その出会いは、偶然だったのか
 それとも必然だったのか……
 過去の爪あとか、未来の出逢いからなのか
 運命の悪戯に翻弄された青年は、今――






























何かに出逢う者たちの物語・外伝
魔法少女リリカルなのは 〜二つの運命と螺旋に出逢う者〜












































 不意に、時覇のグローブの水晶が輝きだした。

「え……公園の方」

 すぐに走り出す時覇。
 そして、鋼の音や、ジェット機が飛んだような音も、段々大きくなって来た。

「この辺からだが――」

 言いかけた瞬間、爆発音が降り注いできた。

「上から!?」

 時覇は上を見上げた。
 そこには、空中爆発した時に起きる、煙が広がっていた。
 その煙の一部から、何かの塊が煙にまみれて、こちらに向かってもの凄いスピードで飛んできた。
 時覇と煙の距離が半分になった時、その煙が晴れてきた。
 そう、それは――

「人!? ってぶごばぁ!」

 確認できたのはいいが、逃げ遅れた為に直撃を受けてしまった。
 反射的に抱え込む。それと同時に、おぼろげな意識の中で、何かが地面に刺さる音が聞こえた。
 しかし、その勢いは殺すことは出来ず、一緒に転げ回り、数メートル付近で止まる。

「あ、たたたたたた〜、サンクス」

 相棒に礼を言った。
 時覇は、常にこのグローブに守られていた。
 本来なら、死んでも可笑しくない事故からでも、中傷傷程度で済んでかつ一ヶ月のケガも二、三日ほどで治ってしまっていたのだ。
 その時は、いつもグローブをしていた時で、緑の水晶が輝いていた。
 だから、投下物を鳩尾(みぞおち)に受けても、軽く殴られた程度で済んだといえる。

「って、アレは……剣?」

 剣は剣だが、あんなに装飾が施された剣は見たことも無い。

「で、この投下物もとい、人は……女性!?」

 赤い髪の毛にポニーテールで、コスプレの様な服装、極めつけは前方に付き刺さっていう剣らしき物。コスプレの様な服装 だが、そのコスプレの様な服装は、あちらこちらに焦げ目や破かれたあとが目立った。

「…………」

 黙る時覇。

「おい、青年」
「え?」

 辺りを見回すが、誰もいない。

「上だ、上」

 時覇は、ゆっくりと上を見上げた――そこには、宙に浮かんでいる男がいた。
 しかも、ゲームに出てきそうな銃を持って。

「その女を渡せ」

 そう告げた。
 しかし、困惑する時覇。
 時覇と男は、見詰め合っていた。
 反らせば殺させる。そう、時覇に悟らせていた。
 現に、自分――時覇を中心に、半径50メートル以内は男の殺気に包まれていた。
 つまり、今下手に動けば、ゲームに出てきそうな銃で、撃ち抜かれるのは必然。
 この状況を、どう打破するか考えようとした時、男からの殺気は一段と増した。

「いい加減に答えろ。その女……渡すか渡さないか、どっちか言え」

 そして、銃口を向ける男。






































 この瞬間――運命の歯車が動き出した。
 そして、その歯車によって開かれる扉は、二つに一つ。
 青年の人生が――いや、時空の命運が大きく変える出来事を選択することになる。
 だが、その時の青年が選択した運命に直面するのは――まだ少し、本当に少し先の話であるが。






































第四話:二つの決断(前編)







































 そして時は、数十分ほど遡る。






































 はやての攻撃で上がった煙だったが、未だ晴れることもなく留まり続けていた。その中からディバインシューターが飛び出てきていた。
 数は五十七個くらいだが、普通のディバインシューターの攻撃力とは桁が違う為、武装局員の四分の一が落とされていた。
 そして、クロノはこれ以上長引くと危険と判断し、エイミィのスキャン結果を待たずに、攻撃開始を決意した。

「全員、あの煙に一斉攻げ――」
『ちょっと待ったッ!』

 クロノの号令は、エイミィの怒鳴り声で中断された。

「どうしたんだ、エイミィ!?」
『どうしたの、こうしたの、あの煙の正体が判ったの! だから、一旦あの煙から距離を置いて!』
「わかった。全員、一時退却!」

 その号令に、武装局員たちがディバインシューターの雨あられの中を掻い潜りながら、煙から距離を置き始めた。

「クロノくん!」

 はやてが怒鳴った。

「え――っく!」

 死角から飛んできた攻撃を何とか防ぎ、離脱に手戻っている武装局員を援護した。

「はやても、シグナムも早く!」

 ブレイズキャノンを放ちながら、クロノは二人に呼びかける。

「ああ、分かっ、てる!」

 シュランゲバイセンで、ディバインシューターを次々と叩き落していくシグマム。

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍――ミストルティン!」

 石化魔法・ミストルティンを、煙に打ち込む。
 だが、光の槍が突き刺さった瞬間、ガラスが砕けたような音を上げながら、根元から砕け散った。

「なんやて!?」

 驚きの余り、動きを止めてしまった。
 煙はその隙を見過ごさなかったように、はやてに向かってディバインバスターが飛んできた。

「主はやて!」

 シグナムが、はやての元に向かうが、どう見ても間に合わなかった。
 しかし、それでもシグナムは飛んでいった。

「はやて――っくぅぅぅぅぅ!」

 シグナムより近かったクロノだが、ディバインシューターの全方向からの攻撃を防ぐのが精一杯だった。
 そして、はやてが居た場所を打ち抜いた。

「はやてぇぇぇぇぇぇ!」

 閃光が走った。
 だが、そこには何もなかった。
 シールドを張った場合、攻撃との衝突で爆発が起きる。打ち落とされた場合も、はやてが落ちていくのだが、どちらでもなかった。
 ディバインシューターを防ぎきったクロノと、シグナムは辺りを見回した。

「はやてはこっちだよ」

 クロノの後ろから声が聞こえた。

「フェイト!」
「テスタロッサ!」

 クロノとシグナムが同時に名を呼んだ。

「はあ〜、さすがフェイトちゃんや。ありがとうな」

 姫様抱っこ状態で礼を言うはやて。

「うん。それよりもクロノ、ここから一旦離れないと!」
「あ、ああ、シグナム!」
「わかっている!」

 四人は、煙から距離を取った。
 追跡してくると思ったが、煙はその場から離れることなく、その場に留まった。
 煙が見えつつも、攻撃が届かない場所まで来た。
 だが、先に離脱した武装局員たちは、何故か見当たらなかった。

「エイミィ、他の者たちは?」

 だが、通信は帰ってこなかった。

「エイミィ? エイミィ、応答してくれ! エイミィ!」

 何度も通信を試みるクロノ。

「駄目やクロノ、念話も通じへん」
「こちらもだ」

 はやてとシグマムも念話を試したが、通じなかった。

「これからどうするの?」

 フェイトがクロノに尋ねる。

「出来ればエイミィに、あの煙の正体を聞ければ……、それなりの対策ができるのだが」

 片腕を押さえる。

「他の武装局員たちの行方不明、通信及び念話の遮断、トドメにあの煙には下手に手出しできんよーやわ」

 と、はやて。

「たしかに、この状況で下手に動くのは危険だ」

 何故か、はやてクロノの間の後ろにロングイ。

「待て、何故お前がここにいる」

 レヴァンティンをロングイに突きつける。

「ふむ、上手く馴染んだつもりだったんだが……梵(ぼん)」
“クラッカー・インパクトinゼロ距離ヴァージョン”

 ロングイの持つデバイス――チェンジング・インフィニティを中心に、魔力が広がった。
 そしてロングイを含む五人は、爆発に巻き込まれた。





『全員、あの煙に一斉攻げ――』
「ちょっと待ったッ!」

 クロノの号令は、エイミィの怒鳴り声で中断された。

『どうしたんだエイミィ!?』
「どうしたもこうしたも、あの煙の正体が判ったの。だから、一旦あの煙から距離を置いて!」

 慌ててクロノに言った。

『わかった。全員、一時退却!』

 その号令に、武装局員たちがディバインシューターの雨あられの中を掻い潜りながら、煙から距離を置き始めた。

「で、あの煙の正体は!?」

 急かす様に聞くリンディ。

「それなのですが、あの煙だけが解析不能なのです!」
「もう一度解析を!」

 激を飛ばすリンディ。

「もう三回目です!」

 もう一度キーボードを打ち込みながら、叫び返す。

「それは間違いないのよね?」

 あくまで冷静に聞くレティ。

「はい、ですからクロノ提督たちが離れてから伝えようと――」

 言葉を遮る様に、アースラの警報が艦船体に鳴り響いた。
 そして次の瞬間――アースラのエネルギーが、いきなりダウンした。

「どうなっているの!?」

 今度はレティが激を飛ばす。

「大変です、レティ提督! アースラ内部の一部の電力以外は、すべて停止しています!」
「そんな!? ――他の局員の状況は!?」

 キーボードを操作するエイミィ。

「駄目です、確認できません!」
「通信も完全に断たれています!」

 他のオペレーターの報告も飛んできた。

「く、どうなさいますか、リンディてい、と……、く……」

 エイミィが、リンディの方を向くと、そこにはフード深く被った男らしき人物が、リンディの首元に逆手に持ったナイフを突きつけていた。
 その光景を見たレティとオペレーター達も、驚愕したのだった。





“マスター、お怪我は?”

 煙が晴れ、視界が良くなっため、チェンジング・インフィニティが、主の様態を尋ねる。

「……左腕の筋肉繊維の1589番から1697番が少々痛かった」
“……問題ないようですね”

 主のボケをスルーするデバイス。

「冗談だ。それよりも……さすがに、この程度では落ちないか。さすが第一級捜索指定物相手に、犠牲者を一人も出さなかった集まりだけのことはあるな」

 何とか持ちこたえたクロノ達だが、今の爆発で魔力と体力を消耗してしまった。
 クロノはフェイトに支えられ、息を整えていた。
 フェイトは、そんなクロノを支えながら、ロングイに困惑の眼差しを向ける。

「はぁ、はぁ……くそっ、なんて無茶苦茶な奴だ」
「ほっ、ホンマ正気のさたかいな!?」

 シグナムやはやても困惑していた。

「まあっ、こんなことする奴は、自殺志願者かその類の奴らしかやらない方法だな……そろそろ時間か」

 頬を指で掻きながら答える。
 そして、懐から取り出し、懐中時計で時間を確認した。

「遊びはここまででいいだろう。そろそろ時覇が、この公園に来る頃の時間だからな」
「……何故、わかる?」

 レヴァンティンを構えながら尋ねるシグナム。

「お前達が知る必要は無い」

 言い終わると同時に、チェンジング・インフィニティを構える。
 それに合わせるように、前衛にフェイトとシグナム、後方にはやて、その中間にクロノという陣形を組んだ。

「ふむ……派手な陣形を組むと思ったが、基本中の基本だな」

 少し拍子抜けするロングイ。

「お前を確実に捕らえるには、まず確実に攻撃を通すことだからな」

 デバイス――S2Uを持ち替え、新たにデバイス――デュランダルを出し、構え直すクロノ。

「だが……詰めが甘いな、クロノ提督――フェイト」

 ロングイが不意にフェイトの前を口にした為、クロノたちに緊張が走った。

「やれ」

 デバイスを左手に持ち替えて、右手の親指を立てて首に横線を引いて、最後に下に向けて言った。
 血飛沫が、宙を舞った。
 フェイトが持っていたバルディシュ・ネオ・アサルトバスター、ザンバーモードでクロノの体を貫いた。

「うっ――ぷふぁ、っ!」

 血を吐くクロノ。
 口元を押さえるために、デュランダルを手放す。
 そして、躊躇することも無く引き抜く。
 その光景を見たはやては口元を両手で押さえ、シグナムはただただ呆然と立ち尽くしていた。

「ふ、ふぇ……イト? ――!?」

 クロノは、貫かれた腹を押さえながらフェイトの方を見て驚いた。
 フェイトの魔力の色は黄色であった。
 その色は、魔法を発動させる時にも繁栄されるのだが、今目の前にいるフェイトの魔力の色は――

「し、白……ばっ、かな――」

 そう呟いたクロノは気を失い、自然落下を始めた。

「クロノ!」

 すぐさま飛び立つはやて。
 しかし、その行動を阻止しようと、ロングイがランサーモードに切り替えて、はやてに襲い掛かった。
 だが、上から紫の炎が襲ってきた為、急停止、バックステップの如く後ろに飛んだ。

「主のジャマはさせない!」

 レヴァンティンを構えながら言うシグナム。

「フェイト、クロノに止めを刺して来い」
「うん、わかった。行くよ、バルディシュ・NA」
“はいよ、主殿。でもって、略すのはヤメロ”

 フェイトは、クロノとはやての元へ行った。

「くっ、行かせ――」
「――てもらうよ」

 レヴァンティンとチェンジング・インフィニティがぶつかり合う。
 だが、シグナムはすぐさま弾き、すぐさま技のモーションに入った。

「喰らえ――紫電一閃!」

 距離は、約1メートルという所で放った。

「ぜい!」

 ロングイはギリギリでかわし、ランサーモードから通常モード――杖の状態にして、ディバインシューターを撃つ。
 だが、上、右斜め下、左斜め下と三方向に残像を残しながらかわした。
 そして、下から斬りかかるシグナム。
 だが――

「もら――くっ!」

 すぐに下がる。
 そして、桜色の砲撃が通過する。
 シグナムは後退しながら、砲撃が飛んできた方向を見る。
 未だに漂う煙からの攻撃。

「束縛圧縮」
“グラビティ・バインド”

 シグナムの周りに薄い灰色の膜が、覆いつくす。

「な、なんだ、これは?」

 二振りほど膜に斬りかかるが、効果が無い。
 膜が完全にシグナムを覆った瞬間、

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 体に纏わり付くように拘束する。
 さらに追い討ちを掛けるように、ほんの少しずつだが、圧力が掛かっていく。

「あああああああああっ、ぐっ――あがぁぁぁぁっ!」

 異様な圧力に声を上げる。
 しかも、えげつない事に、足、腕、腹には徐々に圧力が掛かっている。だが、致命傷である喉やアキレツケン、心臓や頭には圧力を殆ど掛けていない。
 まさに拷問も兼ねたバインドである。

「くっ――レヴァンティン!」
“――――!”

 反応はあった。しかし、何も発動はしなかった。

「無駄だよ。そのバインドは、デバイスの機能を最低限に抑えることが出来るから」

 そう言って、左手で拳を作り、人の腹部を殴る動作をする。

「っが! ぅっがはっ! えがっ! ぅを――」

 その瞬間、太ももに圧力が掛かり、緩まったと思うと、今度は腹に極度の激痛が走る。それに耐えかね、口から胃酸や未消化の食べ物などが吐き出される。
 それでもバインドは解けることは無く、別の場所に圧力が掛かっていく。
 ただ成す術も無く、苦しみ、瞳の輝きは失われつつあった。

「口から出すモンも出したし……そろそろ止めてやるか――ディバインバスター、っ!?」

 掛け声が終わると同時に、晴れることの無い煙から、砲撃魔法が放たれるはずだった。が、ロングイは緊急回避を行った。
 先ほどいた場所に、橙色の砲撃魔法が通過し――シグナムに直撃。
 爆発が起きた。





「くっ――レヴァンティン!」
“――――!”

 反応はあった。しかし、

(馬鹿な!?)

 激痛に耐えながら、疑問を浮かべる。

「無駄だよ。そのバインドは、デバイスの機能を最低限に抑えることが出来るから」

 そう言って、左手で拳を作り、人の腹部を殴る動作をした。

「っが!」

 腹に激痛が走り、頭の天辺から足のつま先まで、衝撃が駆け巡る。

「っが! ぅっがはっ! えがっ! ぅを――」

 ゲロを吐いた。
 騎士として、これほどの屈辱は無い。
 だが、この状況では、屈辱云々とは言っていられない。

(はっ、早く、抜け出さな――)

 考えるよりも早く、再び体に激痛が走る。

「――ぐがあぁぁ――」

 思考が段々麻痺してきた。
 限界だ。

(あ……ある、じ、は……や、て)

 視界がぼやけ、思考が停止しかけた瞬間、突如全身の圧力が消え、横全体から衝撃が走った。
 そこで意識は闇に沈んだ。












































第四話:二つの決断(前編)・END























































リョウさんもとい――リョウスケ&○○○○に感想を言ってもらいましょう!


※今回は『リンディ』で、お願いします。

リンディ「聞いたわよ、リョウスケ君。感想をきちんと話していないって」

主人公「それは違うな、提督殿。俺は魂で語っているのだ。
言葉など要らぬ」

リンディ「言葉にしないと伝わらない気持ちもあるわよ」

主人公「セオリー通りの言葉を吐くとは手強いな……オッケー、いいだろう。
俺も男だ、語ろうではないか」

リンディ「うんうん、それでこそ男の子だわ」

主人公「……あー、やる気無くした」

リンディ「素直に褒めたら、すぐに臍を曲げるんだから……困った子ね」







あとがき
 改正&付け足しです。
 シグナムファン、ある意味ごめんなさい。一応自分もそうですが(汗
 あ、石投げないで! うぁ、爆弾は反則! ってか違反!
 え、あ、シグナムさん……レヴァンティンを納めていただけませんか? 駄目? そうですよ――ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
 次回まで――グッドラック、俺!






制作開始:2006/2/24〜2006/4/2
改正日:2006/12/17〜2006/12/19

打ち込み日:2006/12/23
公開日:2006/12/23

修正日:2007/10/4



メール