《転生プログラム 起動》
 

                               また、この時が来たのか……

                    私が防衛プログラムの暴走から解き放たれるのは、消滅し……転生する刹那のみ

                           繰り返す輪廻転生に許されし、唯一の安息

                       皮肉なものだ、唯一の安息が死と生の狭間にしかないとはな

                          やはり、あの時の選択は間違いだったのだろうか

                         いつも繰り返される記録、この安息さえ……私とっては地獄だ

                             思い返すのは、夜天が闇に沈む時

                             まだ私が夜天の書だった遠い過去

                           教えてください、私は間違っていたのですか?

                            

                         闇彷徨いし嘗ての主……アーデルハイト・アニ・フローエ


                         

                      





                                   光に憧れて  

                                第一章 追憶 〜プロローグ〜








                          独りだった彼女を拾ったのは、同じく独りのある旅人だった

                             彼女が男にまず教え込まれたのは、戦いの術だった

                         男の教えは厳しく、彼女は何故こんなことを教えるのか聞いた

                          「この世界には闇があり、いつでも私たちを狙っている」

                         今教えているのは、それを少しでも振り払うための力だと言う

                                  「その闇って、何?」

                                   彼女は男に聞いた。

                    「ひと言で言えば不幸だ、だが……それはあまりに多くて私には語りきれないな」

                                 男は話してはくれなかった。

                          だが、それは既に自分が知っているものだと彼女は気付いた

                               「ねえ、なんで貴方は旅をしているの?」

                                   彼女は男に聞いた。

                           「不幸の先に幸せがあるのか、それを私は確かめたい」

                  男は全ての人に幸せが等しく与えられるのか、それを知るためにある魔法を探しているらしい

                                 男が探すのは転生の魔法

                                男が肌身離さず持っている本

                               夜天の書はその為に必要だと言った





                                長い旅路の中、男が病に倒れた





                           もう助からないと悟った男は、彼女に夜天の書を託した

                                「どうして私を拾ったの?」

                          彼女は最後にどうしても聞きたかったことを男に聞いた。

                                 「お前が……――――」

                               男の言葉が……信じられなかった

                               空虚な彼女の心が初めての揺れた

                          「違う、違うのよ……私は貴方の幸せなんかじゃない」

                              既に息を引き取った男に彼女は言った










                                  「私は……闇なのよ」





                               









 







「今回も手掛かりはなし……か」


 アーデルハイトが男から夜天の書を受け取ってから1年。

 あれからずっと彼女は転生の魔法を探している。

 しかし、転生の魔法の手掛かりは一向に掴めない。

 今日訪れた町でも情報を得ることはできなかった。


「ふぅ……次の町に行こうかしら」


 別に転生の魔法自体はどうでもよかった。

 アーデルハイトが本当に探しているのは、別のもの。

 男と旅を続けてるうちに芽生えた不思議な感情。

 残酷な闇の世界に、明かりを灯したあの想いの正体。

 旅を続けていれば、その想いの正体が分かるような気がするから。

 だからアーデルハイトは旅を続ける。

 その手に持った一冊の書物。


 夜天の書と共に。
















 これは幸せを――光を求める者たちの物語







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