魔法少女リリカルなのはSTS IF クリスマス










此処は機動六課隊舎内

隊舎と言うだけあり此処には沢山の隊員達の部屋も用意されている

その一番奥にある部屋の中で一人の男が目を覚ます。





ジリリリリリ!


「Zzzzz………んぁ? もう朝か?」


やれやれと思いつつもスカイは気だるい体に鞭を打ちベットから起き上がる。

現在の時間は6時、まだ出勤時間には早いが別に早く起きる事に損はない。

先ず手始めに愛用の机の上にある自分の相棒たるデバイス『ヴィーナス』の元に向かう


「オーハー、ヴィーナス」

『おはようございます、スカイ様。今日も良い天気ですね』


スカイの古臭い挨拶に対し礼儀正しく返事を返す『ヴィーナス』

ある意味この主人にはもったいない位のデバイスだ。

挨拶を終えるとネックレス状態になっている『ヴィーナス』を首にかけて顔を洗いに洗面所に向かう

水道の蛇口を捻ると冷たい水が勢いよく出てくる

その水を一気に顔に浴びせる、水の冷たさでまだ半分寝ぼけていた意識が覚醒する。

顔を洗い終えタオルで顔を拭くと改まったかのように鏡で自分の顔を見る。

何時もと変わらない顔立ちと白い肌に腰まで届く長い金髪、そして透き通る蒼い目

何時も見慣れている顔なのだがスカイは満足気の笑顔で


「うん! 今日も俺様はイケメンだ!」


初っ端からこんな碌でもない事を言う男

この性格さえ無ければある意味もう少し良い人生を送れたかもしれないのに……。

しかしその笑みも直ぐに落胆の表情えと変わる。


「あーこんな日は可愛い子ちゃんとデートしたいな〜」


そう言い直ぐにゲンナリする

此れから直ぐに仕事をすると思うと嫌になる。

どうせなら綺麗な服を着た女性と一日デートして一日という時間を楽しく過ごしたい。

しかし現実に待つのは大量の資料の束とデスクワークとの睨めっこの時間

此れが今日の予定と思うと毎日やっている事でも嫌になってしまう……。

しかしそんな事を言っても現実は変わらない

諦めつつ肌が荒れないよう専用のクリームを万遍なく顔に塗り、歯茎を傷つけない様丁寧に歯を磨く

そして部屋に戻り着替えて仕事に行こうと思った時……。


『そういえばスカイ様、今日はクリスマス・イブの日ですね』

「え?」


不意に『ヴィーナス』からかけられた声に一時停止状態になる


『はい、今日はクリスマス・イブ、『地球』に居たイエス・キリスト様と言う方の誕生を祝う聖なる日でございます』

「………」

『スカイ様?』


自分の言葉に反応せず目が点になったスカイを見て『ヴィーナス』は再度名前を呼ぶ


「き……き……」

『?』


するとスカイはブルブルと身を震わせながら窓の外の太陽を仰ぎ見そして……。


「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


本日一回目の絶叫をした。










波乱を呼ぶ男 外伝 「サンタさんへ この俺様に沢山の可愛い子ちゃんを……え、無理? ガーン!?」










クリスマス……それは地球にあるキリスト教にとって救世主的存在であるイエス・キリストの降誕を祝う日である。

クリスマスの祝い方は世界によって様々であるが日本でも色々な祝い方がある。

家族と共にクリスマスのディナーやケーキを食べて過ごす者。

キリスト教の教会に向かい其処で本来のクリスマスを過ごす者。

自分が愛した者と共にクリスマスを楽しむ者。

そしてサンタクロースからのプレゼントを楽しみにしている子供達等、色々なクリスマスがある。

しかし元々ミッドにはこの様な文化は無かった。

この様な文化をミッド人がやりだしたのはゲンヤ・ナカジマの先祖を含めた元地球出身者達の影響である。

最初はクリスマスなどまったく受け入れられず極一部の人が祝うのみであった。

だが時が過ぎる毎にクリスマスという文化は徐々に広まり今ではミッドに欠かせない年功行事となっていった。

因みに聖王教会もちゃっかりクリスマスを祝っているのは秘密である。

機動六課でも一部の人間を除き殆どの人間が日頃の激務を忘れ休みを取りクリスマスを過ごそうとしている。

勿論この男……スカイも例外ではなかった。


「ジングルベ〜ル♪ ジングルべ〜ル♪ 可愛い子ちゃん〜♪」


下手な歌を口ずさみ、スキップでもしそうな位軽快か足取りで部屋の中を移動する。

その光景は誰が見ても異様だが誰も見ていないので問題は無いだろう……。

自分の制服を脱ぎ捨てどちら共皺にならないようクローゼットとタンスにしまうと私服に着替える。

青いジーンズに白のYシャツと上に黒のトレンチコートに首に『ヴィーナス』を掛けて着替え終了。

自慢の長くサラサラした金髪もアクセサリーで一纏めにする。


「さて此れで準備終了! いざ行かん! 可愛い子ちゃんとクリスマス〜♪」


全ての準備を終えてルンルン気分で部屋のドアに手を掛けようとした瞬間……。


『スカイ様、良い気分の所に水を注して申し訳ないのですが……』

「あ?」

『お相手はどうなさるお積りですか?』

「……………」


『ヴィーナス』の発言にスカイは目を点にしドアを手をかけたまま完全停止状態になる。


『スカイ様?』

「しもたーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


天に向かい本日二度目の絶叫をあげた。

準備ばかりに気をとられて肝心の相手の事をすっかり忘れていた。

だがある意味仕方がなかったとも言える。

スカイが前部隊に所属していた頃は此方が誘わなくても向こうが誘ってくれていたのでスカイは唯着替えて待っていれば良かったのだ。

其れが粗毎年続いた所為か此れまでの行動が完全に癖になっていたのだ。

だが此処は機動六課、前部隊の女性が居なければ誘いにくる女性も遥か遠くである。


「マズイ、この展開は非常にマズイ……これじゃ俺様モテなくて一人寂しくクリスマスを過ごす野郎共と同じじゃないの……」


ブツブツと愚痴を言い冷汗を垂らし自分の最悪の事態を想像する。


『なら今から誘ってみては如何でしょうか?』

「……え?」


突然の提案にポカーンとして『ヴィーナス』を見つめる。


『幸い此処は六課の隊舎内まだ此処には多くの人達が残っています』

「そおか! まだチャンスはあるんだ!」

『ええ……ですがクリスマス当日ですから厳しいと思われますが……』

「其処は運次第か…まあ、やってやら〜ヴィーナス、サンキュー!」

『私はスカイ様のお役に立てれば幸いです』


スカイは自分の相棒に感謝しながら大きく深呼吸をして部屋を出た。









※        ※        ※










「と……元気良く出てきた物の早々に見つかる訳ねーか……」


スカイは隊舎内にある自販機の隣にあるベンチに座り込んで凹んでいた。

とうの結果が粗惨敗に等しかったからだ。



アルトの場合


「本当に御免なさいスカイさん! 今日は用事があって無理なんです!」

「そおか、じゃあ仕方無いよな〜」

「ハイ、本当にすみませんでした!」



『スカイ様……』

「タハハハ……まあ、初っ端何てこんな物よ次いこ次」



ルキノの場合


「あの……お気持ちは嬉しいんですけど……あの…その……」

「そおか〜予定あるのか」

「はい……」

「良いよ、無理に誘ってわるかったな〜」

「すいません、それじゃあ……」

「お幸せに〜〜〜」



「なんなんだ…あの恋する乙女顔は……」

『思い切り顔を赤らめてモジモジしておられましたね』

「くそったれ〜〜〜〜〜グリフィスの野郎〜一人だけ抜け駆けはずるいぞ〜〜〜〜〜!」



シャーリーの場合


「シャーリ……」

「後少し……後少しで新たな人類の第一歩が……ウフフフ♪」



「ヴィーナス……俺様達今見ちゃいけない物見た気が……」

『思い切りデバイスやカードリッジ等の資料や画像見て笑っていましたね……シャマル様をお呼びした方が……』

「……いや、そっとして置こう、明日になれば何時ものシャーリーに戻るさ」

『解りました』

「多分だけどな……」



アイナの場合


「アイナさ〜〜〜ん!」

『トライトン様はご実家に帰宅されています』

「ヴィーナス、それ早く言ってくれよ〜……」

『申し訳ありません、スカイ様泣かないでください』

「これは涙じゃね〜汗だ〜〜〜〜〜」



結果ロングアーチメンバー成績 0勝5敗(グリフィスを含めて)



「ちくしょ〜この俺様とした事が何と言う様だ……」

『諦めないでください、まだ他にも誘ってない方は沢山おられます』

「そうだな! まだ諦めるのはぇーよな!」


『ヴィーナス』の心もとない励ましで元気になる何処までも前向きな男だ。

だが此れがある意味スカイの強さなのかもしれない……。


「よし! 次は隊長陣誘いに行くか!」

『成功をお祈りしています』

「よっしゃあ! いざ行かん! クリスマスを可愛い子ちゃんと過ごす為に!」


スカイは新たな闘志を胸に抱き走りだした。


「アレ? スカイ兄?」


が、即座に聞こえた自分を呼ぶ声に足を止める。


「ありゃ? スバルか?」


振り返ると暖かそうな私服に着替えたスバルが此方を見てる事に気が付く。


「どうしたんだ、こんな所で?」

「私はお父さんとギン姉と三人でクリスマス♪ スカイ兄は?」

「俺様はえーっと……」


スカイは言葉を濁しながら言おうとした一瞬スバルと共にクリスマスを過ごす事を考えてみた。

スバルは純粋で前向きな優しい心を持つ少女だ。

もしクリスマスを共に過ごせたらスバルにとっても自分にとってとても良い思い出になる事だろう。

だがスカイはその考えを止めた。

スバルは家族と共にクリスマスを過ごす事を心から楽しみにしている。

其処に自分が訳を言い誘えばどうなるか?

勿論謝りながら断るだろうがその優しさ故にスバルの心に僅かな罪悪感を残してしまうだろう。

スカイは自分の幸せ大好き人間だが女性を不幸にしてまで幸せを手に入れたいとは思っていない(男は例外らしいが……)


「ねぇ〜ねぇ〜スカイ兄〜」


スバルはそんなスカイの心情等わかる訳も無くしつこく聞いてくる。

スカイはそんなスバルを見てふと軽い悪戯心が出てきた。


「実はな〜」

「うんうん」

「アイス落としたんだ」

「え!? アイス! 何処? 何処?」


明らかに嘘と解る物なのに素直に彼方此方探すスバルを見てスカイは笑いがこみあがってきた。


『ナカジマ様、スカイ様はアイスを落としてはいませんよ』

「もーヴィーナス、そのナカジマ様って言うの駄目だって……え?」

「アッハハハハ! 嘘に決まってんじゃん!」

「えー! 嘘!」


スバルは素直に引っ掛かってしまった自分に対し恥ずかしさから赤くなる。

其れを見たスカイは笑いながら頭をクシャクシャと撫でて謝る。


「いや〜悪い悪い〜つい面白くて」

「もー! 酷いよスカイ兄!」


スバルはそう言いつつも本気で怒る事なく素直に撫でられている。

ある意味信頼し合えるからこそ出来る事だ。

暫くスバルを撫でていたスカイだったが何時も一緒に居る筈の相方の事が気になり聞く


「そういやティアナは?」

「ティアは自室で執務官に向けての勉強中〜」

「お堅いな〜折角のクリスマスなのによ〜」

「ですよね〜だから家に来ないかって誘ったんですけど断られました」

「そおか〜じゃあ誘わない方が良いな〜」

「誘うって何をですか?」

「気にすんな、ってか時間良いのか?」

「え?」


スカイの忠告で時計を見るとスバルの表情が一瞬で焦り顔になる。


「うわ! もうこんな時間だ!」

「ホレホレ〜とっとと行けって」

「うん、じゃあねスカイ兄!」

「親父さんとギンガに宜しくな〜」


スバルはスカイの言葉に頷きながら隊舎を出て行った。

その光景を見送るとスカイは軽く下を向きため息を吐く。


「家族か……」

『どうなさいました?』

「いや、何でもねーよ、其れより次次」


スカイはそう言うとスバルとは反対側の方向に歩きだす。










※         ※          ※










スカイは粗方隊舎内を見て周ったが一部の作業しているスタッフばかりで肝心の目当ての人物が見当たらない。

ならばと今は外で待機してみる事にしたのだが……。


「さびーーーーーーーーーーー!」


やはり冬という事だけあって冷たい冷気が容赦なくスカイを襲う。

幾ら暖かい格好をしていてもこの寒さは簡単になれる物ではなかった。


「やべ〜よヴィーナス! 此の侭じゃ俺様此処の可愛い子ちゃんに会う前に羽根つきの可愛い子ちゃんの所にゴーしなくちゃ行けなっちまうよ!」

『スカイ様、それなら一度中に戻った方が宜しいかと』

「駄目だ! もし俺様が暖房でぬくぬくしてる間に会えるチャンス無くす位なら死んだ方がマシだい!」


『ヴィーナス』の提案に対し殆ど子供の様な下らない駄々をこねて拒否する。

『ヴィーナス』はそんなスカイを見つつ早く女性が通りかかる事を密かに願う。

何処までも主思いなデバイスである。

するとその願いが通じたのか玄関から出てくる人影が……。


『スカイ様! 出てきました!』

「何!? チャンス!」


スカイは嬉しい気分を抑えると即座にその影に向かう、そして本日最高の笑みを浮かべて


「へ〜い! 俺様と一緒にクリスマスすご……ピャ〜〜〜〜!」


全て言い切る前に人影から行き成りキツイ鉄拳をお見舞いされ思い切り吹き飛んだ。

あまりに突然の出来事に驚いたが受身を旨く取れたお陰で直ぐに起き上がる事が出来た。


「いてて……何がおき……「相変わらず何の進歩も無いな貴様」…お! お姉さま!」

「誰がお姉さまだ!」


スカイに対して容赦のない攻撃をしたのはヴォルケンリッター烈火の将ことシグナムだった。


「お姉さま何でこんな所に?」

「主はやてや皆と共にクリスマスを過ごそうと遣り残した仕事を片付けようと思ったのだが……」

「?」

「予想以上に沢山あってな、かといって残してクリスマスを過ごすのも後味が悪いから寝ないで徹夜で終わらせたんだ」

「うひゃ〜相変わらず真面目ですね〜〜」

「仕方ない事だ……其れに今日は大事な日だからな……」

「え?」


シグナムはそう言うと僅かながら暗い表情になり空を見つめる。

スカイもその珍しい表情にあっけに取られてしまう。


「いや、何でもない……然しお前はまたナンパか」

「ギク!」

「ハァ〜……大方クリスマスを過ごす相手がいないから片っ端から探しているんだろ」

「…………」


流石にスカイを一番に見ているだけあってシグナムの感は見事に的中した。

スカイはシグナムの完全に的を得た発言に何も言えなくなってしまう

そして同時に女性の感は恐ろしいと改めて感じた。


「しかし残念だが幾ら待ってももう誰も来ないぞ」

「はぇ?」


突然のシグナムの言葉にスカイはマヌケな声を出す。


「此処に残っているのはティアナと一部のスタッフだけだ」

「………マジ!?」

「嘘をついてどうする」


シグナムはスカイの反応に呆れた様に手で顔を覆う。

当のスカイもあまりのショックに膝を地面に付きそうになった。

それもそうだ誘える女性陣が全員居ないと言う事は自動的にゲームオーバーになってしまったという事なのだから……。

あまりの悔しさに半泣きそうになるがシグナムの手前其処まで情けない姿を見せたくないというプライドが支えになり止める事が出来た。

其れと同時に気になる事が出てきた。


「でも……皆何処に?」


人間こうなると無性に相手の事が気になる物だ。

するとシグナムは律儀に教えてくれた。


「私達はさっき言った通りだ、高町やテスタロッサと友人宅のクリスマスパーティに家族一同出席するんだ」

「友人ってあのコテージ提供してくれた?」

「そうだ、あの時お世話になっただろう」


スカイは以前海鳴で世話になった金髪のショートヘアーでやたらと勝気な女性、アリサ・バニングスを思い出す。

あの時はあの時で色々な誤解等も起きて大変だったが今では良い思い出だ。


「って事はリンディお姉様とかエイミィさんやすずかちゃんとかも参加するんですか!?」

「当たり前だろ、集まらない訳が無い」


シグナムは何を今更と言った顔でスカイを見る。

其れはそうだ……彼女達の友情はかなり深い上に家族関係も良好だ、全員で集まろうと言われて参加しない様な人達ではない。

その上全員が集まりパーティをしたら確実に盛り上がる事間違い無しだ。

更に参加するメンバーが大半が美女というスカイにとって天国の様な場所だ。

其れだけに自分が参加出来ない事を深く、ふっかーーーーーーーく悔やむスカイだった。

その時シグナムが何か思い出した様な表情になる。


「そういえば……高町が言っていたがもう一人男が来ると言っていたな」

「…………ワット?」

「確か恋人と…「な…」?「なんですとーーーーーーー!?」うるさい!」

「わぎゃん!」


突然の仰天発言に驚き間近で大声を出すスカイが鬱陶しいのか思い切り拳骨をするシグナム。

そしたら見事にタンコブとお星様が出来上がった。

しかし当の本人は何でもないかの様にしてる所余程何度も殴られていたのだろうと言う事が伺える。


「まったく……少しは落ち着け」

「イヤ驚きですよ! まさか「恋人」という単語が出てくるなんて俺様超ビックリ! で? 誰の彼氏なんです?」

「あぁ……確かバニングス嬢だと」

「わ〜お……(ちくしょう俺様も一応狙ってたのに……)」

「お前、今思い切り碌な事考えていなかったろ」


シグナムは本日何度目になるか解らないため息を付きつつも話を続ける。


「バニングス嬢曰くとても不器用で怒りっぽくてどうしようも無い奴だが其れでも自分はその人が好きらしい」

「なんですかその例え?」

「様はお前より数倍マシと言う事だ」

「ひで〜俺様超傷付いた!」


ストレートに言われた所為か思い切り凹む

シグナムその様子を見て半分満足気な顔をして「またな」と言いその場を去っていく。

そして残されたのは全戦全敗をした哀れな男スカイ・バレンディア


「ショッピングモール行くか……」


そういうとスカイはヨロヨロと隊舎を後にする。










※           ※            ※










ショッピングモールは少し盛り上がっていた。

サンタの格好をした人がケーキを売っていたり大きい看板を持ち何かを宣伝している者。

ケーキやら何やらと楽しんでる家族連れやショッピングを楽しむカップル。

その中にあの男……スカイが居た。

ショッピングモールの中央にあるクリスマスツリーに背中を預け俯いていた。

その雰囲気はどう見てもクリスマスを楽しんでいる者の雰囲気ではないと誰がどう見ても言うだろう。


「ちくしょ〜何が悪かったんだ……」

『やはり当日に誘おうとした事に無理があったのでは』

「あーーーもーーー! 俺様の馬鹿馬鹿馬鹿!」


そう言い自分の頭を叩く。

本当はもっと重大かつ色々な問題があったのだが……。


『スカイ様、落ち着いて下さい、また来年があるじゃないですか』

「うぅ……ヴィーナスお前だけだよ今の俺様の味方は〜〜」


そういい『ヴィーナス』に頬を摺り寄せオイオイと泣き始めるスカイ。

誰がどう見ても可笑しい光景に周りの者は苦笑しながら面白そうに見ている。


「うおっし! 今年は見事にミスったが来年は違うぞ! ちゃんとプランを練って練って練りまくって充実したクリスマスにしてやる!」

『その意気です! スカイ様!』


見事に復活したスカイを見て心の底から嬉しがる『ヴィーナス』

だが直ぐにスカイは現実に引き戻される。


「今日何して過ごそう……」

『…………』


完全にやる事が消え此の侭今日という日が終えるのを待つしかない二人。

でも仕方ないと諦めクリスマスツリーに再度背中を預ける。


「あれ〜? ダーリンじゃないッスか?」


すると背後からノリの良い明るい声が聞こえてきた。

妙に聞き覚えのある声に振り返ると赤い髪を後ろで纏めた少女が満面の笑顔でスカイを見ていた。


「あ〜え〜っと……誰だっけ?」

「ぬな!? 行き成り酷いッスよ! この永遠のハニーことウェンディさんを忘れるなんて!」


ウェンディは自分が忘れさられた事に驚き必死に自分をアピールする。


「おーそうだった! てっきりアッチの方かと……」

「アッチ?」

「いや、何でもない気にするな!」

「???」


ウェンディはまったく意味が解らず首を傾げる。

ウェンディとスカイは少し前にひょんな事で知り合った関係だ。

簡単に説明するとウェンディがピンチの時にスカイが助けその後色々とウェンディの世話(?)をしたのだ。

その後セインを初め他の姉妹達(ドクターと一部を除く)と出会いすっかり仲良くなってしまったのだ。

特にウェンディはスカイの事が気に入り、こうして偶に会えた時にはよく悪ふざけをしたりして遊んでいるのだ。

因みに本当はお互い(知らないが)敵同士だったりするのは秘密だ。


「しかし何なんだソレ?」


スカイはウェンディが両手に持っていた沢山の袋を見ながら言う。


「ん? あ、此れッスか? ケーキッスよクリスマスケーキ」


ウェンディは袋を置き箱を出して開けると其処には色とりどりのケーキがギッシリと詰っていた。


「へぇ〜此れ全部ケーキか?」

「そうッスよ」


スカイはウェンディが持っていた袋を見る。

明らかに袋の数が多く更にはその中にある箱の中には沢山のケーキが詰っている。

普通なら驚くがスカイは大して驚かなかった。

何せ良く食べる姉妹達だ、寧ろこの量では足らないとすら思っていた。


「しかし良いのか〜幾ら量が多くてもお前らだと殆ど数十分で消えるだろ、お前の分なくなるんじゃね?」

「おー! 心配してくれるとは流石アタシのダーリンッス! けど安心して欲しいッス! 既に自分のはキープしてるッスから!」


そう言うとウェンディは一つだけ他のより大きめの箱を自慢げに見せた。

其れを見て相変わらず抜け目の無い奴だとスカイは内心思った。

そんな会話をしている内に夜も段々更けて来た。

そろそろ夕食を買い隊舎に戻ろうと思ったスカイは軽くウェンディの頭をクシャリと撫でた後


「じゃあ姉妹達に宜しくな〜」


そう言って去ろうとしたが……。


「アレ? ダーリン来ないッスか?」

「え?」


突然のウェンディの言葉に一瞬だけ硬直する。


「だーかーら家に来な……「行く!」はや!? 即答ッスか!?」

「当たり前じゃん! これ断るなんて男じゃねー!」


ウェンディから意外な誘いに興奮して頷きまくるスカイ。

それはそうだ、此れで当初の目的だった「可愛い子ちゃんと一緒のクリスマス」がクリア出来たのだ。

その上ウェンディを初めとする姉妹達は全員美女揃いだ。

これ程の好条件が揃って「ノー」と断る男はそうそう居ないであろう。


「さあ! さあ! さあ! 行こうではないか係長!」

「へい部長! 何処までもお供します! ……って何かおかしくないッスか?」

「気にするな! 人生楽しく生きていこうぜ!」


スカイはそう言うとウェンディの肩に手を乗せ押しながら歩き始めた。

すると空から白き雪がまるでタイミングを狙ったかの様に降り注ぐ。

其れを見たスカイは手を離し大空に向かい大きく息を吸い込みそして……。


「メーーーリーーー! クリスマスーーー!」


本日最高の雄たけびをあげた。













おまけ1


「ねぇアリサちゃん?」

「何なのは?」

「もう直ぐ来るんでしょうアリサちゃんの恋人」

「ええ、そう言えばなのは達は会うの初めてだったわね」

「うんだからどんな人なのかもう一度聞きたくて」

「あー、私も興味あるわー」

「はやてまで、そうね兎に角ぶきっちょで怒りっぽくて負けず嫌いなどーしようも無い奴だけど……」

「(それってアリサも同じなんじゃ……)」

「ん? なによユーノ人の事ジロジロ見て」

「いや! 何でもないよ! それで?」

「うん、どうしようも無い奴なんだけど……その…あの…」

「「「「「???」」」」」

「あーもー! 兎に角好きになっちゃったの!」

「「「「「えーーー!」」」」」

「うるさい! うるさい! 兎に角今日来るんだから良いでしょう」

「「「「「(無茶苦茶な……)」」」」」

「アリサお嬢様」

「何? 鮫島?」

「来られましたよ」

「!?」

「おー来たんかーアリサちゃんはよ迎えにいかなー♪」

「う……うん」

「うわ〜アリサちゃん顔まっ赤やったわ〜可愛いな〜♪」

「ねえねえ、アリサちゃんの恋人ってどんな人なの? すずかちゃん?」

「うふふ、とっても良い人だよ」





「ようアリサ」

「いらっしゃい、勇人!」





おまけ2


「おーい! スカイ〜こっちのシチューなくなくったぞー!」

「ノーヴェ自分で取りに来てくれ〜よ!」

「スカイさん……」

「はいはいディエチちゃんチキンおかわりね」

「スカイ……あ…姉もケーキを……」

「ほいほい、どうぞっと」

「スカイさ〜ん、私にもケーキくださ〜い」

「フム……スカイ君、私も一つ貰おうか」

「あ、ケーキもうねぇや……」

「「え!?」」





「いや〜ダーリンも大変ッスね〜」

「いや〜洗物してるセインやウーノお姉さま程じゃね〜よ〜」

「この調子で頑張るッス!」

「おのれ〜お主も道連れじゃ!」

「いや! アタシは食べるのせん……いや〜ッス!」





「ねぇディード」

「オットーどうしたの?」

「あの二人仲良いね」

「そうだね」

「良いのかアレ?」





おまけ3


「あの二人は何処に……って居た!」

「やあシャッハ」

「「やあシャッハ」じゃありませんロッサ! 今日が何の日か覚えているんですか!」

「解っているさ、今日はクリスマスで聖王教会関係の施設の子供達に僕達がプレゼントを渡すんだろ」

「じゃあ何で騎士カリムの部屋の前でノンビリと!」

「いや〜唯僕達がプレゼント配るのは芸が無いと思ってサンタクロースの格好で配ろうと思ったんだ」

「成程…でもサンタ処か何時もの格好じゃないですか」

「実は姉さんがその役を自分がやりたいと言い出してね、だから今此処で着替え中さ」

「そうだったんですかそう言う事は早く言って下さい」

「ロッサ〜着替え終わったわよ」

「あ、やっとおわ……」

「どうしたんですかロッ……き…騎士カリム!?」

「どうしたんですか?」

「お言葉ですが……騎士カリム」

「?」

「何故トナカイの格好を……」

「え? 此れがサンタクロースさんじゃ?」

「…………」

「う〜ん、姉さんも中々やるね……一本取られたよ」

「???」










あとがき

どうもKaiです。

まだ本編が進んでいないのに外伝に手を出した大馬鹿者です。

今回の外伝では偉大なるシリウス様のキャラを許可を貰い使用させて頂いたので感謝感激です

この外伝では色々と無茶な物を取り込んでいますが外伝だと思って見逃して貰えたら幸いです。(おい

因みに今回スカイ君は全敗をしましたが何時ものクリスマスだったら数人の女性と共に過ごしたりしてるんですよ(えー

では皆様良いクリスマスと正月を無事楽しく過ごせる事を心よりお祈りします。






作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板

に下さると嬉しいです。