魔法少女リリカルなのはSTS「波乱を呼ぶ男(第四話)」







「ふーん、お前って一人なのか?」

「え? う……うん……」


突然の出会い、突然の会話に何を言っていいのか解らない少年は落ち着かなかった。


「何だよ男の癖にモジモジしやがってだらしねーな」


少年の行動に呆れたのか彼はため息を吐きながら言う。


「うぅ………」


少年は恥ずかしくなり顔を伏せる。

それはそうだ、初対面のしかも年齢や体格に大差のない相手に行き成りこんな事を言われのだ。

少年は恥ずかしさで顔を伏せつつもチラリと彼を少しだけ見る。

緑色のシャツに茶色のズボン、白いスニーカーに深く被った帽子は泥で彼方此方汚れていた

此れを見るだけでも彼の活発さが伺える。

といっても此処は都心とはかなり離れた場所……いわゆるど田舎なので新品の服でも何日かで直ぐ汚れてしまうが……。


「おい、人の事何ジロジロ見てんだよ」

「え? あ、ごめんなさい……」

「おいおい、別に謝らなくて良いよ」

「すいません……」

「あー! もう良い!」


彼は少年の受け答えが癇に障ったのか大声に近い声で叫ぶ

少年は驚いたのかビクビクしている。


「おい! お前!」


彼は少年に人差し指を向けてニヤリと笑い。


「遊ぶぞ!」


と、一言だけ言った。










第四話「聖王教会に行きたい〜♪ え? 駄目? 悔しいです!!」





管理局の仕事は戦闘だけではない、書類を仕上げる事も立派な仕事だ。

勿論六課にも沢山の書類がわんさかとまい込む。

そして当然この男にも………。


「おわったーーーーーーーーー!」


最後の一文字を打ち終え叫んだ後、椅子に思い切り寄りかかる男は一応このストーリーの主人公スカイである。

彼は自室で残った書類を今終わらせた所である。


『スカイ様、お疲れ様です』

「ちくしょ〜何でこんな大量に書類があるんだよ〜」

『仕方ありません、新設部隊故仕上げなくてはいけない物もあるのでしょう』


そう、彼は今まで大量の書類を何日もかけてやり通したのである。

本来なら其処までの量では無いのだが新人達はまだティアナを除いて不慣れであり他のメンバーもまだ慣れない者も多い

其処で先輩や慣れている組が分担して残りの書類を片付けようと言う事になり今現在にいたる。


「しかもよりによってガキンチョの分だしよ〜」

『モンディアル様のだと不都合がおありになるのですか?』

「当たり前田のクラッカーよ〜俺様の計画がパーになっちまったんだぜ〜」

『と言いますと?』

「良いか〜、慣れていない可愛い子ちゃんの書類を素早く終わらせる→可愛い子ちゃんの好感度アップ
→「フッ…後輩を助けるのが先輩ってもんだろ…」とナイスガイに決める→周りの好感度アップ→ウハウハ♪
 と行く筈がガキンチョの担当だと2番が駄目になっちゃうのよ!」

『……成程流石ですね』


こんな穴だらけの計画にも何も言わず肯定する『ヴィーナス』の方が流石かもしれない……。


「さてと……そろそろお昼前になるな〜」


スカイが時計に目をやると丁度お昼前の時間を射していた。


『食堂に向かわれますか?』

「うんにゃ先に後輩&教官を迎えに行こう」

『何故です?』

「こういう地味な行動も好感度上げるために必要なのさ行くぜ」

『了解です』


スカイは『ヴィーナス』を首にかけると直ぐさま自室を出て玄関先へと向かった。










※          ※           ※










「さーて、皆何処ですかーっと……」


スカイは玄関前に着くと直ぐ辺りを見渡す。

すると入り口付近で新人達と教官であるなのはが、そして部隊長であるはやてと執務官のフェイトが居た。

はやてとフェイトはスポーツカータイプの黒い車に乗っている、どうやら出かけるようだ。

其れを見たスカイはニヤリと笑うと直ぐに皆の元に駆け寄った。


「おー! お疲れさん〜マイハニー達〜……とその他一名」

「毎度毎度思うけどアンタってそんな挨拶しか出来ないの?」


何時ものスカイの挨拶を呆れ顔で返してきたのはティアナだった。

既にスカイと六課陣の皆との付き合いは一ヶ月を超えている。

その所為か最初の時より言葉の堅苦しさは消えて皆すっかり仲良く(?)なった

勿論その一ヶ月の間にスカイが女性局員にナンパとお茶に誘った回数も半端ではないが……。


「何々〜さては俺様に会えなくて拗ねてるのか〜?」

「いいえ、寧ろ会えなくてとても…とーーーっても充実した訓練が出来ました」

「俺様ショック!」


ティアナの嫌味な程の満面の笑顔を受けてスカイはショックなのかその場で少し固まる。

それを見たティアナは「フフン」と勝ち誇った笑みを浮かべ周りのメンバーはそんな二人を見て苦笑した。


「そう言えば八神部隊長達は何処へ?」

「ん? ああ此れから聖王教会に……「何ですとーーーーーーーーーーー!」ひゃ!?」


はやては行き成りのスカイの大声に驚く。

何気なしに始めた会話にこの大声だ。

周りの面々も目を見開いて驚いている。

そんな空気の中スカイはフェイトの車に近付き目を輝かせながら言う


「ねえねえ! 聖王教会って今言ったよね!」

「え……あ、うん言ったけど……」

「部隊長さん〜水臭いですよ〜」

「へ?」

「聖王教会と言えば……」

「言えば?」

「可愛いシスターが一杯居る所じゃないですか〜」


ズテーン!

そんな音がしそうな程のズッコケ音がした。

何事かとスカイが振り返ると全員が仲良く地面に倒れていた。


「あれ? 皆さんどうしたの?」

「アンタの所為よ!」


スカイの言葉にティアナは即座に起き上がりツッコミを入れる


「え? 俺様の所為!?」


それに対しスカイは信じられないといった表情だ


「えーじゃないわよ! えーじゃ! ってかアンタ聖王教会そんな所だと思ってたの!」

「それはね……」

「な、何よ?」

「うそ♪」

「「「「「嘘かい!(ですか!)」」」」」


皆がツッコミにスカイは満面の笑顔だ

それを見たはやてとフェイトは苦笑しながら聖王教会へ向かおうとする


「アハハハ……じゃあそういう事で……」

「まった!」

「「え?」」


急な「まった」宣言にはやてだけでなくフェイトまで反応する


「俺様も連れてってくださ〜「却下です」ってはや!」

「アハハ〜其れは幾ら何でも無理ですわ」


はやては冷汗をかきながらスカイに反論する

幾ら自分と聖王教会に居る騎士カリムと友好関係にあっても自分の部隊の者が教会の者にナンパをしたら大問題になるのは確実だ。

最悪六課が消えてしまうかもしれない、それだけは非常に困る。

しかし、それに対しスカイは……。


「え〜この時の為に色々と努力してきたのに〜」

「何努力したん!? というか行く気だったんか!」

「イエス、オフコース」


思わず本来の口調でツッコミをするはやてに対しスカイは純粋な笑顔で答える。

スカイはこう言う事に関しては嘘はつかないタイプだ。

其れは自分を含めナンパされた人を見て十分わかっている方だと思う。


「(相変わらず色んな意味で純粋な人やな〜……)」


はやてはスカイを見ながら改めてそんな評価をした。


「お願いです! 俺様を聖王教会につれてってください」


スカイは土下座でもしそうな勢いではやてに懇願する。


「じゃあその話はまた何時かと言う事で……フェイトちゃんゴー!」

「え!? あ、うん!」


はやての必死な表情を見たフェイトは慌てて車を発進させる。


「え!? ちょ! せめて返事だけでも!」


スカイは言い終える前に追いかけようとするが強い力によって止められてしまう

何事かと思い振り返るとスバルとエリオが自分を押さえつけていた。

幾ら年下とはいえ普段から鍛えられている二人の筋力は並では無い。

スカイはそのまま動けなくなってしまう


「おい! お前ら何をする! HA!NA!SE!」

「取り合えず落ち着いてスカイ!」

「落ち着いて下さいスカイさん!」

「ちょ! まだ俺のターンはおわって!」

「ハイハイ馬鹿な発言は放っといて、スバル、エリオ放すんじゃないわよー」

「ティアナおめぇ! キャロ、ヘルプ!」

「えーっと…その…ごめんなさい」

「ちくしょーー! 俺様の計画がー!」


スカイは二人に捕獲されながらフェイトとはやての乗る車を唯見ているしかなかった。










※          ※           ※










「ふぅ〜助かった……」


はやては高速道路辺りに入った所でようやく落ち着いたのか安堵の笑みを浮かべる


「でも、大丈夫? スカイ、また聞いてくるんじゃ?」


フェイトは少し心配そうにはやてに尋ねる。

それを聞きはやては少し考えこむ


「う〜ん……まあ大丈夫だと思うよ」

「そうかな……」


はやての言葉にフェイトまだ不安そうな表情で答える

其れを見たはやては軽く笑みを浮かべる


「だいたい其処までやってたらとっくの等にクビになって豚箱に行ってる」

「アハハハ……確かに」


ありえない話ではない話にフェイトは思わず苦笑し肯定する。

はやても其れを見ると

それと同時にふと聖王教会の事を思い出す。


「そういえば、カリム・グラシアさんだっけ? 私は直接お会いした事ないんだけど」

「え? あーそうやったね」

「はやては何時から?」

「うーんそうやな……」


はやてはフェイトにカリムと自分の事について詳しく話す。

八年前に教会騎士団への仕事で派遣で呼ばれた時に出会った事

信じてる物も立場もやるべき事も全然違うが今回は目的が一致したから協力しあう事

そしてカリムが六課の立ち上げの自失的部分をやってくれたお陰で人材集めに集中出来た事

信頼出来る上司と言うよりは姉という感じという事など事細かに話した。

其れを嬉しそうに語るはやてに釣られてフェイトも自然に笑顔になる。


「まあ、レリック事件が一段落したらちゃんと紹介するよ、きっと気が合うよ〜なのはちゃんもフェイトちゃんも」

「うん、楽しみにしてる」


そんな会話を続けながら二人は聖王教会へと向かう。


「(あ……そういえば今日もう一人お客さん来るってカリム言うとったな……誰やろ?)」










※           ※             ※










「皆……まだかな……」

「クゥ〜……」


そんな言葉を漏らしたのはエリオとフリードだった。

先ほどの一騒動のあとスカイやなのはと別れ、

訓練でかいた汗を流すためにシャワーを浴びることにしたフォワード陣。

唯一男性のエリオはシャワーを浴び終えたあと、近くの廊下でフリードとともに待っているが、

未だに残りの女性3人は現れる気配はない。

エリオにしてみればシャワーなどすぐに終わるものだと思っていたのだが……。

だからか女性陣のシャワーが長いのを疑問に感じていた。


(遅いな〜頭と体洗って終わらせるのだけなのに……)


エリオは心の中で少しだけ愚痴ってしまう

まだ幼い故仕方ない事かもしれないが……。


「よお〜チビチビコンビ」

「え? あ、スカイさん」

「クウ〜」


声の聞こえた方に振り向くと其処にはスカイが居た。

スカイはエリオの隣に座り唐突にフリードをエリオの頭の上にのせる。


「題名、飛竜の巣」

「え!?」

「冗談だよ」


そう言うと今度はフリードを肩にのせる。

そして一度辺りを見回して再度向き直る。


「他の三人は何してんだよ?」

「え? シャワーですけど……」

「そおか〜どの位時間たってるんだ?」

「えーっと……もうかなりたってます」


それを聞くとチラリのシャワールームの方を見ると笑みを浮かべる。

対してエリオの方は意味が解らず不思議がる。


「で? 覗いたのか?」

「ぶっ! 覗いてませんよ!」

「なに! 覗いてないのか!」

「は……はい」


あまりのスカイの勢いにエリオは半分怯えながら言う。

その返答を聞いたスカイは手で顔を覆いヤレヤレと言うように首を振る。


「まだお前なら許される年頃なのに……もったいない…実にもったいない…」

「えっと……すいません」


別に謝る必要すらないのにエリオは何故か謝ってしまった。

すると行き成りスカイはエリオ正面に向かい肩を掴み目と目を合わせる。


「なら行け少年」

「え!?」

「え!? じゃねーよ! 今からでも遅くは無いぞ! 行くんだ少年! ……何なら俺様もついていってやる」

「駄目ですよ! それっていけない事じゃないですか!」


スカイの滅茶苦茶な発言にエリオは必死に反論する。

まだ異性の事には詳しくはないエリオでもそれがマズイという事は十分に解る事だ。

それを聞いたスカイは更に口調を強めるように言う。


「イカン、イカンぞ少年! 男と言う者はだ……」


だが其処まで言い掛けた所でスカイは言うのを止めた。

エリオは何事かと思い聞こうとしたら行き成り念話が聞こえてきた。


「(この話はまた今度な、其れまで誰にも秘密だぞ)」

「え?」


訳が解らなかったエリオは再度聞こうとしたがふとスカイの後ろに人影らしき物が見えた。

よく見てみると其処にいたのはティアナだった。

多分先にシャワーを浴び終えたので一足先に出たのだろう。

ティアナもエリオが気がついたのと同時に二人(と一匹)に気が付く。


「悪いわね、エリオ。遅くなって」

「いえ、僕は大丈夫です」

「無理しなくても良いわよ、結構待ったでしょ」

「いえ、フリードとスカイさんが話相手になってくれたから全然」

「ふ〜ん」


ティアナはスカイを少し見ると再びエリオに向き直り小声で話す。


「アンタ……スカイに変な事吹き込まれてないわよね」

「え!?」


行き成り図星をつかれたエリオは言葉を失う。

ティアナはエリオの反応を見るとやはりと言う顔になる。


「いいエリオ、このアホ二号に何言われたか知らないけど鵜呑みにしてたらアンタもアホになるわよ」

「ちょ! アホ二号って! おま!」

「ナンパ等止めてくださったら言いませんよ」

「酷い! 俺様の楽しみが消える!」

「良いじゃない、其れで世の女性が救われるんだし」

「何! その俺様が悪みたいな言い方!」

「よくわかってるじゃない」

「グハw」


ティアナの言葉をストレートに喰らったスカイはその場で石化したかの様に固まった。

その後スカイはスバルやキャロそして皆を呼びに来たなのはが来るまで元に戻らなかったという……。










※           ※         ※











「お疲れ様ッス! 失礼ですがちょっとどいて欲しいッス!」

「あ、すいません(うう……どうしよう……)」


はやては今非常に参っていた。

フェイトに聖王教会まで送ってもらい。

今は教会関係者にカリムの所まで案内されてもらっているのだが問題は其処ではない。

さっき車の中で思い出した「もう一人のお客」の事が気になり行く前に関係者数名に聞いたのだがそれを聞いて驚いた。

曰くその人は何処かのお嬢様でカリムとは友人でちょくちょく会いに来てはお茶をしたりしている関係らしい。

しかしはやて悩んでいるのはその部分ではない。

曰くその人は聖王教会そして管理局に多大な資金援助をしていて六課設立のさいも資金援助をしてくれたらしいのだ。

其れを聞いたはやて非常に焦った。

何せ資金援助処かその人の存在すら聞いていなかったのだ。

先に聞いておいてお礼の品の一つでももってくるべきだったなと今更ながらに後悔した。

などと考えている内にカリムの部屋の前についてしまった。


「(よし、取り合えず笑顔でお礼しよう、大事なのは心より物……違う…物より心や!)」


そんな事を思いながらドアを開けてくれた案内人に一礼してはやては中に入る

其処に居たのは長い金髪を紫色のリボンで纏めた女性ではやての姉的存在である騎士カリム

そしてその隣にはクリーム色の長髪にエメラルド色の瞳、そして白いドレスをきた見た目20代の女性が居た。


「カリムお久しぶりや」

「はやて、いらっしゃい」


カリムと隣に居た女性ははやてを笑顔で迎えた。


「えーっと……カリム…そちらのお方は?」


はやては少し緊張しながらも一番気になっていた女性の事をカリムに尋ねる。


「あ、紹介するわねこの人はアイリス、私とは長い付き合いの友人なの」

「はじめまして、アイリスです」


アイリスと呼ばれた女性は笑顔で一礼する。


「初めましてアイリスさん! 機動六課部隊長八神はやてです! この度は私の部隊に資金援助して下さりありがとうございました!」


緊張の所為か思わず大声に近い挨拶となってしまった。

はやては心の中でしまったと思いつつもアイリスの顔を見る。


「あらあら、うふふ♪」


アイリスとそれを見ていたカリムは嫌味のない笑顔で見ていた。

二人の笑顔を見たはやては少しだけ恥ずかしくなり顔を赤く染めた。


「カリム、貴方から聞いた通りとっても素敵な人ね」

「うふ、私の友達ですもの」

「(うぅ……二人共そんな私を褒めんといてー)」


二人の会話を聞きはやては嬉しさ半分恥ずかしさ半分といった表情になる。

まあ、初対面の相手に褒められれば誰でも嬉しくはなるだろうが

因みにこの会話(はやて中心)は騎士シャッハからお茶とお菓子が届いた後も続き

はやてがレリックの話題を出すまで終わる事がなかったと言う。










※           ※             ※









「(うーむ……)」


スカイは色々と睨みつけるような目で辺りを見ていた。

なのはの案内で連れて行かれた場所で待っていたのはシャーリーとリインそして新人達の専用デバイスだ。

スバルとティアナは驚きを隠せない表情で自分達の新デバイスを見ていた。

何せ自分達の専用デバイスがこんなにも早く出来上がるとは夢にも思わなかったからだろう。

一方のエリオとキャロもリインからデバイスに慣れてもらう為今まで最低限の機能だけで使用していたと聞かされた時は驚いていた。

シャーリーやなのはも新人達の事なのにまるで自分達の事のように喜んでいる。

約一名を除いて……。


「(他の部隊員見たらどんな反応するんだろうな〜)」


スカイはそんな事を考えながら見ていた。

唯でさえ毎年予算関係で参っている管理局……其処に本局も地上もない

最悪支給品が全然届かない、届いても数が足らない等色々な問題を抱えた部隊もある。

勿論新人専用デバイスなどもっての他だ。

そういう意味でスカイはこんな表情を浮かべていた。

まあ、自分も専用デバイスを持っている身故どうこう言える物ではないが……。


「あ……出力リミッターっていうと……なのはさん達にもかかってますよね」


とそんな事を考えていたら何時の間にか話題は出力リミッターの話になっていた。

出力リミッターは「部隊毎に保有できる魔力ランクの総計規模」を超えてしまう、という問題に対する「裏技」の様な物だ。

リミッターの対象は主に部隊長や隊長陣や副隊長陣だ。

でなければ此処の様なオーバーSランクだらけの部隊が認められる訳がない。


「あ、そういえば……」


不意にエリオが発した言葉に皆の視線が集まる。


「スカイさんにもリミッターかかっているんですか?」

「え? 俺様? かかってる訳ないでしょーが」


スカイは何言ってんのコイツ? 的な目でエリオを見る。


「え? でもシグナム副隊長と互角にたたかって……」

「アレは向こうが手加減してくれたからだよじゃなきゃ速攻でゲームオーバーはい其れまでよ〜♪ …だぜ」

「だぜって何よ……」


スカイの暢気な答えにティアナは呆れる。

その答えを聞いたエリオは更にスカイに質問する。


「後、一つ気になったんですけど……」

「何? 俺様、野郎の質問は一つしか受け付けないのよ」

「スカイさんって模擬戦の時に何回も色んな属性の魔法を使用してましたよね」

「うむ」

「アレって全部覚えたんですよ……「いやアレ俺様の魔力変換資質なんだわ全部」

「「「「「「「え!?」」」」」」」


流石にこの発言には新人達だけでなくなのは達も驚いていた。

魔力変換資質とは魔力をごく自然に直接的な物理エネルギーに変換できる能力である。

通常は魔法としての制御が必要な変換を自然に行えるため、

自身の魔法に変換したエネルギーを付与することが容易となり、

意図的に変換を行う際の効率も高くする事が出来る優れた能力だ。

だが、これを得意とする者は、純粋魔力の大量放出は不得意というデメリットがあるが……。


「ですけど、個人が複数の変換能力を持つなんてありえません!」


リインの言う通り魔力変換資質は一人につき一種しか持てない物だ。

「炎熱」の資質を保有しているシグナムが「電気」の資質を持てないように

「電気」を資質を保有しているフェイトとエリオが「炎熱」の資質を保有する事は出来ないのだ。

其れを問われたスカイは少し困ったような表情になり頭をポリポリかきつつもリインの問いに答える。


「ちょっと長くなるけど……まあ良いか、お前ら「レアスキル」知ってるだろ」

「普通の人は持っていない稀少スキルですよね」

「おー流石」

「其れ位常識です」


スカイの問いにスバルとティアナは当然のようにアッサリ答える。

レアスキルは魔導師の中でも特別な力を持つ者が認定される物である。

といってもミッド式や近代ベルカ式が支流になった今では古代ベルカ式魔法そのものや召喚魔法も術者の稀少さゆえ、レアスキルに認定されている。


「俺様も古代ベルカ式のレアスキル持ちでな」

「ど、どんな能力なんですか?」


段々気になってきたスバルが凄い眼差しでスカイを見た。


「全属性変換能力」

「そ…それって凄い能力じゃ…」

「いや、能力自体は確かにすげーよ、でも…」

「でも?」


スカイはガックリした後大きなため息を吐く。


「俺様自身が扱いきれてねーんだよな〜」

「扱いきれてないって、自分のスキルなのに?」

「いや〜真にお恥ずかしい〜何せそれを使いこなす魔力もない物で」

「アンタよく其れをニヤニヤ笑って言えるわね……」

「えへへのへ♪」


スカイのキモイ誤魔化し方に対し一部の者は引き一部の者は苦笑する。

スカイは周りの反応を見てオホンと咳を一回して真面目な表情になる。


「まあ〜アレよ自分の事でウジウジ悩んだって前に進まないでしょ? 大事なのはハートよハート」

「凄いスカイが珍しくマトモな事言った」

「俺様地味に傷付いた〜」


スバルの悪気ゼロの言葉に思い切りダメージをうけたのか真面目な表情のままで答えるスカイ。


「まあ、其れに俺様にはコイツが居るし」


そういうとスカイは胸元から白銀のネックレスを出す。


「あ、其れスカイさんのデバイスですね」

『初めましてリイン様、ヴィーナスと申します』

(((((((あ、喋れるんだ……あのデバイス)))))))


因みに此れが『ヴィーナス』と六課陣のファーストコンタクト&初会話だったりもする。

何せスカイの模擬戦はシグナム戦以降していないし

もし喋ったとしても『ヴィーナス』の分までスカイが異常なまでにペラペラ喋るのでも印象に残らなかっただろう。


「アンタもそのデバイス見習ったら?」

「えー無口な二枚目じゃモテナイじゃんよ〜」

「アンタ二枚目って言うより三枚目よ」

「三枚目って! 俺様三枚目なのか!?」

『落ち着いて下さいスカイ様、二枚目より三枚目の方が数が多くてお得ですよ』

(何かフォローになってない気が……)


しかしそんな空気を打ち破るかの如く警報が鳴り響く。


「このアラートって……」

「一級警戒態勢」

「グリフィス君!」

『はい、教会本部から出動要請です』

『なのは隊長! フェイト隊長! グリフィス君! こちらはやて』


この後のはやての報告によると教会騎士団の調査部追っていたレリックらしき物がリニアレール内で見つかったのだが

ガジェットの乱入によりリニアレールの制御が奪われてかなり不味い状況らしい。


『行き成りハードな初出動やなのはちゃん、フェイトちゃん行けるか?』

『私は何時でも』


通信越しからフェイトが答える彼女は車で移動中の為後から合流になるそうだ。


「私も!」

『スバル、ティアナ、エリオ、キャロ皆もOKか?」

「「「「はい!」」」」


新人達もなのはに負けない位やる気十分といった表情で答える


『スカイさんも大丈夫ですか!』

「燃え尽きたぜ……」

『〇ョーーー! って何さらすねん!』


はやてはモニター越しで顔をドアップにしてツッコム

その光景を見た地球出身者以外は「ジ〇ー」のネタが解らず困っていた。


『兎に角! 機動六課フォワード部隊出動!』

「「「「「は、はい!」」」」」


ちょっと緊張感が抜けてしまったが皆何事も無かったかのよう出動の準備をする。

あいかわらずの約一名を除いて……。


「いってらっしゃ〜い〜夕飯までには帰ってくるのよ〜♪」

「アンタも来るのよ!」

「あででで! 耳引っ張るなよ!」


果たして機動六課の初任務は無事成功させる事が出来るのだろうか?

全ては第五話で明かされる……。

次回を待て!










おまけ1

事件発生する数十分前の聖王教会にて……



「これガジェットの新型?」

「…………」

「三型はわりと大型ね……」

(うーん……なのはちゃん達は兎も角新人達は大丈夫やろか……ん?)

「…………」

「あのーアイリスさん?」

「?」

「さっきから三型見てますけどどうしたんですか?」

「いえ……この子」

「?」

「坂道に居たら大変だなと……」

「はい?」

「だってこんなに真丸だとコロコロ転がっちゃうじゃないですか」

「あー確かにコロコロ転がりそー……って気にしてたの其処ですか!?」

「確かにコロコロ転がったら危ないわね……」

(アレー!? カリムまで悩んでる! おかしいんかな? コロコロで悩まない私おかしいんかな?)





おまけ2

「あの〜スカイさん」

「シャーリーどうしたの?」

「ちょっと『ヴィーナス』さんをいじら……「それは駄目」

「え〜ちょっとだけですよ〜」

「いや…だから駄目だっ」

「隙アリーーー」

「あ〜れ〜お殿様〜お戯れを〜」

「ムフフ〜良いではないか良いではないか♪」



「何やってんのかしら……アイツは兎も角シャーリーさんまで……」

「ティア〜私達も」

「はいはい、アホ一号は黙ってなさい」

「えー! 冗談なのに酷いよ〜ティアー」

(アンタの場合冗談に聞こえないから怖いのよ……)









オリ設定


『全属性変換資質』


スカイのレアスキル

その名の通り全属性魔法を使用出来る能力。

普通ならばかなり強いスキルだが本人の魔力資質と制御の難しさもあって左程強力な魔法は使用出来ない。

普通に使用出来るのは精々AAランクまで、それ以上の魔法は例え使えても以降は魔力切れになり戦闘を続ける事が出来なくなる。










あとがき

どうもKaiです。

そしてあけましておめでとうございます(遅!

今回の話は説明文多くてすいませんでした。

どうもこういうの慣れてなくて……。

なおティアナがあんなにキツイのはスカイが馬鹿だからです(おい

本来ならちゃんとしたスカイと新人達のエピソード話用意する物なんですが作者の技量が駄目駄目な為用意出来ませんでした。

まあ確実なのは皆スカイに対して其処まで好印象ではないと言う事です。(ぁ

後はやての言葉がコロコロ変わるのはご了承下さい……本当にはやては扱いづらいんです……。

因みにオリキャラの「アイリス」はスカイ程目立ちません。

あくまでメインではなく裏方で頑張る人です(えー

まあ時々出てきて活躍(?)します……変な意味で。(汗

次回はスカイ&新人達の初戦闘ですがグダグダ戦闘の予感がビクビクしてます。

それでは読んで下さった皆様に感謝を……。







作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。