朝五時半。
外は朝日によって少し明るい。
昨夜は9時半に就寝。そして、朝五時半に神楽に叩き起こされた。
勇人は顔を洗い終えると、リビングへやってきた。
机にはサンドイッチとコーヒーが置かれていた。
「それを食ったら海鳴公園でランニング20周、スクワット10回、腹筋10回、腕立て10回。サボったら明日はもっと課題を増やすぞ。イケロス、お前もしっかり見張ってろ」
神楽は新聞を読みつつ、課題を与える。
勇人は黙々とサンドイッチを頬張り始める。
「ん。そんで学校から帰って宿題を終わらせたら、特訓だろ?」
「ああ、分かってるならそれでいい」
勇人はサンドイッチを全て平らげると、コーヒーを飲んで一息。
コーヒーを飲んだお陰でわずかに目が冴え始める。
飲み終えると、両手をしっかりと合わせる。
「ごちそうさまでした」
直ぐに立ち上がり、ジャージに着替え始める。
首にはタオルを巻き、片手にはスポーツ飲料を持つ。
靴を履き、玄関のドアに手を掛けた。
「それじゃ行ってきます!」
そのまま目的地の公園へと駆け出して行った。
魔法少女リリカルなのはA’S
刃煌く黄昏の魔道師『積み重ね』
海鳴公園の中にあるグラウンド。
肌寒い空気を浴びながら、一人グラウンドを走り続ける勇人。
吐き出す息は白く、寒さを強調していた。
既にスクワット、腹筋、腕立てなどをやり遂げ、残るはランニングだけ。
だが、
(今で……18周か……)
グラウンドも10周以上も走ると、かなり疲れもくる。
疲れながらも着実に一歩ずつ走っていく。
肌寒い寒さと眠気で更に疲れが押し寄せる。
だが、残り二周に少しずつテンポが早くなる。
「はあ……はあ……はあ……もうすぐだ」
次第にペースが上がっていき、ゴールまで一気に駆け出す。
空は既に朝日が出て、空は青く澄んでいた。
「よっしゃあああああ! 終わった!」
ゴールすると直ぐに地面に座り、大量の汗をタオルで拭く。
汗を拭き終えると、直ぐに手元に置いて有ったスポーツ飲料水を飲み始める。
『目標クリア』
「マジで疲れた〜!」
そのまま地面を背に、寝転ぶ。
眼前には太陽が輝き、青く澄んだ空が果てまで広がっている。
太陽の眩しさに思わず瞼を閉じる。
眠気と疲れた身体には太陽の光は毒だった。
「なあ、こんな事で本当に強くなれるんだろうな」
瞼を閉じながら疑問を問い掛ける。
それは焦りや不安が入り混じっていた。
『こういうのは日々の積み重ねだぜ、兄弟』
「……そうだな」
それでも焦りや不安は消せない。
その表情は暗く、小さく唇を噛締める。
ただ力と強さが欲しかった。
なのはやフェイトを護れるくらいの強さが。
「……強くなりてえな」
小さな呟きも誰にも聞かれる事なく消え去った。
空を仰げば肌寒い空気と眩しい日差しで差し込む。
眠気で今にも寝てしまいそうになる。
しかし、寝てしまえば確実に学校に遅れる。
それだけは避けたかった。
「今何時?」
『六時半だ。今から帰っても7時位だから、仕度しても充分間に合う時間だぜ』
そろそろ帰って、学校へ行く支度をする必要が有った。
「う〜ん、そろそろ帰るか?」
『そうだな。目標もクリアしたり、学校の準備をしねえとな兄弟』
「ああ、分かってるよ」
ゆっくりと立ち上がり、背伸びをする。
勇人は帰宅しようと歩いていく。
帰宅途中、不意にある事を思い出す。
「そういや……今日フェイトが転入する日だったか」
一緒に学校に行ける事に喜びを感じる
口元は自然に笑みが零れ、足取りも少し軽くなる。
しかし、今は眠気の方が勝っていた。
眠気に堪えながら、少し軽い足取りで歩んでいく。
この光景が明日も続く事にため息と欠伸が止まらない。
本当に早く慣れる事を祈る。
何故なら慣れたら自然に起きれる。
だが、慣れるまでは苦労と眠気の日々が続く。
公園に帰宅した後、制服に着替え聖祥小学校に登校する。
教室の自分の椅子に座り、何度も欠伸を繰り返す。
帰ってから顔を洗ったものの、未だ眠気を取れずにいた
「おはよう!」
すると、後ろから発せられる大きい声。
恨めしげに背後を勇人は振り返る。
其処には先日勇人を辱めに陥れた男友達。
「聞いたか! 今日転校生が来るんだぜ!」
「ん、知ってるよ」
「女子かな? それとも男子かな? お前はどっちだと思う?」
友達の表情はとても明るく、これから来る転校生に楽しみにしてる。
逆に勇人は眠気で友達のテンションに付いていけなかった。
それでもこれから来るフェイトの事を考えると、徐々にテンションが上がっていく。
友達と同じ発想に思わずため息が零れる。
「どっちだろうな〜」
「楽しければどっちでもいいだろ」
「それもそうだな!」
勇人の言葉で表情をより明るくする友達。
何時の光景に思わず笑みが零れる。
「お! やっと笑ったな!」
「……何だよ?」
「だって、今日のお前暗いんだもん!」
「可愛くねえぞ、それにお前に心配されるようじゃ俺様もお終いだな」
「ひどっ!」
本当に傷付いたのか、床に『の』を書き続ける友達。
その光景に腹を抱ながら、勇人は声を殺しながら笑い続ける。
ある意味、薄情者だった。
「何時まで笑ってるんだよ!」
直ぐに立ち直り、怒鳴り付ける友達。
勇人はそんな友達を無視し、未だ声を押し殺して笑い続ける。
「く……くく……悪い……」
「お前な!」
顔を真っ赤にして再び怒鳴りつけようとする。
すると、タイミングよくチャイムが鳴り響いた。
「ほら……さっさと付けよ」
「次の休み時間覚えてろよ!」
友達はそのまま自分の席に戻っていった。
勇人は安緒のため息を零し、先生を待つ。
内心楽しみでワクワクして、身体が疼く。
暫くすると、教室に先生がやってきた。
「皆さんおはようございます」
「おはようございます!」
周囲の生徒達からも大きな挨拶が教室に響き渡る。
勇人も小声でちゃんと挨拶する。
「実は先週急に決まったんですが、今日から新しいお友達がこのクラスにやってくる事になりました」
転入生が誰か知ってるなのは達の表情は嬉しくて終止笑顔だった。
ただ勇人だけは外を眺めながら、欠伸をしていた。
「海外からの留学生です。フェイトさんどうぞ」
「失礼します」
廊下より教室へと入るフェイト。
緊張した雰囲気だったが嬉しそうな表情をしていた。
それを見た生徒達は騒ぎ出す。
「フェイト・テスタロッサです。宜しくお願いします」
頭を下げ、挨拶するフェイト。
すると、周囲から拍手が湧き上がる。
勇人もめんどくさそうに拍手する。
だが、口元が緩んでいた。
「それじゃ開いてる席に座ってねフェイトさん」
「はい」
フェイトは後ろから二番目の席に移動する。
周囲の生徒達はフェイトを眺めていた。
それを見た勇人は小さくため息を零す。
何で転入生が来ただけこの騒ぎ。
正直眠気を含んだ頭では煩わしいもの以外なかった。
(うるせえな……)
そんな光景にもう一人ため息を零す人物が居た。
それはこのクラスの担任の先生だった。
「それじゃ授業始めるから教科書出してー」
生徒達は直ぐに騒ぐのを止め、引き出しから教科書を出していく。
勇人も教科書を取り出し、机に置く。
そして、黒板に書かれた事を必死でノートに写していく。
元々勇人は頭が良い方ではない。
ましてや100点なんて生まれてから一度も取った記憶が無い。
だから、少しでも良い点数を取る為に必死でノートを写していく。
(ちくしょう! マジで何を言ってるか、分からねえ!)
ただ授業の解説にも理解力のあまり無い勇人だった。
しかし、ノートを写しながら解説を聞いて理解していく。
そうしてる内に授業終了のチャイムが鳴り響く。
(マジで疲れた……)
一時間目の授業で既に脳が沸騰していた。
すると、後ろから大きな声で話す生徒達の声が聞こえる。
フェイトを囲みながら質問攻めをする生徒達。
勇人は立ち上がり、なのはやアリサ達の元へ移動する。
横目で質問攻めで困り果てたフェイトを見る。
「おはよう、勇人君」
なのはは笑顔で挨拶する。
勇人も口元が緩み、挨拶を返す。
「おっす、それよりアレどうするんだよ」
勇人はフェイトを指差し、その光景を眺める。
なのはは苦笑いを浮かべ、すずかも軽く呆然としていた。
「フェイトちゃん人気者」
「でも、これは大変かも」
「何とかしてやれよアリサ」
勇人の言葉にアリサの眉が動く。
「何で私が!」
「お前、こういうの収めるの上手いだろ。それに早く行かないとフェイト困ってるぜ」
勇人は視線の先には未だ困り果てるフェイト。
何故勇人が行かないかと言うと、場を纏めたり収めるのが苦手だからだった。
それならアリサやすずかの方が場を収める事も容易い。
「はぁ……仕方ないわね」
「ちゃんと収めて来いよ」
「分かってるわよ」
見かねたアリサは質問攻めで困り果てるフェイトの元へ。
すると、騒ぎ立てる生徒達を説得し、場を収めた。
フェイトは安心したようにホッと肩を撫で下ろす。
「終わったわよ」
場を収め、戻ってくるアリサ。
その光景に口元を緩める勇人達。
「流石アリサ、上手く収めたじゃねえか」
「何かアンタに言われると素直に喜べないんだけど」
「おい、そりゃどういう意味だ」
勇人の額に青筋に浮かびあがる。
怒鳴りつけようとする意思を何とか押さえ込む。
教室で怒鳴りつけるほど、馬鹿じゃない。
しかし、なのは達は珍しいものでも見たような目で見つめる。
「アンタ、悪い物でも食った?」
「……食ってねえよ」
アリサの問い掛けに、青筋が深くなる勇人。
あまりにも短い堪忍袋の尾が切れようとしていた。
「まあまあ。勇人君だってこういう時はあるよ」
「……フォローしてんのかそれ?」
すずかは宥めようとするものの、逆に追い込んでいく。
何時堪忍袋の尾が切れてもおかしくなかった。
青筋を浮かべながら、肩を振るわせ続ける勇人。
だが、必死で押さえ込んでいく。
「大丈夫?」
「ああ……」
椅子に座ってる為、上目遣いで勇人を見詰めるなのは。
見詰めてくる視線に怒りは消沈していく勇人。
代わりに顔が真っ赤に染まっていく。
何故か恥ずかしくなり、なのはから視線を外した。
怪訝な顔付きで尚も見詰めてくるなのは。
その光景にすずかとアリサは感心する。
「流石なのはちゃん。すぐに怒りを静めちゃったね」
「まあ、アイツのはなのはに任せば大抵崩れるんだけどね」
すずかは微笑み、アリサは半ば呆れていた。
そんな会話になのはは全く付いていけず、首を傾げる。
勇人は顔を染めながら小さく舌打ちをする。
すると、横目で時計を見る。
あと少しで休み時間が終わろうとしていた。
そのまま始まりのチャイムが鳴り響く。
「それじゃあ……」
「うん、またね」
なのははわずかに寂しそうな表情で手を振る。
勇人やすずかやアリサはそのまま自分の席へと戻って行く。
終止騒いでいた生徒達も自分の席へと戻って行った。
それと同時に先生が入って来る。
「それじゃ教科書出してー」
こうして時間は進んでいく。
勇人にしたら最も穏やかな時間だった。
夕暮れが差し掛かった頃、勇人は宿題を終わらした。
あまり宿題の数は多くないが時間が掛かった。
「うし、準備するか」
直ぐにジャージに着替え、机に置いていたイケロスを掴む。
そして神楽の元へ急いだ。
リビングにはソファーで一人佇む神楽の姿が有った。
勇人の気配を察知したのか、直ぐに振り向く。
「遅い。宿題で何時まで時間を掛かってる」
その声は不機嫌で、眉間には何時もより深く皺が寄っていた。
「わりい。結構難しくてよ」
「まったく……」
神楽はため息を吐き、ソファーから立ち上がる。
すると、足元に転送魔法が展開された。
「時間が惜しい。早く行くぞ」
「おう!」
神楽の元へ駆け寄る勇人。
展開された転送魔法は勇人と神楽を何処かの世界へ転送された。
一瞬で目的地に着く。
其処は神楽と模擬戦を行った荒野だった。
周囲には瓦礫となった岩や地面には裂け目が出来ていた。
模擬戦で行われた状況が生々しく残っていた。
「さて……バリアジャケットを着ろ。でないと、大怪我するぞ」
「え?」
神楽の右手から大量の弾丸が構成されていく。
大量の弾丸は移動を始め、勇人の360度を取り囲んだ。
突然の行動と弾丸の多さに目を見開く勇人。
「最初に言っておく、弾丸を見てから最少の動きで避けろ。それと避けれないと判断すればシールドを作って弾丸を弾け」
神楽の言葉に理解し、勇人は小さく頷く。
手元に持っていたイケロスを握り締める。
「イケロス……セットアップ」
『セットアップ』
一瞬にして勇人に深紅の光が包み、バリアジャケットへと変化する。
ノースリーブのロングコートタイプに変化し、両手にはグローブを身に嵌めていた。
右手には一本の刀を持っていた。
「今は武器は必要ない。元の状態に戻しておけ」
「分かった。イケロス」
『あいよ、兄弟。モードリリース』
刀から元の菱形のデバイスに戻し、懐に入れる。
「それと一つ避ける度に早くなる、時には同時に来る事もある。気をつけろ」
「ああ……分かったよ。ちゃんと避けるから気にすんなよ」
「だと、良いがな……始めるぞ」
神楽の雰囲気が変わり 右手を動かし始める。
次の瞬間、前方から一発の弾丸が放たれる。
勇人は咄嗟に身体を反らし避ける。
すると、今度は右側から顔面目掛けて弾丸が放たれる。
「チッ……」
思ったよりも早く放たれた事に舌打ちをする。
一歩下がり、回避に成功する。
それが全方向から何度も何度も続いていく。
不意に背後から襲い掛かる弾丸。
『後ろから魔力反応』
咄嗟に右手を翳し、シールドを張って弾丸を受け止めた。
「くそっ!」
衝撃で顔を顰めながら弾丸を弾く
しかし、それを狙ったかのように勇人の後方から弾丸が迫る。
反応しようと振り返る。
だが、避けきれず腹部に直撃した。
「ッ……」
衝撃で空気が強制的に吐き出され、吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた身体は地面を転がる。
神楽はその光景に手を貸さず眺める。
「どうした? 今日はやめるか?」
「……嫌だ、何で止めなきゃいけねえんだよ」
勇人は腹部を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
その表情は苦痛で歪んでいた
神楽は無表情で勇人を見詰める。
「なら、続けるぞ」
「ん……頼む」
再び放たれる弾丸の数々。
腹部の痛みに耐えながらも必死で回避していく。
「ぐっ……」
しかし、痛みが影響して先程に比べて回避出来る回数が少ない。
身体中に弾丸が浴び始める。
痛みに耐えながら少しでも多く弾丸を回避していく。
すると、足元へ狙われた一発の弾丸。
「くっ……」
回避は成功したもののバランスを崩す。
地面に前のめりに倒れ、四つん這いになってしまった。
『右斜め上から魔力反応!』
「ッ!?」
イケロスの声に振り向こうとする。
だが、既に弾丸が眼前まで迫っていた。
四つん這いになってる為、直ぐに回避は出来ない。
迫り来る弾丸にギュッと目を瞑ってしまった。
「……?」
しかし、暫くしても衝撃が来ない。
気になり、ゆっくりと瞼を開ける。
鼻に当たるか当たらないかの距離で止まっていた。
「これは……」
勇人はどういう事なのか理解出来ずにいた。
神楽は勇人に近付いていき、直ぐに全ての魔力弾を消し去る。
怪訝な顔付きで神楽を見上げる勇人。
「休憩だ。無理に続けても身体を痛める」
神楽は有無を言わさないような口調で言う。
勇人は驚いた表情をした。
続けたい願望はある。
だが、事実身体中の彼方此方には痛みがある。
「それに一朝一夕で強くなれるほど期待はしてない」
神楽は諭すかのように言う。
分かっている事でも不安は消えない勇人。
その不安さが表情にも出ていた。
「まあ……分かってるんだけどよ。やっぱ強くなりてえし」
わずかに目を細める神楽。
そのまま小さくため息を零す。
「誰だって強くなりたいのは同じだ。だが、無理な力を行使しても碌な事にはならん、特にお前の場合はな」
「どういう事だよ?」
「成長段階の身体では無理な特訓は今後の成長に悪影響を与えかねない。なら、先ずは先を見越しての土台作りだ」
強さを求めるのは誰もが同じ。
だが、未発達の身体での力の行使は危険だった。
(なら、今までのは無理な特訓じゃねえのかよ)
勇人は内心愚痴る。が、気にしても仕方ない。
地面にゆっくりと腰を下ろす。
しかし、座るだけでも痛みが身体中を駆け巡る。
「今は休んでろ。後で覚えて貰わないといけないあるからな」
「覚えて貰わないといけないもの?」
神楽は小さく頷く。
「ボルトエンペラー」
『分かってます』
すると、首に掛けていたデバイスを長剣に変化させた。
そのまま長剣を勇人に突き付ける。
突然の行動に目を丸くする勇人。
「お前には攻撃魔法を覚えてもらう事になった」
攻撃魔法という言葉に勇人は目を丸くしたまま。
理解が出来ず疑問だけが浮かぶ。
「昨日まで攻撃は追々教えるって言ってたじゃねえか」
「そうしたかったのは山々だが、そんな事は言ってられんようになった」
「どういう事だよ?」
わずかに神楽の表情が歪む。
「少々奴等の動きが変わったからだ」
奴等とは当然ヴォルケンリッターの事をさす。
勇人も真剣な表情に変わっていく。
「動きが変わった?」
「そうだ。今まで魔導師中心に狙ってた奴等が突然他の生物にも手を出し始めた」
「という事は、そいつ等の中にもリンカーコアがあるって事か」
神楽は頷き、空中に映像を映し出される。
其処には無残にもボロボロにされた魔物の数々。
魔物の巨大さに勇人は目を見開く。
その巨大な生物を倒すヴォルケンリッターの力。
改めてヴォルケンリッターの実力を知った。
「こういう生物には魔力が備わってる。当然リンカーコアが奪われていた」
「形振り構わずじゃねえか」
「それだけ連中も焦ってる証拠だ」
「焦り?」
「今まで魔導師で事足りていた。なのに、此処へ来て標的を変え始めた。つまり奴等は闇の書の完成にに焦り始めたという事だ」
「で、俺様にどうしろと?」
闇の書の完成を阻止が目的だと理解した。
しかし、自分の実力じゃ一太刀を入れる事は難しい。
それだけ二日間で嫌と言うほど身に染みた。
「お前には護身用と敵の気を反らす為に攻撃魔法を覚えてもらう」
「戦力と見てねえのよ」
「それは自分がよく分かってる筈だと思うがな」
「うっ……」
実感してるだけに勇人は何も言えない。
戦力外と言われても自分も一緒に戦いたい。
だからこそ、何と言われても攻撃魔法を覚えれる事はありがたい。
「で、どんな魔法を覚えればいいんだよ?」
「昨日お前が魔法を叩き斬ったのは覚えてるか?」
「……ああ」
脳裏に金色の斬撃が浮かび上がる。
つまりその魔法を教えて貰える。
嬉しくて心が弾み、口元に笑みが零れた。
「その劣化版だ。ちゃんとお前にも扱えるレベルの魔法だ」
「本当か!?」
「ああ、10分後には始めるぞ。その間キッチリ休んでおけ」
「分かってるよ」
勇人は笑みを浮かべたまま頷く。
10分後に開始される特訓を胸躍らせる。
その間も身体を休ませ、体力を回復させる。
ゆっくりと時間が流れていく。
これから起きる出来事に勇人は未だ知る由は無かった。
あとがき
どうも、シリウスです。
改めて日常が苦手だなと実感しました。
書くペースが一段と遅く感じます。
ギャグネタも考えないと……思いつきませんが。
では、拍手の返信を書かせて頂きます。
>神楽は鬼畜ですね
鬼畜ではありません、厳しいだけです!
此処は強調させて頂きます。
厳しいだけです……多分。
>小説面白いので頑張って下さい
ありがとうございます!
そう言って頂けて嬉しい限りです。
その一言が励みになります。
此処まで読んで頂きありがとうございます。
では、これにて失礼します。