しかし今回はよくもったなぁ…。
 俺が単独行動してアイツらとのバトルに発展するまでに…。
俺は平穏に過ごせない宿命なのか?

 だが今回は謎の犯罪組織に巻き込まれてないし、悪い事はして無いはずだ!


 ただ連絡をしてないだけだぞ!!

 携帯だってココの利用規定に基いてOFFにしていただけだ!

 図書館で携帯を切るのは基本だろ!
 とくにプチたぬき!お前も元図書館の住人ならわかるだろ!!

 だがまぁこのままでは命にかかわる…

 逃走が既に不可能って事で取れる方法は

 1.お題目である『待遇改善』を語り、味方に引き込む。

 2.猟犬を使い内輪もめを起こさせる。

 3.ウーノに作戦を立案してもらう。

 くらいだろう
 
 ちなみにメガ姉さんに聞かないのは絶対ろくでもない事を言い出すと確信してるからだ!!
 しかしどうするべきか…。

「ウーノ!何とかならないのか?」
「六課の目的はあなたですから・・・・ドゥーエ、良介さんに化けて引き付けて」
「了解よ。ああ私がご主人様に化けられるなんて」

変なことで喜ぶな!しかしこれは効果的かもしれん今度からこの手でいくか?


(偽)「おい!はやて!何でこんなことすんだよ!!」
「えっ!?すんなり出てきた!?」


おいおい何でそんなにびびってんだよ。すんなり出てきたのがそんなに意外か?偽だけど。


「はやてちゃん騙されないで!あれは良介さんじゃないわ!!私の良介さんLOVEセンサーに反応しない!!」


変なモンもつなシャマル!!つーかマズイ、六課全員が持ってそうだ。
「確かに兄さんじゃないね・・・」
「ええ、先輩がこんな堂々と現れる訳がないです」
「宮本・・・影武者とは・・見損なったぞ!」


くそ!好き勝手言いやがって
「ドゥーエ!!とりあえず引け!!」

そう言って外に通信パネルを繋げるが

「ご主人様―――――」

ドゴーーーーーーーー!

トリプルブレーカーと各自の必殺技で消えていった。
しかもピンクの光でクアットロがトラウマで震えだしがった。もう戦えないっぽい。
ちくしょう戦力が半減しちまった。



「良介・・・次は良介の番だよ?」
「覚悟しとけよ?親分を怒らせたんだかんな」


いやフェイトにヴィータ待てよホント 今回俺何もしてないだろ!?
とにかく体制を整えなければ

「ウーノ!!何か手はないのか!?」
「残念ながら・・・あっ!セイン クアットロと戻りなさい。」
「りょうか〜い!!!」
「マテやコラ!!」


しかし見事にモグラに逃げられた・・・チキショー!!俺もつれてけーー!

「とりあえず援軍をセインに送らせますので持ちこたえて下さい」
「本当か!?頼むぞ!!」
「ええ、ところで司書長。ここまでするんですからこちらの要求守ってくださいね」
「ええ、自由に書庫の資料を探してくださって構いません」
「では」


そう言って通信を切りやがった。しかしただでは動かないと思ってたがそんな取引をしていたか・・・・


「良介さん・・・ここまできたらもう諦めるしかないんじゃ・・・」
「馬鹿言うなギンガ!!何もしてないのに全力全壊されていいのか!?」
「何もしてないから話せば分かってくれますよ!!・・・・・多分・・・」
自信なさげに言うな・・・。
そう話していると

「あ〜、ギンガもそこにいるんだったよね?今回はギンガも覚悟してね?」
「兄さんにお弁当渡してたんだよね?嘘ついたユーノ君も同罪だから」
「先輩の居場所知ってたのに騙しましたよね?覚悟はいいよね?よね?」


そう言ってまた通信が切られた・・・・・・。


「いやああああああ!!!なんで私まで!!!!!」
「お、落ち着け!!とにかく生き残るには勝つしかないんだ!!逃げようなんて考えるな!」
「あなたはいつもこんなのから逃げてたんですか!?私はもうもちませんよ!!」


う〜ん・・・もう慣れてきているからそこまで感じんが・・・こいつみたいな真面目な奴をもここまで壊すとは・・・恐るべし六課・・・・。


ふむ、このピンチから逃れる為に取り合えず現状を整理してみよう。
決して現実逃避とかでは無い!


場所は時空管理局本局の無限書庫。

目的は司書職待遇の改善(そして俺は平和な日々と栽培したメロンのゲット。

戦力はこちらは俺にギンガ、ユーノとし司書長に惚れている女とヤル気満々の司書達。
そして援軍としてナンバーズからウーノとエス姉さんにメガ姉にモグラが来ていたが、
ドゥーエとクアットロが離脱してセインが一時離脱。
セインが援軍を連れて来てくれるらしい。
他にも援軍を呼ぶべきか。

向こうの主力はヤル気MAXの機動六課の連中。
今回こそ死ぬかもしれん。

生き残るには勝つしかない!!逃げようとすればあの女司書にヤラレる!
前門に虎、後門に狼のこの状況。
現状を明確に認識したらさらに絶望した!!

「ふう・・・やっぱりここは僕の出番みたいだね?」
「ユーノ?」
眼鏡をキラリと光らせて、自信満々に言い放つユーノ。
「何か策があるとでも言うのか?」
俺の言葉にユーノは不敵な笑みを浮かべる。
「勿論。なのは達がどれだけ恐ろしい相手でも正面から戦うなんてする必要がないのさ・・・」

「どうするつもりだ?」
ユーノは報告書用の紙を一枚取り、ペンを滑らせる。
数分もたたない内に何かをざっと書き上げた。
「良介さん、これと同じ文章を至急7枚書き上げて。それだけであいつの・・・クロノの喉元に刃が突き立てられるから」
何だって!?そいつはスゲェ!不利な状況を覆す一手、そういうのを思いつくのは大抵は俺なのに・・・。

ヤバイ。ユーノがかっこよく見える。
実際、ほかの司書たちもユーノの宣言に感動と尊敬のまなざしを向けている。
例の女司書なんて瞳が正にハートマークだ。

そして俺はユーノのお手本どおりの文章を紙に書いた。
見直してみる。うむ、間違いはないな。
だが、こんなんで本当に何とかなるのか?
「大丈夫×2。乙女ころすにゃ刃物はいらぬ。手紙一枚あれば良いってね」
なんだそりゃ。
「まぁ、すぐに分かるよ。後はこれを・・・ん?」
「ん・・・?って、うぉおお!?」
気が付けば俺の後ろには紫色の髪のちびっ子が立っていた。
「何でお前がここにいるんだ!?」
「・・・・・・援軍」
そう言ってルーテシアは小さくVサイン。
あのなぁ、幾らなんでもこれは役にたたんだろう?
俺がそう言うと悲しそうに上目遣い。うぐ!?そんな目で俺を見るな!!

「なーにルールーいじめてんだよ、良介!!」
ルーテシアの後ろから飛び出してきたのはアギトだった。
こいつまで来たのか。ここは基本、火気厳禁なんだが。
「うっせぇな!せっかく援軍してやってんだから喜べよ!」
そう言われてもこいつとユニゾンしてもあの魔王の軍団を超えることは不可能だしなぁ〜。
「へっへっへ〜。今日こそは決着をつけてやるぜバッテンチビ!!」
・・・やる気満々だよ、こいつ。

そんな俺達を見ていたユーノが口を開いた。
「えっと、ルーテシア」
「・・・・・・何?」
ルーテシアに声を掛け、何事か相談している。
こくり。ちいさく頷く。そしてルーテシアはいつもの小虫を召喚した。
「それじゃこれ、頼んだよ」
「・・・・・・分かった」
俺の書いた手紙を掴んで小虫は飛んでいった。


「ちなみに、あの手紙にはなんて書いてあったのです?」
とギンガが聞いてきたので俺はユーノの書いた手本を見せた。


『今、こんな状況になってしまった事を謝りたい。
黙ってここにいたこと、それを伝えなかった事にきっと怒っているんだろうと思う。

俺は今、ここでいろんなことを勉強している。
それは、これからのためだ。

今のままじゃいけない。そう思い、ここに来た。
教えなかったのはこれが俺の我侭であり、そんなことでお前に要らない心配を掛けたくなかったからだ。

だが、結果として皆に迷惑をかけてしまったことはすまないと思っている。
この事で怒りをぶつけたいというなら喜んで受けよう。
だから、お前にだけは俺も本当の気持ちを今の内に伝えておく。

俺はどんな時でもお前のことを考えている。


宮本良介より』


「こ・・・これって・・・・・・!?」
「う〜ん、こんなんで大丈夫なのか不安ではあるな・・・」
「って言うか何ですか、ここの『俺はどんな時でもお前のことを考えている。』って文は!」
「いや、考えてるぞ?どうやってあいつらから逃げようか、とか・・・」
「・・・・・・・・・・・・そうですか。そうですね、あなたにとってはそういう解釈ですよね」

『P・S
このストライキの原因はクロノが全ての元凶だ』

「ユーノさん・・・きっちり矛先を向けてますね」
「敵にするとここまで恐ろしい相手だったとはな・・・」

クロノside



ふう・・・ユーノの奴・・・ストライキなんて起こしやがって。
そりゃいつも狙って資料大量に請求していたが。
そもそも最近僕より存在感が濃いじゃないかそこが気に入らん。

そんなことを考えつつ無限書庫に向かうと六課のメンバーの7人がいた。
何やら手紙を読んでいるが、まあこれならすぐに事態も納まるだろう。
お得意の魔砲の嵐で。


「やあ、はやて。どうした?制圧しないのか?」

とりあえず声をかけてみたが何故だ 全員顔がすごく幸せそうだ。
しかし僕にだけその顔が恐ろしく感じる。


「うふふ良介ったら・・・これからのためにって・・・水臭いやないか・・・」
「ホントだよ。兄さんてば・・照れ屋なんだから」
「うふふ・・・これからか〜」
「先輩・・・・」
「けっ!そんなことくらい親分に言えばいいんだよ」
「良助さん・・・ああ式場はどこにしましょう」
「ふっ・・見損なったといったが前言撤回だな いや見上げた奴だ・・・」


なにやらまた宮本がなにかで誤魔化してきたようだ。
しかし一体何を言えばここまで ん!?シャマルの分が落ちてきた中身を読むと


『今、こんな状況になってしまった事を謝りたい。
黙ってここにいたこと、それを伝えなかった事にきっと怒っているんだろうと思う。

俺は今、ここでいろんなことを勉強している。
それは、これからのためだ。

今のままじゃいけない。そう思い、ここに来た。
教えなかったのはこれが俺の我侭であり、そんなことでお前に要らない心配を掛けたくなかったからだ。

だが、結果として皆に迷惑をかけてしまったことはすまないと思っている。
この事で怒りをぶつけたいというなら喜んで受けよう。
だから、お前にだけは俺も本当の気持ちを今の内に伝えておく。

俺はどんな時でもお前のことを考えている。


宮本良介より』

『P・S
このストライキの原因はクロノが全ての元凶だ』



何だとー!? これか・・・これが僕に向けられた殺気の原因か!
何とかしないと。
そう思い弁解しようとするが事実なだけに思いつかない・・・。


「あっ・・・クロノ提督・・・」
「なんだと!?おい!クロノ!子分の勉強の邪魔したみたいだな・・・」
「他者の成長を邪魔するとはな・・・」
「臓物ぶちまけますか?」


待て!ティアナにヴォルケンズ!話を


「「「問答無用!!全力全壊・・・・
           スターライト・・・
           プラズマザンバー・・・
           ラグナロク・・・・

            ブレイカーッ!」」」



「うわーーーーーーーっ!」

そんな・・・これを僕が食らうなんて・・・。
最後の追伸・・・あれは間違いなくユーノの台詞だ・・・最後に爆弾くらい言ってやる・・・


「君たち・・・これからのためとは・・・だ、誰のことだろうな・・・ガハッ」

ここで僕の意識は切れた・・・。

ユーノside

モニターの向こうに地獄絵図が広がっていた。
たった一枚の手紙によってクロノは沈んだ。
正に計算どおりだ。
そしてクロノ、君が最後に残した言葉。それすらもこちらの策謀の範疇に過ぎないのさ。
むしろ、その言葉こそ望んだものなんだから。


普段だったらその言葉は良介さんに向けられて酷い目に合うだろう。
でも今の状況はそうはならない。

クロノの言葉にけん制し合う7人。
「そんなん、当然私や。なんてったって家族やもの・・・!」
口火を切ったのははやて。
「そんなのおかしいよ!だって兄さんはなのはの兄さんなんだから!」
「それこそおかしいよ、なのは、はやて。家族だって言うなら・・・・・・その・・・恋人とかじゃない訳だし・・・」
顔を真っ赤にしてフェイトがつぶやく。
「んなっ!?」
「フェイトちゃん!?」
恋人。その言葉に過敏に反応する。
「そんな!恋人よりも妻である私の方が!」
「親分のアタシだろ!!」
「ゴホン。師匠である私にこそ向けられたのでは・・・ないかと」
「なっ・・・何言ってるんですか皆して!?別に先輩のこととかはどうでもいですけど、皆、立場ってものがあるんですからその辺を少し考えてください!!」
見事に食い付く4人。

そして睨み合い。
誰も手出しできない。そんな空気の中、愚か者が一人。
「あの〜、いい加減制圧作戦開始しませんか?」
何て言ってきた。
「邪魔や」
「邪魔」
「邪魔です」
「邪魔だ」
「邪魔するな」
「邪魔しないで下さい」
「邪魔なの」
閃光、そして連続爆発。色とりどりの魔力光が渦巻いて、たった一人の武装局員を吹っ飛ばした。
・・・彼は生きているだろうか?

誰もがその光景に戦慄を感じた。
静まり返った廊下に魔王の声が静かに響く。
「一度、ちゃんとお話しとかなきゃって・・・思ってたんだ・・・」
「そうやね・・・私も思っとったよ」
「ちょうど良い機会かな・・・?」
「主はやて。我が不義理をお許しください。これも全ては宮本のためなのです」
「いくぞ、アイゼン!」
「くっ!こんなところで諦められないのよ!」
デバイスを構え、臨戦態勢だ。

そして
「・・・・・・ぅう〜・・・一体どうして・・・?」
ようやく起き上がったドゥーエが見回すとまるで図ったみたいに彼女達の真ん中だった。
「・・・・・・・・・え?」
恐怖に血の気が引いていくドゥーエ。

「いやぁあああああああ!!?」


断末魔の悲鳴とともにストライキの最終決戦は幕を開けた。

Side ???

 ほんとに困った子ねぇ…。
 こんな騒動を起こして…。

 でもあの子は本当に色んな娘に慕われてるのねぇ…。
 あの子を手に入れようとあんなに頑張ってる…。  でも…
 「そろそろ介入すべきかしらねぇ…」
 私の後ろから彼らの気配がしたので問いかけてみた…

 「……」
 「ククク…」

 振り向けばやっぱり二人だった…

 長い年月を一緒に歩いた仲間であり、家族、ラルゴとレオーネの二人。

 レオーネは困ったような顔をし、ラルゴはアノ子の状況を見て楽しそうに笑っている。
 二人とも私同様、あの子の事を孫の様に思っている。

 「そろそろ介入しないと無限書庫がなくなっちゃうわ…
  それにストライキの目的も叶った事も教えてあげなくちゃ…」

 それに今回はあの子、悪い事はして無いみたいだしね…

 待ってなさい、おばあちゃんが助けてあげるわね…



一方その頃。
第97管理外世界 現地惑星名 地球 海鳴市月村邸

「う〜ん! このノエルが作った手作りクッキー、美味し〜い!」

「ありがとうございます」

そう言いつつカップに紅茶を注ぐ。
次元を越えた世界で一つの組織が数人の集団によって破滅に向かって邁進している中。
自称、良介の恋人兼内縁の妻を名乗る月村忍とその専属メイドのノエルは優雅な午後のお茶を楽しんでいた。

「むむっ!?」

突然奇声を上げる主に驚くノエル。
「? どうかなさいましたか、御嬢様」
「あ、うん。なんかね、嫌な気配がしたの……」

「嫌な気配……ですか?」

そう言われて屋敷の中に不審な気配を持つ侵入者が居ないかどうか確認するがそれらしき気配は無い。
そもそも屋敷の周りには凶悪とも呼べるトラップの嵐だ。
それは地雷原さえ生易しいといえるレベル。
仮に屋敷まで到達出来たとしても 屋敷の内部に侵入したら自動人形であるノエルが感知出来ない筈は無い。

「特に何もありませんが……?」
「そういうんじゃなくて、なんかこう……私の居ない処で別の女(ひと)が侍君の恋人を宣言する様な気配」
「そうなんですか?」
「そうなの! ていうかノエルは良いの? 侍君の恋人になれなくて。
私はノエルが立候補しても別に気にしないよ?」
「いえ、確かに良介様を愛しておりますが私はメイドです。メイドとは仕える者。
 私は良介様のお傍でお仕えする事が出来ればそれ以上は望みません」
見る者全てを優しい気持ちにさせる様な柔らかな微笑を浮かべるノエルは本当に綺麗だった。

(この子も侍君と会ってから随分変わったなぁ)

無論良い意味でそう考える忍は苦笑するしかない。
彼と知り合う前は無表情で感情をどこかに置き忘れてきてしまったかのようだったノエルが ここまで感情というモノを表すようになったのがあの滅茶苦茶な男のおかげとは。
今の彼女を見て一体誰が機械仕掛けの自動人形だと思うだろうか?
自分の家族の成長に嬉しくなる忍であった。

「う〜ん、欲が無いって言うかなんていうか……でも恋人とかに関係無く侍君と一緒にいられるっていうのは羨ましいかなぁ」
「そんなものでしょうか?」
「そんなものなのですよ。あー、私もメイド服着て侍君に迫ってみようっかなー?」

忍ファン失神モノな提案を本人自らするが、それが叶うかどうかは 神のみぞ知ると言った所だろうか。

「それにしても……今度侍君と会ったらキッチリ話を聞かせてもらわないと!」
「気配がしただけで、ですか?」
「そう! 私にはソレで十分!」
この発言には流石のノエルも唖然とする。
「それは……流石にどうかと……」
「そう? でも大丈夫! 私ってば侍君に関しての勘は大概外した事無いから! 何故なら……」
「何故なら?」

「それは侍君の恋人としての勘、つまり『恋人の勘』だからよ!」

「そうですね、忍御嬢様がそう仰られるならきっとそうなのでしょう」

「そうなのです! あ、ノエル、お茶のお代わり頂戴♪」
「かしこまりました」

こうして月村邸のお茶会は穏やか(?)に過ぎて行くのであった。

え、この話のオチ? AHAHAHA!! ありませんよそんなモノ。


同刻  時空管理局  無限書庫

「おかわりじゃねぇーーっ!!」
「きゃっ!?どうしたんですか、一体?」
俺の突然の叫びにギンガが軽く悲鳴を上げた。
いや、変な電波が突っ込みを入れろと。
しかも電波のクセに
AHAHAHA!!
なんて笑ってやがった。
「はぁ・・・」
ギンガはよく分からないって顔をしている。
そりゃそうだ。俺だって分からん。

話を戻そう。
現在、無限書庫前はアフガンと化していた。
俺の書いた(ユーノの写し)手紙を読んで、どういう訳か内輪もめ。
これこそユーノの戦略だったのだ。
二虎強食の計・・・いや七虎強食の計と言うべきか。

とりあえずクロノに天誅を与えられたので俺があの女司書に殺られる事はなくなった。

そして、六課の連中は周りの武装隊を巻き込みながら激闘を繰り広げていた。
こいつら、普段より戦闘力上がってねぇか?

その中でも一番の驚きはティアナの健闘だ。
一番に脱落しそうだったのに、かなり善戦している。
お前、充分に才能あるよ。


「・・・・・・あれ?」
モニターを見ていたユーノが眉をひそめる。
「どうした?」
「一人足りない・・・?」
あんだって!?
俺もあわててモニター越しに人数を確認する。
1・・・2・・・3、4・・・5・・・6!?
「いねぇ・・・」

記憶プレイバック。

「邪魔や」
「邪魔」
「邪魔です」
「邪魔だ」
「邪魔するな」
「邪魔しないで下さい」
「邪魔なの」

ここは七人いるな。

「一度、ちゃんとお話しとかなきゃって・・・思ってたんだ・・・」
「そうやね・・・私も思っとったよ」
「ちょうど良い機会かな・・・?」
「主はやて。我が不義理をお許しください。これも全ては宮本のためなのです」
「いくぞ、アイゼン!」
「くっ!こんなところで諦められないのよ!」

・・・ここだ!!誰がいないっ!?

その時だ。俺の体に何かが這いずってきた。
細い白魚のような指。ちらりと見えるきめ細やかな肌。
そして、緑色の袖。
「良介さん、見〜つけた♪」
ふぅ、と耳に吐息がかけられて思わず身震い。
「ひぃいいっ!!?」
振り返らなくても分かる。こいつは・・・
「シャマルか・・・!?」
ある意味、一番危険なヤツが乗り込んできやがった!!
「は〜い、あなたのお耳の恋人、シャマルで〜す♪」
お、妻からランクが下がったか。
「耳は恋人でも、他はあなたの妻ですから」
変な区分分けするな!
・・・て、そうじゃねぇ!


「良介さん、危なーい!!」
ギンガの叫び。そして目の前に迫るリボルバーナックル。
待て待て待て!!何だーっ!
俺は横っ飛びでそれを回避する。
空を切ったリボルバー。

改めて状況を確認する。
ギンガのヤツがBJを展開していた。
以上。

「何で・・・シャマルさんを庇うんですか!?」
泣き叫ぶように吼えるギンガ。
は・・・?何言って・・・おい。
俺は後ろに張り付いているヤツを睨んだ。
シャマルは俺にぴったりと張り付いたままで、それに向かってギンガは攻撃したのだろう。
で、俺が横っ飛びしたら一緒に飛んでかわしたのか。

「・・・・・・おい」
「何ですか?良介さん♪」
「何でクラールヴィントが俺に絡まってるんだ?て言うか、何で俺とお前を縛り付けてるんだぁ!!?」
だから、こいつもギンガの攻撃をかわせたのか。
「それは・・・勿論、ず〜っとこのままでい・た・い・か・ら♪・・・やだ、もう!そんな事言わせないでください〜」
だぁあああ!そんなグリグリするなぁ!!

「いい加減にしなさぁい!!」
ギンガが突進してくる。まっすぐ、最短コース。
「うぉおお!?」
「きゃぁ!?」
とっさに横っ飛びで回避。
うわっ、前髪かすった!?
「く・・・っ!どうして・・・どうしてシャマルさんを庇うんですか!!?」
アホかぁ!シャマルの前に俺に当たるだろぉがぁ!!
「良介さん・・・やっぱりあなたはこんなにも私の事・・・」
後ろが見えないが、こいつはきっと想像以上の顔をしているな。
軽くトラウマ・・・女性不信になっちまいそうなほど不気味な顔を・・・。

シャマルの台詞にギンガは何でか物凄いショックを喰らったみたいな顔をしている。
「そんな・・・良介さん・・・あなたは・・・本当にシャマルさんのことを・・・?」
いやいやと首を振るギンガ。その瞳は溢れる涙にぬれていた。
「そうよ・・・ギンガちゃん、あなたの入る余地はどこにもないの。二人は一億と二千年前から愛し合っているんだから!!」
「・・・・・・っ!!」

ざざ〜ん!

なんだ?一瞬、荒波の日本海が見えたぞ!?
つ〜か、俺を挟んで何やってるんだ、こいつらは。

「そうですか・・・」
「そうなのよ・・・だから」
「だからって・・・」
「え・・・?」
「諦める訳にはいかないんですっ!!」

凄まじい魔力がギンガから放たれる。それを左拳に集中させていく。
「これが私・・・ギンガ・ナカジマの全力全開です!受け止めて下さい・・・良介さん!!」
はい?なんですと?俺? 「良いわ、受け止めてあげる。こちらも全力で!私達の愛の力で!!」
お〜い!何勝手に答えてんだよ、シャマル!!愛って何だ。躊躇わない事か!?
「ナカジマ家一子相伝!」
待て、そこからおかしくないか?
「私のこの手が光って唸った上に真っ赤に燃えます!!」
詰め込みすぎだぁ!!
「くらえぇええ!愛と怒りと悲しみと怒りと嫉妬とやるせない思いと怒りのぉおおお!!」 怒り多いなぁ!!

・・・なんで、こんな細かく突っ込んでるんだ、俺。
「石破天(ピー)ぉ・・・リボルバー・シュート!!」
ウイングロードが足元をすくい、ブリッツキャリバーが白煙を上げて走り出す。
かつてない危険。こっちに突進する途中でリボルバーナックルはガンガンカートリッジを排夾していやがる。

これは・・・死んだな。

そう覚悟を決めたその時。

無限書庫の入り口が爆発。
気休め程度に積み上げてあったバリケードと重厚な扉を勢いよく吹き飛ばした。

「え?」
「あら?」

飛んできた事務机がシャマルに直撃。
飛んできた扉がギンガに直撃。
シャマルはその場にばったりと倒れ、クラールヴィントも待機状態に戻った。

ギンガは・・・まるでコントみたいに扉に自身の型を取っていた。

安らかに眠れ。

俺は心の中で冥福を祈った。

これで、事態は収まる。そう考えた俺の耳に幽鬼の声が届いた。
「・・・・・・・・・ふふふ・・・にい・・・さ・・・ん」

白のバリアジャケットを煤と焦げで黒く染めた白い魔王こと高町なのはが、ドアのあった場所に立っていた。
もう限界なんだろう、ふらふらとしながらそれでも俺に向かって歩を進めてくる。
その後ろには屍が転がっていた。

しかし、どうやってここのバリアを抜いたんだ?
まるで俺のそんな疑問に答えるみたいに何かがなのはの後ろから飛んできた。
ブラスタービットォ!!?
こいつ、ブラスターシステム使いやがったのかぁ!!
ビットはなのはの周りをヒュンヒュンと回っている。正直怖い。

誰か、誰かいないのか。この状況を救うメシアは!?

ユーノは!?
ほかの司書たちは!!?
ルーテシアは!!!?
何でこの状況で黙っているんだ!!

・・・・・・・・・全員さっきの爆発に巻き込まれてやがるぅううう!!!

つまり、ここには俺と・・・なのはだけ・・・?

なのははもの凄く美しい、底冷えする笑みを浮かべる。

「やっと・・・二人きりだね・・・前の時はなのはだけ仲間はずれだったから・・・。
でも神様っているんだね・・・ちゃぁんとなのはにご褒美くれたんだから・・・」

おそらく以前あった恋人騒動のことを言ってるんだろう。
あの時、なのははさざなみ寮にずっといて最後の時にもいなかった。
そういえば随分すねてたなぁ・・・こいつ。
・・・いや、しみじみしてる場合じゃないって!

「さぁ・・・兄さん。なのはに・・・本当の気持ちを教えて・・・?」

そういう台詞はレイハ姐さんを下ろして言えぇ!!

誰か、ヘルプミーっ!!

すると、その願いが届いたのか、突如俺達の間に仮想ディスプレイが展開された。
「そこまで!」
なぁ!?

映し出されたその顔に俺となのはは驚愕した。

そこに映された顔はミゼット・ラルゴ・レオーネの自称俺の祖父祖母の3提督だった。 まさかこいつらまで動くとは・・・・。

「高町一等空尉。無限書庫という重要な部署で何をしようとしているんですか?」
「えっ!?あのこれは・・・」

おお!!ムッチャ威厳のある顔でそんなこと言えたのか・・・あの魔王がビビっていやがる。

「だから何をしとるかを聞いとるんじゃよ」
「無限書庫には代わりのきかない貴重な文献があるということ位しっとるじゃろが?そんなところで砲撃かの?」

さらに追い打ちをかけるかのように問い詰めてやがる。
ていうかこんくらいプレッシャー出せるなら普段からもっと出して前の事件とか止めとけよ。
とにかくこれでこの話を誤魔化すチャンスができたな。


「そ、その兄さんがいなくなって心配で・・・」
「いや、お前俺を心配どころか締めに来たって宣言してたからな」
「それは兄さんが黙っていなくなってギンガとイチャつくからです!」
「だから勉強とユーノの手伝いしかしてねえよ!」
「じゃあなんでストライキなんて起こすんですか!?」
いかん。どんどん話がズレてきやがる。
このままじゃまた暴走しそうだなコイツ。
その証拠にレイハ姐さんをどんどん構えの形にもってきてやがる。
そう思い話をもどしてもらおうとミゼットにアイコンタクトを送る。


(おい!なんとかしてくれ)
(もう助け船は出してあげたでしょ?まったく。さっさと決めてくっつかないからこうなるのよ?)
(知るか!俺は独りがいいんだよ!大体、今回は俺は何も悪くねえよ!)
(まあ確かに今回はね。しょうがないわね・・・あと一回だけよ?)
(すまん!今回は礼を言う)
(その代り、早くひ孫の顔をみさせておくれ?)

まて!クソ・・最後に余計なこと言ってコンタクトを一方的に切りやがった。
とりあえずこれで今回は助かりそうだ。


「高町一等空尉。今回のストライキは管理局全体の責任です」
「でも・・」

何か言おうとするなのはを抑えてラルゴ爺さんが続く。
「だから儂等の責任じゃと言うたじゃろ。良介は書庫の現状に嘆いて手伝ってたら巻き込まれただけじゃ」
「えっ?」
「そもそも書庫をないがしろにする連中が多いからこうなったんじゃぞ?お主も心当たりあるじゃろ?」
「それは・・・」


心当たり在り過ぎるのか反論できてないな、なのはのヤツ。
哀れユーノ。幼なじみにここまで忘れられるとは・・・。
確かに、そういえば此処に来たのってそれが理由だったな?居心地良くて居座ってただけになってたぜ・・・。


「とにかく私らは無限書庫の要求を飲むことにした。だから隊舎に戻りなさい」


そう言って通信を切って行った。
ふう、今回はこれで終わったな・・・今回は俺の勝ちだ!イヤッホウ!!


「あ、あの兄さんごめんなさい・・・何も悪いことしていなかったのに・・・」
「気にするな。とりあえずユーノとギンガにも謝っとけよ?」
「・・・なんでギンガにもなの?ギンガは嘘ついて兄さんにお弁当渡してたんだよ?ねえ何で?」


もしかしてまずった!?ギンガも被害者なんだぞ!?おい!!
とにかくそこら辺をはっきりさせねば!
「だからな・・・

「宮本さーーーん!!わたし退院したんでお祝いにあたしのためにアイス作ってくださーい!!」

馬鹿スバルーーー!!今の状況で「私のため」は禁句だ!!


「ってアレ!?なんで部隊長やギン姉が気絶してるんですか!?
て、なのはさん?なんでこっちにレイジングハート向けてるんですか!?」
「スバル・・・ちょっと頭冷やそっか?」
「え!?なんで!?嫌!退院したばっかなのに!!」


そのままスバルはピンクの光の中に消えて行った・・・・スバル・・絶対に作ってやらんからな!!覚えとけよ!!


「さあ兄さん・・・それちゃったけどお話聞かせて・・・?」


ノォオオオオ!!!ふりだしに戻った!?


「良介・・・ウチにあるんやよな?」
「良介・・・私にだよね?」
「先輩?私ですよね?よね?」
「子分の話を聞くのは親分の仕事だよな?」
「妻に遠慮なく話して下さいよ・・・」
「宮本・・・剣以外のことでも話くらい聞くぞ?」


ギャアアアア!!!屍共も復活しやがった!!こっちに来るな!!
もう助けはないのか!?このままじゃいつもどおりじゃんねえか!?

ウーノ!援軍はまだかよぉ!?


一方その頃。
第97管理外世界 現地惑星名 地球 海鳴市
さざなみ女子寮 ダイニングルーム


「ぷっはぁ〜! いや〜、この一杯の為に生きてるって言っても過言じゃ無いね!」
そう言って一気に飲み干し、空になったビール缶を置き、ビーフジャーキーをつまみながらすぐさま次を手に取りプルトップに指をかける。

お昼の洗い物も終わり、膝の上で気持ち良さそうに眠る久遠の毛繕いをしながら無駄とは理解しつつ一応の注意をする。
「もう! リスティさん、少し飲みすぎですよ! お風呂上りなんですから少しは抑えてください」
そんな那美のお小言なんてどこ吹く風で「はいはい」と生返事をするのはリスティ 槙原。
さざなみ寮に住む銀の悪魔にして、宮本 良介の天敵の一人である。
ちなみに那美が言った様に彼女は朝方に仕事が終わったばかりで、さっきまで遅めの朝風呂を浴びていた。
ショーツ一枚にYシャツを羽織っただけ、寮に住む唯一の男性が見たら鼻血確定な実にキワドイ格好である。


「―――む?」
楽しそうに飲んでいると思ったらいきなり不機嫌そうな顔をするリスティを那美は不思議そうに見つめる。
リスティはお酒を飲んでいる時は大抵機嫌が良い。同じさざなみ寮の魔王こと、真雪と一緒に飲んでいる時もだ。
真雪と一緒に飲みながら良介を弄る算段をしている時などは、それはそれは実にイイ笑顔を浮かべている。
そう、『イイ笑顔』だ。間違っても『良い笑顔』ではない事に念を押しておく。
今日はリスティ一人だけでの昼酌だが、それでも機嫌が悪くなるというのは珍しかった。
「リスティさん? どうかしたんですか?」
「いやなに、ボクの知らない所で何か良介が面白い事になってそうな気がしてね」
少々不機嫌そうな声でそう答えるリスティ。
「そうなんですか?」
「あぁ、間違いない……クッ! 良介が慌てふためく姿を肴に出来ないなんて……お、一句浮かんだ。

 『残念だ・あぁ残念だ・残念だ』

ふむ、中々いい出来だ」
とうとう俳句まで詠い出したリスティに頬を引きつらせながら質問をする。
「あ、あの……本当にそんな状況になってるんですか?」
リスティの本気な悔しがり方を見て那美は少々不安になってくる。
「ああ、おそらくね。と言っても良介に関しては那美の方が詳しく判るんじゃないのかい?
 なにしろ君達は比喩じゃなく本当に『?がっている』んだからね」

「あ、あうぅぅ……た、確かに最初の頃はその……そういう状態でしたけど、今は訓練して症状も殆ど無い状態ですから……」
ニヤニヤと笑っているリスティの冷やかしに俯きながら耳まで真っ赤にして答える那美。 おそらくはその時の状況を思い出しているのだろう。

(いやいや、良介の慌てふためく様子を見れないのは残念だが、那美も十分肴になるなぁ)

自分の気に入っている友人をからかう事が至上の喜びなのがリスティ 槙原という女性だ。
その性格、まさに外道!

「りょうすけ、こまってる?」

良介という単語に反応したのか、いつの間にか起きた久遠が人型になって不安そうにリスティに問いかけてくる。

「あぁ、けれど心配は無いさ久遠。アイツが並大抵の事じゃへこたれないのは良介を一番理解している久遠も知ってるだろう?」
そう言って優しく優しく久遠の頭を撫でると、久遠も嬉しそうに頬を緩め不安を一掃する。
「うん! りょうすけ、まけない」
向日葵のような笑顔を浮かべる久遠を微笑ましそうに見つめながらビールで喉を潤す。

「でも、なんでそんなに良介さんを困らせたいんですか?」
多少は落ち着いたのか那美も会話に参加してくると、彼女の中でもっとな疑問を口にする。
性格は穏やか、老若男女問わず優しく接し、品行方正。
まさに現代の聖母マリアとも言える那美にはリスティの行動があまり理解出来なかった。
ましてや自分から進んで他人を―――良介を困らせるという感情は翻訳コ○ニャクを使っても理解出来ない。

「ふむ……なぜボクが良介を困らせるのか……か」
「ええ、何か特別な理由があるんですか?」

那美はリスティの良介に対する淡い感情を多少感じ取ってはいたが、それを正直に言うリスティではないと理解していたし、
またリスティが素直にそれを告げる可能性が限りなく低い事も感じ取っていた。

「ボクが良介を困らせる理由―――それはっ!」
「それは?」
「わくわく♪ わくわく♪」
久遠などは眼をキラキラさせながら妙に楽しそうにリスティの話に聞き入っている。
今の子供の形態を取ると精神年齢も身体に引っ張られる為にちょっとした事でも大喜びで楽しんでしまう傾向があるのだ。
そしてリスティはおもむろに立ち上がり、缶ビールを握り締めながらテーブルの上に「ダンッ!」と片足を乗せる。
那美からは下着が丸見えなのだが今はリスティの迫力に圧倒され、何も言えずにいる。

「それは―――その方がボクが楽しいからだッ!!!!!」

「…………………はい?」

「わー! ぱちぱちぱちぱち」

その素晴らしい結論に那美は唖然とし、久遠は意味が解ってないにも関わらず拍手をしている。

「あの、えっと……つまり……リスティさんが楽しいから良介さんを弄っている、と?」
「ああ、そうだよ。ボクの計画に面白いように嵌って慌てふためく良介。
 勿論ボク以外の策略で慌てる良介も面白いけどね。ふふ、これ以上の娯楽があるかい? あぁしかし残念だ。
 きっと今頃は良介がいつものメンバーに囲まれて滝の様な冷や汗を流しているのにその姿を笑い者に出来ないなんて……無念だ」
しみじみと、心から勿体無いという風に呟くリスティを見て那美はこう告げることしか出来なかった。

「え、えっと…………ほどほどにしてあげてくださいね?」

「ふっ、甘いな那美。白玉クリーム餡蜜チョコ饅頭並みに甘い。
 ボクの辞書にそんな中途半端な言葉は存在しないよ。『やるからには徹底的に』がボクの矜持だ!」
そう言って妖しく、艶やかな笑みを浮かべるリスティを見た那美は良介の救済を断念するしかなかった。
ここでリスティを嗜めれば被害は自分や久遠にまで及ぶと、退魔師としての本能が告げているのだ。

(良介さん ……強く、逞しく生きてくださいね!)

早々に良介の援護を諦めた那美は心の中で涙を拭い、死んでもいない良介の冥福を祈った。
久遠はリスティに貰ったビーフジャーキーを美味しそうに食べ、リスティはそれを楽しそうに眺めつつ心の中で良介を貶める算段を付けていた。
あぁ、今日もさざなみ寮は実に平穏無事である。

頑張れ良介! 負けるな良介! 命ある限り!!


え? オチ? いやだなぁそんなの無いって言ってるじゃないですか〜!
いい加減に学習しないとダ・メ・だ・ぞ♪


再び 時空管理局  無限書庫

だぁあああ!!
まただ、また電波が〜っ!!
このクソ電波!そっちこそ学習しやがれ!!
何で最悪の状況で最悪なヤツの最悪な宣言を聞かされなきゃならんのだ!!

・・・那美、久遠・・・俺・・・ダメかもしんない。


今、俺の前には復活した屍と魔王がいる。
この面子に囲まれることは何度もあったが、今回は筆舌にしがたいものがある。

さっきの爺さん婆さんの言葉によって砲撃を喰らうことはないだろうが、
それはあくまでここの中だけだ。
ここを出た瞬間、俺は光になるだろう。

強制的に。

くそっ!けしてダメージは低くないというのに包囲に隙は全く無い!!

どうする!?
ここまで来たんだ。
こんなところで転んで全てを台無しにしていいのか!?

否!断じて否!!

考えろ、宮本良介!
お前の灰色の脳細胞はこの状況を覆すためにある!!
今回は、ユーノの活躍が多かったから、ここで一発決めて見せろ!!

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。

だめだ、何も出てこねぇーっ!

「さぁ・・・兄さん・・・」
「リョウスケ・・・」

だんだんと狭まる包囲網。
駄目か・・・。

脳裏に走馬灯がよぎる。

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。

ろくな事がねぇえええ!!

「良介さん!!」
『Wing-road!!』
吹き抜ける一陣の風。
俺の脇を抱えてギンガが包囲網を突破する!

こいつ、無事だったのか!?
一息に距離を離し、7人の悪m・・・もとい魔導士に対峙する。

「大丈夫ですか、良介さん!?」
「あぁ、俺は大丈・・・・・・」
夫が言えなかった。
え〜と、何て言うかギンガさん?
「何ですか?」
お前の方が大丈夫かと。
「少しフラフラしますが大丈夫です!」
そう言ってガッツポーズ。

そりゃフラフラするだろうさ。
お前の顔、某外人レスラーばりに鮮血に染まってるぞ?

「ギンガ・・・あなた・・・兄さんにお弁当をずっと届けていたんだよね?」
「・・・えぇ、その通りです。なのはさん・・・」
「そして、リョウスケがここにいることを知っていて黙っていたんだよね・・・?」
「その通りです、フェイトさん・・・」
「何でや?何で、そないな事するんや?」
「そんなの・・・決まってるじゃないですか・・・」

一転して水を打ったような静かさ。
誰もがギンガの次の言葉を待つ。

「私が・・・『宮本良介対策課隊長』だからです!!」

ざっぱ〜ん!

あ、また日本海の荒波が。
ついでにギンガの頭から赤い噴水もでた。

何だよ、その『宮本良介対策課』ってのは。
そういえば以前こいつが出した変な申請書を見たな。
もしかしてこれか!?

「何やて・・・『宮本良介対策課』やて・・・!?」
「そんな部隊が新設されていたの・・・!?」
一気に走る戦慄。
ギンガは全く動じることなく更に衝撃の発言をする。
「ちなみに部隊は超々少数精鋭で私のみです」
「何やてぇ!!?」
「そんなオイシイ部隊が!!?」

何だよオイシイって。うわぁ〜、いやな笑顔だぜ、シャマル。
「この部隊は良介さんの起こすトラブルに社会的公正を含めた全てを活動範囲としています。
これでお分かりになったでしょう?
私だけが!
良介さんの!
相手をすればいいんです!!」

うん、ぜひ部隊を解散してくれ。
可及的速やかに。

「そんなの変だよ・・・」
おう。なのはがまたおかしくなったか。
「だって・・・それならわたしの方が適任だよ!」
「そうだよ、私の方がリョウスケの事、よく知ってるもの!」
「これは・・・良介さんとナカジマ家の戦いなんです!
そこあるのは使命感のみ!
個人的感情なんて一切ありません!!」
そう言いきり、胸を張るギンガ。とりあえず止血しろ。

「・・・その使命に、どうしたら毎回の手作り弁当が入るのか、よう聞きたいなぁ・・・?」
「そうだね・・・」
「そこは詳しく聞きたいかな・・・?」
はやての言葉にヤル気上昇中の七人。
「兄さんとお弁当・・・わたしだってあのお花見の時以来・・・」
「リョウスケにお弁当・・・」
「良介さんにあ〜ん、なんて・・・ぅう・・・」
「先輩と二人きりでお弁当・・・手作りで・・・」
何だか雲行きが変だぞ!?

「皆さん、私が良介さんの事を黙っていた事とお弁当作っていた事とどっちに怒ってるんですか!!」

《両方!でも今はとりあえずお弁当!!》

声が見事にハモッた。

その時だ。
ついに待ち望んだ声が聞こえた。
『お待たせしました』
「遅いぞ、ウーノ!!」
『先行してルーお嬢様とアギトが向かったはずですが?』
「あっちで夢の世界だ。強制的にな。で、誰を呼んだんだ!?ディエチか?オットーか?ノーヴェか?いやここはトーレだな!?」

「あたしよ」





はっ!?今、気を失ってた!?
はっはっは、まさかそんな、あのお方がこんな所まで御出でになられる筈がないじゃないか。
いやだねぇ、俺も若くないか?
「何ゴチャゴチャ言ってのよ、この万年トラブル男は!」


ドアのあった所、そこにはと〜っても可愛らしいお人形みたいな女の子が立っていた。
軽いウェーブのかかった髪とフリルの付いたワンピース。
彼女がこの間買ったやつだ。
「・・・・・・・・何でこちらにいらっしゃるんですかありささん?」
「何でだと思う?」
・・・・・・・・・。
俺はモニターのウーノを見る。

あ、顔背けやがった。
『現状、姉妹を投入しても勝算はほとんどありませんでしたので。
彼女達に対抗できる存在はこちらの知りうる限り彼女だけでしたから、連絡を取り、協力を要請しました』
そうか。
それだったら何でこっち見て言わないんだよ!!

「ところでご主人様?」
「ひぃっ!?」
こいつが俺をこう呼ぶ時は・・・
恐る恐る振り返る。
「一体これはどういった事なのかしらぁ〜?」
本気で怒ってる時だ。
外面は如来、でも内面は夜叉だ。

改めて周囲を見回す。
飛び散った破片。倒れまくってる本局隊員たち。廊下はひび割れて、壁にはクモの巣ができまくっている。

所々からブスブスと焦げ臭い匂いも漂っている。
はっきりいって悲惨な光景だった。

「あたしとの約束覚えてる?」
「約束ぅ〜?」

ハテ、何かあったかな?
「思い出せないなら思い出させるわよ?」
まてまて。

記憶プレイバック。


「はあ〜、見ないと思ったらそんなとこにいたのね」
「おう、ここは平和でな。正直楽だ」
「誰も気づかないの?」
「ギンガが気づいただけであとのヤツらはイタズラしても気づかんかったぞ」
「とりあえずそこのもの壊さないようにね。さすがに貴重なものまではどうしようもないんだから」
「わかってる」


「あ」
「さて、思い出したところでこの状態・・・どういう事かしらぁ?」
最早、問答無用!
そう言っている。
「さぁ、帰るわよ!今日という今日は徹底的にやるからね!!」
「何をやる気だぁあああああっ!!」

俺は首根っこを掴まれて強制的に無限書庫から連れていかれてしまった。

某月某日

 まぁ後日談になるのだが…

 あのあとアリサに徹底的に教育指導を受けた。
 アリサのやつ…
 フルパワーでポルターガイストアタックかましやがって!!

 数日ベットの上の住人になったじゃないか!!

 しかもその間の記憶もねぇ…。

 その寝込んでる間に無限書庫にはなんとナルシー作『司書ドローン』なんって書庫整理用の機械を導入したらしい…

 なんでもカメラで表紙と内容を記録、『司書長ドローン』(赤+角)に記録され、各『司書ドローン』に指示し、整理するらしい…

 まぁ整理整頓し、検索できるようにするだけで研究や書見などはユーノ達がやらなきゃならが、資料請求に割く時間の短縮に一役買ってるらしい…

 まぁ良い事だろ…

 ちなみに製作・運用資金は今回のストライキの原因というか発端のクロノのボーナス及び給料のカット分が当てられるらしい。

 まぁ自業自得だがな!

 あと俺は出入り禁止にはならなかったが長期滞在禁止を言い渡された。

 しかも俺のみ書庫内での携帯の使用も許可された。

 何故かミゼットばーさんの影がちらついたが気にしない方向で…
 
 でもウーノのヤツ…

 ストライキを手伝ってまでいったい何を調べてるんだか…

 気になるが、知ったら知ったで薔薇色の首輪が巻かれる電波を受信したので気にしない事にした!!

 で、今回"も"暴れたアイツらはどうしたかと言えば…

「うぇ〜ん、もういやだ〜!!」
「いやや!!もうこれ以上頭働かへん!!」
「も、もうだめ・・・」
「勘弁してくれよ〜」
「私は古い騎士だからな・・・こんなの向かん!」
「さ、流石の私も・・・」
「私は凡人だから・・・・」


7人とも無限書庫の修繕費を給料から引かれさらにしばらく書庫勤めにされた。


「あと72番と83番それとこのロストロギアの資料お願いしますね」

更にあのヤンデレ女司書が追加にきた。


「「「「「「「・・・・・もういや〜〜〜!!!」」」」」」」
「あはは・・・頑張ってね」

めずらしくそんなセリフを吐いていた。
流石にユーノも無視と書庫破壊を許す気はないのだろう。助けなしだ。
とりあえず今回は引き分けだな。


その頃俺は


「よう、生きてるか?」
「安心してください。あなたを更生させるまでは死にません」
え〜い、減らず口を。

あの後なのは達は魔力ゼロで、ギンガは貧血と全身打撲で気絶。悪魔たちの攻撃を喰らわずにすんだ。
そして今は入院して俺が見舞いに来ている。
書庫のストライキ参加者にはお咎めなしという要求も通っていたため俺たちは無罪放免だったのだった。

「なんだせっかく見舞いにきてやったってのに」
「だったら本当に更生してください。アリサさんから聞きましたよ?本当は静かだからいただけらしいですね?」
「ぐっ・・」


そう、お仕置き後アリサはギンガに書庫にいた理由を話したのだった。


「とにかくわたしの部隊はこれからもあなたを更生させるために活動しますので」
「とっとと解散しろそんな部隊。たっく、そんなんじゃいつまでたっても相手見つからんぞ」
「いいんです。今の優先事項はあなたですので」
笑顔でそんな事言うな。俺じゃなければ勘違い起こすぞ?


「宮本さん・・・アイス」
「却下。絶対作らん」
「スバル、いいって言うまでダメって言ったわよね?まだしばらくはダメよ」


スバルのやつもあの後入院した。病室もギンガと一緒で意識を戻してすぐまたアイス禁止を言い渡されたらしい。
そういえば何でこいつ禁アイスなんて言われてんだ?
ま、どのみち作ってやらんがな。

「ギン姉も宮本さんも鬼〜〜」
「しらん、自業自得だ」
「そうよ。それに悪魔に死神、夜天よりはマシでしょ」
「それは・・・うん・・・」


今回はナカジマ姉妹にも深い傷を残して逝ったか・・・・。
まあこれでまたしばらくはいつも通りか・・・・。



おまけ

sideユーノ


ストライキ以降、無限書庫の待遇はかなり変わった。
徹夜連チャンが当たり前だったのが嘘みたいだ。

司書ドローンによって人手不足もとりあえず解消され、現在、スクライアの検索魔法を基にした魔法プログラムの開発も進められているらしい。
これが完成すればもっと楽になるし、人員を増やすことも容易になるはずだ。

何でこういう事をもっと早くやってくれなかったんだろうか?
やっぱり自分の意見はちゃんと伝えないといけないね、ウン。

「うぇ〜ん、もういやだ〜!!」
「イヤや!!もうこれ以上頭働かへん!!」
「も、もうだめ・・・」
「勘弁してくれよ〜」
「私は古い騎士だからな・・・こんなの向かん!」
「さ、流石の私も・・・」
「私は凡人だから・・・・」

そんな事を考えていると何とも情けない声が七つ。
無限書庫に対する破壊行動未遂(実際、備品や扉は壊されたけど)による奉仕活動中のなのは達だ。
しかし彼女達は何でこんなに元気なんだろう?

突然の爆発に気を失った僕が意識を取り戻した時、良介さんの姿はなく、代わりにいたのはばったりと倒れたなのは達だった。
かなりのダメージだったはずなのに今こうして元気に働いている。
ギンガはいまだ入院中なのに。
良介さんがよくお見舞いに行っているという話をポソッとしたら

《《すみません、今すぐ入院の手続きをしてください!!》》

だって。
無論却下したけど。
ま、自業自得だと思って頑張ってね。

ちなみに良介さんの書いた手紙は処分済み。
あれの元を書いたのが僕だと知られる訳にはいかないからね。

疲れ果てたなのは達の前に更なる悲劇が。
「あと72番と83番それとこのロストロギアの資料お願いしますね」

《《・・・・・もういや〜〜〜!!!》》

あはは・・・頑張ってね。

とりあえず無限書庫は今日も平和です。


side???

人間関係におけるパワーバランスは一度決まると覆すのは容易ではない。
それは他の動物のようにそれを決める明確な要素がないためだ。
たとえば群れで生活する動物の場合、トップであるボスになるにはそのボスを倒せば良い訳だ。
だが、人間はそんな事をしてもボスにはなれない。
それが大きな組織であるならばなおさらである。


「それでは、申請のあった資料の方転送いたしますので、確認しましたらサインをお願いします」
「・・・了解した」
そう言ってクロノはリストに目を通す。
通信先は無限書庫。
あの一件以来、クロノはこの時間がイヤで仕方なかった。
今まではヒョイヒョイと面倒な資料検索を押し付けていたがユーノに完敗を喫したことで苦手意識が生まれたのだ。

(くそっ!この世の中はこんな筈じゃなかった事ばかりだ!!)

心の中で悪態を付きながらクロノは受け取りのサインを転送する。
(見ていろ、ユーノ!この借りは必ず返すからな!!)
心の中で激しくリベンジを誓うクロノ。
「ハラオウン提督?」
「ぬっ!?な、何だ!?」
まだ切られていなかった通信に思わず動揺する。
ディスプレイには無限書庫の女性司書。
レティに似た知性的風貌とリンディに似た優しげな印象の、間違いなく美人。
こんな娘が無限書庫なんて所に勤めている事にクロノは疑問を持った。
彼女には司書よりも秘書が似合いそうだ。

明らかに余計なお世話でしかない考えを少し巡らせ、そのまま消し去る。
これは彼女の問題(問題でもないが)なのだ。
「・・・な、何かな?」
少しの沈黙。そして彼女は口を開いた。
「いえ・・・奥様によろしく・・・」
それだけを言って通信を切ってしまった。
「・・・・・・何だったんだ、今のは・・・?」

クロノがこの言葉の意味を知るのは実に数日後である。


「キミかぁあああ!!?」
「何の事です?」
「とぼけるな!!あんな映像をうちに送りつけるなんて何考えてるんだ!!」
「・・・もしかしてこれの事ですか?」
しれっと言い放つ彼女はディスプレイを展開させる。


「うん?コーヒーの豆変えたのか?」
「ええ。・・・あのお口に合わなかったでしょうか・・・」
「いや、おいしいよ」

「あれ、もしかしてシャンプーを変えたかい?」
「えっ!?分かりますか・・・?」
「まぁね。いつもと違う香りだから」

「大丈夫かい?最近、根を詰めすぎだぞ?」
「平気です。もうすぐ試験ですから」
「そうか?だがそれで倒れたら元も子もないだろう?」
「提督・・・」
「今日はもう休みなさい。まだ、日はあるんだから」


「うわぁああああああ!!!?」
「映像資料を作成していたらたまたまこういった物が見つかって、
邪魔のなので一つにまとめておいたら、たまたま焼いてしまって、
それがたまたま手違いでそちらに行ってしまったみたいですね?」
「たまたまじゃないだろう!それのせいでどんだけ酷い目にあったと思っているんだ!!?」
「なんでしたら第二段もお送りしますが?」
「確信犯じゃないかぁあああ!!」


ここにクロノ・ハラオウン最大の天敵が誕生した。
後悔してももう遅い。
生み出したのは他でもない、彼自身なのだから。
恋する女は恐ろしい。

sideウーノ


「ふむふむ・・・成程」
ウーノの手に収まってるのは無限書庫から複写してきた資料だった。

ちなみに資料名は
『ツンデレのおとし方 バレンタインデー編』
であった。








ということでこれにて完結です。
さすがに量が多くて大変でした。
読み手の方、リレー参加作家の皆様に納得のいく編集が出来たか不安です。
(ついでに誤字脱字の修正も大丈夫かなと)
もし何か指摘がありましたらよろしくお願いいたします。




作者さんへの感想、指摘等ありましたら投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。