魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate
Stage3 「海鳴探索」
side - Emiya Shirou
本日は土曜日。時刻は午後3時。
公立の学校は休みだが、私立は学校が午前中だけあるとのことだ。
(ちなみになのはは友達の家に遊びに行くとのことで、お昼は友達の家で頂くとのことだ)
俺は今スーパーに居る。
とはいえ、タイムサービスの主婦がいない事もあり若干だが店が開いている。
(タイムサービスは安いのがいいことだけど、見る人が見ると良い所は全部取られているからな)
とりあえず、俺は魔術の解析を応用して一目見れば、どこに一番良いのがあるかを判別できるようになっている。
一流の主婦どころかプロと勝負してもそれ以上に目利きできる。
しかも、一緒に遠坂と買い物に行った時でさえ気付かれることがないほどである。
・・・ただ、半年ほどしてバレてしまい、ガンドの嵐が飛んできたけど。
「まぁ、それはともかくとして・・・今日の夕飯、何作ろうかな」
その台詞を言い、俺は朝の光景を思い出した。
* * * * * * * * *
聞く人が聞けば、嬉し恥しのイベントを終えた(うん。まぁ眼福だったけどね)。
とにかく今の俺は見た目子供だけど、心は基本的に成人男性だし。
・・・思ったんだけど、今の俺って『体は子供、頭脳は大人』を地で言ってるんだよなぁ。
ともかく、テーブルに盛り付けられた朝食を見た。
出されたトーストと自家製のジャム。
スクランブルエッグは見事な黄色で食卓を彩り、
サラダも新鮮さを見事に主張していて、ドレッシングも数種類用意されている。
紅茶も素晴らしく、香りがよい。落ち着きを与えてくれる。
その他のサイドメニューに関しても申し分なし。
時に執事として働き、時に料理人として働いていた俺から見ても、その出来は素晴らしい。
少なくとも一般家庭で出せるレベルではない。
(注:こう言っていますが、ある暴食王の影響で士郎はこのレベル前後を毎食作っています)
むぅ・・・俺の中にある何かがうずうずと動いている。
これだけ見事な料理を見て、何も感じないのは失礼だ!
「・・・士郎くん?どうしたの?」
「あ、すいません。とても美味しそうだったもので、つい」
「あら、ありがとう」
穏やかな微笑を浮かべて、嬉しそうにしている桃子さん。
「あのもしかして、飲食店を経営とかしてません?紅茶の入れ方にしても、普通に入れたんじゃこうならないし」
「あら。わかるの?」
「前の保護者がかなりずぼらだったから、自分で料理つくってましたから」
「そうなの」
少し、笑みが翳ってしまった。
・・・また、やってしまった。
どうも、これが原因で俺を居候させてくれているような感じがするしなぁ。
それになんとなくだけど、こういう人は人の気持ちに敏感だと思うから
俺が持っている歪みにも気付いているのかもしれない。
・・・いや流石にそれはないか。
まだ、あまり話してもいないのに
「気にしないでください。それよりも」
「なーに?」
「夕食、俺に作らせてもらえませんか?」
「助かるけど・・・いいの?」
「はい。それに助けてもらったのはこっちですから」
うん?何かくすくすと笑っているけど、なんでだろう?
「わかったわ。それで何を作ってくれるの?」
「そうですね」
俺はこちらにくる1週間前のことを思い出していた。
セイバーも欧州に行くことが多くなり、洋食を多く食べていたので、和食をリクエストされた。
そこで俺は約1週間ほど和食を作り続けていた。
−ちなみになぜセイバーが欧州に行っているかというと、簡単に言うとバイトだ。
騎士王はニュースを見て、ニートと呼ばれる人種と今の状態を確認したところ、その通りだと感じ、落ち込んでいた。
そこで、彼女は自分でできる仕事をしたいということもあり、遠坂と共に魔術協会の仕事も請け負っているのだ。
(ちなみにアーチャーの野郎は冬木を守る任についており、近所の子供に非常に慕われている)
その関係で欧州に、飛ぶ事も多々あるのだ。
ちなみに魔術協会で働かない時は、(遠坂の策略で)俗にいうメイド喫茶にて働いている。ちなみに超ミニ。
うん。あれは素晴らしく目の保養だね。
閑話休題。
そのため、和食を作るよりも個人的に洋食を作りたい気持ちが心を占めている。
目の前の見事な朝食に心惹かれたというのもある。
だから
「洋食でお願いします。料理はスーパーで見て決めます」
こうして、高町家で衛宮士郎が作る最初の料理は洋食になることが決定した。
「あ、あと午前中にちょっとこの辺り散歩と図書館で調べ物したいんですけど」
そんなわけで、午前中に地図を調べたところ、この世界に冬木は存在していないことを確認した。
だが、それで「聖杯」がないという証拠にはならない。
全国紙はもとより、俺の記憶にある龍脈の流れを地図に反映させ、その地方の新聞も少々確認してみたが、俺の世界の「裏」に
関係があるような情報はなかった。
少なくともここ1年ぐらいは表ざたになるようなことはやっていないようだ。
ただ、それはまた別の問題でもある。
(もし、本当にないなら問題ないけど・・・起こしていても隠している可能性がある。その場合は・・・)
かなり大掛かりな組織が相手ということになる。
そんな組織と接触できるようなコネクションなど、今の俺には当然ない。
ゆえに情報を得る方法がないのだ。
得られたとしても、今の外見は子供だ。まともに交渉に応じる者も少ないだろう。
(そもそもなぁ・・・龍脈の流れも全く同じかどうかもわからないのに)
考えないようにしていたのだが、当然龍脈の流れが違っている可能性がある。
または、どこかで途切れたりしている可能性も無きにしも非ずなのだ。
(まぁ、いいや。とりあえず現時点で確認はできない)
ならば、次はどうするか。
(・・・ベストなのはフリーという条件に加えて、知識面で応用が効き、凄腕の魔術師・・・望みは薄そうだなぁ)
俺のように実用本位の魔術師はこの場合は、役に立たない。
何しろ、俺自身が平行世界論を理解しきれていないので、俺の足りない知識を補強できるような人材が欲しいのだ。
加えて魔術協会のような組織に所属していない。
それに俺は前提条件として、この世界に魔術があるという前提で動いているのだ。
その前提条件さえクリアしていない場合は・・・
・・・あまりにも条件が困難すぎて、どこから手をつけていいのかわからない。
「・・・とにかくやるならピンポイントにしないといけない。望む情報でなくても、
何かしらの手掛かりになるような人に話しを聞かないと。
あとは・・・今のところ確認した情報は1年分だったけど、最低でも10年分位は確認しないと」
ちょっとだけでも怪しいかなぁ。という人にいきなり聞いたりするのは愚かであり、そして何人も同じことを聞くのは愚の骨頂である。
今後の方針を固め、時計を見ると、時刻は11時半を回っていた。
そこで思い出した。
『あ、士郎くん。今日のお昼ご飯だけど、『翠屋』っていう喫茶店にきてね。お昼ご飯はそこで食べてね』
と、朝言われたのを思い出していた。
時間も丁度いいし、『翠屋』へ行ってみた。
『翠屋』は満員状態だった。
俺は桃子さんを探そうとすると
「あ、士郎くん。いらっしゃい」
そこには、エプロンを付けた士郎さんがいた。
「あ、おじゃましてます・・・やっぱり、士郎さんたちのお店なんですか?」
「そうだよ。桃子は内緒にしてたみたいだけど・・・知ってたのかい?」
「いえ。でも朝食を食べさせて貰った時に、すごく美味しかったから、何か飲食店の人かなと思って、聞いてたんです」
ただ、店の名前は教えてくれませんでしたけどね。と言ったら「あ、なるほど」と納得していた。
「俺、桃子さんに言われてきたんですけど、今日のランチ何がありますか」
「ああ、そうか。今日のランチは春野菜とチキンのオムライスと和風ペペロンチーノだけど」
「じゃぁ、オムライスで。それと晩御飯のメニューも今決めました」
「おや、もしかしてスパゲッティにする気かい」
「あはは」
スーパーのチラシも確認していて海老が安く、しかも良さそうだったので、そちらを買おうと決めていた。
問題はどんな料理にするかだったが、海老をメインにしたスパゲッティにすると今決めた。
桃子さんは当然ランチのもう片方である自作のスパゲッティを味見しているだろうし。
だからこそ、わかりやすい。
料理に関しては、俺は負けず嫌いだってよく言われるし、今なら言った奴の気持ちがよくわかる。
「でも、俺は桃子の味方だから、あまり君に有利な判定をしないと思うぞ」
「いえ、こういうのは作った本人が決めることです。それにスクランブルエッグとサラダに関しては負けてると思ってるんで、
全力でやらせてもらいます」
他の料理は桜と同等だったことに加えて、お茶は執事でムチャクチャ鍛えられているため、
そこまで負けてるかなぁとは思わなかったが、スクランブルエッグとサラダは明らかに桜よりも美味かった。
洋食に関しては俺を超えてる桜が負けるということは、俺よりも確実に上なのである。
しかも、基礎料理で差がでるということは、それだけ技術に差があるということなのだ。
得意分野という意味では桜に譲ったが、俺はその桜の師匠だ。だからこそ、そう簡単に負けを認めるわけにはいかない。
そんな感じで俺のプライドは何時になく燃えている。
「はは・・・士郎くん?なんか、目が鷹のようになってるよ?」
士郎さんが苦笑した声を出していたが、俺の耳にはそんな声は入ってこなかったのである。
『翠屋』で美味しくランチを頂いた。
やはり素晴らしい味わいだったのは、言うまでもない。
「うーむ。あれだけの味わいを出すにはこちらも下拵えを万全にしないと」
俺は午前中に考えていた指針を放り出し、晩御飯の料理をどうするかを考えている。
(あんたはホントに魔術師かーー!!?)
どこかから天の声が聞こえたが無視だ。
・・・あとが怖いけど、無視といえば無視だ。
天の声を聞いて、懸念材料を思い出した。
(・・・そういえば。あのフェレットとなのはからも魔力を感じていた)
特になのはの魔力量は破格だ。(遠坂や桜並みかも)
歩き方が素人っぽいから、魔力が先天的に大きい娘なのかと思っていたけど、フェレットに魔力があるのは妙だな。
加えて、俺が記憶している限りみたことがない品種だし。
「俺・・・もしかして、手掛かり素通りしてたのか?」
自分の迂闊さを呪いながら、俺は一度高町家に戻ってみた。
そして、俺は今なのはの部屋の前にいるのだが・・・
「どうやって、あのフェレットと接触しよう」
いくらなんでも、無断で女の子の部屋に侵入するのはまずい。
最悪の場合、恭也さんと士郎さんのタッグが襲い掛かるかもしれない。
「くそ。目の前に手掛かりがあるかもしれないのに・・・」
仕方がない。図書館に行き、時間が許す限り調べ物を行おう。
interrude
どうやら、外にいた士郎さんはまたでかけたようだ。
「・・・それにしても、どうして部屋に入らなかったんだろう」
ドアの前で、彼の声が聞こえたが、どうやら目的は僕のようだったが
「何が目的なのかな?話から察するにジュエルシードのことじゃなくて、僕自身から何か尋ねたいみたいだったけど」
ジュエルシードが目的だったら、僕を人質にしようとするだろうし・・・
士郎さんの目的はわからないが、これ以上誰かを巻き込むわけにはいかない。
なのはにも伝えておこう。
interrude out
俺は図書館に着き、ざっと資料を確認してみた。
やはり、情報自体が見当たらない。
どうするべきか。
やはり、こういうのはダメもとだ。
「よし。なのはと一緒のところを捕まえて、確認してみよう」
一番確実そうなところから始めよう。
もし、ダメでもこの世界には魔力があることは確信した。
ならば、魔術もあるかもしれない。
そうして、俺は片づけを行い、スーパーに向かった。
* * * * * * * * *
そして、俺にとって恭也さん以上の強敵である桃子さんに勝負を挑むための食材探しをしている。
「海老を使うんだけど・・・海老ってよっぽど変な調理しない限りどんなのでも合うんだよなぁ」
海老はどの料理でも大抵合う。
味に癖がないくせに、旨みが深いためだ。
そして、海老自体の歯応えもポイントだ。
海老のプリプリとした食感だけでも、然るべき料理と合わせれば、料理のランクが1ランク上がるのだ。
とりあえず、海老の良いところを見繕った。
(他の食材で良いのを見つけてから、料理を考えるか。想像以上に海老の鮮度がいいし)
生きた海老がそのまま展示されており、俺はその中でいいのを選んだ。
ふふふ。俺の解析を甘く見てもらっては困る。
ただ、このスーパー
(・・・ここ、かなり大きいし、品揃えも豊富だな。ざっと見たけど、スパイスも結構マイナーなものもあったし)
そう、地方のスーパーとは思えないほど、品揃えが豊富だった。
まぁ、俺にとってはむしろ大歓迎である。
そんな事を考えながら、食材を探していると
(お?)
トマトソースに最適なサンマルツァーノのトマトを見つけた。
しかも
(すご!?解析する必要もないような極上品!?)
以前、エーデルフェルト家へ直接仕入れてもらっていたトマトと比べても勝るとも劣らない。
逆にどうやって手に入れたのかと、問い詰めたいくらいである。
(く!?甘く見てたぜ。平行世界!)
俺の思考はすでにテンションMAX状態である。ヒャッホーッ!
(あ、あんたってやつはぁー!!?)
またしても、天の声が聞こえたが俺は無視した。
・・・というか、遠坂も知ってるんだ。種死・・・いや、知らないだろうなぁ。偶然だろう。
俺は逸る気持ちを抑えながら、トマトに近づいた。
そこで俺は見た。
(・・・メイド服?)
そう、英国で幾度も見たあのメイド服である。
しかも、秋○原のようなありえないミニスカメイドではなく、正しく英国スタイル−いや、若干アレンジしてあるようにみえるが−
英国スタイルに近いメイド服である。
(だいたい高校生くらいぐらいじゃないか?近くにメイド喫茶でもあるのか?)
などと考えているあたり、俺も混乱しているようだ。
(・・・っていうか、周りの人たちも見てるはずなのに、何とも思ってない?何時の間に日本にメイドが根付いたんだ?)
少なくとも、周りの奥様方は気にしていない。
ということは、この店にあのメイドさんは頻繁に来るということだろう。
ただ
(なんというか・・・あぶなっかしいなぁ)
考えながら歩いているのかふらついているし、見ているこっちがハラハラするぐらいである。
まぁ、危なくなったらフォローすればいいかと思いながらトマトの台に近づいた。
その瞬間
ガンッ!
俺の頭頂部に凄まじい衝撃が走った。
「ぐぉっ!?星が!?星が見えたスター!?」
こ、これは遠坂に絶招を食らった時のような衝撃だぞ!いや、もしかしたらバゼットのストレートかもしれん。
い、一体誰が?
「ああ!?ごめんなさいぃ!!」
見ると、そこにいたのは先程のメイドさんだった。
「す、すいません。ちょっとつまづいちゃって」
「・・・い、いえ大丈夫ですけど(あれがちょっと?思い切り転ばないとあれだけの衝撃は無理だと思うけど)」
まぁ、本当に申し訳なさそうにしているから、事故なのだろう。
謝ったあともショックなのか、項垂れているし。
「本当に気にしないでください」
「あううー」
とはいえ、泣きそうだしなぁ。
く、こんなときにあの野郎だと上手く宥められるのに
あいつは非常にむかつくが、こういうところは本当に有能なのである。
(注:こういう状況では無理ですが、平時では士郎も負けていません。本人気付いてないです)
「え、えーと・・・そう!い、今の衝撃で今日の晩御飯のメニューが決まったから、逆に感謝したいぐらいです!」
自分でも何を言っているかわからないが、とにかく言葉が出てきた。
幸い、言葉だけ見れば、訳わからん内容ではないし。
「え、えっと?」
「そ、そうです。ええ、海老のトマトクリームスパゲッティにして、合わせてさっぱり系のサラダにして、スープも付けるんです。
あとは鶏肉の香草焼きです!それを今の頭突きで思いつきました!」
うん。ここまで言って俺もわけわからないな。と思った。
ていうか、頭突き関係ないしね。
(まぁ、今言った内容の料理は心に留めておこう)
ただ、メイドさんがきょとんとした後、笑ってくれた。
・・・そりゃ可笑しいか。
「ふ、ふふふ。笑っちゃって、ご、ごめんなさい」
「いえ・・・まぁ、何はともあれ笑ってくれましたし、結果オーライということで」
「ありがとうございます。元気付けようとしてくれたんですね」
と笑顔になってくれた。
癒されるというか、マイナスイオンが溢れる様なというか不思議な声音だった。
まぁ、俗に言うドジっ娘メイドだろう。
そんなこんなで雑談レベルの会話を始めた。
「それで、何を悩んでいたんですか?すごく悩むような声が聞こえましたよ」
「え、えっとですね。実は・・・」
要約すると今日から約1週間分の食材が届く予定だったのだが、輸送中に事故に巻き込まれてしまい、食材が届くの遅れるとのことだ。
若干だが食材が余っていたのだが、親類の方が急に来てしまい、食材が足りなくなったため、日用品を買っているこのスーパーへ
買出しに来たとのことだ。
買出しはメイドさん−ファリン・K・エーアリヒカイトさん−がいつも行っているので、このスーパーに来たのだが
「じつはですね。その料理をする人じゃないから、買う食材は聞いているんですけど、どれがいいかが判別できなくて」
うむ。ライダーと同じだろう。
彼女も食材のメモを渡されたが、上級者(俺や桜)用を渡されたため、判別できなかったことがあった。
今回もそれだろう。
そして俺は聞くだけ聞いて、その場を立ち去るようなことはできない。
だから
「あの・・・何を作るか教えてくれませんか」
俺は尋ねた。
そして、ファリンさんは順にメニューを述べていき、全て伝え終わり
「あああっ!?」
突然、「今、気付きました!?」みたいな叫び声を上げた。
「ど、どうしたんですか?」
「そ、その・・・このお料理、士郎くんには難しいからわからないよね?」
まぁ、一般家庭に住む人なら聞いたこともないような料理がいくつか混じっていたしな。
だが
「大丈夫です。今、聞いた料理なら全部わかりますから」
といい、俺はファリンさんの手を取り、スーパーの中を歩き出した。
「って、ええ!?全部わかるんですか?すごいですねぇ」
「ええ。俺も一緒に買い物したいから、一緒に行きましょう」
というわけで、俺は自分の買い物とファリンさんの買い物にプラスして少し自分なりの味付けを言いながら歩いていた。
料理談義をするたびにファリンさんは目を輝かせており、なんか尊敬の念を感じたりもしたが。
まぁ、そんな感じで多少の問題があったが買い物は終了した。
「本当にありがとうございました」
「いえ、一緒に買い物できて楽しかったです・・・言葉だけだとデートみたいですね」
「はぅ。で、デートですか」
「あ、すいません。その俺なんかとじゃ楽しくないですよね」
「そんなことはないですよ。楽しそうに料理のこと話していたじゃないですか」
普段と違い、料理の話題だったため、相当舌が回っていたのだろう。
「あはは・・・もし次もこんなことがあったら、一緒に買い物しませんか?」
「え?大丈夫ですけど、迷惑じゃないですか?」
「全然です。ファリンさんみたいな人だったら大歓迎です」
「あ、ありがとうございます。今度、お礼をさせてくださいね」
「楽しみにしてます」
とそんな感じで一礼をして帰路についた。
ただ、帰路の途中に「れ、連絡先聞くの忘れてました!?」という声が聞こえた気がしたが・・・それはご愛嬌である。
interrude
アリサちゃんの家でイヌさんと遊んでいたら、少しだけ遅くなってしまった。
「うーん。これから家に帰ってご飯食べたら、ジュエルシードを探しにいかなくちゃ」
今日も夜にでかけることにちょっとの罪悪感を感じる。
だけど、ユーノくんは自分の責任を果たそうと頑張っていて、私も手伝いたいと心に決めている。
絶対に全部集めてみせる。
これからのことに想いを馳せ、ふと
「あ、そういえば今日は士郎くんが晩ご飯を作るって言ってたな」
思い出すのは赤毛の少年。
ユーノくんは魔力があるって言ってたけど。
「今でも不思議だなぁ。なんで、名前で呼んで欲しかったんだろう」
不思議だった。
そのことについて、ずっと悩んでいて、少しだけだが考えが纏まってきている。
(あの時、士郎くんの目を見たんだよね。なんとなくだけど、悲しそうな目に感じて・・・)
そうだ。あの時何故か士郎くんが他人に見えなかった。
あの子は多分だけど、一人でいることに慣れている気がする。
加えて
(目を離すと、言葉でもいいから、止めようとしないとどこかに言っちゃう気がする・・・それも近くじゃなくて遠く・・・とても遠くへ)
孤独を感じた。
錯覚ならいい。だけど、私は感じてしまった。
あの子は多分・・・
(ああ・・・そうか)
名前で呼びたかったのは、苗字で呼ぶと他人に感じて、すぐにでもどこかに行ってしまうと感じたから。
あんな悲しそうな目なのに、どこかに行ってほしくなんてないと思ったから。
留められる場所を作ってあげたかったから。
そこまで考えて、私は頭を振った。
まだ、ほとんど話もしてないのに、勝手にこんなことを思っちゃダメだ。
(いけないいけない。士郎くんの晩ご飯か・・・カレーかな?)
なんとなく、私たちくらいの子が作る料理のイメージはカレーが思い浮かぶ。
それに士郎くん男の子だし。あまり凝った料理は出てこないと思う。
ただ、これから家族になるであろう子の手料理だ。
(楽しみにしよう)
* * * * * * * * *
ふむ。見事な料理だった。
士郎くんが料理を作るところから見ていたが、公平に見ても手際ではやはり桃子に分があるようだ。
おそらく、味付けにしても桃子の方が若干勝っていると思う。
断言できないのは、士郎くんが各料理に施されていた味付けのせいだろう。
士郎くんが作り上げたのは洋食で、味の基礎や盛り付けにしても当然洋風だった。
だが
(所々に日本の食材を加えたりして、日本人に食べやすい味にしていた)
イタリア料理にしろ、フランス料理にしろ自国の人間の舌に合わせて料理を作る。
だから、稀に日本人には合わない料理もあるだろう。
今回作った料理は日本人でも問題なく食べられるが、さらに一工夫してあったのだ。
そう。日本の食材や調味料を加えることで、食べやすくしていたということだ。
通常、日本特有の食材を加えても、反発することが多い。
だが、今日作られた料理は自己主張どころか実に見事に調和されており、その味に驚いた。
そのための材料もよく吟味しているのだろう。
私は和食も好きなため、そのお陰でいつになく満足している。
隣では
「ふふふ。おみそれしました。士郎くんって料理上手ね。今の料理のポイント教えてくれない?」
「ええ。いいですよ。代わりに桃子さんも色々教えてくださいね」
桃子と士郎くんが心底嬉しそうに料理談義に華を咲かせている。
二人の背後から後光が見えるようだ。
一方で
「うう・・・お、男の子なのに・・・あ、圧倒的にお料理で負けてます」
「うう・・・なのははまだいいよ。同い年だもん・・・私なんて・・・私なんて!」
うちの娘たちは非常にショックを受けていて、部屋の隅に追い遣られ、項垂れている。
背後から闇色の空間も広がっている。
凄まじいまでの絶望を感じているようだ。
無理もないがなぁ。
何しろ、口に運んださいに感じた衝撃は未だに私の中であるのだ。
私や恭也は男ということもあり、ショックは少ないが、女性陣はそれこそ『薙旋』を2回連続に喰らったかのような
衝撃−端的に女性としてのプライドを根こそぎ引っこ抜かれた−のはずだ。
・・・もしかしたら、それに回復不能という追加効果もあるかもしれないな。
とりあえず、恭也。妹たちを上手に慰めてやってくれ。
ちなみに傷心したなのははそのまま眠ってしまい、ジュエルシードを探しに行くのが遅れてしまったし、
なのはが眠ってしまったため、士郎はなのはに尋ねることができなかった。
そのため、士郎もorz状態になってしまいましたとさ。
ちなみに、某豪邸にて
「あのですね。今日、一緒に買い物に付き合ってくれた子供に教えてもらったんですけど・・・」
(以下説明中 + 料理担当メイド、それに感心しながら作ってみる)
(食事中)
「ファ、ファリン!そ、そのレシピを教えてくれた子の連絡先は!?」
連絡先を教えてもらうのを忘れていたことを報告したら、ものすごく怒られました。
interrude out
魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate Stage3 「海鳴探索」 End
Next Stage 「ジュエルシード」
タイガー道場!! Stage3!!
注:)基本的に恐ろしくギャグ空間です。
拒否反応がある方は読まないでください。
大 河:こんにちは。良い子のための解説コーナー、タイガー道場のお時間がやってまいりました。
道場主の大河です。
イリヤ:弟子1号のイリヤです・・・ねぇ、今回の話、本当にタイトルと合ってるの?
大 河:う、うーん。手痛いツッコミね。私もちょっぴり疑問だし。
イリヤ:まぁ、私としては士郎がエプロン付けてくれる回数が多そうで、嬉しいけどね。
大 河:細かいツッコミはとりあえずなし!今回からはFateキャラを呼び出し、解説なりなんなりやらせるわよ!
イリヤ:あ!その前に
大 河:ん?なに?イリヤちゃん。
イリヤ:士郎の料理スキルはこっちで解説しましょう。これなら、私たちだけでも解説可能だし。
大 河:んー。それもそうね。では「士郎の料理スキル」解説はじまりはじまりー
イリヤ:まず、士郎は本編よりも圧倒的にレパートリーが増えています。
経験はやはり偉大ね。
大 河:歴史が深い中国やインド、欧州ではギリシャ、アフリカではエジプトなどを回っていて、
そこの料理は一から学んでいます。
イリヤ:当然、訪問先で料理店にバイトしてるし、他にも執事のバイトをこなしているので、別名「冬木のブラウニー」です。
類似品は「赤いブラウニー」となっていますが、こちらはアーチャーも入っています。
大 河:「赤いブラウニー」は言うと、士郎は怒ります。
それはともかく、士郎の料理における最大の特徴は民族または個人の好みに合わせた料理の作成です。
士郎の家は現在、マスターやサーヴァントの駆け込み寺となっているため、
ビッククラブのサッカーチームも真っ青な多国籍軍な環境となっています。
だからこそ、個人個人の地方の庶民の味を再現し、自分のものとした上で改良を施します。
イリヤ:日本人用の味付け、ヨーロッパ人用の味付け、個人の味付け、全員に合わせた味付けなど多種多様です。
大 河:ていうか、一人一人に細かく気を配っているから、一つの料理に数種類の味付けが存在しています。
まぁ、士郎なのではずれはないわね。
イリヤ:ちなみにバゼットに関しては処置なしなので、バゼットの意見のみ完全に黙殺しています。
大 河:ていうかあれは、バゼットちゃん悪いわ。士郎があんなに泣いたの始めてみたわよ。
イリヤ:士郎が切れる原因がほとんど料理で、その切れさせている原因ってほとんどバゼットっていうかダメットのせいよね。
一部悪ノリする人もいたけど。
大 河:まぁ、味オンチは放っておいてゲストを呼ぶわよ!
イリヤ:押っ忍!記念すべき第1回目のゲストは!
大 河:へっぽこ魔術師士郎の師匠「遠坂 凛」さんでーす。
凛 :はじめまして。士郎の師匠をしている遠坂 凛です。
大 河:実は遠坂さんには士郎の人形体について解説をしてほしいのです。
凛 :わかりました。まったく作者の描写不足にも困ったもんね
イリヤ:おー・・・始めから飛ばしてます。
凛 :ふふ。本題はこれからよ。
とりあえず、本編で紹介されてる機能を詳細に説明させてもらいます。
・魔力量の増加
(元の士郎の魔力量=30として計算しています(魔力量は某研究室に記載されていたのでそちらを参考))
人形体の影響で、魔力量の増加は基本士郎の3割程度の増しです。
そのため、一般魔術師に毛が生えた程度です。
・・・こう書くと士郎の魔力は真実凡人だとわかると思います。
これに関しては特にデメリットはないです。
・魔術回路の負担の軽減
これはCランクまでの宝具ならば、確実に軽減します。
ただし、Bランクの宝具からは魔力軽減する量が減り、Aランク以上は通常通りとなります。
また、当然EXランクは投影できません。(宝石剣は除く)
これ、全然記載してなかったので申し訳ありません。
・肉体の自己修復機能
これは魔力を消費し修復します。(当然魔力なかったら修復しません)
擦り傷や軽い切り傷なら、1消費するかしないかですが、骨折などの重度の怪我は投影並みに減ります。
また、ある程度修復についてはコントロールできるようにしています。
これも未記載でした。
・「全て遠き理想郷(アヴァロン)」接続
最大のメリットにして、最大のデメリットとなっている。
1.魔力供給について
これは、あくまでも最大魔力の増加ではなく、スパ○ボでいう「EN回復大」だと思っていただければ問題なしです。
基本的に人間も1日寝ればある程度復活しますので、それが10分程度で行うと思ってください。
2.魔術回路の全部接続について
これは魔力が爆発的に増えますが、条件が必要です。
体力と魔力の記載に関しては、人形の方で安全装置かけているので、士郎では解除できません。
あと、死亡と同時に起動するというような機能は一切ありません。
自動接続時
・体力と魔力が10%以下(半端に死に掛けると逆に地獄です)
・その時に意識が無くなっている(接続と同時に意識が戻ります)
手動接続時
・体力と魔力が30%以下
・呪文を唱える
3.エクスカリバーの投影条件
条件をクリアすれば、固有結界なしでエクスカリバーが使用可能となっています。
(固有結界を展開すれば、通常時でも使用は可能です(ただし、固有結界自体も魔力を喰うため、現実的ではないかも))
エクスカリバーの投影ですが、士郎本人のみでは使用不可能です。
条件は他人任せの部分があります。
・周りの空気に魔力(マナなど)が満ちている
・パスを繋いでいるまたはアヴァロンに全接続している
・(パスを繋ぐ場合)パスを繋いでいる相手の魔力が士郎の最大魔力値の5倍以上必要
・自身の体力が70%以上残っている(エクスカリバーの反動を耐えるために必要です)
4.全体的なデメリット
デメリットは今後文中に詳細を記載しますが、主なものを簡単に記載します
・アヴァロンとの全接続終了後、50%以上の確立で人形の機能が停止する
・アヴァロンとの全接続時の間は、魔術回路の負担の軽減の機能は適応されなくなる
・(生存時)アヴァロンとの全接続終了後、人形体の内部機能の調整を行うため、2〜3日ほど魔術が使用不可能となり、
肉体も思うように動かなくなる。
・心臓や脳など修復が絶対に不可能な器官があり、そこを破壊されると人形の機能が停止する
凛 :となっています。とりあえず、最大のメリットは使い方間違えると牙を剥く設定です。
大 河:まぁ、世の中そこまで便利じゃないということね。
イリヤ:だけど、実際リリカル世界で戦うと士郎って強いんですかね?
凛 :人形の特性だけ生かして、投影で強いのだけ使っていれば無敵に近いかもしれません。
でも、この話はあくまでも「衛宮士郎」なので上手く生かしきれない部分があります。
イリヤ:士郎ってかなり・・・いや凄く甘いから、そんな危険な投影しないもんね。
大 河:加えて、自分の危険より他人の安全優先にするから、ちょっとくらいなら傷ついてもいいやって思うわよね、きっと。
凛 :stage2でも恭也さんに実質負けとなっており、stage1でも書いた通りなんでもありの乱戦で強さを発揮します。
つまり、相手の得意分野のみで戦った場合、士郎は引き分けが精一杯です。
大 河:ちなみに接近戦の技術のみでいうとこんな感じです。
ただし、これはあくまでも技術のみでパワーやスピードは考慮外です。
士郎(高)>シグナム、恭也>ヴィータ、士郎(衛)>ザフィーラ、アルフ>クロノ>フェイト>なのは、ユーノ>はやて
イリヤ:遠距離戦はさらに難しいわ。基本はなのはとはやてが強いけど、士郎は超遠距離の狙撃っていう武器があるから
大 河:ま、今日の所はここまで。
強さに絶対的な数値は存在しないし、士郎はそれを跳ね返すように戦う。それが結論です。
凛 :では、本日はご静聴ありがとうございました。
イリヤ:ばいばーい
終幕・・・・
凛 :ところで・・・あいつ私の声無視するなんて、いい度胸よね
イリヤ:って、なんで宝石構えて・・・ていうかすでに投擲体勢!?
今度こそ終幕
後書き
今回は題名通りではなく、どちらかというと士郎くんの家事スキルの奥の深さがわかる回であります。
ていうか、普通にサブキャラと交流を繰り広げています。
次回は題名通り、ついになのはたちと絡ませる予定です。
とりあえず、なのはの心情は基本放っておくとどこかに行っちゃうような感じがしたからです。
なのはさんの傷心具合は無印、A'S、stsとか、嘗てないほど落ち込ませました。(怪我の時はこれくらい落ち込んだかもしれませんが)