視点変更:????




まったく、なゆなゆめ、後でお仕置きよ!秋子さんに頼んでもっと邪夢食べさせてやるんだか(あらあら、そんなに食べたいの?)ごめんなゆちゃん!、あたしが間違ってた!
……って、あたしが誰だか分かんない?
後で自己紹介するから待ってなさい!今それどころじゃ無いの!

うぐぅ〜どい……じゃなくて!どきなさい!この描写すらない障害物共があぁぁーー!」

あたしの心からの叫びに次々と脇に下がる街の住民達。その中を全力疾走するあたし。
この際あたしにも描写が無かったっていうツッコミは心の中でしてね(はぁと)。

住民の皆様には悪いけど、あたしがここまで急いでいるのは訳がある。



第六話 恋する妹、現る。




「今から噴水広場にある人を迎えに行ってほしいの。」

と、休日をゆったりと過ごしていたあたしに頼んできたのはあたしの居候先の主、水瀬秋子さん。
秋子さんは中央ギルドのマスターであり、先ほどの『なゆなゆ』こと水瀬名雪の母親でもある。
「…まあ、暇でしたし、いいですよ。けど…なゆちゃんが行ったんじゃなかったんですか?」
「それが…名雪ったらその人との約束の時間忘れて寝てるんです。困った子ね。後でお仕置きしておくわ。」
…相変わらずよく寝る子だねぇ。永眠しないように祈っておくよ。
「ハァ…それで、その約束の時間って何時ですか?」
「それが…昼の一時なのよ……」
「へぇ。昼の一時ですか…昼の…………………一時!?もう二時半じゃないですか!?
「そうなのよ。あゆちゃんにはさっきおつかい頼んだばかりだから…お願いできる?」

あゆちゃんというのは、あたしと同じ、秋子さんの所に居候している女の子だ。

「もう怒って帰っちゃってるんじゃないですか?」
「でも、まだ待ってるかもしれないし、行ってくれる?」



「そして今に至るっと……到着!」
秋子さんから聞いた話によると、噴水前のベンチに座っているらしいが、座っている人は見当たらない。
昼ごろから大量に雪が降ってたから、どこかの店でやり過ごしてるか、もしくは帰ってしまったのかもしれない。
「…やっぱ帰っちゃったかな?はぁぁ…」
あー、もう!これもなゆなゆのせいね!これは今度百花屋で奢って貰うしかない!
「はぁ…無駄に疲れた……」
そう呟いてから、とあるベンチに腰を掛けるあたし。その前に露店で暖かい飲み物(おしるこ)を買っておくのを忘れない。
すぐ隣には奇妙に膨れ上がった雪の塊があった。が、この時は疲れとなゆちゃんへのお仕置きを考えていたせいで、それに気を止めてはいなかった。
天気は今は晴れ。考え事にはうってつけかな。

それにしても、今日はついてない事ばかりだ。
お気に入りのジャムが朝切れていたり。
あゆちゃんがあたしの教科書にお茶をこぼしたり。(使ってないからいいんだけどね)
体重もちょっとだけど増えたし。
そしてこれはこれで無駄な体力使うし。

どうせならこの不幸な分、幸せな事があたしに起こらないかな?
例えば…いい男と出会ったりとか…

「ねっ、彼女。こんなところ、一人で詰まらなくない?俺達と一緒に遊ぼうぜ。」

…………ハァ、やっぱ今日は運無いや。
このまったり感、ぶち壊し。

「もしかして誰かと待ち合わせ?だったら俺、いい所知ってるぜ?」

とりあえず、あたしは顔を上げてみる。頭上には男が二人。
顔を見ても、やっぱり論外。口説き文句も三流ならば、顔も三流ね。

「待ち合わせして無いんだったら、俺達と遊ぼうぜ。君綺麗だから、俺達も君がいると嬉しいな。」

……ウザイ。
もう、いいよね?とっとと帰ろ。
あたしは無言で立ち上がると、男二人の間を通って帰ろうとした。
が、それは男の一人があたしの腕を掴んで失敗に終わった。

「無視するなんて酷いなぁ。せめて名前だけでも聞かせてよ、綺麗な彼女。」

うーん、こいつらぶっとばしてもいいけど、秋子さんに迷惑かけたくないし、ここは無理やり逃げよ誰が…
…あれ、今…

「女……」

あ。ベンチの雪の塊が動いてる。

「だとぉぉぉ!訂正しろこの引き立て役A・B共がぁぁぁぁぁ!!」

「「うおおおお!?!?!?!?」」
「キャッ!」
いきなり男の声が聞こえ、塊が動いたと思うと、中から男が飛び出してきた。
突然の出来事に思わず尻餅をつくあたし。

「ハァ、ハァ、ハァ………あれ?夢?
なんだ。てっきりまた男にナンパされたと思ったぞ。」

逆光で顔はよく見えないが、間違いない。コイツは…

「な、な、なんだぁ!てめぇ!」
「なにぃ!また同じパターンで通すというのか!仏の顔も三度までなのに!」

コイツは、アホだ!

「まあいい。ちょうどよかった。そこの二人。ここら辺に女の子見なかった?
俺を迎えに来てるはずなんだけど。」

その瞬間、あたしは凍りついた。
コレを迎えに行っていたのか、あたしは!

「知るか!てめぇはとっととどっか行け!ったく、せっかく上手くいってたのによ!
…ちっ!白けた。行こうぜ。」
もともとあたしにあまり興味が無かったのか、ナンパ男達は立ち去っていった。
「ん?ってなんだいるじゃん。君、俺の迎え?」
「えっ…あ、はい。」
アホ男に突然話しかけられ、凍り付いていたあたしは返事が少し曖昧になった。
「いやあ、すまんね。一時に待ち合わせしてたんだけど、相手来ないからそのまま眠っちゃってさ。探したんなら謝るよ。」
そう言って男は手を差し伸べる。
とりあえずその手に捕まって立ち上がった。
この雪の中を寝ていただなんて、やっぱアホだ。アホにしか出来ん芸当ね。どんな顔してるのやら。

そしてあたしはその顔を見てしまった。

その瞬間。





今までの不幸は跡形も無く消え去ってしまった。

今まで積み重なったそれを十分消し去るほどの『幸福』に出会ってしまった。

そう、不覚にも、あたしはこの人に。


一目惚れというやつをしてしまった。






「ああそうそう、名前言ってなかったな。俺は……あれ?どうした?聞こえてるか?おーい。」
ふと気が付くとその男の顔が目の前に来ていた。
とっさの事に後ろに下がる。
恐らく顔も赤いに違いない。
「おお、気が付いた。」
「え、えーと。ごめん。その、いきなりの事に驚いちゃったから…」

それにしてもこの男、どこかで見たような…とても懐かしい気がする。
初めて会うはずなのに。
でもこのあたしが一目惚れしちゃうなんて、友達には話せないな。
兄さんよりもかっこ悪いはずなのに。
……まあ考えても仕方ない。とりあえず、何か飲み物でも買ってあげましょうか。
なゆちゃんのせいとはいえ、待たせちゃったから相手も怒ってる筈だしね。

「あーっと……何がいい?遅れたお詫びに何か奢るわ。」
「お、いいのか?そんじゃコーヒー。ブラックで。」
「うん。分かった。」
あと、この気持ちも抑えなきゃ、ね。





「どうぞ。」
「サンキュ。」
男はコーヒーを受け取ると、ちびちび飲み始めた。
「むう、五臓六腑に染み渡るとはこの事か…」
「ところで、お互い自己紹介してないよね?あたしの名前は、相沢葉月はづき。よろしくね。」

あたしが名乗った瞬間、彼の顔が変わった。
まるでいたずらを考え付いた子供みたいな顔だ。

「そうか、相沢か……な、俺の名前、分かるか?当てたらごほうびをあげようではないか。」
はい?名前を当ててみろ?…まいっか。ゲームよね。
「…太郎。」
「そんな安直な名前じゃない。」
全国の太郎さん、ごめんね。
「花子。」
「俺は男だ!」
そういえば、女と間違えられて怒ってたっけか。
「ごめんごめん。それじゃあ…」

……今思えば、お兄ちゃんに似てるな。顔とか性格とか雰囲気が。髪と瞳の色が違うけど。
お兄ちゃんはあたしと同じ相沢家だったから、銀髪碧眼だったし。
ちなみにあたしも相沢家だから、銀髪に碧眼なんだけどね。
外見は長い髪を先のほうでまとめていて、背は中くらい、スタイルは…多分倉田先輩以上、川澄先輩以下ってとこかな?

まあとりあえず、言うだけならタダだからいっか。



「相沢祐一。」




まあ、こんな偶然があったら、ほんと奇跡、だけどね。
「…ま、まさかホントに当てるとは……さ、サイコメトラーか!?」


「えっ?」


その時、世界が、時間が。


「お……にい………ちゃん?」


止まった。









相沢祐一。

七年前にお父さんとお母さんと一緒にモンスター退治に行ったっきり行方不明になっていた、もう一人の双子の兄。
その時の状況を聞く限りでは、もう二度と会えないと思っていた、最愛の男性ひと

それが今、目の前にいる。

「お兄ちゃん…なの?」

あたしはもう一度その言葉を繰り返した。

「お兄ちゃんだよね?そうでしょ?あたしの事覚えてないの?」
あまりの衝撃的な出来事に落ち着いてはいられなかった。
お兄ちゃんは少し悲しそうな、困惑した顔を見せながらも、口を開いた。

「ごめん。俺は君に『始めまして』しか言えない。」

「………えっ?」
「その、記憶が無いんだ。七年前から。悪い。」
その言葉を聞いて、あたしは力を無くしてその場に座り込んだ。
目からは自然と涙が零れる。

泣いた理由は分かっていた。理由は二つ。
一つは、あたしの事、皆の事を覚えていてくれなかった悲しさから。
『君』って言葉が口から出た時には、辛かった。

でも。

もう一つは、最愛の人が生きていてくれた事に対する喜びから。

本当に、よかった。

最高の結果ベストとは言わないけど、それでもあたしは。



最低限の喜びベターがあればそれでいい。





あたしは立ち上がり、『相沢祐一』に抱きついた。
彼は困惑していたが、それでも構わず抱きしめる。



もう、離したくないから。




「あの〜、葉月さんや…」
「いいじゃんいいじゃん♪さ、中央ギルドへれっつらごぅよ!」

あの後お兄ちゃんに抱きついて気持ちも治まったあたしは、現在お兄ちゃんを中央ギルドへ案内している最中だ。
まだ彼の事をお兄ちゃんと呼んでいるのは、今からでもいいから兄妹でいて欲しいから。
ホントは恋人ならもっといいけどね。

「周りの視線がすっごい事になってますけど…」
「そんなもの『あうとおぶがんちゅー』しちゃえば平気よ♪」




お兄ちゃんがここまで動揺している理由。
それは抱きついた際に、何とかあたしを泣き止ませようとしたお兄ちゃんは、とっさにこう言った。

「今日は出来る限り、お前の言う事聞いてやるから、な?だからすまん、悪かった。」




それで今、お兄ちゃんの腕にくっついて歩いてるってわけ。

ごほうびって事で無理やり納得させた。

「男に二言は無いって言葉、誰が考えたんだろうな?」
「そんな事気にしてたらまこと武士もののふにはなれないぞ〜。」
「俺はそんなものにならなくてもいい。今はオンリーワンになりたい。」
「照れるな照れるな。こんな美少女と腕を組めて光栄に思え♪」

まあ他のみんなの方がレベル高いけどね。
それでもあたし結構モテるんよ。




「ほい到着!」
「…ここか。案内サンキュ。でも着いたからもういいだろ?」
お兄ちゃん、けっこう疲れてますな。でも、もう少しこのままでいたいな。
「フッフッフ…このまま直進。観念しろぃ!」
「え゛。」
それに乙女の涙の代金はこんなもんじゃ済まさないっての。

中央ギルドには入口が二つある。
一つはあたし達が住んでいる所への入口である裏口。普段はここから出入りする。
もう一つは中央ギルドの正面玄関。こっちは客が出入りするところね。
で、今から入るのは正面玄関。つまり最も人の目に付く所ね。
こんな所でカップル(他の人にはそう見えるでしょうね。)が入ればどうなるか…徳と味わえ!

「たっだいま〜〜!秋子さ〜ん、ミッションコンプリート〜!」
あたしの声がまだ客のいる店内に響き渡る。
とたんに客の皆さんはこちらを向き、好奇の視線を投げかけてくる。一部の人達は嫉妬の視線だった。
お兄ちゃんは少し顔を引きつらせ、冷や汗をかいていた。
客の視線とお兄ちゃんの反応で遊んでいると、秋子さんがこちらに話しかけてきた。

「あらあら葉月ちゃん、お帰りなさい。その人が……祐一さん?」
「うん、そうよ」
ここでやっとお兄ちゃんの腕を開放してやる。
すると何故かお兄ちゃんは名残惜しそうにしていた。
「葉月ちゃん、ありがとうね。それじゃ私は祐一さんとお話があるから、受付お願いできる?
  その分、お礼はするから、ね?」
「う゛。あゆちゃんとなゆちゃんは?」
「あゆちゃんはまだ買い物。名雪は…ちょっと今は寝てるから…」
哀れ、なゆちゃん。貴方の死はあたしの教訓として生き続けるからね。
「…分かりました。それじゃあちょっくら仕事しますね。
  お兄ちゃん、また後でね!まだ話したい事いっぱいあるんだから!」

「すみませーん!仕事お願いできますか!」
「ハーイ!ただ今行きます!」

あたしはカウンターに入り、受付の仕事を始める。


これからまだ、時間はある。
焦らずに、じっくり行こう。



「お待たせ致しました。では、こちらの用紙に必要事項をお書き願いますね。」







あとがけ。

葉月 「お茶の間のみんな!元気ですかー!あたしは婆麗婆麗ばりばり仏血義理ぶっちぎりに元気さー!
        ってことで今回のゲストは〜…ファンタジーっぽい戦闘が全然書けない駄目作者、bou!」

bou 「どうも、スランプ気味…って、何故私とお前の立場逆転していんだ!しかもすっごくハイだな。」

葉月 「さてさて、今回のあとがけ。はあたしこと相沢葉月特集!」

bou 「このSSでのオリキャラにして私がツッコミに回らなければいけない奴です。」

葉月 「身体の特徴は本文に書いたとおり。性格は、ハイテンションな祐一…かな?
        祐一の双子の妹、現役の学生で戦闘能力はけっこう高いほうだよ。タイプは魔術師。」

bou 「彼女には後で色々と活躍してもらいます。なにせ第二の主人公だから。」

葉月 「どっかの有名なSSのパクリみたいね。」

bou 「う゛…祐一君が強いから、こんな事になるんだ。君はなかなか強いぐらいにしようかな。」

葉月 「ちなみにあたしの野望はこのSS内であたしとお兄ちゃんのラブラブになること!
        兄妹同士?愛があれば何でも乗り越えられるわ!じゃあみんな、」

bou 「(激しく引きつつ激しくスルー)ま、また第七話まで、それでは。」




bou 「本編と性格違うんじゃ…」





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