ちゅん…ちゅん ちゅちゅん。
早朝…外から小鳥のさえずりが聞こえる。
今日もいい天気のようだ。だが俺は今暗く閉め切ったラボにいる。
ドライバーを握る手がかたかたと震える。
もう少し…あと少し…
そしてドライバーでネジが完全にその役目を果たせるように捻じ込みきった。
「…ふふ…ふはは……ふははははははは!!!やったぜ…やってやったぜ俺は!!」
両手を上げ、クマができまくった顔で俺は喜びを噛み締める。
「ついにできたーーー!!俺のデバイスもどき!!」
時空を駆けちまった少年
第18話
やったー!やったー!
ついにでけたーーー!俺のデバイスもどき!はっはっは!2日徹夜で急ピッチで進めたぜ!!
そろそろ完成させて実践してみないと帰らされるからな…
俺の目の前の机には5つの機械が置いてある。
この5つが俺の作ったデバイスもどきの作品だ。
時間もそうなく、資金もそうそう懸けられない立場なので大威力が出るわけではない。
むしろカートリッジのみで使える出力落ちしている駄作に分類できるものだろう。
弾の消費も激しく、使用可能時間も相当短い。
さらには効果範囲も新人魔導士よりも狭いものになってる落ちだし。
まあ一瞬にのみカートリッジの魔力を集中すればそれなりには出ると思うけど。
それでも自分で作れたというのがなんだか感動できる。
「お…おめでとう…私も嬉しいよ…」
机に突っ伏しながら今にも死にそうな声で賛辞を送ってくれるシャーリーさん。
ありがとうございます。おかげで作ることができました。
俺一人じゃ絶対無理でしたよ。
ちなみにシャーリーさんも徹夜を2日ほどしている。
「ごめん…もう限界…おやすみ………くっ〜…」
「うっす…おやすみなさい…俺ももう無理っす……」
シャーリーさんにお休みを言って俺も眠る。
その際に頭が一気に落ちて机とぶつかり鈍い音がしたが気にせず眠ることにした。
いらっしゃい…俺の安息の時間……
あ〜…よく寝た…わけでもないか…
現在すでに午後1時過ぎ。う〜ん。もっと寝たいが飯くらい食わんと…
というわけで食堂に向かう。
すると隊長さん達とシャマルさん達が昼食をとっていたところだった。
フォアード陣はいない。あっちはもう済まして仕事か?
「ん?ケイか。どうだ?完成したのか?」
師範がこっちに気付いて尋ねてきた。
朝の訓練の方は開発の方がもう少しで終わるし、時期的に完成をさせないと帰る羽目になると言ってお休みになった。
もどきのテストや練習もしたいと言ったら今度フォアード対隊長の模擬戦するからその後魔法戦をするのが条件になった。
……いや殺されたりしないよな?
「ええ。2日籠って徹夜して完成しました。シャーリーさんがまだラボで死んでますが」
「もっと寝なくて大丈夫なの?」
医者であるシャマルさんが心配そうにそう言ってくれる。
まあ確かに2日徹夜して午前中しか寝てないからな……まあ大丈夫だろ。
「ええ。まあ大丈夫です」
「無理すんなよ〜。最近なんか無理してるのがもう1人いるしな」
「おっ?ヴィータが心配って珍しい」
「死なれて仕事増やされたくねえからな」
いたずら顔でニヤリとそう言いやがる。
う〜ん…模擬戦のとき死にそうで怖いぞ。
「で、もう1人無理してるってのは誰だ?」
「ティアナだよ。なんかこの前のことからずっと自主練しまくってっかんな…」
あ〜…成程。
自主練するのはいいけど程々にしとかんとむしろ体壊しそうだな。
けどまあその辺の体調管理できん人でもないしな。
「昼食がまだだからせっかくだし一緒にいいか?」
「ああ。ついでにどんなものを作ったか教えろよ」
おいおいここでバラしたら模擬戦のときつらいじゃねえか。
対策組まれるだろうが。
「ダメだ。模擬戦でお披露目すんの」
「ふっ、楽しみにしておくからな」
いやいや楽しみにするのはいいけどマジで手加減して下さいよ?
適当に見繕って席に戻るとみなさん空間テレビを見てた。
うわ〜すげ〜やっぱかっこいいよなこのテレビ。
欲しいな〜
「何見てるんですか?」
席について尋ねてみる。
「ん〜?政治経済のニュースだけど…あんまりね」
ふ〜ん…とりあえず自分も見てみる。
「先日、ミッドチルダ管理局地上本部において来年度の予算会議が行われました。3度目となる修正案で、各世界の注目が集まっています。」
う〜ん。予算ね〜日本の予算は一体どうなることやら。
てか隊長さんたち興味なさげに飯食ってら。
自分たちの給料とか決まるんじゃねえの?これだと。
『当日は首都防衛隊の代表、レジアス・ゲイズ中将による管理局の防衛思想にたいする表明も行われました』
このアナウンサーの一言で全員の目がニュースに向いた。
…誰?レジアスって。
『魔法と技術の進歩と進化…素晴らしいものではあるが、だがしかし!それゆえに!我々を襲う敵や犯罪も10年前とは比べ物にならない程強力に
なっている!兵器運用の強化は、進化する世界の平和を守るためのものである!!』
うお〜すげえこと言うなこのヒゲおっさん…
まあ確かに兵器あれば牽制とかに使えるよな…
実際地球じゃ核=強力な国って感じだし、それを持ってるだけで戦争をしにくい国になる…
まあ大国は発展途上国に持たれても困るから制限かけたりしてっけど。
『だがしかし!地上の防衛の手は未だ足りん!!』
えっ?こんだけアホ強い人がここにいてまだ足りねえの!?
「あの…足りないってマジっすか?ここだけでもSランクめっちゃいるじゃないっすか」
全員俺の目の前にいるよ。…マジすげえわ。
「ウチらは所属は本局や。ああ、つまり異世界に行く組み。地上いうんは中心世界のミッドを守るための組や」
…規模かなり違うね。かたや異世界中、かたや1世界。
ん?でもテロやらなんやら起こるとしたらここか。
「じゃあ地上になんでいるんすか?」
「ん〜…まあ地上も本局も犯罪に対して後手に回りやすいからそれをウチが少数精鋭の独立部隊で改善できるって証明したいからや。地上なのは
地上がロストロギアやらの密輸入、不法所持の舞台やからや」
ほうほう。そんな地上だから強いのいっぱい集めて行動を迅速にして即解決と。
「ん?他の部隊だと戦力どうなんです?」
「ここまで集まるのは六課の特色と言ってええやろうな」
「実際だと規定にかかって過剰戦力扱いだね。だから私やみんなはリミッターをしてるし」
なのはさんが補足してくれる。
……精鋭集めてるのにリミッターつけてどないすんねん。
意味ないやん強いの集めた理由。
「まあ地上と海…海は本局のことだが…決定的に仲が悪い」
はっ?なんで?同じ管理局でしょうが。
「地上は海に戦力をとられると言い、海は地上よりエリート思考が多い。事実魔導士の質は海の方が上だ」
……見下されればそりゃ仲悪くなるわ…
しかも戦力獲ってくって…
『今回の議題での予算案も我々の申請が通れば、地上の犯罪の発生率を20%カット、検挙率に対しては35%以上の増加を初年度から
見込むことができる!!』
……どんだけすげえ案だそれ!?
周りの反応はどんなだ?……あれ?興味なし?
「このおっさんはまだこんな事言ってんのな」
「レジアス中将は古くから武闘派だからな…」
…は?何かダメなの?
「あっ、ミゼット提督」
「ミゼット婆ちゃん?」
いや着眼点違ってねえ?
あんなよぼよぼの爺さん婆さんがどうしたの?
「…誰?」
「管理局を今の形まで整えた功労者さん達だよ」
「こうして見るとただの老人会だけどな」
ただの老人にしか見えねえよ。実際。
しかしみんな兵器運用については興味なしなのね。
「レジアスとかいう人の話は?なんか誰でも使えるから数も増えるんじゃないんですか?それなら魔法使えない人も前線出れますし」
俺とかモロ使えないし。
「う〜ん。今は兵器も戦力も純粋魔力頼りだから…」
「それにあれは質量兵器だし禁止ものだからね…」
「実際難しい話なんですね」
しっかしめんどくさいルールな気もするな…戦力は魔法だけって。
前は魔法=万能、呪文一つでなんでも解決しちゃいます!
とか思ってたけどようするに環境破壊しない、人間も殺さないで済ますことのできる兵器、またはその手段って感じだなこりゃ。
「ケイ君も前見たガジェットにはAMFっていう魔法を消す能力があってね」
なのはさんが説明してくれる。
げっ…マジ?
でも素手でやったから全然関係なかったな…
「その技術が相手だから魔法の使用者の質、戦力のレベルアップが必要かなって思ってるの私達は」
「なんで?魔法が効かんのならバズーカやらミサイルやらの方が早いじゃなっすか」
打撃やらは無効果されないみたいだし、そうすればいいじゃん。
魔法使えなくてもみんなそれで武装すりゃええし。
「だからそれは禁止なんだってば」
「両方ありでいいじゃないですか。人やら相手なら非殺傷設定の魔法、ガジェットみたいな機械なら質量兵器でどかーんと」
「…ケイ君思想結構過激やな」
そうかな?
そっちのが速いし戦力不足解消できるじゃん。
メルヘンなだけじゃない魔法世界なんだしシビアにいかなきゃ。
「でも誰でも使えるってことは誰でも簡単に人が殺せるんだよ?犯罪者に流れたら大変だし」
「いやいや魔法も質量兵器も結構流れてるでしょ」
この前戦ってよ〜くわかった。
密輸入は規制かけてもど〜にもならん。質量兵器も魔法もバンバン流れてる。
両方使うハイブリッドな犯罪社会に魔法だけじゃ無理あるっしょ。魔法事態を消す技術があるんなら。
それを考えるとややあの中将さんに俺は賛成かな。
「そもそも人を殺せるってここの全員がその気になれば都市の1つや2つ分の人くらい簡単に殺せるでしょうが」
このセリフを言ったら隊長さん達全員黙り込んだ。
…あっ、ちとまずったか…
これ禁句だったかも…
「この話はおしまいや。仕事に戻らなあかんしな」
「…そうだね。私も資料まとめないといけないし」
はやてさんとフェイトさんが席を離れた。
「私も医務室にカルテ整理があるから」
「アタシは新人の教導のプラン立ててくる」
シャマルさんにヴィータも席を離れた。
残ったのはなのはさんにシグナム師範だけ…
「ケイ君…」
「…はい」
「ケイ君は人を殺すことにためらいはある?」
「ん〜…あります」
「そっか…私達も一緒。誰も殺したくない。殺させたくない。悲しい思いをして欲しくない。だからここで働いている」
…理想論ってとこか…
本当にそういうこと考えれる人っていたんだ。レアな。
「でも実際だと無理じゃないですか?それ」
「うん。だから私は1人でするんじゃなくて後輩…下の、新しい世代にそれができるようにしっかり受け継いでもらってできるようにしてもらいたい」
……だから教導官になったと。
「確かに私達にはさっき言ったようなこともできる。だけど使い道次第で人を救うこともできる。これはわかる?」
「ええ…」
あれ?なんか説教になってる?
「じゃあ話はおしまい。私からはそれだけ。じゃあ私も行くね」
そう言ってなのはさんも席を離れた。
「ケイ…お前以前私に言ったな?自分が守りたいと思うものを守る力が欲しいと」
「ええ。言いました」
「そうか…ならいい」
「けどそれの中に自分も入っていますし」
「……」
「殺そうとしてくるんだったら殺られる前に殺ってやろうと思ってますよ」
殺らないと殺られる。
これが現実だ。昔のサバイバルでわかった。自然界じゃそれができないと死ぬ。
隊長さん達のいってることは正しいと思う。
だけどそれは圧倒的な力が「最初」からあるから言えるんだと思う。
「…ケイ。ハッキリ言っておこう。お前の思考は犯罪者になりかねない」
「………」
「さっき言った高町の話にはそんな真似をするなという意味があったのはわかったか?」
「…はい」
殺す力があるからといってそんなことするな。
殺すような危険な真似はするな。そんなところだろう。
それを言えるのは圧倒的な強者だけだと俺は思う。
まあ実際人間世界じゃ違うけどね。
暴力より権力が強いのが人間世界だし、ムカツクとか自己満足のために殺してたら自分が社会的に死ぬし。
けど生き物としての戦いの中では同じだと思う。
「大丈夫ですって。殺すようなことはそうそう遭いませんよ。確率的に」
「…だといいんだがな」
シグナム師範も去って行った。
どうやら俺は隊長さん達とあんまり思考が合わないようだ。
まあ人の思想は100人いれば100通りあるだろうし。
気にしない気にしない。
それに他人の思想は俺に関係ないしね。
自分と自分の周りが生きれればいいし、生きるのを邪魔するなら蹴散らせればいい。
蹴散らせる余裕がないなら殺る。それだけだね。
まあそれが俺の理想だし。
つってもそれが出来る程の力もぜ〜んぜんないんだけど。
そのまま俺も昼食を済まして食堂を後にした。
〜 夜 〜
ぶっは〜〜疲れたーー!!
昼食済んでからすることもなくなったし、テストというか実際使う感覚覚えるために演習場の端で1人で特訓してた。
フォアード4人が先に訓練済まして戻ったが頼み込んでギリギリまでは使わせてもらえたのはラッキーだったな。
にして…自分で作っといていうのもなんだがマジしんどい…結構使うのが難しいな…
カートリッジの装填結構マメにしねえとダメだし、やっぱ汎用性は低いな…
まあその辺は慣れればいいか。
戻ると途中に何やら物音が林の方からする。
誰だ?
見てみるとティアナさんが1人で射撃の訓練をしていた。
…あれ?まだ自主練してるのか?
「よっす。まだ自主練?頑張るな〜」
「……」
無視かい。
ティアナさんは黙ったまま射撃の訓練を続ける。
俺はそれを邪魔するのも無粋だと思いしばらく眺めていた。
「はあ…はあ…」
ティアナさんがターゲットとして配置していたスフィアが消える。
どうやら今日はここまでみたいだ。
「お疲れさん」
「…あんたまだ見てたのね」
やっぱ声かけたことには気付いてたみたいだな。
その上での無視か…ひでえ気もするけど練習中だったし、しゃあないか。
「しっかしどんだけ自主練してたんだよ。午後の特訓から結構してるっぽいけど」
「そういえばもう暗いわね…夕方からしてたけど…」
それもう自主練の範疇超えてないか?
4時間以上してるってことじゃねえか。…もしかしてホテルの件からずっと?
「ホテルの頃からしてるのか?」
「そうよ」
さらりと言いおった!?それもう無茶だろヴィータの言う通り。
実際顔色悪くないか?
「もう少し休んだら?」
「休んでるうちに周りに置いて行かれるわよ」
「その前にぶっ倒れるぞ」
「体調管理くらいできるわよ」
ふ〜ん。ならいいけど。
「しっかし射撃ってこういう練習なのか」
「複数のスフィアをランダムに光らせて狙いを速める練習よ。他のスキルの練習はスバルとしてるわ」
あっ…そういやなんかそれ手伝おうとか考えてた気が…
あれ?なんで今まで忘れてたんだ?
う〜ん……さっぱり思い出せん。
「でもスバルなんで今日いないの?」
「デスクワークにてこずってるわよ」
デスクワーク苦手って…
スバル…体育会系だとは思ってたがマジで完全にそうだったか…
「接近戦とか?」
「そうね…」
「そっか…」
「?それがどうかしたの?」
「うんや別に」
よし、明日から俺も混ざろう。
動くターゲットとして射撃の的にもなれるだろ、威力だけ落として貰ってればいいし、
俺の回避の練習にもなるしな。
「んじゃあ終わったんなら飯行く?俺これからだし」
「いいわよ」
この後2人で晩飯を食った後別れ、各自の部屋に戻り休むことにした。
〜 エリオ部屋 〜
エリオの部屋に戻ってくるとキャロも一緒にいた。
フリードも一緒だ。
遊んでたのか?
「あっ、ケイ兄デバイスできたって本当!?」
「おうできたぞ〜」
「どんな感じなんですか?」
「ん〜聞きたいか?」
「「うん(はい)」」
「実はな……」
まああんますげえものでもないけどな。空飛べるほど持続時間なかったりするし。
でも純粋に聞いてくれる子供2人になら話していっかと思い、ついどんなかをバラしてしまった。
「結構使えると思うけど」
「だけど持続時間短いのが難点でな〜」
「今度の模擬戦でシグナム副隊長と試すんですよね?」
「ああそうだぞ。死なんこと祈っててくれな」
こんな感じで今日も終わっていった。
〜 翌日 早朝 〜
しばらく自分一人で装備を混ぜながら訓練したいので師範に頼んで訓練はお休み。
ん〜そういや地球から帰ってきて訓練してもらったの筋肉痛になった日だけだったな…
まあいっか。
それじゃあティアナさんのお手伝い兼、自分の訓練しますか。
「おはようさん」
「あっ、おはよ〜」
「あんたまでなんでこんな時間に起きてるのよ」
すでに自主練の準備を整えてた2人に合流する。
そのまま自分も手伝うと言って参加しようとしたが最初は断られた。
理由は簡単。危ないから。
だからこう言ってやった。
「ん?魔法ド素人に力加減できないほどコントロール下手なのか?」
「…いいわ。やってやろうじゃない。あんたのお望み道理、的にして手伝わせてやるわ…」
「ま、まあ怪我軽く済む程度でお願いします」
「さあ…間違えることもあるかもね…」
こ、怖えええ…
言い方まずったかな…あはは…
自主練は木刀で接近戦に対する練習。
射撃の練習では俺が的やらになって避けたり、それを捌いたりする訓練をした。
コンビネーション練習では俺は仮想敵みたいな感じで2人の相手をした。
ティアナさんの魔力弾は以前戦ったAAの魔導士並に鋭く、キレがあったので相当必死で俺は防御やら回避をした。
…あんたランクBでしたよね確か…成長メッチャ速くね?
コンビネーションにいたっては何がなんだかって感じだった。
幻術でフェイクを作られてどれが本物かわからなかったり、いきなり後ろから突撃されたり…
スバルにも寸止めでだけど数発喰らうだろう事態もあった。
ふう…いい訓練になるぜ…
メッチャ怖いけどな!
「…あんたなんで避けれるのよ…しかもスバルに接近されてもしぶといし」
「回避に関しては定評がありますんで。あと一応俺だって師範に鍛えてもらってるんだから…」
実弾も避けちゃいました。運よくだけど。
それにまだいくらかもらう結果になったしな…
まあこっちも何度かくらいは寸止めでいれれたし…成果も出てるからよしとしよう。
「けど回避に関してってあんまり自慢にならないよ…それだけすごいみたいな感じだし…」
それ俺も思う。
けど生き残れるし結構必需技だとは思うよ…カッコはともかく…
「まああんたのそのデバイスも使い方次第ね」
「タイミングミスしたらアウトだけどな」
「よ〜しこのままがんばろ〜!」
まあ疲れるのは疲れるけど…意外に楽しいな。
〜 自主練参加から数日後 夜 〜
自主練に参加するようになって早くも数日が経った。
今日もフォアードがなのはさんの教導の間は1人で訓練。そのあとティアナさんの訓練の手伝いのつもりだ。
今日はスバルはまたデスクワークで参加できないらしい。
はあ…もうちょい頑張れやそっち…
最近自主練には参加しないもののエリオにキャロが終わるころを見計らってジュースなどの差し入れを持ってきたりしてくれる。
ここの連中は本当に仲がいいんだな…
なんかスゲエ居心地がいい。
俺も管理局入って六課に来ようかな…
そうこう考えながらいつもの自主練している場所に行く。
だけどそこにティアナさんの姿はなかった。
「あれ?もう終わらしたのか?」
おっかしいな…いつもならスフィア使って狙いを速くする練習してるのに…
周りを少し見渡す。すると草陰から物音がした。
なんだ?
俺はその草陰に近づく。
「うっ…おあっ……ごっほごっほ…うえっ…」
「んな!?だ、大丈夫か!?」
草陰でティアナさんが嘔吐していた。
吐くほど厳しくやってるのかよ!?
「はあっ…はあ…なんだ…来たの…それじゃあ悪いけど少し付き合ってもらうわよ」
「はあ!?何言ってるんだよ!そんな顔見てやらせられるかよ!」
相当疲れが溜まってきていたようだ。
顔も相当青い。正直なんでここまでなってるのに、気付かんかったのかと自分に腹が立った。
「大丈夫よ…それに出すもの出してすっきりしたわ」
「アホか。ダメに決まってるだろ。今日はもう寝ろ」
「あんたが決めることじゃないでしょ」
………そうかい…だったらこっちにも考えがある。
「わかった。じゃあ飲み物買ってくるから少し休んでからにしろ」
「ええ…じゃあ頼むわ」
〜 医務室 〜
ジュースを買いに来る前に医務室に足を運んだ。
「シャマル先生いますか〜」
「あら?どうしたの?」
「最近少し枕が変わったせいか寝づらいんで睡眠薬もらえます?」
正直、きびしい理由な気もするけど…
「う〜ん…あんまりお勧めできないわね…」
「一晩分だけでいいんですけど。最近は結構自主練して疲れが抜けにくくて」
「はあ…しょうがないわね。じゃあ1錠だけよ。これだとぐっすり眠れば結構疲れとれるから」
そう言って何やら変わったマークのついた瓶から1錠だけ薬をくれた。
あのマークはなんだ?
「ありがとうございます」
「今日は飲んですぐ寝るのよ。それと無理しすぎないこと」
「了解っす」
そのまま医務室を出た俺は自販機に向かい、ジュースを2本買って内1本にさっきの睡眠薬を入れる。
開けたままだと不自然なのでスクイズボトルに入れ替えてから持って行くことにし、ティアナさんの所に戻った。
自主練の場所に戻るとティアナさんはまたスフィアを出して練習していた。
はあ…無理するなって言葉は俺にじゃなくてこの人に言うべきだろ六課大人陣。
「はあ…休んでろって言ったじゃん」
「休んだわよ」
いやそんな経ってないだろ。
まあいいか…
「ほれ。今飲んでおかんと辛いだろ」
「ありがと、結構気が効くじゃない」
一旦切り上げ睡眠薬入りのジュースを飲む。
「ふう…じゃあこのまま再開するわ」
3、4口飲みこみ普通に立ちあがったティアナさん。
あれ?渡す方間違えたか?
「ありが……あれ?何か…眠…気が…」
練習に戻ろうとしたが薬が効いたようだ。ふらふらとしだしたと思ったらそのまま眠りについて倒れそうになる。
「うおっと…」
倒れる前にティアナさんを支える。
まったく……無理にでも少し休ませんとこの人壊れるぞ。
まあかなり疲れとれる薬っぽいし明日には元気だとは思うけど…
そのままティアナさんを背負って部屋に運んだ。
スバルも丁度戻ってきていたようでそのまま疲れて寝たっぽいとだけ言い、預けてからエリオの部屋に戻り俺も眠ることにした。
〜 翌朝 〜
ん〜…よく寝た…
ティアナさん回復してるかな…
まだ少し眠る時間のあるエリオを起こさないようにそっと着替え、いつもの自主練の場所に向かった。
2人は既にいたようで何やら話をしている。
ティアナさんの顔を見ると血色も良くなっていて結構疲れがとれたのだなと安心した。
「お〜っす。おは」
「あんた昨日あたしに何飲ませたのよ!?」
おはようと言おうとした瞬間、ティアナさんはもの凄い形相で胸倉を掴んできた。
「……」
「あんたが持ってきたジュース飲んだら急に眠気がきて気付いたら朝…あんたそんなに邪魔したいわけ!?」
両手でさらに強く胸倉を掴み睨みつけてくる。
「ティ、ティア落ち着いて…」
「うっさい!!どうなのよ!!なんであたしの邪魔をしたいのよ!?」
っつ…
「邪魔したわけねえだろうが!!むしろ応援してるんだよ!!」
「じゃあなんで睡眠薬飲ませてまで練習の邪魔してくるのよ!!」
「お前が疲れ切ってるのにまだ練習して無理をしてるからだ!!」
「あんたが決めることじゃないでしょ!!」
こいつ…
「馬鹿言ってんじゃねえよ!あんな状態でやったてつらいだけだろうが!」
「うっさいわね!あたしには叶えなきゃならないことがあるのよ!気楽に使えもしない魔法使おうとしているあんたに言われたくないわよ!!」
「ああ、そうかよ!!じゃあせいぜい無理して体ぶっ壊しちまえ!!」
「ケイ!!ティア!!」
スバルが俺たちを落ち着かせようとするが俺もティアナさんも無視した。
俺は掴まれていた胸倉をおもいっきり振りほどく。
「俺はもう手伝わねえからな」
「あんたの手伝いなんかいらないわよ。さっさと自分の訓練でもしてなさい」
ああ、そうするさ。
「悪い、スバル。無視しちまった」
「サッサと行きなさいよ」
「ああ、行くさ。じゃあな」
そのまま俺は2人から離れ、違う場所に移動して1人で訓練することにした。
はあ……
つい言い過ぎた…カッとなるとああいこというのが悪い癖だというのに…
どうしよ…向こう完全キレてたな…
1人になったはいいがさっきの口喧嘩のことで悩んでしまう。
なら言うのよという話ではあるんだけど…
「あ〜…マジでどないしよ…」
仲直りのきっかけ作れないかな…
「ケ〜イ〜」
悩んでいるとスバルが追っかけてきたようだ。こっちに向かってくる。
はあ…おまえも人のええやちゃな…普通だったら俺にお前もキレて無視だ無視みたいになると思うよ。
「すまんスバル…迷惑かけた」
「うん…でもさっきはティアもだけどケイも言い過ぎだよ」
結構怒った顔でそう言う。
なんかスバルに説教されるのは初めてだな。
説教の前に拳が飛んでくるのがデフォだったし。
「…言った後にして後悔してる」
「じゃあ謝りに行こう」
スバルは俺の手を掴みティアナさんの所へ連れて行こうとする。
「………やだ」
「…ケイ?」
けれどもそれを俺は拒否してしまう。
「確かにさっきは言い過ぎて悪かったと思うけど、無理するの認めたことになりそうで嫌だ」
「…でもそれじゃ…」
「仲直りできんだろうな…そもそも向こう怒ったの無理を止めたことだし…」
しっかしなんであそこまで切羽詰ったみたいに訓練してるんだ?
まだ16だろ?人生それこそまだまだあるってのに…
就職年齢低いからっていくらなんでも詰め込み過ぎというかなんというか…
「無理しすぎないところまでの訓練やら勉強は喜んで応援するんだけど…吐いて、それでもいつも通り自主練長時間するのはな…」
「…わたしティアの無理してるのに止めなかった…」
「それは俺も同罪だ。昨日吐いたの見るまでちょっと顔色悪い程度にしか感じてなかったし」
実際昨日の晩まで全然気にしなかった…
ただ吐いただけども多分そのまま手伝ったと思う。
だけど執念染みた感じで自主練続けようとされたから止めたんだし…
「なんであんなに崖っぷちにいるみたいに訓練するのかが不思議だ…」
「それは……ティアの昔が関係してるんだ…ティアのお兄さんがね…」
「ストップ。言わんでいいよ」
「えっ?でもなんであそこまでって…」
いやそりゃ確かに気になるよ?すんげえ気になる。
でもな…そんな重そうな話聞くのも怖いわけよ。
「なんとなく重い過去話があるってのは了解した。それで十分。それを知らないで止めた俺を邪魔したと思うのも仕方ないとは思う」
「それじゃあ謝りに行こうよ」
「だが断る」
「…なんで?」
「…意地…」
「…そんな子供じゃないんだから…」
呆れたようにこっちを見るスバル。
うう…すまん。でもやっぱなんか意地ってのがあるわけで…言ったすぐ謝りに行くってのも…
「変なとこで意地張るね」
「うむ。周りの人曰くどこがズレてるらしい」
「自慢じゃないってそれ」
自慢はしてないんだが…
………
「…まあいいや。とりあえずティアナさんのとこ戻ってあげな」
「ケイは?」
「まあまだしばらく謝らんけど帰るまでには謝る。それに今日はもう元気みたいだし、模擬戦も3日後…もう無理したら当日に響くことわかってるだろうし」
「はあ…もうわかったよ…でもちゃんと謝ってね」
「わかってる。けどまあ応援してるってのは嘘じゃないからな。スバルもガンバレよ」
「うん!じゃあ戻るね」
ティアナさんのところに戻って行くスバル。
ふう…さて、どうしようか悩んでも仕方ないか。今日のことは模擬戦終わったら謝るとして今は自分のことに集中だ。
相手は師範。
……
あはは…魔法OKな模擬戦だからな…死ぬかも…
つづく
〜 おまけ1 〜
「ティア!」
「はあ…わかってるわよ…あれは言い過ぎたわ」
「言い過ぎってわかってるなら謝りに行こうよ」
「嫌よ」
「なんで?」
「…向こうから来ない限り謝らないわ」
「だからなんで?」
「…あいつ調子乗りそうじゃない」
「…意地っ張り」
「うっさい!」
〜 おまけ2 〜
「「「 あっ… 」」」(廊下でバッタリ会う)
「…よう。相変わらず無理なことして体虐めてるのか?」
「そんなことしないわよ。模擬戦まで日もないから誰かさんのせいで自主練も軽くしかできなくなったから」
「ほ〜残念残念。無理して今頃医務室のベッドかと思ったぜ」
「こっちもあんたのデバイスもどき壊れて今頃修理でもしてるころかと思ったわよ」
「……」
「……」
「「なんだと(なんですって)!!」」
「…2人とも子供の喧嘩じゃないんだから…」
「まあせいぜい当日頑張りな。成果しっかり出せるようにな」
「あんたこそシグナム副隊長の魔法で怪我しないように悪あがきすることね」
「……」
「……」
「「けっ (ふんっ)」」
(あはは…言い方は荒いけどお互いに応援はしてるんだ…)
「じゃあなスバル、ティアナ」
「…さん付けなさいよ」
「嫌だね。喧嘩した相手にいちいちさん付けできるかよ」
「…勝手にしなさい」
(ああ…ケイ…また余計な一言ことを…)
〜 あとがき 〜
う〜ん…本当はこの話の中でティアナ撃墜を書きたかったのですが何やらいつの間にやらいつもの長さになったので切らせてもらいました。
次回こそは間違いなく模擬戦話になると思います。どことなく隊長陣と空気が悪くなり、ティアナとも喧嘩をしてしまう今回。
そしてもうすぐ終わる六課での保護期間。
そこからどう話が続くか楽しみにしてもらえると嬉しいです。
Web拍手返信
※さすがにガチなのは、ちょっとキモ過ぎるかな。
>結構不評な設定になってしまいました(汗)
※面白かったですけどやっぱりユーノ×隊長三人の方がさらに面白いです。
>ユーノ意外に人気がある!?
※うーむ、ケイさんはノーマルカプ話の方が面白いなぁ、百合の部分が凄く変だ。
>すいません。実際百合というのがどんなものか知らずに書いてしまいました。
>調べたけど出なかったっす…答え…
※ネタは面白いですけど、以前書いた事を簡単に変更しちゃうのはどうかと…次回も期待してます
>あはは…すいません。けど実をいいますとバレンタイン書いてた時期の最終的な強さがチート気味だったので
>結構変わってしまっていたりします。基本的な話の筋は変わっていないので影響はまったくないんですが。
※むぅ………ガチか………うん、ワンパターン化しやすいのでお気を付けください。でも、ケイ………Good!
>ワンパターン化に気を付けます!
※相変わらず面白いですよ〜
―――で、モノホンだぁ〜!?〈拒絶反応が……〉まだ争奪戦の方が受け付けるな
>つくづく不評な話になってしまいました。すいません。
※えと、確認ですけど…ユーノがモテてるんすよね!?百合じゃないっすよね?
>ケイ「え〜っと…」
>ユーノ「大丈夫」
>ケイ「何が!?」
>ユーノ「必ずなのはを真っ当な道に戻してみせる!」
>ケイ(この人も10年付き合ってたのに最初の頃になんとかできんかったんか?)
※いっそユーノじゃなくてケイが三人とも修正してしまえ。「そんな大人、修正してやる!!」みたいにww
>ケイ「隊長さん達修正してやる!!」
>隊長3人「「「…………」」」
>ケイ「すいません。なんでもないです」
※ぐるぐる回って面白い小説発見!!
>ありがとうございます!これからも面白い話になるようがんばります!
※ケイ君にしてもユーノ君にしてもこの話の男性キャラは不幸がデフォですか?
>ケイ「………」
>ユーノ「………」
>エリオ「な、何!?その目は!?ユーノ先生までそんな目で…」
>ケイ「いやな…お前は不幸0だなって…」
>ユーノ「そうだね…キャロは普通だし純粋だし…」
>エリオ「え〜っと…その…」
※常人を遥かに凌ぐ身体能力で分かったぞ、ケイはゲッター線に選ばれた人間なんだな!
>そんなすごいやつじゃないっす。あっ、でもあのへタレ性格と巻き込まれ体質はある意味すごい?
※ガ・ン・バッ・テーーーーーーー
>がんばりますーーーーーーー!!
※ヤヴァイね、かなりの良SSだよコレは。アタリ引いた感じですYO
>ありがとうございます!そう言って貰えてすごい嬉しいです!
※ギンガ万歳!ギンガ万歳!何てねヾ( ´ー`)
>ギンガすごい人気が出て来ています。でもこれからあんま出番が……
>むしろ数の子が結構出てくる予定だったり…
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、