夜の鍛錬を終え、我が家に帰る準備を始めている3人がいた。

2人の男性と1人の少女である。

彼らの家は古い剣術家の家系で、一時期はかなりの勢力を誇っていた。

とある事情で片手で数えられる人数になってしまったが、技は確実に受け継がれている。


流派は永全不動八門一派・御神真刀流。通称、御神の剣士。

男性の名は「高町士郎」と「高町恭也」。少女の名は「高町美由紀」という。


山の中での戦闘訓練。

自然という障害物をものともしないどころか、逆に利用することを体で覚えるためである。

御神の剣士の本領は障害物がある場所または屋内戦である。

平地でも凄まじい戦闘能力を発揮するが、障害物がある場所ではそれ以上に驚異的な戦闘能力を発揮する。

詳しい話はまた後日語ることになるだろう。

「それにしても、なのははまたでかけているのかな」

美由紀は呟いた。

最近、年が離れた妹が夜に無断外出しているのだ。

「おそらくな。何をしているんだか」

「恭ちゃん。やっぱり気になる?」

「当然だ」

恭也は答える。

正直、恭也はなのはが何か厄介な出来事に巻き込まれているのではないかと、心配している。

だが、笑顔で「大丈夫だよ」と言われてしまっているため、これ以上の追求ができないのだ。

「確かに心配だな。だが、なのはは日に日に目の色が強くなっている。
 決して、巻き込まれた訳じゃなく、自分でやろうとしているんだ」

何かはわからないがな。と士郎は締めた。

「だが、父さん・・・」

「それとも、お前はなのはが信用できないか」

「そんなことはない」

「全てが終われば・・・?なんだ?」

士郎は少し離れた所から人の気配がするのを感じた。

少し遠いようだが・・・

「どうしたの?」

「いや、あっちから人の気配を感じてな」

「俺の片づけが終わったから見てくるよ」

恭也は士郎が指差した方向に歩き始めた。

そして、恭也も人の気配を探知した。

「こっちか」

少し早足になる。

人のことは言えないが、こんな時間に山の中にいるのだ。

真っ当な人間とは思えない。

恭也は気配の場所に到着した。そこで見たものは

「・・・子供?」

そこにいたのは、なのはと同じくらいの年の子供が倒れていた。

普通のジーパンとシャツを着ており、どこにでもいそうな少年だ。

特徴があるとすれば髪の毛が赤毛なぐらいだ。

一瞬、呆然としたがすぐに脈や呼吸の確認を行った。

「外傷もないし、気絶しているだけか。なぜ、こんなところで気絶しているのかが気になるが」

脈拍等は正常だが、このまま放って置いて良い訳ではない。

知り合いの警察関係者に連絡を行おうと思った所で

「恭ちゃん。そっちに誰かいた?」

「ああ。子供が倒れている。外傷はないし脈も正常だが、気絶してる」

「え!?きゅ、救急車呼んだほうがいいかな?」

「外傷はないと言ったぞ。
 もしかしたら迷子になって倒れたのかもしれない。
 リスティさんに連絡して、子供の捜索願いが出されていないかを確認しよう」

「う、うん。じゃぁ、その子は?」

「リスティさんに連絡したら、今日の所は家に連れて帰ろう。
 空腹で倒れているだけかもしれないしな」

そう言って恭也は子供を背負った。

その後、リスティに連絡を行い確認したところ、下記の事がわかり、決定した事項が何点か出た。

・捜索願は出されていないということ
・明日にでも病院(フィリス)に診察し、本人の了承の下、警察に連れてきてほしい。

そんな訳で高町家に連れ帰ることとなった。



恭也が子供を背負っているところを見て、「高町桃子」と「高町なのは」は若干驚いたようだが、
事情を説明し、客間に気絶していた子供を寝かせることとなった。

恭也はなのはが無断外出していなくて、少し安堵しているようだ。

もっとも、なのはの無断外出に関しては今日はまだ出かけていないだけで、
これから出かけるつもりなのは、恭也には知るよしもない。

「午前中に病院に連れて行きますね」

「そうだな。外傷はなくても、頭を打っているかもしれん」

「では、明日わたしが連れて行きます」

「わかった」

桃子が紅茶を入れ、それを一口飲んだ。




なのはは士郎に頼まれ、子供の世話をすることになった。

子供の額に乗せていたタオルを水につけ、絞り、また額に乗せた。

(大丈夫かな?)

(大丈夫だと思うよ。念のため、回復魔法もかけているし)

なのはと肩に乗せているフェレットのような生き物は頷きあった。

フェレットの名前は「ユーノ」という名前だ。

フェレットとなのはは会話しており、これは「念話」という初歩の魔法だ。

『そういえば、ユーノくん。回復魔法もあるんだね』

『うん。あんまり得意じゃないけど、時間をかければ回復すると思うよ』

『わたしも使えるかな?』

『適正によるから、ちょっとわからない。それより、なのは気付いてる?』

『なにが?』

『この子から魔力を感じる』

短いユーノの台詞だが、なのはは驚き問い返す。

『じゃあ、この子、魔法使い?』

『わからない。なのはのように魔力があるだけの一般人かもしれないし。
 軽く調べてみたけど、デバイスは持ってないから、一般人の可能性が高いと思う』

なのはのようにとてつもなく魔力量が多いわけではないが、それでもこの世界の住人と比べると、
大分多いのだ。

だが、魔法を使用する上で必須ともいうべき存在であるデバイスが持っていないこともあり、
ユーノは目の前の子供が魔導師ではないと判断した。

そんな会話が続く中、赤毛の子供が目を覚まそうとしていた。




SIDE - ???
目を覚ますと、最初に見えたのは天井だった。

見覚えがなかったので、瞬間的にここは自分の家ではないと悟った。

俺は目を瞑り、身体に異常がないかを確認した。

(魔力が少し削れている以外は、問題なし・・・か)

まったく、不運なのか、幸運なのか。

あの現象に巻き込まれて、吹き飛ばされたのは間違いなく不運。

逆にとんでもない現象に巻き込まれたにも関わらず、ほとんど怪我がないのは幸運だった。

「気がついた?」

俺が目を覚ましたことに気づいたようだ。

声の方向に目を向けると、そこにいたのは見たことがない少女だった。

年齢にすると、10歳前ぐらいだろうか。

ツインテールの髪はとてもさらさらに見える。笑顔がとっても似合いそうな可愛らしい少女だ。

「はい」

そう言って体を起こそうとしたが、少女が制した。

「ダメだよ。裏山で倒れてたんだから、もう少し体を横にしていて」

「そう・・・なのか」

人事のように呟いてしまった。

というか、俺も状況がつかめていないため、どうしても人事に思えてしまう。

体に異常がないのは確認しているが、ここは少女に従ったほうが良さそうだ。

状況も確認したいし。

「君が運んでくれたのか?」

「ううん。お父さんたちが見つけてくれたんだよ」

「そうか。お礼を言わないとな」

返事を聞いて、それもそうかと納得した。

10歳くらいの子が成年男性の肉体を運べるわけが・・・orz

「?どうしたの?ものすごく落ち込んでるみたいだけど」

「い、いや。なんでもないです。現実を再認識しただけですから」

少女は怪訝な顔をしている。無理もない。

すでにこの体になって1週間が経過しているのに、未だにこの事実を認めたくない。



自分の肉体が若返っているなどとは
まぁ、ある意味自業自得ではあるのだけれど。



とにかく、お礼をしないと。

確認しなくてはならないことがたくさんあるが、看病してもらったのだから。

「あの、運んでくれた人にお礼をしたいので、その人の所に案内してもらえないでしょうか」

「あ、敬語じゃなくても大丈夫だよ」

「はい。じゃなくて、そうか」

少女は微笑んでいる。

微笑んでいる理由はわからなかったが、悪くは思われてないのだろうと感じる。

「悪い。案内してくれ。えーっと」

「なのは、だよ」

「え?」

「名前。なのは。高町なのは。なのはでいいよ」

それを聞き、俺も名乗り返す。



「俺は士郎。衛宮士郎だ」




side - nanoha

お父さんと同じ名前なんだ。

名前を聞いて最初に思ったことは、そんなことだった。

士郎くんはどこか不思議だった。

最初の言葉を聞いたときはちょっと無愛想な子なのかなと思ったけど、話しているうちに
思ったより表情が豊かな人だと感じた。

それに礼儀正しい子でもあるんだなと思う。

だけど、それよりも不思議だと思ったのが、目だった。

何かはわからないけど、同級生の子とどこか違う。

それに不思議といえば

(なんで、名前で呼んでほしいと思ったんだろう)

クラスの男子もほとんどの子は普通に苗字で呼ぶ。

名前で呼ばれることが嫌なわけでは決してないけど、それでもどこかでそれが普通かなって思う。

だけど、士郎くんには名前で呼んでほしいと思った。

なんでだろう?

少しの考え事。とはいえここは家の中。すぐにお父さんがいる居間に辿り着いた。

考え事は一時中断。士郎くんとお父さんの話を聞こう。



−ちなみに、何故名前で呼んでほしかったのかが判明するのは黒衣の魔法少女と何回か戦った後のこと
 になるが、それはまた後の話。



 魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate 「prologue」 End
 Next Stage 「衛宮 士郎 T」




あとがき

お初の方ははじめまして。以前、読んだことがある方はお久しぶりです。

iseizinと言います。

読んでくださった方はわかると思いますが、リリカル(無印)とFateとのクロスです。

この話の基本路線は、リリカルの世界に衛宮士郎を介入させたらどうなるかという内容で話を進めます。

ただ、リリカル世界に来る前に、色々あって士郎くんが小さくなっています。

ぶっちゃけると、元の姿でフラグたたせまくったらやばいんじゃないかなぁと思い、小さくなってます。(笑)

小さくなった原因と士郎の戦闘スキルは次回以降に詰め込ませていただきます。

現在の時間軸は2話終了後となっており、今後は着々となのは+ユーノに介入させていく方針です。

完結までがんばりますので、応援していただけると幸いです。

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。





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