銭湯行って疲れとストレス一気に解消できました〜
でもなんでかみんなのタオル姿を見てしまい吹っ飛ばされてキレちまった…
けども風呂上りの一本で気分爽快!俺爽快!
……のはずだよね?
なんで?なんでこんなシリアスに正体とか聞かれてんの?
俺は普通の人間だああぁぁぁぁああ!!
としか言えませんです。はい。
時空を駆けちまった少年
第11話
「ケイ君…あなた…何者なの?」
すずかさんの一言があったと同時に周りの木々がざわめく。
風がすずかさんの髪をやさしく撫で月明かりがその彼女を照らす。まさに夜の女神と言う感じだった。
………
…………
……………
はい!?
いや何者って…普通の人間ですが何か!?
言ってる意味がわかんないんですけど!?
「あの…すずかさん?」
「気安く名前を呼ばないでくれるかな?私は名前で呼んでいいなんて言ってないよ?
言ったのはなのはちゃん達だけ…みんなの名前も呼んで欲しくないけどね…」
そういやすず…月村さんだけ言ってなかったかも…
まあこの場はそれは置いておこう…
色々嫌われているのは会ったときからわかっていたことだ。
「まあ…取り合えず…月村さん…人間で地球人で日本人としかくらいしか言えないんですが…」
「そう…とぼけるんだ…」
いやいや本気と書いてマジと読むくらい真剣に言ったんですが…
「いいよ…だったら力づくで聞くから…」
「へっ…って、うわっ!?」
そう月村さんが行った瞬間彼女がものすごい速さで拳を放ってきた。
俺はそれをギリギリでかわしたのだが、次も避けられるかどうかの代物だった。
「……避けた?」
「いや、そりゃ避けますって」
回避したすぐに月村さんの方を見ると不思議そうにその拳をみつめていた。
そんな一撃喰らいたくないっす!
「やっぱり普通の人とは違うね…普通の人なら今ので終わってたもん…」
ええ!?俺普通じゃないの!?
そりゃ過去にジャングルや樹海でサバイバルと剣修行しましたけど十分普通だと思うんですけど!?
どっかの異世界の人たちみたいなのを普通じゃないというんです。
魔法とかそんなん使えないのは普通です!
「とにかくやめてください!」
「じゃあ正体と狙いを言って…どうしてなのはちゃん達に近づいたの?」
「はっ?」
正体?近づいた理由?
ますますわかんねえっての。
…なんか俺怪物みたいに言われてしかも殺しでもするかのようなこと言われてる…
「ですから俺は普通の人間で剣を少し習ってるだけですって」
「じゃあどうして私達と同じ気配を感じるの?」
「気配?」
「そう……夜の一族…とはちょっと違うかな?でもそんな気配をあなたからは感じるの…」
……魔法の次は妖怪の類ですか!?夜の一族って何!?
つうか我が家は優処正しい平凡家庭ですよ!?
自慢できるのは健康で平和な家庭だってことくらいの、そりゃもうすんばらしいノーマル一般家庭です!
「そんなの知らないっす!」
「いいよ…言わないなら言いたくしてあげる…」
そう言うと月村さんの目が紅くなり纏った雰囲気が一気に変わった。
恐ろしい程に殺気が増えこちらに敵対の意思をぶつけてくる。
俺は恐怖に駆られる。
まるで大型の獣に遭遇したとき…いや、それ以上の恐怖が俺を襲う。
「行くね…」
「がっはっ!?」
小さな声が聞こえたと思った瞬間俺は腹部に激痛を感じそのまま後ろに吹っ飛ばされ、後ろの木に叩きつけられた。
「げっほ…げっほ…」
木に叩きつけられ腹部を殴られたことで俺は息がうまくできずに咳をする。
しかしその瞬間にも第2撃として回し蹴りが飛んでくる。
俺はなんとか体を前に屈め、そのまま体を転がして回避した。
ドゴッ!!
メキ…メキ…メキ…バキ、メキ、ドシャ!!
とてつもない音がしたかと思いそっちを見ると俺が叩きつけられた木が折れていた。
そこまで若く大きな木というわけではないが木を蹴り倒すほどの威力で蹴られたら死んでしまう。
「なっ!?……うっ…げえっほ…ごっほ、ごっほ」
夕食に食った腹の中のものが出てくる。
さっきの一撃で出てもおかしくなかったはずなのに先程の回避で体に一気に来たようだ。
「すごいね…この状態になった攻撃でも避けることができるなんて…」
じょ、冗談じゃねえ。
もう一撃でも喰らったら……せめて何か武器になるものは……
周りを見渡すと先程折られた木の枝があった。
しかしそれは月村さんの後ろに落ちているのでとろうにもまず彼女の後ろに回り込む必要がある。
まさに万事急須…
「少しは話す気になったかな?」
冷たい紅い目をこちらに向けつつ…そして見下すかの様にゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
正直逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
だけどここで逃げても逃げられるわけがない。
「話したいですけどもう全部話しちゃったんでもうこれ以上言えませんよ…」
「そう…じゃあもっと痛めつけてあげるね…」
俺は月村さんが踏み込んでくるその瞬間に意識を集中する。
そして彼女が一気に蹴りだそうとした瞬間に体を一気に全身全霊の力で彼女の方に駆けださせた。
月村さんは身体能力があり得ないほどに高いがシグナム師範のように洗練されたものではなく、その能力の高さに頼ったものだった。
そのおかげで俺は彼女の蹴り出しを見ることができた。
さらに俺が彼女に突進していったことが相当意外だったのだろう。
慌てて拳を繰り出してきたのをなんとか体をひねり、地面に前転をするかのように転がり込むことで
回避をしながら彼女の後ろに回り込み、木の枝を拾ことができた。
「女の子に武器を向けるんだ…」
「あいにくそんな余裕ないんですよ…」
俺はダメージを負った体に鞭をうってなんとか木の枝を構える。
そして月村さんが拳を繰り出してきたのを枝で捌く。
さらにそのまま回し蹴りが飛んできたのを体を伏せることでかわし、枝をはしらせる。
月村さんはそれを空いていた片腕で防ぎ、距離をとる。
「痛いね…」
「そりゃね…でもこっちも痛かったんですが?」
彼女の防いだ腕は木の枝の荒い表皮で擦り剥けていたようだ。血が出ている。
「血…出ちゃったね…でもね…」
「なっ…」
よく見ていくとできたはずの傷がすぐに消えた。
「な、なんでいきなり血が…」
「なに驚いてるの?私達はすぐに治るでしょ?」
不思議そうにそう言ってきた。
月村さんは言うがそんな早く治ったことはない。
そう考えたのがいけなかった。
「しまっ……がっ!?」
傷がいきなり癒えたことに驚いたせいで俺の集中は完全に彼女の攻撃から外れてしまった。
その隙を彼女は見逃さずに間を一気に詰め、俺の枝を持っていた腕を片手で掴み動けなくし、同時に俺の首を掴んでまた別の木に
押さえつけ絞め上げる。
「あっ…がっ…がぁ…」
なんとか脱出しようと枝で攻撃しようとするが彼女は俺のその腕を握り潰そうとしてきた。
あまりの力に俺は耐えられずに枝を落してしまう。
「もう手はないよね?話してくれるかな?」
俺はなんとかもう片方の腕を上げ親指を立て下に向けることで返事をしてやる。
正体も何も事実を言っても信じてもらえないのにどうしろと言うんだ。
「……………」
彼女はその返事を見た瞬間さらに力を上げ一気に絞め落としにかかる。
俺の意識はどんどん遠ざかって行く。
…もう…駄目だ…マジで…意識が…
こんなとこで死にたかねえのに…
俺の意識が遠くなり思考が消えかけたとき…俺の胸の辺りが熱くなったのを感じた。
俺はそれが何なのか分らないまま意識を落してしまった。
Sideすずか
…おかしい…
ケイ君からは夜の一族によく似た気配を私は最初に会ったときから感じた。
気のせいかとも思っていたが銭湯での本気の打ち込みに気絶もせず、さらに受け身をとれたこと、さっきの攻撃に対する反応から確信が持てた。
ケイ君は間違いなく私達一族、もしくはそれに似た一族だ。
そしてその一族が魔導士のなのはちゃん達に接触しているなんてそんなことが偶然起こる可能性は低すぎる。
どこかでなのはちゃん達のことを知り、異世界の技術を盗むために接触したのかもしれない…
もしそうだとしたらそんな危険な存在を親友のそばに放っておくことはできない。
そう思って質問しているのだが彼は答えずにいたのでこうなってしまった。
けれども本当に違うのかもしれない…
さっきの普通の人よりも圧倒的に早い自己治癒能力や身体能力をみて驚愕の顔しかしていない。
そして今の現状……もう意識が落ちかけている…
もしかして私は本当に悪いことをしてしまったのかもしれない。
「もしかしてさっき言っていた知らないって…本当?」
そう尋ねたが返事がない。
もうケイ君の意識は落ちてしまったのだろう。
そう感じて急いで首への力を抜き、彼を下ろそうとした瞬間だった。
「えっ!?」
「がああぁぁぁあああああっ!!」
「っ…きゃああ!?」
力を抜いた瞬間に突然意識を落していたはずのケイ君にものすごい力で腕を掴まれ、さらにそのまま投げ飛ばされ今度は私が木に叩きつけられた。
明らかに先程までと力の強さが違っていた。もしかしたら私より上かもしれない。
「い、一体何が…」
そう思いケイ君の方を見た。
その彼の纏っていた雰囲気はまったく違うものになっていた。
どこかのんびりしたようなめんどくさがりのような雰囲気は完全に消えギラギラとしたような雰囲気しか感じられない。
そして目は黒だった筈なのに、今は銀色に近い灰色になってさらに瞳孔が開いたようになっている。
「そっか…やっぱり夜の…」
ボゴッ!!
一族だったんだね。
そう言おうとしたのだがそれ以上は言えなかった。
鈍い音をたてながら私はわき腹を殴られ、吹き飛ばされたからだ。
「うっ…あっ…がっ…」
地面に叩きつけられ、その場で先程の一撃での痛みに襲われる。
そうしていると後ろから気配がした。
「くっ…」
私は姿を確認せずにおもいっきり裏拳を顔があるであろう位置に振り回した。
メッキ!!
そして綺麗に顔に入り、決まったとおもった。だが
「………」
ケイ君は顔に拳が当たったままで冷たい眼でこちらを睨んでいただけだった。
まるで何もなかったかのように。
「そんなっ!?……ならっ…!!」
そこから蹴りを放ったのだが今度は片腕で完全に止められてしまった。
私はそれに驚いた一瞬に
「嗚呼っ呼呼呼呼呼っ!!」
「きゃああああ!?」
今度は先に蹴りを放ったはずの私が蹴り飛ばされ、そのまま地面に十数メートルほど体を滑らされた。
地面を滑ったせいで体のあちこちに大きな擦り傷ができ、蹴られた方の半身が痛む。
「っはあ…はあ…」
痛む半身を抑えながらなんとか上半身だけを起こしケイ君の方を向く。
彼はその冷たい灰色の眼をこちらに向けたままゆっくりと歩いて近づいてくる。
「い…いや…こ、来ないで…」
私は恐怖で立たなくなった足を引きずりながら後ろに後ずさる。
忌み嫌っている夜の一族の力を使って攻撃したはずだったのに彼はまったく関係のないようにこちらに近づいてくる。
私を殺すために。
彼の殺気がそう言っている。逃げたいが恐怖で逃げることができない。
私は恐怖のあまり涙を流してしまう。それでも彼は近づく速さを変えず、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「い、いや……いやあああああ…きゃあっ!?」
叫び声を上げようとした瞬間ケイ君の姿は消え、いつの間にか私の前に現れてそのまま私の首を片手で締め上げる。
「ぁぁっああ…ぁぁ、がっ……」
「………」
息ができず、彼の首を掴んでいる腕を全力で外そうとするがまったく外れる気配がない。
それどころかあがけばあがくほど力が私の首にかかってきた。
私はなんとかしようと彼の顔を見た。その顔は恐ろしい表情で笑っていた。
灰色の眼は狂気に染まり、その口は快楽を得ているかのように歪んだ形をしている。
「っは…んっ……がっは……」
その姿は殺しに快楽を得ている鬼のような姿に私には写った。
そして私の意識が遠くにいこうとする。
「ア、 アリ…サちゃん…なの…はちゃん…み、みんな…」
私にはどうしようもできない…
もしこの状態のケイ君がみんなに襲いかかってしまったら…
そんな心配をしながらも体に力が入らなくなってきた。
そっか…私はここで殺されて死んじゃうんだ…
もっと…みんなと楽しいことしたかったな…
昔の楽しかった思い出が走馬灯のように流れ、涙を流した瞬間だった。
突然首を掴まれることで浮いていたはずの体が地面に落ちた。
そして…
「すんませんっしたーー!!!マジでごめんなさい!!つうかなんでこんな状況に!?」
「がっは!…ごっほごっほ!うげぇっほ…ごっほ…はぁ…はあ…」
突然ケイ君の腕が私の首から離れ彼が飛ぶように後ろに下がり土下座をしてきた。
えっ…一体何が…
今の発言からだと自分が今まで何をしたのかを分かっていない感じだった。
そう思い土下座してケイ君を見るといつものどこかのんびりした雰囲気が戻り、眼もいつもの黒い眼に戻っていた。
Sideケイ
ぎゃあああああ!?
なんで!?何でだ!?
月村さんに首絞められて胸の辺りが熱くなって…そんでもって意識が途切れて、気が付いたら俺が月村さんの首を締め上げて殺そうとしていた。
いやあああ!?
殺人未遂か!?
15歳中学3年生、女子大生殺人未遂!?って新聞に書き込まれるの!?
少年院行くの!?将来職につけずにこれがきっかけで極道に!?
「すんません!すんません!!本当にすいません!!」
俺は頭を思いっきり地面に叩きつけながら土下座する。
情けないけど今はこれしか本当にできない。
「本当にすいません!!お詫びは何でも言う事ききますから…だから警察沙汰は…」
「あ…あのね…と、とりあえず頭上げてくれるかな?」
そう言われたので恐る恐る顔を上げる。
月村さんの眼は紅から元の色に戻っていた。
…戦闘休止ってことか…
「ケイ君はさっきのこと覚えてないの?」
「はい…首を絞められて意識が飛んで気付いたらさっきの状況で…」
「じゃあ説明するね…」
月村さんからの説明によると俺は突然暴れだしたそうだ。
眼が灰色に変化して、しかも力が紅い眼の状態の月村さん以上になっていたそうだ。
……アンビリーバボー…
信じられねえ……俺の体がそんなんなっちまったなんて…
おかしいな…うちの家系はそんなんじゃねえ筈…
捨て子って可能性は家にへその管が残ってたからないし…血液検査も普通に通ってるし…
どうなっている俺の体!!
「えーっと…とりあえずどうしましょう…?」
「そ、そうだね…」
お互いわけがわからなくなってどうするか決めることができなくなった。
「あっ、そうだ。夜の一族ってなんすか?」
「えっと…本当に知らなかったんだよね?」
「ええ、初耳も初耳で困ったくらい初耳です」
そんな一族聞いたことないです。犬○家の一族なら聞いたことありますがあれはフィクションだし。
「夜の一族っていうのはね…簡単に言うと吸血鬼なんだ…」
「…魔導士の次は吸血鬼か…」
おうおうSFチックな魔法の次はしっかりしたファンタジー?
相当今までの価値観変わるぞコラ。
「じゃああの紅い眼は?」
「あれは一族の力を解放するとああなるの…」
へえ〜、なんかカッコいいなその眼…
「あの身体能力の高さは吸血鬼だからってことでいいんですか?」
「…うん…」
質問を繰り返しているうちに月村さんはどんどん暗くなっていく。
…スバルもそうだが体に普通の人と違う事を相当気にしているようだ。
まあスバルの体がどう違うのかはまだ知らないんだけどな。
「成程ね〜吸血鬼ね〜…」
「……」
「…翼とかで空飛べるんすか?」
「…えっ?」
この質問をしたら月村さんはきょとんとした顔でこちらを見てきた。
「いやね。吸血鬼っていったらコウモリみたいな翼で飛ぶじゃないですか?だから飛べるのかなって?」
「…っぷ…あはっ、あははははは」
「な、なんで笑うんですか!?」
「あはは…ご、ごめんね…まさかそんなこと聞かれるなんて思わなくて…あははははは」
……そこまで笑わなくたって…
「なんていうかケイ君ってバカだね♪」
「……そんな綺麗な笑顔でさらりと言わんで下さい」
いくらなんでもバカはないでしょバカは。
まあティアナさんにも初めて会った時にいきなり言われましたがね。
「で、飛べる?飛べない?どっち?」
「残念だけど飛べないよ。翼とかそういうのはないもの」
う〜ん…あったらどんなか見して欲しかったな…
「でも普通ここは血を吸うのか?とか吸われると吸血鬼になるのか?って聞かない?」
「いやいや吸血の時点で血は吸うのわかったから…というか吸われるとなるんすか?」
「ううん。吸ったとしてもなるわけじゃないけど…」
じゃあ問題なし。
吸って下僕にされるとか、死んじゃうとかそういうのがないんだったら問題なし。
あとさっきみたいに殺されかけないんならね。
「……嫌悪感とかそういうの感じないの?」
月村さんが不安と不思議さを混ぜたような顔でそう尋ねてきた。
「いやなんというか……慣れてきたのかな?スバルやらも魔導士だしなんかインパクトが緩和されたというかなんというか…」
う〜ん…うまく説明ができん…
とりあえず今までの俺の常識と普通の定義は絶賛崩壊中ですから。
しかもどうやら俺も普通ではないらしいし。
「高町さんとかは…」
「知ってるよ。ずいぶん前に私から話したの…すごい不安だったけどみんな変わらないで今でも仲良くしてくれている」
月村さんはとても嬉しそうに、そして感謝をしている表情で教えてくれた。
ものすごくいい友人に恵まれているようで俺はそれが羨ましく感じた。
「さて…月村さんへの疑問が解決したところで次は俺の体ですね」
「うん。でもさっきの状態は何だったんだろう…灰色の瞳に私たち以上の身体能力…夜の一族とは少し違うみたいだし…」
はあ…マジでどうなっている俺の体…
なんというか不安になるぞ…
「ただね…私はそのときの姿を見てまるで鬼だと思ったの」
「鬼…ですか」
鬼…ね…
まあ吸血鬼と微妙に接点はあるような感じだな…
日本とヨーロッパっていう発祥の地の違いとかそんなだし。
「じゃあ何ですかね…俺の家は実は鬼の一族だったと…」
「でもね、アリサちゃんの執事の鮫島さんが調べた内容だとどうもそうじゃなくて本当に平凡な家系みたいだったんだ。
ケイ君は捨て子かとも思ったけど出産記録もちゃんとしてたし…」
さらに謎は深まるばかりだった。
そもそも自分の記憶が飛んでその状態になったのだとするとまたなる可能性もあることになる。
そんな状態を他人に見られたらどうなるのだろうか…
普通の人は俺を完全に避けるようになるだろう。
下手をすると家族も俺を見捨てるかもしれない…
「…気にしてもしゃあねえか…」
はあっと脱力して頭をかく。
ここはシリアスに行くべきとこだろうが…月村さんもスバルにもそういう体の悩みがあるけど元気に生きてきてんだ。
ここで1人でシリアスになるのは辛気臭いだけだしな。
「気にしてもしょうがないって…」
「月村さんも体のこと気にしてんのに俺が気にして暗くなっても辛気臭いでしょ」
「…ここは暗くなって励ましてもらって元気になる所じゃないかな…」
月村さんは苦笑いしながら言ってきた。
「じゃあそうします?俺はそれでもいいですよ?」
「大雑把な性格だね…」
またしても苦笑いでそう言われた。
そうかな?まあいいか。呆れられようがどうしようがいじけるよりいいさ。
暴走は多分気絶か死にかけるとなるだろうしそうならんときゃいい。
「さて、全部じゃないけど解決したし戻りましょうか」
そういいコテージへの方向へ体を向ける。
すると月村さんは俺の腕を取って歩き出そうとするのを止めた。
「ケイ君は…私を避けないの?」
月村さんが確認のように聞いてきた。
先程の会話で特に気にしないことは確信できたのだろう。
そこに不安の色はあまり感じられなかった。
「あっ、じゃあ今まで通り…じゃなくてとりあえず昼間とかでの殺気を飛ばすのをやめてくれたら皆さんと同じように接しさせてもらいます」
「うん。じゃあよろしくね♪」
にっこりと今までの殺気を隠した笑顔とは違い、本当に綺麗でそしてかわいらしくもある笑顔で挨拶された。
「こちらこそよろしくお願いします。月む…」
月村さんと言おうとしたら口を人差し指で止められた。
そして下の方から覗きこむような目で
「すずかでいいよ♪」
「は…はいすずかさん」
ぐあああああああ!!
正直効きました。はっきり言ってかわい過ぎです。反則です。
さっきまで殺されそうだったのに何考えてるんだ俺は!
「それとね…私達一族にはあるんだけど聞いてくれるかな?」
「…どないな契約で…」
まさか奴隷とかはないよね…
「他の人にこの事を公言しないでいること。それに私達と友人として過ごすか恋人として過ごすかってことだよ」
「友人でお願いします」
「即答だね…」
俺は即返事した。
だって恋人とか無理だもん。釣り合わないもん。
なりたい気もするけど絶対不可能。天変地異が起きようとも無理。
「それじゃあ契約の言葉を言って誓ってくれるかな?」
うええ…なんか照れくさいなこれ…
俺は深くそしてゆっくりと息をし、すずかさんの目をまっすぐに見つめる。
すずかさんも俺の目をまっすぐ見つめその誓いが真実であるかを確かめるかのように見つめる。
よし、性に合わんけどここはそれらしくいこう。
「俺、武ノ内ケイはこれから先何が起きても月村すずかとの契約を守り、生き続けることをここに誓う」
「うん…嘘は言わないでいてくれたみたいだね…よかった…」
すずかさんは俺の誓いを聞いた後安堵するかのように優しく呟いた。
両目を閉じ心にしみ込ませるかのようにゆっくりと息をしている。
「こんなときにまでいつものおちゃらけた雰囲気は出せないですよ」
「いつもそんな感じで凛々しくしていれば結構カッコいいのに」
「冗談でしょ。それにいつも真面目にしてたら疲れますって」
手をひらひらさせながら言われたことを否定する。
俺はめんどくさがりだしまったりのんびりするのが好きですし。
「なんだか少し勿体ないよ?」
「いいんですって別に。それにしても最近は色々起きるな…」
「なんだか変化ばっかりで大変だね」
すずかさんはにっこりと俺に言う。
確かにそうだな……いつもの日常から突然魔導士の戦闘中のところに飛ばされて警察っぽいのに連れてかれて、新しい友達ができて、
剣の師範ができて、魔法を使えるようになろうとして……一時帰ってきたら不思議な一族と勘違いが起きて、俺の体が普通と違うってのがわかって…
…
………
んっ?勘違いが起きて?
「あれ?今気づいたけど…もしかして俺ってほぼ勘違いで殺されかけた?」
「今頃気づいたの?」
首を傾げて不思議そうにそう言われた。
ええーーー!!勘違いで死にかけるってどんだけえ〜
アホじゃん俺!!不幸過ぎだ俺!!
「けど私の感覚も間違いじゃなかったし、私も殺されかけたんだよ?これでお相子さまだね」
いやそりゃそうですけど…
「なんか納得いかねえ…」
「あはは…ごめん…ね」
「うおっと…」
謝ろうとしていたらすずかさんが突然倒れかかってきたのでそれを受け止めた。
「ど、どうしたんすか?」
「あはは…多分血が足りなくなったのかも。輸血パックは家なのにどうしよう…」
どうやら吸血鬼だから血が足りなくなって力がでなくなったようだ。
よし、しゃあねえからおぶって帰るか。
そう思っておぶりますと言おうとしたが1つの考えが俺の頭をよぎった。
待てよ…もし森から立てなくなってお互いボロボロの状態でみんなの前に出たとしよう。
見つかる → 俺達服装乱れのすずかさん立てず → 変な誤解発生 → 誤解とこうとするが聞いてもらえず = 集団リンチ発生
うん。やっぱしない。別の方法に決定。
しかしそうなると残る方法は1つのみ……それをしたら完全に俺がやばいが…殴られるよりいいか…
「俺の血でいいなら飲みます?」
「えっ?でも…」
「吸血鬼にならんのなら問題なしです。むしろここをサッサと出ない方がまずいです」
早く戻ろう。そうすれば誰もいなくて着替えやらの暇もきっとあるはずだ。
「じゃあ…少しだけもらうね?」
すずかさんはゆっくりと俺の首筋にその顔を近づけてきた。
それと同時に俺の鼻は甘美な匂いを感じ取り、その匂いが俺の頭の働きを消すかのような効果を出してきた。
そのせいで俺は何も考えられなくなった。
ただ一瞬のチクリとした感覚が首にきて、その後は身体から力が抜けるのだがどこかそれを悦んでしまう不思議な感覚だった。
「んっ…ちゅっぱ…こっくこく……あむっ…ん、ん…」
さらにすずかさんが血を飲んでいる声や小さな音が俺の耳に入ってくる。
非常に小さな声と音のはずだが距離が近すぎるためよく聞こえてしまう。
「んあっ……ありがとうね…」
「いえいえどういたしま…あれ?」
今度は俺がふらふらしてしまった。
貧血になるだろうとは思ったが想像以上にふらつく。
「ごめんね…その…あんまりもおいしすぎたからつい飲み過ぎちゃった…」
「の…飲み過ぎたって…」
どんだけ飲んだこの人…マジで立つのがやっとだよ…
「それじゃあ行こっか♪」
「う…ういっす…」
こうして元気になって軽い足取りでコテージに戻るすずかさんと貧血でふらふらと戻る俺だった。
コテージに戻ると誰もいなかったためすぐに別れて着替えを済ませてみんなの帰りを待つことにしたのだった。
いやホントに誰もいなくてよかった。この服装見られたら完全に死んでたぜ。
また勘違いでな。
〜 数十分後 コテージ 〜
「「「「「「ただいま〜」」」」」」」
「ケイ〜無事ロストロギア捕獲したよ〜」
着替えも済ませゆったりしていると六課の全員とアリサさんが帰ってきた。
スバルはいつものように無事にロストロギアを確保したのを報告してくれた。
パッと見誰も怪我してねえな。よかった、よかった。
「さて…ほんならミッドに帰るで」
えっ?マジ?一晩くらい泊まっていいんじゃねえの!?
「そう…もう帰っちゃうんだ…」
「一晩くらい…ってわけにもいかないのよね」
アリサさんとすずかさんも同じことを思ったようだ。
しかし無理に引きとめようとはしなかった。
「ごめんね」
「今度は休暇の時に遊びに来るよ」
フェイトさんとなのはさんも名残惜しそうにすずかさんとアリサさんにそう言う。
う〜ん…大人の仕事の世界は色々大変だな〜
「というわけだからあめえらサッサと荷物纏めろよ」
「明日も任務が終わったばかりでも訓練はあるのだからな」
「「「「はい!!」」」」
副隊長の2人がそう言うとフォワード4人は返事をしてすぐに自分の荷物の整理を始めた。
俺は荷物がほとんどないようなものだったので適当に袋にもってきた服をいれソファーに座ってゆったりと待つことにした。
「もう準備は終わったの?」
「ええ。もともと少なかったんで」
座っていたらすずかさんが話しかけてきた。
「あっちでなのはさんやフェイトさん達と話さなくていいんですか?」
俺はそう尋ねながらなのはさん達の方を指さす。
そこではアリサさんがなのはさん、フェイトさん、はやてさんと別れを惜しんでいた。
「すぐに言いたいことだけ言ってから戻るよ」
「言いたいこと?」
なんだ言いたいことって…
まさか…
「森でなんでもするから許してくれって言ってたよね?」
「い、いや…そうですがでも」
「言ったよね?」
「ハイ、イイマシタ」
覚えていらっしゃいましたこの方。
一体俺何命令されるんですか!?
「だからね。今度地球に帰ってきて会う事があったら血を少しわけてね♪」
「…えっ…」
血を要求されちゃいましたよ。
いやいや、また吸われるの?吸血鬼に吸われたからってなるわけじゃないのはいいけどまた貧血になるよ!
「できたら勘べ…」
「男の子なのに嘘言うの?」
すずかさんはにっこりと笑顔でそう言ってきた。
そんな有無を言わさない笑顔で言わないで欲しいって。
「…できるだけ軽めにお願いします…」
「大丈夫だよ。そこまでひどく吸わないから。それに今度こっちに来たときは歓迎してあげるから。ね?」
いやそう言う問題じゃねえです…
けど歓迎か…お金持ちだしうまい食い物が出てくるかな…
「じゃあそのときはよろしくです」
「うん。じゃあ私はなのはちゃん達のところにもどるね」
すずかさんが幼なじみ組に戻ると俺はソファーに寄りかかって頭を天井に向ける。
「あ〜〜〜〜…なんかダリイことになったな〜〜〜」
俺の体の変ことが判明して、しかも他人の超重い秘密まで知ってしまった。
けど同時に知り合いもできた。
まあ悪いことばっかでは……なかったのか?
どっちだ?
「じゃあ帰ろうか?」
「「「「はい!」」」」
「…ういっす…」
「あんたはもっとちゃんと返事してから帰りなさい!!」
「ぎゃああああ」
返事を適当にしたら最後の最後にまたアリサさんに飛び蹴りかまされてしまった。
しかも当人は爽やかに汗をぬぐいでるように楽しそうにしている。
今回の出張の結果。
海鳴には俺を殴るのとかが好きな方が多いということが判明。
これからは気を付けましょう。そうしましょう。
おわり
〜おまけ1〜
「…行っちゃったね…」
「そうね…で、すずかはあのケイとかいうのとなんかあったの?最初のギスギスしたのなくなったじゃない」
「気づいてたの?」
「何年親友してると思ってるのよ」
「あはは、そうだね。大丈夫だよ。解決はしたから」
「そうならいいわ。……そういえばなんかやけにつやつやしてない?」
「うん、ちょっと血をわけてもらったの」
「血って…あんた話したの!?」
「うん。でも契約もしてくれたから…」
「そ、そう…」
「うん。……でももう一度飲みたかったな…」
「ほ、程々にしてやりなさいよ…」
「大丈夫だよ♪」
(ケイ…あんたこれから苦労するわ……もう蹴らないであげるからからがんばりなさい…)
〜おまけ2〜
帰って翌日早朝、エリオの部屋
「ぎゃああああああああ」
「ど、どうしたのケイ兄!?」
「ぜ、全身が筋肉痛で痛え!!この痛みはありえねえ!!」
「…なんで筋肉痛に…」
「俺が聞きたいわ!!」
プシュー
「ケイ。サッサと来んか!!」
「師範筋肉痛で動けないんでパスさせてください!」
「ダメだ。昨日の一件が済んでいない」
「んなアホな!?火のことくらい勘弁して下さい!」
「いいから来い。サッサと仕置きをする」
「ぎゃあああ!痛い!痛いから引きずって運ばないで!」
「……ご愁傷様ケイ兄……」
あとがき
非常にまずい…
更新ぺースが落ちてきている…
今回も結構かかってしまいました。すいません。
最後のおまけでの筋肉痛は暴走による反動だとでも思ってくださるとありがたいです。
さて…次回はついにナンバーズが登場。
なるべく早く仕上げれるようがんばります。
あと実は引っ越しのためアドレスが今回から変わってしまったのでメールで感想を送ってくれる方すいません。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、