」
何でだ? 俺は本気で走ったぞ? 普通に魔導師じゃついて来れねえ速さで……
なのに何でだ? こいつに追いつかれて背中に背負ってたウェンディがまた刺されて……
「なっ!? 腕を掴んで!? は、はな……ぐわあああああ!!」
俺を狙って振ってきていた腕を掴み、無意識に握り潰そうとする。
「くっそお! 離せ! があっ……あああああ!」
鈍い音が男の腕からした。
男は激痛に苦しむ。
そのまま腕にさらに力を篭めようとするが横から砲撃が直撃し、俺は抱えたウェンディごと吹き飛ばさる。
「この餓鬼……俺の腕を……よくも……」
高速で動いたと思ったら男はそのまま倒れてる俺を蹴り飛ばす。
「あがっ……!?」
「くそがあ! 捕獲対象だぁ? ぶっ殺してやるぜ!」
……捕獲対象? ……やっぱ管理局の……
「思ったより手古摺ったな。1人やられるとは」
「けっ、魔力が上がったからって調子乗りすぎなんだよ」
魔力が上がった?
「言うな。実験体扱いで改造はされたが力は上がったんだ」
「あのハゲが……実際成功したの100人いて3人じゃねえか……ヘボだろヘボ」
「どうせ俺達は死刑囚だったんだ。生きてもいられるし殺しもできるんだからいいじゃねえか」
……こいつら死刑囚? どうなってるんだ?
「さて……そのハゲ野郎にこいつを連れて来いって言われたけどよ……殺していいだろ?」
そう言いながら恐らく魔力強化した蹴りを入れられる。
「がっ! あぐっ!」
くそ……身体が……もう動かねえ……やっぱ眼を使ったのが……
「ちっ……じゃあせめてその腕切り落としてやるぜ!」
男がナイフを振り上げる。
くっそ!! やられる!!
その瞬間轟音が鳴り響き、爆煙が舞った。
「ぎゃああああああああ!!」
「な!? 誰だテメエ!?」
爆煙が晴れ、俺の前に誰かが立っていた。
所々破れた黒いコートのようなバリアジャケットを装備し、右腕に槍を持った男が立っていた。
持っている槍は血で濡れ、さっきのナイフを持っていた男は死んでいた。
「……ゼスト……貴様らと同じ……犯罪者だ……」
つづく
おまけ
〜 六課受付 〜
「『魔王に喧嘩売ったやつだ。廃棄都市区画北に2時間後にいる。師範1人で来てくれ』」
「……」
「あ〜、疲れた〜」
「なのはさんの訓練また最近キツくなってきたわね……」
「けど前よりは少しうまく連携とれるようになってきましたよね?」
「フリードもエリオ君とうまくコンビネーション取れるようになってきたしね」
「あれ? 受付の人変わられました?」
「ええ、自分は前任者がしばらく休暇に入るとのことで、代わりできました」
「そっか〜、よろしくね〜」
「ええ、よろしくお願いします」
「スバル〜、エリオ〜 行くわよ〜」
「あっ、うん! それじゃあね」
「ええ。それでは」
「……俺だ。六課を張ってたが、任務中に目的の内の1人から連絡があった。2時間後に廃棄都市区画北に来る」
「『わかった。お前はそのまま六課を監視する任務の方を続けろ。元々そっちはどうでもいい奴だ。欲しがってる研究者自身に回収させる』」
「了解」
あとがき
……更新に時間が掛かり過ぎました。
1ヶ月くらい更新しないとは……すいません。
今回は脱出を試みてみたけど失敗。六課に評議会のスパイがいてそいつに連絡行っちゃいました。
そのせいでマジバトルに突入。
……ギャグをしていくと前回言ったけど話の流れ的に無理があるので一旦中止にしました。
久々のゼスト登場。次回から出番が増えるかもです。
Web拍手返信
※ケイさんへ 法隆寺は奈良ですよ〜
>お恥ずかしい……素で間違えました。
>修学旅行が京都、奈良だったせいで奈良と京都が頭の中でセットになってる……奈良県の方、京都府の方すいません。
※どうも。スカ一味とケイとの同盟話と相成りましたが、相変わらず絶対の味方がいない状況で土台が不安定ですね。
これから管理局と一悶着ありそうですが、管理局を壊すときは計画的に行ってくれるといいなあと感じます。
どんな手段を行使し、そこに正義があろうとも必ず泣く人がでますので、考え無しに戦って結果的に勝利してもその先には自分の幸せとその代償として
数万数億数兆の無実な人の不幸せが待っていると思います。それは、彼自身の為した結果のみでもです。個人的に言えば壊すなら内にいる人間とも共同戦線を持ったら面白いですね。
つまり、外で管理局を揺さぶり、内にいる人間がゆっくりと改善していくとか。その中にクロノを筆頭にグレアム、リンディーなどのベテラン組みが活躍すると良いなあと思います。
ちなみにクロノを筆頭に推薦するのは、第二候補のはやてはstsを見る限り、なのはを含めて精神的に若いですし、
グレアムなどは組織の毒にある程度染まっていると思われるのである程度、苦いも甘いも知り、毒に染まりきっていない年であろうクロノが最適だろうと感じます。
それに彼の基本理念から考えて、恐らく不幸な人を出来る限り減らす努力をするでしょうから。
後、提督としてのある程度の管理局員への影響力を含めてですね。
>土台がなさすぎて今回で脱出を試みましたが思いっきり失敗してます。
>その方法もおそらくできるでしょうが、ケイみたいな子供にどこまでできるのかと言われると自分は疑問を感じるのでする予定はないです。
>自分で思ったことをして、失敗して失敗してを繰り返していく感じです。
>はっきり言っていない方が原作のように六課メンバーにとってもナンバーズにとってもいい終わり方をするような、周りを混乱させる行動を取ってしまいます。
※ケイさんへ 話は面白かったですが、一つ、忠告を「法隆寺」は京都じゃなく奈良の斑鳩ですよ。
>いやはや……なんで忘れてたのやら……頭の悪さがバレて滅茶苦茶恥ずかしいです……相当凹みました。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、