――深夜、森の中

風が静かに踊っていて、木々を揺らし、俺の少し長い髪も揺らしていた

目を瞑れば、小さいが確かに存在する生き物の声が聞こえてくる

この自然の中に包まれている感じが俺はとても好きだ

                ・・・
前方から俺を殺すために向って来る化け物さえなければ、本当とてもいい感じなんだけどな




さぁ、どうするか…?










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魔法少女リリカルなのは――『俺の生き方』第一話「諦めた男」――




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命を容易く奪うことができる魔銃――クトゥグア




ところどころ紅い線が混じりながらも、基調は黒

銃のことはよく知らないんだが、マシンガンじゃない

一発一発、力を込めて撃つタイプだ

片手で振り回すには重く、両手なら丁度いい

しかし、こいつの怪しくも魅入られる輝きに圧倒的な存在感を感じる



これは普通の銃じゃない、魔銃だ



腰に巻きつけているホルダーに素早く手を伸ばしクトゥグアを取り出す

その瞬間、感覚が研ぎ澄まされ、身体が軽くなる

これは一時的に身体能力、その他諸々向上するらしい

(しかし、なかなか慣れないものだな。この感覚には)

ようするに――身体強化

さぁ、前を見るか




クトゥグアを両手で支えながら、ゆっくりと化け物に対峙させる

対する化け物は、人間には出せない速さで接近していた

荒く呼吸をしながらも、その姿は血を欲しがっているようにも見れる


(うわ〜、気持ちわる…)

化け物には、一度鏡を見て欲しいものだ

自分の姿が相当アレになってることに一秒も速く気付いてほしい

俺が化け物なら、鏡を見た瞬間自殺するな

だって見てるだけで気分が悪くなるもん


あぁ〜、そうかあぁいうのが最近流行ってんのかな

目を真っ赤に充血させて、全身裸だがあそこの部分だけはぼろい布で隠されている

さらには、毛がめちゃくちゃ長い

…野蛮人スタイルってやつ?

人間、ジョブチェンジしたらなんにでもなれるものなのかもしれないな




頭をぶんぶんと振り、現実と向き合う

片目を抑えながら、化け物に標準をあわせようとするが、なかなか定まらない

なぜなら、肩から腕、腕から手にかけて震えが止まらないからだ

「いやいやこんな時に嘘だろ…オィ」

口ではまだまだ全然大丈夫そうに聞こえるが、実はかなりヤバイ

どれくらいヤバイかっていうと、こんな化け物に殺られそうなくらいヤバイ

第一話で死ぬ主人公ってのも趣きがあるが、…とりあえず現実逃避は辞めにしよう

マイナスな考えが収まらないからな

でも、体中から嫌な汗が止まらない




ハァ…落ち着こう、俺

右の人差し指をトリガーに掛ける

少しだが指には力が入るらしい…トリガーを引く事ぐらいはできそうだ

でも、やっぱり魔銃は化け物に対峙できず、震えが原因で標的に定まらない

不甲斐ない自分に苛立ちながら、魔銃に少し同情


(欠品マスターで悪かったな…俺はもう無理)

実は疲れていたんだ


(どこも痛くないし、怪我もしてないけど、肩から手が震えてるんだよ…)

自分にはなにも可能性がないと思っていたんだ


(もう駄目だ…お前のマスターの最後が俺みたいなので本当に悪かったな)

俺が死んでも誰も悲しまないと思っていたんだ


(諦めんのがはやいのは、俺の良いとこで悪いとこか…)

ただ知りたかったんだ


(あんな化け物に殺されるのは不本意だが、今までが散々だったからな…天罰かもな)

意味がほしかったんだ


(魔銃を手に入れて浮かれていたが使いこなせないぜ…こんな代物)

特別がほしかったんだ


(あぁ…でも一つだけやること忘れてた、…、……、………)

自分の存在に




無情にも震えは止まらない










虚ろな瞳、自分が諦めた証拠

化け物はもう目と鼻の先

化け物の手が動く

それが堪らなく恐ろしいと普段は判断するが、もうどうでもいい

やり残したこともある…だけど、人間、誰にだってやり残して死ぬものだ

いくら後悔しようともう手遅れ

死ねば、人間は喋らない、動けない、意志がない

俺は死ぬ一歩手前まで来ている




化け物の右の拳に邪悪な光が集い、それが収束してどす黒い絶望の色に染まる

その拳を俺目掛けて放つ

それはまるで、銃弾のような速さだった

その軌跡を捉えることなど到底できるはずがない…いや、視えていたとしても――避けることなどしない

ただ受け入れよう

ズゴオォ…ドフッ!

化け物の拳が俺の腹にめり込んだ

「うぁ…おぇ…はぁはぁ」

口から血を吐き出し、身体は酸素ほしがる

貫通しなかったのが幸いしたか、即死からは逃れた

それは、クトゥグアの身体強化のおかげだろう

でも、余計なお世話

(もう…死にたい…殺してくれよ)

化け物は驚いた様子など見せず、ただ次で仕留めるために後退し、今度は両方の拳に邪悪な光を集わせていた

なにをそんなに慎重になっているのか…?

あぁ、俺が魔銃の主だからか




不意に、思い出が走馬灯のように甦る

死ぬ間際、人間は今まで生きてきた光景を思い出すという

まさか本当だったとは

でも、どの思いでも辛いことばかりだ

この肩が震える原因となった出来事も、両親が亡くなったことも、俺が親友に裏切られたことも、幼馴染を………したのも

思い出して後悔、行動して後悔、そうだ、なにをしても後悔した

「…あ…、まった…く、生きるのは…つ…らい…」

少し笑えた

自分の生き方があまりにも悲しいことに




化け物の拳が、俺目掛けて迫ってくる

さっきは片手、今回は両手

…もう眼を瞑ろう

死ぬのは確実

ならせめて、受け入れたほうが楽だ

眼を瞑ろうとした瞬間、桃色の光が目の前を覆い、次の瞬間、化け物の存在を消していた

助かった?、のかもしれない

でも、俺の意識は闇に沈んでいく、魔銃を握ったまま










物語はここから始まった

悲しい思い出しかもっていないが――魔銃の主である男と、幾度も厳しい状況を打破し――エースオブエースの称号を与えられた女

この出会いが偶然によって引き寄せられたなら、よくできている

でき過ぎている

なにかに踊らされている

神か悪魔か、それとも…


さぁ、物語の下準備は終わった

創めよう…醜くも愉快な物語を…!




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次回、魔法少女リリカルなのは――『俺の生き方』第二話「魔銃」――


「ここは…何処だ…?」

「やっと眼が覚めたんかい」

「誰だ?」

                      ・・・・
「私はここの部隊長の八神はやて。そしてここは機動六課や」


運命の輪が静かに廻りだす

誰にも止められない




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あとがき


はじめまして、歌凛(かりん)といいます。

今回は第一話、読んでくださってありがとうございます。

実は小説を書くのはこれが初めてとなります。

そして、「魔法少女リリカルなのは」の物語すらよく知りません。

でも、書いちゃました。

この作品がとても好きなのです。

だから、お許し下さい。

あと本当にこんな駄文を読んでくださってありがとうございます。

次からはもっともっと精進します。



次回は、機動六課との出会いを書きます。

そこで、主人公のことも少しは分かるようにします。



では、次また会える日まで。






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