魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate
Stage8「海鳴温泉」
side―Emiya Shirou
本日は連休を利用した家族旅行。
俺はというと、男性陣+桃子さん+忍さんと共に一緒の車である。
「あっちは楽しそうねぇ」
「ふふ。年頃の女の子が話してるんだもの、盛り上がるわよ」
「あー。じゃ、あたしはどう思ってるんですか?」
「あら? あなたには恭也がいるじゃない」
「そういえば、恭也・・・いつ結婚するんだ?」
「う・・・と、とりあえず大学卒業を目処になんとか・・・」
「なんなら、学生結婚でもいいぞ」
「いいねぇ・・・恭也。結婚式、挙げちゃう?」
・・・えーと。恭也さん。強く生きてください。
とりあえず、俺では何も役に立ちません。だから、救助を求める目をしないでください。
と思っていたら・・・
「あ、士郎くんもなのは貰う気ない?」
なんて、非常に危険な質問をする桃子さん。
今までの弱弱しい気はなんだったのか、と聞きたいぐらいに変貌した恭也さん。
「ふふふ・・・なのはを貰う気なら、俺を倒してもらわないとな・・・」
「ちょ!? な、なんか黒いオーラが立ってますよ!?」
こっちもこっちで盛り上がってきているが、なんかヤバイ方向に盛り上がっている。
車から降りたと同時に神速から奥義を食らいかねない。
・・・とりあえず、防御できるようになんとか対策を練っておこう。
interrude
こちらは変わって、女性人のみの車内。
見ていて、非常に華やかな空間である。
っていうか、美人率100%で、年少組にしても、5、6年すれば間違いなく、青年男性が振り返るようなほど可愛らしい。
「ねぇ・・・なのは」
「なに?」
「あんたって、士郎のこと気に入ってるでしょ?」
「え、そ、そそそ、そんなことないよ!?」
狼狽するなのはさん。
ちなみに、魔法訓練や日常生活で、士郎の(無自覚)フラグ攻撃―イメージ的に『全投影連続層写』―を防御せずに受けているのだ。
具体的に言うと、『やっぱりなのはには白い服が似合うな。うん。清純な雰囲気とよく合ってる』だの『気をつけろよ。この辺りは木の根が多いからな』と言って、手を繋いだりしてるのだ。
現在の好感度は推して知るべし。
アリサは追撃の手を緩めない。
「えー。でもサッカーの時と比べても、視線が熱いよー」
「あ、それはわたしも思ったよ」
「す、すずかちゃんまで!?」
にゃぁー。と叫びながら、手を振っているなのはだが、その行動を全員が照れ隠しだと認識している。
「そ、そういうアリサちゃんだって、仲いいよね!?」
「そりゃいいわよ。会話に歯応えあるっていうか、なんか話しやすいし。あれでからかいさえなければねぇ」
「うーん・・・でも、からかってるのはアリサちゃんだけだよ? もしかしたら、一番気に入られてるんじゃない?」
などと、何気に爆弾発言を繰り出す月村家のお嬢様。
「ふーん・・・! それだと、なのはの想い人取っちゃったのね・・・ああ、なんて罪作りなあたし・・・」
「ちょ、ちょっと!? ま、まだそうだと決まったわけじゃ!?」
「なのはちゃん・・・自爆してるよ。想い人のところとか・・・」
「あ、でもでも・・・士郎くんって誰が好きなんですかね?」
すずかの言葉は誰の耳にも入ることなく消えたが、ファリンのある意味核心を突く台詞が車内に浸透する。
「うーん・・・一番交流があるのはなのはだと思うけど・・・まず間違いなく恭也さん属性でしょ? あいつ?」
「そうだねぇ・・・なんていうか、何時の間にか相手の懐に入って、必殺の一撃を繰り出す所なんてそっくりだよ」
『あ、あははは』
乾いた笑い声が車内に響く。全員、恭也の鈍さは先刻承知なのだから。
なのははなのはで、先日から何回か聞いている『フェイト・テスタロッサ』の情報もあり、間違いなく何かしていると確信している。
・・・悪い意味で信用されているな、士郎。
「あははは・・・士郎くん。優しいですから」
「そういうファリンだって、結構好きでしょ?」
「はい。頼りになる弟くんです!」
元気に頷くドジっ娘メイドさん。
車内全員は
(きっと士郎(くん)はファリン(さん)のこと『面倒見ないと不安なお姉さん』と認識されているから・・・)
と思っているが
士郎の圧倒的な家事スキルを知れば知るほど思うが、生まれる性別間違えたか、天性の執事だと思っている。
・・・士郎も最近、その思考に毒されていたりもするし。
―とにかく、最も盛り上がる色恋話で盛り上がるのだった。
interrude out
そして、温泉に辿りついた。
ちなみに俺は温泉に浸かっており、隣には恭也さんである。
士郎さんは桃子さんとお散歩中。仲がいいというかバカップルというか。
「ふぅ・・・気持ちがいいな」
「はい。そうですねぇ」
この体になってからは酷使はしてないが、やはり温泉に入るといい感じだ。
なんか体が楽になる感じである。
ただし、それは入って少しだけだった。
だって
「わー・・・忍さん。胸大きい」
「お姉ちゃんやファリンさんも綺麗・・・」
「あー!? す、すずか・・・胸、大きくなってない?」
「そ、そんなこと・・・」
etcetc・・・
えーと・・・青少年にはある意味天国であり、地獄へと誘う声が響き渡るのである。
う・・・ちょっと・・・いや、かなり興味があるんだが・・・
恭也さんも心なしか動揺している。
「あ、みんなで洗いっこしようか?」
「あ、いいですね」
「じゃ、みんなで行きましょう」
『おおー』
・・・ここからは音声のみでお送りします。
「わぁ・・・やっぱりお姉ちゃん大きい」
「ふふ・・・すずかだってすぐに大きくなるわよ。だって、もう膨らみかけて・・・」
「きゃ、さ、触らないで・・・」
「いいなぁ、すずかちゃん」
「なのはもすぐにおおきくなるよ。でもいいなぁ、なのはの肌すべすべ」
「ひゃ、く、くすぐったいよ」
「あ、あたしも便乗させてね」
「あ、アリサちゃんも!? え、えーい。あたしだって!」
「ちょ、ちょっとなのは!? 負けないわよ!」
「アリサちゃんもか・・・一緒にファリンさんも交ざりません?」
「楽しそうです・・・わ、わわわ!?」
「みなさん元気ですね」
・・・俺と恭也さんは咳をして
「で、出ませんか?」
「そうだな」
と俺たちは男湯を後にした。
・・・ちょっぴり、ユーノが羨ましいと思ったのは秘密だぞ?
interrude
わたしと桃子は近くの小川で会話をしている。
それは今までのことを振り返ったり、これからのことを話したりしている。
そして
「そういえば・・・士郎くんのこと。やけに熱心に引き止めていたけど、あれはどういうことだい?」
「最初はあの子がなのはに似ていると思ったからよ」
穏やかな声だった。
「なのはには寂しい思いをさせちゃったから・・・たぶん、今も一人だと感じている時があるみたいだし・・・」
なるほど。俺と桃子。恭也と美由紀。この二組が基本的に一緒にいるため、どうしてもなのはが余ってしまう。
だからもう一人加えたのか・・・だが
「なぜ、士郎くんなんだい? あの子は確かにいい子だ。でも、それだけじゃ、理由にはならないだろう?」
そう。あの子はどこかなのはに似ている。
他人のために何かをすることや優しい心。そして、同時に強い子でもあると思う。
「あの子は・・・たぶん、自分のために何かができない子なのよ」
桃子の言っている意味がよく分からなかった。
「あの子を家に運んできた日なんだけど・・・一番最初に『自分を助けてくれてありがとう』じゃなくて『怪我の手当て』についてありがとうって言ったでしょう?」
「ああ」
「なんとなくだけど『他人に迷惑をかけてしまって申し訳ありません』って言ってるように聞こえたの」
むぅ・・・なるほど。この場合のありがとうは、感謝と同時にそのことに対する謝罪の意味が入る。
士郎くんは『自分の命』ではなく、『怪我をして手を煩わせたこと』に対して謝っていたということか?
「だから家で引き取って、自分の命の大切さを教えようとしたの」
ふむ。なるほど。熱心に引き止めるわけだ。
それが本当なら、彼は自分に感心を持っていないのだから。
「もちろん、勘違いかもしれないけど。でも、店の手伝いをしたいって言ったことがあったと思うけど」
「ああ。最初は断っていたな」
「ええ。でも、その時の表情なんだけど・・・やっぱり、彼からはそんな感じを受けるの」
まるで他人の世話をすることに生き甲斐を覚えているようにね。と続けた。
たぶん彼は誰よりも尊いかもしれないが、同時に危険でもある。
「だから・・・彼にはもっと知って貰いたいの。もう一人息子ができて嬉しいし」
「それは俺も思うよ。今度基礎だけでも教えてみようかと思ってな」
無論、剣術のことだ。今の話が本当なら尚更覚えさせたい。
もう士郎くんは家族なのだから
interrude out
俺はというと、なのはたちがまだ温泉に入っていたので、一人でコーヒー牛乳を頂いている。
やっぱり、日本人なら風呂上りには牛乳だろう。
そう思い、マッサージチェアに座ろうかと真剣に悩んでいると
「はーい・・・おチビちゃんたち」
・・・えっと、先日人間形態に変化できることが判明した赤い狼の声が聞こえたんだが。
そっと窺ってみるが、なのはに視線が集中している。
ご主人様の対戦相手を吟味しているのだろう。
ただし、非常に挑発的な眼をしているので、アリサが暴発しかねない。
しょうがないから、出て行こう。
「おーい・・・あれ? その人は?」
全員が俺の方を見た。
・・・アルフよ。気持ちはわかるが、嫌そうな顔をするな。
「いやー・・・なんでもないよ。ちょっと知っている子に似てたから話しかけたのさ」
「そうですか。外国の方は日本人の顔が見分けがつかないらしいですしね」
ちょっと笑いかけてみたが、俺の目はおそらく笑っていない。
だって、仲良し3人組が引いてるし、アルフの表情は強張っている。
ちなみにこの笑みに、俺はここで暴れる気なら承知しないぞ。という意味を込めている。
そして、アルフは一瞬だが、視線を森の方に移した。
・・・なるほど。あそこにいるのね。
とりあえず、懐に手をいれ『投影』を行う。
取り出したるは・・・
「・・・!!?」
木の葉が揺れる。ふっふっふ。フェイトの驚愕が手に取るようにわかるわ。
取り出したのは、フェイトにとっての悪夢である『偽・マグダラの聖骸布』だからだ。
「じゃ、じゃぁねー」
アルフは逃げるようにして、温泉に向かっていった。
「まったくなんなのよ!?」
「出てきてよかったよ・・・アリサが暴発するんじゃないかと、気が気じゃなかったからな」
「・・・あんたはあたしのことをどう思ってる?」
「え? 暴発娘」
華麗な・・・あまりにも華麗な飛び蹴りが俺に繰り出されたのだった。
1秒で復活。まぁ、見事な飛び蹴りだったが、威力が足りん。
俺を仕留めることはできんよ。そういえば
「なのは。髪整えてやるから、ちょっとしゃがんでくれ」
なのはの髪がツインテールになっていない。
最近は、俺がなのはの髪の毛を整えるのが日課となっているのだ。
なんでも、気持ちがいいらしい。
ただ、その台詞を聞いた恭也さんが、恐ろしい目で俺を睨んでいたりしたが、まぁ気にしない。
「じゃ、やるから動くなよ」
と言って、俺は丁寧に梳いていく。
・・・ただ、梳くたびに木々から音がするんだが・・・
フェイト? おまえ隠れるつもりあるのか?
いつも通りだが、終わると何故か顔や首筋を真っ赤にするなのはがいるのだ。
そして、アリサとすずかは微笑していて・・・
「ふーん・・・面白そうね。あたしにもやってくれない?」
「あ、あたしも」
「ふえ!? あ、アリサちゃん!? すずかちゃん!!?」
そして、木々がさらに揺れる揺れる。
一体、何を動揺してるんだ?
「ほらほら。さっさとやりなさい」
などと楽しげな声をしている。
ま、いいか。結局、俺は3人娘の髪を梳くことになった。
・・・なんか、途中で木の枝が折れた音がしたのだが、なぜだろう?
* * * * * * * * * * * * * * *
温泉といえば卓球である。
これに異論がある奴は前に出て来い。俺とアーチャーがダブルで『無限の剣製』使ってやるから。
で、だ。ここで問題になったのは、俺とすずかである。
問題となった場面ですが、以下は音声のみでお送りします。
「は!」「えい!」「あまい!」「そっちもです!」「俺のドライブを甘く見るなよ!」「いくらなんでもこの高さは取れません!」
「ふん!」「な、ジャンプした!?」「技を借りるぞ! ライダー!」「本気を出します!」「く!? 先程よりも早い!?」
etcetc・・・
・・・松林○ッカーも真っ青な感じで、俺とすずかの決着はマッチポイントから膠着状態になってしまった。
その際に、すずかの着物がはだけてしまい、混乱と3人娘から打撃が俺に吸い込まれてしまったりした。
・・・小学生にしては発育いいな。と思ったのは俺だけの秘密である。
そして、すずかは俺を見るたびに真っ赤になるのは、まぁしょうがないと思うことにする。
だが、はっきり言って、すずかには驚いた。
見た目、凄いいい所のお嬢さんで、強化なしとはいえ、俺の身体能力に負けないとは・・・
何かやっているのだろうか?
で、肝心の問題はというと、おれとすずかの運動能力についていけない2人のことだ。
なのはは言うまでもなく、アリサも
「・・・あんな動きにどう対応すればいいのよ」
と、悔しい気持ちを込めながら、口にしてきた。
というわけで、俺たちは卓球台を諦めることとなった。
・・・く、またいつかここに来た時は必ず!
* * * * * * * * * * * * * * *
俺は浴衣から普段着に着替えて、宴会場にいるんだが・・・まぁ、ぶっちゃけカオスだな。
いや、夜は宴会になったのだが・・・
まず、表題は『家族旅行&士郎くん聖祥入学記念!』と銘打たれているが、もうドンチャン騒ぎである。
さすがに小学生組みにお酒を飲ませようとする猛者はいなかったが、それでも未成年に飲ませるのは止めたほうがいい。
すでに美由紀さんはヘベレケで、恭也さんも酔ってしまい、忍さんに膝枕されている。
他の面々は素面みたい・・・
「あはははは・・・士郎くん、温かいねー」
訂正。一人のドジっ娘メイドさんは泥酔状態である。
俺におもいきり抱きついており、なんか腕は関節技かけられているみたいに外れない。
「・・・ねぇ。なんでファリンが酔ってるの?」
「・・・わかりません。なぜ酔うのか一度確認しないといけません」
いや、あまりお酒が強いようには見えませんよ? ファリンさん。
それはともかく、普通にヤバイです。主に理性と俺の身が。
胸の感触は柔らかいし、甘い香りが鼻腔を擽るしで。
そして、なのはが思い切り俺を睨んでいるのである。
アリサやすずかも少し目が白い。・・・多分だらしない表情してるんだろうなぁ。
今の俺に味方はいないのである。
「じゃ、あたしたちはもう寝るね・・・士郎くんはごゆっくり」
となのはが言ったが、眼が笑っていない。
ものすごく怖いですよ?
「い、いや・・・なのは・・・な、なんか言葉に棘があるんだが・・・俺、何かしたか?」
「・・・べつに」
「・・・問題があるとすれば、何もしようとしてないからじゃない?」
アリサが解答を出してくれた。たぶん、俺がファリンさんの抱擁を受け入れているのが、気に食わないのだろう。
でもな・・・関節技かけられてるみたいに外れないんですって!?
そんな俺のことを無視して、なのはたちは部屋から出ていった。
あの後、しばらくしてファリンさんがドジっ娘属性をフル活用した転倒をしたため、俺は解放された。
いや、普通に天国でしたけどね。
ほっぺにキスされたりもしたし・・・俺はブンブンと首を振って、あの時のことを消す。
思ったんだが、この肉体になって俺の精神年齢も下がってるぽい。
ちょっと前だったら、覚悟さえ決めればそこまで狼狽しないのだが、今回はメチャクチャ狼狽した。
確か、遠坂の講義で『精神年齢は肉体年齢に引っ張られる』とか言ってたっけ?
その影響か、すごくドキドキした。
・・・前だったら、ファリンさんくらいの年齢の娘だったら、あまりドキドキしなかったんだけどな。
このままだと、俺はなのはたちにも恋愛感情を抱く可能性があるのか?
・・・考えないようにしよう。それはともかく。
なのはが外に出た。これは間違いない。
そして、俺はアルフがこの温泉にいるのを確認している。
(・・・さてと向かいますか)
俺は丁重に宴会の続きに対して、断りを入れてから、宴会場をあとにした。
interrude
目の前にあの金髪の魔法少女――フェイト・テスタロッサ――がいる。
すでにジュエルシードは封印されており、わたしたちは今から互いが持っているジュエルシードを賭け勝負する。
「ユーノくんはアルフさんを!」
わたしは『ディバインシューター』を展開する。その数は4個。
フェイトちゃんは一瞬だが驚き、すぐに表情を戻す。
(いくよ)
制御しながら、移動も同時に開始する。
フェイトちゃんはすでに高速移動を開始しており、目では追いきれなくなっている。
だが、移動のラインはなんとか見える。
わたしは士郎くんの教えを思い出す。
(いいか。フェイトと交戦する場合、相手の最大の特徴はスピードだ)
魔法による速度強化から繰り出される近接攻撃。
それに関しては、わたしでは防ぎ切れないと言われている。
こっちはまともにスポーツなどを何もしていない上に、あまり運動神経がよくない。
だから、絶対に接近戦は避けるようにとのことだ。
わたしは『ディバインシューター』を3つ操作する。
着弾先はフェイトちゃんの移動先だ。
「!?」
フェイトちゃんは一瞬で動きをストップ。そこから少し浮き上がり回避する。
驚いているが、まだまだ終わらない。
上空に一つだけ、待機させていた『ディバインシューター』を急降下させ、フェイトちゃんに直撃させようとする。
が、相手も凄い。即座に後方に退避する。
(やっぱり、速い・・・だけど!)
移動先に放っていた『ディバインシューター』をさらに操作。今度は背後から直撃させるべく、魔力弾を操る。
「は!」
フェイトちゃんが今度は防御魔法を展開し、防御する。
驚きの視線を向けられるが、わたしは気にせず、さらに魔力弾を精製する。
(士郎くんの言ったとおりだ)
わたしは杖を少し回転させ、態勢を変える。
(相手の長所はスピードだが、弱点もスピードだ。相手は完全に制御できていないから、0か10かの二択しかない。
相手が移動したら、移動先に魔力弾を叩き込んで、スピードを殺せ。それで側面や背後から魔力弾を叩き込め。
その後、相手が萎縮して、半端なスピードならそのまま押し切れる。今まで通りなら何度も同じ戦法を使え)
そして、わたしは微妙に大きな魔力弾を作る。
フェイトちゃんも今度は魔力弾――『フォトンランサー』――を精製し、放つ。そして、高速移動。
フォトンランサーを盾に、近づく作戦のようだ。
(その『ディバインシューター』にバリエーションを作ろう)
魔法訓練で教えられた、バリエーションの変化による利点。
わたしは砲撃魔法の改良を担当し、士郎くんは『ディバインシューター』の改良案を出してくれた。
「『ディバインシューター・――』」
今の誘導操作弾は、そうそう数は作れないため、物量で押すことができない。
ならば、そうなるようにプログラムを書き換えればいい!
「『――タイプ・ヘッジホッグ!』」
名前の通り、精製した魔力弾が破裂し、無数の魔力の針になる。
魔力の針なので貫通作用が高く、少ない針でフォトンランサーを叩き落せた。
そして、フォトンランサーを破壊しながら、わたしの魔法は突き進んでいく。
だが、フェイトちゃんはある程度予想していたのか、上空に跳躍している。
上空に回避したフェイトちゃんを見て
(すでに鎌に変化してる!?)
新たに魔法を組んでいたことに驚いた。
「アークセイバー!」
要注意魔法の一つが向けられた。
(『アークセイバー』とかいう魔法は防御しちゃダメだ。あれ回転してるから、シールドで防御しても破られるかもしれん。
加えて、あれは幻惑用の魔法でもあるから、迂闊な対応するなよ)
と言われていたが、咄嗟の対応ができない。
防御魔法を使い、なんとかガードするが
(く、食い込む!?)
魔法の威力に負け、わたしは吹き飛ばされた。
そして、追撃の『フォトンランサー』が発射された。
防御が削られピンチになったが、わたしはフェイトちゃんに見つからないように作っておいた魔力弾を、フェイトちゃんの右側に移動させた。
「え!?」
驚きの声を上げるがちょっと遅い。
ボン!
魔力弾は破裂し、魔力の針がフェイトちゃんを襲う。
と、同時にわたしにも『フォトンランサー』が直撃した。
この魔法は、破裂させる前はディバインシューターと同じ特性を持っている。
破裂後は操作できないが、針は無数に分かれるため、至近距離なら回避は難しい。
ならば、破裂前に相手の近くに移動させ、破裂させればいい。
そして、始めはわかりやすく大きさを変化させていたが、本来は『ディバインシューター』と全く同じ大きさで放てる。
つまり、魔力弾を大きくさせていたのは伏線だったのだ。
「・・・前と動きが全く違うね」
フェイトちゃんが賞賛の言葉を送ってくれる。
一瞬早く気付かれたため、全部当たっていたわけじゃない。
だけど、肩やお腹に細かい針が刺さっている。
当て・・・られた!
「強い・・・近距離用の対策も立ててるんだ」
「そうだよ・・・士郎くんお手製の対策だからね」
「・・・ちょっと羨ましいな」
小声だが、確かに聞こえた。
・・・やっぱり、何かしてるんだね、士郎くん・・・
「あたしの名前はなのは! 高町なのは! あなたは!?」
名前は士郎くんから聞いているし、わたしの名前も士郎くんが話した。
だけど・・・
「・・・聞いているはず「あなたの言葉で聞きたいの!」――フェイト。フェイト・テスタロッサ」
わたしたちの視線が交わる。
――今日、この日を持って、わたしたちは確かに戦いの意志を伝え合った。
interrude out
うーむ・・・どうも予想以上に訓練が上手くいっている。
やはり、なのはが予想以上に真剣に訓練をしていたことが大きいようだ。
とはいえ
(・・・これ以上はまずいか?)
なのははよくフェイトを抑えたと思うし、一発当てた。
だが、なのはは直撃のため少し動きが鈍くなったのに対し、フェイトはあまりダメージを受けていない。
魔力弾の直撃と散弾(しかも当たったのは極僅か)の差が如実に出ている。
何かキッカケができたら、止めに入ろう。
「あたしの名前はなのは! 高町なのは! あなたは!?」
「・・・聞いているはず「あなたの言葉で聞きたいの!」――フェイト。フェイト・テスタロッサ」
ちょうどいい。二人の名乗りが入ったのだ。止めに入ろう。
「そこまでだ」
この場にいる全員が俺の方に向いた。
「これ以上の戦闘行為を続けるなら、俺も加勢するぞ」
アルフが苦虫を噛んだような顔をして、こちらを睨む。
フェイトも不利を悟り、殺気を消して、この場から離れようとした。
「さようなら、士郎、なのは・・・また会おう」
「――うん!」
なのはの元気な頷きのお陰か、何故か微笑を浮かべたフェイトとアルフは去っていった。
「あいつ・・・俺が教えたことしっかり守ってるじゃないか」
「? 何を教えてたの?」
「ん? 別れるときの言葉は『また会おう』って言った方がいい。って言ったんだ」
なのはも頷いてくれている。
やっぱり、さよならだけじゃ味気ないし、なんか嫌だよなぁ。
「そういえば、士郎くん宴会は?」
「ああ。あの後、ファリンさんが盛大にドジして、一時中断になった。俺はそこで抜けたんだ」
「ふーん・・・残念だったね・・・ファリンさんといちゃいちゃできなくて」
なんか口調が刺々しいな。
「ふんだ。ファリンさんかわいいから良かったよねー、だ」
「だから、なにがさ? いや、ファリンさんはかわいいと思う・・・いたっ!?」
「ふんだ」
なのはが俺の頭をポカっと叩いた。
・・・あ、そういうことか? 俺はかつてイリヤに言われたことを思い出した。
『士郎。女の子の前で他の女の子のことは褒めちゃダメだからね』
『? なんでさ?』
『いい? 女の子っていうのは、多かれ少なかれ、自分のことを褒めてもらいたいの。
それなのに、自分が目の前にいるのに、他の子を褒めるってことは自分に魅力がない。って言ってるのとおんなじなんだから』
『へぇー。そうなのか』
・・・なるほど。俺がファリンさんにデレデレしていたから、なのはが怒ってしまって、今も自分に自信が持っていないのか。
よし。
「なぁ、なのは」
「なに?」
「俺はなのはもかわいいと思ってるし、魅力的だと思ってるぞ?」
顔がもの凄く赤くなっていくなのは。
「・・・え?」
「それになのはが目の前にいるのに、他の女の子のこと褒めてごめんな」
「え? ・・・う、ううん・・・別にいいよ」
「そうか」
あれ? なんかおとなしくなったけど・・・あれ?
ま、いいか。俺は手を差し延べて
「じゃ、宿に戻るぞ」
「う、うん」
手を繋いで、なのはと宿に戻っていく。
こうして、海鳴温泉での戦いは終わった。
戦いも宴会も終わった宿の屋根の上で
「・・・なんで、僕は戦闘シーンどころか会話がただの1行もないんだぁー!!??」
・・・ユーノの魂の叫びが温泉の林に響いた。
魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate Stage8 「海鳴温泉」 End
Next Stage 「転校初日」
没ネタ
士郎登場後です。
フェイトは・・・あれ? なんで怒っているんだ?
それになのはも?
「士郎くん・・・そのほっぺは?」
「そうだね・・・頬にキスマークがついてるよ」
俺はハッとして、頬に手を当てた。
うん。非常に薄い色だが、付いてるね。どうやって気付いたんだ?
・・・あれ? なんか二人が頷き合ってるよ?
「ねぇ・・・フェイトちゃん」
「うん・・・なのは・・・」
なんで君たちはすでに名前を呼び合ってるんですか?
「今は一時休戦しない?」
「わたしもそうしようかと提案するところだったよ」
なのはが『バスターモード』に変形させ、フェイトも体を帯電させている。
「ユーノくん・・・」
「アルフ・・・」
気が付いた時にはすでに俺の手足は拘束されていた。
「ば、バインド!?」
「・・・ごめんね、士郎」
「坊主、許せ。今のフェイトは誰よりも怖いんだ」
ちょ!? 助ける気0か!? おまえら!?
「士郎くん・・・ちょっと頭冷やそうか」
「そうだね・・・」
「ま、待て。そ、それはいくらなんでもまずい・・・」
何故だ? 今の俺は『熾天覆う七つの円環』が絶対に投影できないと本能が告げている!?
「ディバイン――」
「撃ち抜け――」
・・・その後の俺の記憶は何故かなかった。
没理由:魔王化を促進させていたから
タイガー道場!! Stage8!!
注:)基本的に恐ろしくギャグ空間です。
拒否反応がある方は読まないでください。
イリヤ:状況を言いますと・・・師匠はバーサーカー&ライダーと激闘継続中です。
大 河:ふん!
ライダー:はっ!
バーサーカー:■■■!!
イリヤ:ライダーの参戦理由は何回か前の後書きで、桜をふっ飛ばしたからです。
???:まったく、野蛮ねぇ。・・・本当に私と同じ神話の出自かと思うと嘆かわしいわ。
イリヤ:おや? あなたは『普段は冷酷なくせに、夫の前ではぶりっ子』なキャスターさんじゃないですか。
キャスター:あら? 喧嘩売ってるのかしら?・・・若いからって調子に乗るんじゃないわよ(ボソッ)
イリヤ:ふふふ・・・それが取り得ですから
二 人:ふふふふふふふふ・・・
イリヤ:あ、葛木
キャスター:え!?
イリヤ:よっと
なぜか豪風が飛んでくる!
キャスター:きゃぁぁぁぁぁー!?
イリヤ:ふ・・・横暴な師匠に対抗するために、イリヤ城でなら自然をも操れる存在になったのよ
キャスター:そ、それって・・・空想・・・
イリヤ:ツッコミ禁止!
キャスター:・・・そ、そう。で、その肝心の師匠に効いたの?
イリヤ:・・・でも師匠には効果ないんですよ・・・
キャスター:・・・・・・・・・
イリヤ:・・・・・・・・・
二 人:・・・・・・・・・
大 河:ギャラ○シアン・エクスプ○ージョン!!
ライダー:なーー!!??
バーサーカー:■■■!!??
イリヤ:さぁさぁ! 愉快なタイガー道場の続きですよ!
キャスター:そうね! で、今日は一体どんなことを解説すればいいの!?
イリヤ:うーん・・・正直あまり解説することがないんですが・・・
キャスター:ちょっと!?
イリヤ:と思っていたら、今回は士郎がなのは用にオリジナル呪文まで作ってくれたから、それに対しての考察会です!
キャスター:オリジナルって・・・ああ。あの『ディバインシューター・タイプ「ヘッジホッグ」』のこと?
イリヤ:そうっす。ぶっちゃけ、士郎らしく何の捻りもなく、ネーミングセンス皆無なあの魔法です!
キャスター:・・・あなたの想い人じゃなかったの?まぁいいわ。
まぁ、本編で書かれている通りの効能で、なのはちゃんの『ディバインシューター』は誘導操作弾。
だけど、あの坊やはずっと操作していると、それだけ魔力や集中力を食うのが気に食わなかったみたいね
イリヤ:で、なんか対策ないかと、士郎が知っている武器を検索かけたところ『ショットガン』がでてきました。
キャスター:ショットガンは、弾を破裂させて、散弾をばら撒く。なるほど、その通りにできているわね
イリヤ:ただ、時間がなくて針状のものしかできなかったみたいですが・・・もう少しすれば、二通りのパターンが完成するはずです。
キャスター:二通り?
イリヤ:魔法を貫通するための針状形態、威力重視の弾形態の二通りが士郎のプランです!
キャスター:あの坊やは他人のためなら頭使うのね・・・攻防一体として使用できるし。
普通に放つこともできて、加えて散弾前は遠隔操作が可能。だから、弾のみを近付かせて、散弾させることができる・・・
イリヤ:ただ、弱点もあって、『ディバインシューター』よりも2倍くらい魔力を使いますし、プログラムの関係で咄嗟に組むのは難しいかと。
キャスター:あらかじめ意識が必要か。
イリヤ:ま、咄嗟に放つなら『ディバインシューター』の方が色々便利だと思いますけどね。上手く組めないと暴発の可能性もありますし
キャスター:ま、現在『用語集』も着々と作っているから、そっちを見てもらえると助かるわね
イリヤ:では、本日はこれにて終了です。ご静聴ありがとうございました!
大 河:ふ・・・黄金聖○士の技・・・素晴らしい。
ライダー:く・・・・ま、まさかここまでとは・・・
バーサーカー?:ふ・・・では、私も本気を出さなくてはならないようですね
二 人:へ?
終わっとけ
あとがき
私生活の忙しさが継続中。
でも、なんとかタイプしています。
寒くなって、困っていますがね。
今回、オリジナル魔法が出現しましたが、これだけです。他は登場予定は(今のところ)ないです。
タイガー道場でも書きましたが、士郎が現行の武器から出来そうなものを、引っ張って来てます。
そこまで無茶じゃないと思っていますが、あまり使わないようにSSを作成するつもりなので、ご理解をお願いします。
それでは、7話の拍手の返信です。
>すごく・・・ビクトリーム様を読みたいです!!
申し訳ないですが、書いてる余裕ないです。考えてるプロットを丸投げしたい気持ちがあります。(無責任だからあまりしたくないですが)
誰か書いてくれないかなぁ
>最高だ!あんたは最高だよ
ありがとうございます。これからもこのような評価を貰える様、鋭意頑張ります。
>今回も良い感じでした!これからも読ませて頂きますのでよろしくお願いします
ありがとうございます。感想は力になるので、継続して感想をくれるとありがたいです
>またフェイトにフラグ立てましたね・・・くっ、なのはのフラグももっと消化するんだ士郎!
今回はなのはのフラグシーンで一杯でしたが、どうでしょう?
何気にすずかフラグも立ち始めた気がしますが、これで結構均等・・・いや、若干なのは分が多くなったと思います。
>う、うぉぉぉぉ。フェイトが士郎の毒牙に……(ニヤリ)このままなのは→士郎←フェイトいっちゃおうか頑張ってください、私はいつも応援してます
いっちゃいます。士郎は無自覚で。無印終了後〜A’sまでに3人娘はフラグ立ってます。
応援感謝です。
>ブ、ブルァアアアアアッ!!ってまさかどこぞのOG2のラスボスの中の人だったりします?
多分、若○さんのことだと思いますが、すいません。現在、OG2はその前のステージで止まってるんでわかりません。
ただ、ビクトリーム様がダメージを負ったりすると、この声を出すんで使いました。
>更新お疲れ様です。
>士郎がうっかりを発動させてましたが、うっかりって伝染したりするのか?
>更に言えば、なのは達にも感染するのか?とか、いろいろ妙な思考に陥ってます。
>そして、藤ねぇが完璧に人外と化してるー(ガビーン)
>元々異常なまでの幸運持ってたり、あの若さで、剣道五段持ってたりするけど、一応一般人なのに、バーサーカーとがちで殺り合ってるし。
>では、次の更新を心待ちにしております。長々とすいません。
あまり明確に描写してませんが、結構士郎は口が滑りやすい奴です。でなかったら、あんなに女性陣に怒られ(殴られ)ません。
なのはたちには感染しないでしょう。大元がいない・・・いや、はやては感染するかもしれません。(声優関係で)
あくまでも『タイガー道場』の藤ねえだからです。勿論、人間だったら勝てませんよ。
更新楽しみにしてくれて、ありがとうございます。それと長くても全然平気です。
以上です。感想を送っていただけて本当に嬉しいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、