恐怖が植え付けられた。
 人が空を飛び、マシンガンらしき武器を向けている。
 非現実である。
 ケンカや闘争に巻き込まれたことはある。
 だから、ある程度の殺気や状況には慣れているつもりだ。
 だが、今起きていることは、理解できなかった。
 本能的に、武器は本物だと告げているし、脅しても無いことも判る。
 故に足が竦み、虚勢張りたくても張れない、恐怖に震えている自分がいる。

「……はぁ、度胸があるのか無いのか、ハッキリしてくれないか?」

 毒気を抜かれた口調で言い放つ。
 時覇の態度は『渡さない』と出ていても、目の色は恐怖に染まっているからだ。
 どうしようもない状況に、ゴスペルの殺気は薄れていった。
 そして、不意に殺気を放つのをやめた。

「まっ、当分の間は寝ていてくれ――スリープスナップ」

 ゴスペルが、相棒のデバイス――ストライククラッシャーの引き金を引いた。

「 !? 」

 そして、時覇の視界は白く染まり、やがて闇に包まれた。





「……ふぅ、あとはこいつらを回収するだけだな」

 ゴスペルは、空中から降りてくると二人に近づき、魔法を発動させた。
 そして、二人は閃光に包まれ、次の瞬間――消えた。

(ゴスペル)
(ロングイか、どうした?)

 念話に応答するゴスペル。

(ヴォルケンリッターの将は?)
(今さっき偶然居合わせた時覇と一緒に眠らせて、先に艦の方に飛ばした所だ)

 背伸びをしながら答える。

(そうか……それから、そこから離脱を命令する。今から五分後に、時空拡散弾と魔力無効化弾の同時使用する)
(アレを使うのか!? しかも二つ同時に……正気の沙汰か!?)
(そうだ。ラナンが手はず道理、アースラに侵入していたからな。脱出した際の追撃をかく乱する為に、な)
(わかったよ)

 呆れ口調で答えるゴスペル。

(あと、すまないが……レニアスフェイトを――)
(わかってるよ。レニアスフェイトを連れて帰る)
(頼む)

 そこで念話は終わった。

「はあ、何というか……シスコンと言うのか?この場合は」





 公園・アスレチック広場上空では、バルデッシュとバルデュシュ・ネオのぶつかり合いが、行われていた。
 フェイトのフォントランサーに、レニアスフェイトの鉄壁のシールド。
 高速戦闘に、遠方射撃の打ち合い……、まるで、フェイトとなのはが戦っている様だった。
 フェイトは、得意な高速戦闘を。
 レニアスフェイトは、高速戦もさる事ながら、なのは並みの遠隔精密射撃と鉄壁の防御を行っている。
 はやてとクロノは、レニアスフェイトが放ったバインドに捕まったままだった。

(クロノくん……まだ?)

 呆れ口調で念話するはやて。
 リインフォースも不満な顔。

(ま、待ってくれ。あ〜して、こうして……何故解けない?)

 解けそうで解けないバインドに、頭を悩ませるクロノ。
 そのやり取りが行われている頃、フェイトとレニアスフェイトの戦いは、激しさを増していった。

“アイシングサンダーランサー・ファランクシフト”
「セット――ファイア!」

 アイシングサンダーランサー・ファランクシフトが、フェイト目掛けて放たれる。

“フォントランサー・ファランクシフト”
「一撃必倒、フォントランサー・ファランクシフト!」

 僅かに遅れながらも、フォントランサー・ファランクシフトを打ち込むフェイト。
 そして、フェイトとレニアスフェイトの中心から、ややフェイトよりに相殺しあう。
 その爆発で、氷の欠片がばら撒かれる。
 フェイトは、マントで氷を防いでいたが、何粒かはこびり付いてしまった。
 ソレを確認したレニアスフェイトは、唇を歪めた。

「アイシングバインド!」

 大気を一瞬で固めたような音が、空間に鳴り響く。

「なぁ!?」

 はやてと、クロノと同じように拘束されるフェイト。

「これで、チェックメイト!」

 ハーケンフォームで斬りかかるが――

「ガトリングバスター!」

 フェイトとレニアスフェイトの間を、直径三十センチの閃光が何百発も飛んできた。
 レニアスフェイトは後ろに飛び退き、ガトリングバスターが飛んできた方向を見た。

「リンバ!」

 邪魔された事に怒りを露(あらわ)にするレニアスフェイト。

「シャマル特別捜査官のおかげで、お前さんの邪魔できたぜ」

 多少ボロボロであったが、戦闘には支障は出ないらしい。

「一応再起不能にはしたはずなのに……」
「ああ、それについては管理局の医療班が来てくれてな、シャマル特別捜査官を一気に集中治療して、俺に回復魔法を掛けてくれたって訳」
“何と言うか、荒業というか……”

 呆れ口調で言うバルディシュ・ネオ。
 そこで、氷とガラスを砕くような音が上がる。

「よし!」
「やっと解けてたよ!」

 アイシングバインドを解いた二人。

「フェイトちゃん、待ってぇな。今外すから――リインフォース」
「はい、マイスターはやて! 解除プログラム魔法、起動します」
「ありがとう、はやて、リインフォース」

 と、解除作業を行う二人。
 これで、一対四――正確には、一体二となった。

「これで、形勢逆転だな」

 デバイスを向けるリンバ。

「くっ!」
“(マスター……ファイナルシステムを起動しますか?)”

 バルディシュ・レオは、マスターであるレニアスフェイトに念話で言った。

( !? 駄目、それだけは絶対駄目! あんなのを使うくらいなら……いっそう――)
「――いっそう、ここで……、死んだ方が――マシだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 闇雲に突っ込んでいくレニアスフェイト。

「ちっ、玉砕覚悟かよ!」

 デバイスを手元で回転させ、レニアスフェイトに向ける。

「おい、リン――」
「ドライブバスター・エアインパクト!」

 クロノが止める間もなく、リンバのデバイスの先端に、猛スピードで強大な風が渦巻き始めた。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そんな光景を気にする事無く、ハーケンフォームで斬りかかるレニアスフェイト。

「照準――ファイヤ!」

 その掛け声と同時に、強力な魔力の篭った渦巻く風がレニアスフェイト目掛けて放たれる。
 そして――レニアスフェイトが消えた。
 魔法による吹き飛ばし出は無く、完全に消えたのだ。

「なっ!? どこへ行きやがった!」

 慌てるリンバ。
 どうやら、今の攻撃はかわされた様だった。
 だが、疑問は残る。
 かわして、動揺している所を斬ればいいのに、仕掛けてくる気配――レニアスフェイト自身の気配が全く無かったのだった。

「マイスター、検索結果が出ました」
「どうやったんや?」

 いつの間にか、作業が終わり、いち早く検索魔法を掛けていたようだ。

「はい、何者かがレニアスフェイトさんに強制転移魔法を使用したらしくて……既にこの区域から離脱した模様です」
「そうか……リンバ執務官」
「なんだよ、クロノ提督」

 ぶっきら棒に答えるリンバ。

「今のは攻撃魔法ではなく、拘束魔法で捕まえることが出来たと思うんだが?」
「どう見ても玉砕覚悟相手に、拘束もへったくれもないはずだが?」

 その言葉をキッカケに、睨み合う二人。

『みんな、聞こえる!?』

 そこへ、エイミィから通信が入ってきた。

「エイミィか!? こちらクロノ!」
『クロノくん、丁度良かった! 今その場に居る人たちだけでいいから、すぐアースラに連れて戻ってきてくれる!?』
「いったいどうしたんだ?」

 困惑するクロノ。

『ラギュナスが、時空拡散弾と魔力無効化弾をアースラの近くで爆発させようとしているのよ! それに、問題が発生したの!』
「なんだって! それに問題って……?」
『とにかく、リンディテ提督とレティ提督二人の命令だから。今すぐアースラに戻ってきて』
「わかった! ……全員、一旦アースラに戻るぞ!」

 そして、四人はアースラに戻っていった。





 なを、時空拡散弾は文字道理の効果を発揮する。
 が、時空空間を拡散させるということは、時空を行き来するアースラなどの時空艦が使用不可能になるからである。
 だが、転移魔法での移動は何とか可能だが、AAA+ランク以上の転移能力を持っていないと不可能になってしまう。
 しかし、それに追い討ちを掛けるように魔力無効化弾を使うのだから、完全になのは達の世界とは断たれる事になるのだ。
 ついでに、今アースラがいる場所は時空空間なので、下手すれば次元の狭間に永遠とさ迷う事に成りかねないのである。





「その後、クロノと通信してから二分後に、時空拡散弾と魔力無効化弾が同時爆発する。
 その影響を受け、アースラは中破。その艦内での爆発から、フェイトとはやてを庇ってクロノ提督が重症となる。
 そして、時空拡散弾の余波が来たので、フェイト・T・ハラオウンと八神はやてが、ラースラの壁となった為、撃墜は免れたが両名は魔力の大量消費と軽症した。
 両名の回復は、三日掛かると推測される。
 結果、アースラ中破及び、クロノ提督を含む局員七十六名が、一週間から三ヶ月以上の怪我を負った。
 その為、アースラ一同はラギュナスと桐嶋 時覇の件から、一時離脱することになりました。
 ……以上で、報告は終わります」

 女は報告書に記載されていた事を、男に読み上げて報告した。

「そうか……と、なると」

 男は椅子から立ち上がった。

「桐嶋時覇は、ラギュナスに渡った事になるな」
「はい、その通りです」

 男は全て見透かしているようだった。
 今まで起きたこと。
 そして……これから起こることも。





<管理局・報告書の一部分からの抜粋>
 この出来事で判明したことが、一つだけあった。
 先ほどの世界――時覇がいるなのは達の世界だと思っていたが、どうも違うことが判明した。
 あの時、なのはが海鳴町と言った町は、別の町だった。
 確かに似ているが、どうも平行世界の一つだったらしい。
 詳しく調査したいが、現在ラギュナスが使用した時空拡散弾と魔力無効化弾した事で、時空が乱れ、魔法が使えない為、現時点での調査は不可能である。












































第五話:二つの決断(後編)・END























































リョウさんもとい――リョウスケ&○○○○に感想を言ってもらいましょう!


※今回は『キャロ&ガリュー』で、お願いします。
ガリュー「……」

良介「……」

ガリュー「……」

良介「……」

ガリュー「……(頷)」

良介「……(首を振る)」



キャロ「す、凄い……目で議論しています」







あとがき
 改正と言っても、軽く手を加えた程度と、文章の訂正したくらいです。
 あとは、追加ですね。
 あとは、第六話のタイトルを一応仮にしました。
 変更が予想されるからですよ。
 最後は、暴走妄想爆走烈風疾風陣風外交鮫市場!
 などと、意味の通じない早口? 言葉を考えました。
 これ書いてるときに(笑
 読み方:ぼうそう もうそう ばくそう れっぷう しっぷう じんぷう がいこう さめいちば!
 です。(スペースは、読みやすいように入れました)
 では、次の話か、HP中で。






制作開始:2006/4/3〜2006/4/5+2006/4/6
改正日:2006/12/21〜2006/12/23+2006/12/28

打ち込み日:2006/12/28
公開日:2006/12/28

修正日:2007/10/4



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