「ディバイン……」


狙いを定める。一体にかける時間を最小限に留めるために一撃でしとめなければいけない。


「バスター!!」


レイジングハートの先から薄茜色の光芒が放射され、二体のラダム獣が撃ち抜かれる。


アースラにに向かってきた敵は順調にその数を減らしている。これだけの戦力があればそうそう抜かれることはない。


問題は向こうだ。ブレードの救助に向かったのは二人だけであるのに対し、ラダムの数は相当なものだ。


(クロノ君、シグナムさん……!)


彼の救出に向かった仲間たちに呼びかけるようになのはは彼らの無事を祈った。











SorrowBrade第五話「Trust」―後編―












「ぐぅっ!」


四肢の自由を奪われたこの状況では、己の身に襲い掛かる爪や牙を甘んじて受けるしかない。


だが、身体的な被害はこの際構って等いられない。どうでもいいというわけではないが、今はリミットが近いことの方が


問題だ。制限時間が近いということを示す信号が終始響きっぱなしになっている。


残り時間はもう五分を切っている。それまでに敵を片付けてテックセットを解除しなければ、自分は暴虐に荒れ狂う魔人となる。


そうなることだけは絶対に受け入れるわけにはいかない。自分には己の命よりも優先すべき使命がある。


それを為すために、ここで終わることは許されない。


だが、今の自分にはどうすることもできない。援軍も当てにできない以上、現状を打破できる可能性はほぼ零に近い。


(まだだ。まだ、こんなところで俺は……!)


とその時、突然眼前の空間が揺らぎ一度に二人が辛うじて通れるくらいの穴が開いた。


間髪入れずそこから飛び出してきた二つの陰が誰であるか、すぐに判別がついた。


「遅れてすまない。今助ける……!」


救いの手の一方―――クロノが魔法で自分を縛り付けている粘液状の物質を凍らせ、もう一方がそれを斬り砕く。


彼女が自分を助けに来たことはにわかに信じがたいがそのような問答をしている時間も惜しい。


時間が充分に残っていれば各個撃破も可能だが、今回は一度に全て葬り去るほかない。ならば……


「下がっていろ! ボルテッカでまとめてかたをつける!」


返事を聞くこともなく、肩の装甲を展開させる。


エネルギーを収束させる時間がやけに長く感じる。一瞬というのはこれほど長いものだっただろうか。



「おおおおお!! ボルテッカァァァァァァ!!!」




反物質の光が例外なくラダム獣を飲み込み、その全てを消滅させていく。


「ハァ…ハァ…」


最早喋る事もかなわぬほど力を使い果たしている。せっかく敵を倒せたというのにこれでは戻ることができない。


「し…しろ……! ……スラに……帰還…!」


自分に向けて話しかけているのは恐らくクロノだろう。内容は聞き取れなかったが、辛うじてわかったのは帰還という言葉だった。


二人に引っ張られるような形で、未だ存在している穴に飛び込む。


信じられないことに、一瞬後には何故かブリッジにいた。


相変わらず体からは危険信号が鳴り響いているが、どうにか間に合ったらしい。すぐさまテックセットを解除する。


同時に、視界が暗くなり意識が闇に飲まれた。


その直前誰かが何か叫んでいたが、それが誰なのか、何を言っていたのかはわからなかった。














「……どうなのだ。この男は」


余程の疲労とダメージによるものか、それとも別の要因によるものか。それはわからないが未だ深い眠りにある彼を見遣りつつ


シグナムは先ほどから付きっきりで彼の治療と診断を行っているシャマルに尋ねた。


「とりあえずは問題ないわ。怪我はひどかったけど、幸い命に関わるようなものはなかったし」


「そうか……で、いつごろ目覚めるかわかるか?」


その問いに関してはシャマルは首を横に振った。


「それはわからないわ。多分半日もすれば目を覚ますとは思うけど、はっきりとは言えないわね」


そこでふと気づいた。部屋中を見回しても、もう一人っているはずの者の姿がない。


「ところで、テスタロッサの姿が見えないが?」


「彼女なら容態が安定したから部屋に戻したのよ。もう心配はいらないと思うわ」


「それならば問題はない。ではその男が目を覚ました時に連絡をくれ」


「はいはい。それと、一応彼女の方のお見舞いにも行ってあげて頂戴ね」


「わかっている。では後でな」


「ええ」


部屋を出て行くシグナムを見送りながら、シャマルは先の戦いのことを思い返していた。


(あれだけ許せないとか認められないとか言っていたのに……)


何故彼が見捨てるような真似をしたのか、せざるをえなかったのかを知った途端自分から救出に志願したくらいだ。


あの時はそれどころではなかったので顔には出さなかったが、多少なりとも自分は驚きを感じていた。


だが、同時にそれがシグナムらしいとも納得もしていた。


私情にとらわれずに行動できること、それがが彼女の美徳の一つだとシャマルは考えている。


勿論面と向かって彼女自身に言うつもりはないけれど、ヴィータ達も同様の想いを抱いていることだろう。


だからこそ、シグナムを自分達の将として認めているのだ。


(あなたが聞いたら、きっとそんなことはないとか言って否定するんでしょうけど)


口元に笑みを浮かべながらシャマルは再び自分の仕事へと向き直った。














「……これが現状での襲撃を受けた箇所とその被害状況の一覧よ」


その声と同時に、モニターにラダムが出現した箇所の地名とその光景が映し出される。


いずれも破壊による傷跡が痛々しいが、それ以上に目を引くものが他にあった。


「この植物のようなものについての調査は?」


その問いに対して、モニターの向こうにいる女性は首を横に振る。


「全くと言っていいほど進んでないというのが正直なところね。


今のところは、これがあのラダムとかいう生命体が変化したものだということしかわかっていないわ。


これが植物に似た何かであることから、本局ではラダム樹と呼称する事にしたというだけ」


「そう……」


データを見た限りではこのラダム樹による被害はないとされている。


しかし、これがあの怪物が変容したものであるならば必ず何かしらの意図があるはずだ。


それが何か今の時点で推し量れるものではないが、自分たちにとってよくないことだろうというのは想像に難くない。


「また何かわかったら連絡をお願い。一応こちらのデータも送るわ」


「ありがたく使わせてもらうわ。それで、例の彼の容態は? かなり危なかったと聞いたけど」


「落ち着いているわ。今はまだ眠っているけれど」


「そっか……まあ、何にしろ無事なら一安心ってところか。それじゃあまたね」


「ええ」


通信が切れる。レティからもらった情報を合わせてもラダムについての情報はほとんどないに等しい。


彼――Dボゥイが目的なのかと思っていたが、こちらが襲撃を受けている間に別の場所でもラダムは出現している。


しかも、同時に複数の場所が襲撃されているのだからこちらが本命と取れなくもない。


ただ、その一部は先ほどのラダム樹という植物のようなものに変容したというが


こちらは周辺地域で生活ができなくなる以外の被害はない。


どちらも本命かもしれないし、あるいはそうでないかもしれない。


それに、テッカマンについては自分たちが遭遇したもの以外存在は確認されていないが既に二体出てきている。


つまり、その他にもいるという可能性があるということだ。


結局のところわかったことは、現時点では彼らの行動目的、規模ともに殆どわからないということだけ。


(せめてもう少し彼らについてわかることがあればいいんだけど……)


唯一の情報源であるDボゥイは未だ眠りについたままだ。無理に起こすわけにもいかない。


「わからないものはわからないし、ひとまず一休みしましょうか」


焦っても良い結果は出ない。時には体を休めることも大切なことだ。


取りあえずお茶でも飲んで一服しよう。どうせまたすぐに忙しくなるのだから。














ミッドチルダはクラナガンにある時空管理局地上本部。


その一室で管理局の制服に身を包んだ二人の男が、窓の向こうに見える光景を苦虫を噛み潰したような面持ちで見つめていた。


一人は一般の局員用の制服であったが、もう一人が着ているのは将校用のそれである。


――――ゼスト・グランガイツ、そしてレジアス・ゲイズ。


立場は全く違いながらも志を一にする彼らは親友と呼べる間柄であった。


「本当に実行に移すつもりか? この計画は……」


だが、今のゼストには僅かながらレジアスに対しての疑念があった。


自分とて、彼の計画がラダムという脅威に対して必要なものであることはわかっている。


しかし、仮に可能だとしてもあれを開発運用するということは……


「規律に違反しているとでも言いたいのか? ふん、このような事態になってはそのようなことは瑣末に過ぎん。


実際に奴等と対峙したお前は感じたはずだ。このままでは我々は勝てぬとな」


当の本人はだからどうしたと言わんばかりの態度である。


死ねば法も何も関係ない。そうなってからでは遅いのだ。


故に、必要とあらばそれを破ることも厭わない。それがレジアス・ゲイズという男なのだとわかった上での諫言である。


実のところ、ゼストも彼の意見にはどちらかといえば賛成の考えである。


ラダムと交戦して感じたのは、非殺傷設定を解除したところで魔法だけでは戦力不足だということだ。


だがそれは質量兵器を一切使用しないという管理局の理念に反するものであり、それゆえの先ほどの言葉であったのだ。


「俺自身はお前が間違っているとは思わん。確かにあのラダムという生命体には純然たる魔力による攻撃だけでは限界があると


実際に現場の局員ほぼ全てが感じたはずだろうしな。だが、だからといって上が許すはずもあるまい」


「今はな。だが、そのうち奴等も考えを改めることになる。そうでなければこの戦いに生き残ることなどできん。


そのために、お前に一つ頼みたいことがある」


「頼み、だと?」


何を頼むというのだろうか。この友のように将校でもない階級でしかない自分にできる事等たかが知れているが。


「ああ、それは……」














――――――夢を見ていた。


どのような内容だったのかまでは思い出せないが、それがひどく尊いものであったように思う。


気づくと、医務室のベッドに寝かされていた。どうやら気を失った後にここに運び込まれたらしい。


頭ははっきりとしないが、ぎりぎりで助かったという記憶だけは残っている。


自分が目覚めた気配に気づいてか、それまで机に向かっていたシャマルがこちらを向く。


「目が覚めたのね。気分はどうですか?」


「問題ない。それよりも、俺はどのくらい気を失っていたんだ?」


「五時間くらいかしら。予想していたよりも随分早くて驚いたわ」


五時間、それだけの間眠っていたのはやはり最後のボルテッカが原因だろう。


戦闘での負傷や疲労など、他にも要因はあるが決め手となったのはそれに違いない。


ただでさえ体力を大量に消費するのに、あれだけ疲弊した状態で放てば無理もない。


「皆心配してましたよ。はやてちゃん達だけじゃなくてシグナムまであなたの様子を見に来てたくらいですし」


「あいつが……?」


彼女は自分のことを良くは思っていないはずだ。現に殴られたときに彼女自身がそう言っていた。


一体何があってそんなことをしたのか皆目見当もつかない。


それよりも、今はもう一つ気にかかることがある。


「俺のことなんかよりも、あいつはどうなった? 無事なのか?」


「あいつ? ……ああ、フェイトさんならもう大丈夫よ。ついさっき彼女も目を覚ましたわ」


「そうか」


彼女が助かったことに安堵する。二度と目覚めないかもしれなかったのだ。


後で一度見舞いに行くことにしよう。


「あ、そうだわ。ちょっと待ってて下さいね」


言うなり、シャマルは目を閉じて黙り込んでしまう。


待つこと数分、目を開き


「シグナムから伝言よ。話したいことがあるから落ち着いたら食堂まで来て欲しいって」


一瞬何を言っているのか理解できなかったが、先ほどの様子から見て恐らく念話が行われたということだろう。


魔導師の間では意識の伝達による会話が出来ると聞かされていたが、要はテレパシーのようなものなのかもしれない。


「わかった。今から行くと伝えてくれ……それから」


「? なんでしょうか?」


「今までの怪我の治療の礼を言うのを忘れていた。すまない」


そんなことを言われると思っていなかったのか、彼女は一瞬きょとんとした顔になったがすぐに微笑んで


「どういたしまして。それが私のお仕事ですから」


と返してきた。すぐその後に「でもあまり無茶はしちゃだめですよ。特に今回みたいなのは」と釘を刺されたが。














伝えられた通り食堂に来てみると、一人窓の外を見つめているシグナムの姿があった。


気づいていないはずはないだろうが、彼女はこちらに振り返ることはしない。


「身体の調子はどうだ?」


「問題ない。あんた達が俺を助けてくれたことは、何となくだが記憶にある。すまなかったな」


「別に礼を言われるような真似をした覚えはない。共に戦う仲間を助けるのは当然のことだ」


そこでこちらを向いて「そうだろう?」と目で問いかけてくる。頷いてこちらも問いかける。


「俺の身体のことをはやてから聞いたらしいな」


「ああ。何故早く言わない。そうすればあのような危険な目にもあわずに済んだだろうに」


「言い訳をするつもりはなかった。それに、本当のことを言ったところであの時は信じちゃくれなかっただろう」


確かになと真顔で頷かれる。さも当然のようにされるとそれはそれで癪だ。


「だから、殴られても仕方なかったしな」


なので、お返しとばかりに多少皮肉を言わせてもらう。


「む……それについてはすまなかった。謝罪させてもらおう」


今度は素直に頭を下げられた。なんというか、良くも悪くも正直な性格らしい。


冗談が通じそうにない相手だなと心の中で苦笑しつつ、本題に入る。


「別に気にしちゃいない。…それよりも、あんたに聞きたいことがある」


こちらぬ雰囲気が真剣なものになったことを察してか、彼女もそれに合わせて面持ちが変わる。


「なんだ?」


「もしあの時三十分を超えていたなら、あんたはどうしていた?」


それが知りたかった。あそこで彼女達が来るのがもう少し遅かったなら、自分の意識はテックシステムに飲まれていただろう。


その時は自分を殺せとなのは達には伝えたが、あの少女達にそれを求めるのは酷だ。


それだからこそ、この目の前の女性に問うてみたかったのだ。


自分には良くわからない概念だが、彼女はシャマル達「ベルカの騎士」とやらの将だと聞いた。


将、つまりリーダー的存在である彼女ならばどうしていたかが自分は知りたい。


そんな感情を知ってか知らずか、彼女は真っ直ぐにこちらを見返してはっきりと言い放った。


「奴等諸共斬っただろう。望まぬ破壊と殺戮をさせるくらいなら、せめて我が剣を以て終わりにしてやるつもりだった」


「そうか……」


こちらの期待していた通りの答えだった。もし時間が過ぎてしまえば、自分は破壊の権化となる。


そうなれば、自分の為に犠牲が増える前に止めてもらいたかった。


自分を殺せと伝えたのもその為だ。


彼女ならば、その時が来たとしても任せられる。躊躇せずに終わらせてくれるだろうとそんな気がした。


「あんたならそう答えるだろうと思っていた」


「当然だ。いざというときに私情に流されていては将など務まらんのでな。」


どちらともなく、互いに笑みを返す。


「ところで、フェイトの見舞いにはもう行ったのか?」


「先程済ませて来た。怪我したのは自分だというのに、随分とお前のことを気にかけていたぞ」


早く行ってやれと促されて食堂を後にする。


彼女と話したおかげか、気がつけば胸に溜め込んでいたものが軽くなったようだった。














(私ならそう言うと思っていた、か……)


Dボゥイが食堂を出て行った後、シグナムは一人彼の言葉を思い返していた。


その言葉は解釈次第では彼女を冷徹だと思っていたというようにもとれる。


もちろん、彼はシグナムという人物が必要な時に判断を誤るようなことはしないと考えて言ったのだろうが。


多少は信頼されていると考えてもよいのだろうかと思いつつ、先ほどのように窓の外を見る。


星を見ることが出来ないのが少々残念だった。今のような気持ちならば、普段よりも一層美しく見えただろうに。














その頃Dボゥイは……


「……部屋がどこにあるのか聞いておくべきだったな」


道に迷っていた。


訪れたことがあるのは、ブリッジを除けば自分にあてがわれた個室と食堂、医務室くらいのものだ。


なのは達が自分の部屋に来ることはあっても、自分から彼女達をたずねた事は無い。


仕方なく虱潰しに当たっていこうかと考えていたところで、後ろから声を掛けられた。


「Dボゥイじゃないか。こんなところに突っ立ってどうしたんだい?」


振り返ると、そこには人の姿のザフィーラと同じく獣の耳を生やした女性がいた。


フェイトが部屋に来た時に一緒にいた女性で、名前は確か……


「アルフ、だったか。フェイトの見舞いに行こうと思ったんだが、場所がわからなくてな」


迷ったということを伝えると、彼女はそれならという表情を浮かべた。


「あたしに着いて来なよ。案内してやるさね」


「そうか、すまないな」


歩き出した彼女の後を着いていく


。 ふと、気になったことがあった。普通に話してくれて入るが、彼女はこの前のことをどう思っているのだろうか。


「一つ聞きたいことがあるんだが…」


「何だい?」


「あんたは俺を責めないのか?」


彼女の歩みが止まる。


こちらに振り返ったまま黙っていたが、暫くして


「確かに、最初はフェイトを見捨てたあんたは許せなかった。


けど、あんたにその怒りをぶつけたところでフェイトが悲しむだけ。そんなのはあたしは嫌だし、


それにあんたにも理由があったっていうのも聞いてるからね。


もう気にしちゃいないさ」


「……わかった。ありがとう」


「それはあたしよりもフェイトに言ってやんな。あの子、随分あんたのことを心配してたんだからね」


だが彼女にも礼を言いたかった。あのようなことがあって尚、自分に普通に接してくれていることに。


「それにしても、随分とあいつのことを気に掛けているんだな」


「そりゃそうさ、なんたってフェイトはあたしの一番大事なものなんだからね」


満面の笑みを浮かべて彼女は誇らしげにそう言った。


「と、ここがそうだよ。早く行ってやんな」


首を動かして、たどり着いた扉の前で早く入れと促してくる。彼女は入らないのだろうか。


「あんたは入らないのか?」

「こういうのは二人だけの方がいいんじゃないかと思ってね。それじゃあたしは適当にぶらついてくるから」


そう言ってどこかへ行ってしまった。彼女なりに気を遣ってくれたのだろう。


別にアルフがいても困るわけではなかったが、ここは素直にその厚意に甘えておくことにする。


扉を叩くと、中から誰ですかという声が聞こえてきた。返事が返ってきたことに改めて無事でよかったと思う。


扉を開けて中に入る。中にはベッドに横になっているフェイト以外誰もいなかった。


「あ……」


驚いた顔をしている彼女の近くまで歩いていき、そのまま頭を下げる。


「ど、どうしたんですか?」


「すまなかった」


「え……?」


「あの時、俺はお前を見捨てるような形で逃げた。だから、すまなかった」


頭は下げたままもう一度謝る。彼女が許してくれようとくれまいと、一度しっかり謝らなければ気が済まなかった。


「べ、別に気にしてませんから。早く顔を上げてください」


「だが……」


「取りあえず、早く顔を上げてください。でないと、ちゃんとお話できませんから」


言われたまま頭を上げて彼女の次の言葉を待つ。どのようなことを言われても受け止めるつもりでいた。


もとより、そのつもりがあったからここにきたのだから。


「私が眠っている間のことはなのは達から聞きました」


「テックシステムについてもか?」


「はい。だから、この前のことも私は気にしてないですから」


そのお話はこれでおしまいですと言ってフェイトは微笑んだ。


優しい子だ、と素直に感じた。むしろ彼女からはこちらを心配しているような印象まで受ける。


「それよりも、今度からはちゃんと皆に相談してくださいね。でないと、あなたが困っているときに


手伝ってあげられませんから。あんまり無茶もしたら駄目ですよ?」


「ああ」


自然と笑みが浮かぶ。こんなふうに会話が出来たのは久しぶりな気がする。


この少女と他愛のない会話を交わす何気ない時間が、不思議と心地よかった。










後書き


ごめんなさい。読んでくださっている方、非常にお待たせして本当にごめんなさい。

いろいろと実生活が大変だったため、予想以上に間が空いてしまいましたが何とかお届けできました。。

時間がかかったからといって質があがった訳でもないことはご了承ください(爆)。

以下数行に渡って言い訳(ぇ

結局相棒の話までは行きませんでした。しかも、作者自身入れるつもりは全くなかった親父二人組み。

名前も出しちゃいました。まあ、隠したからどうだというわけでもないので別に問題はないんですけど。

閣下の方はちょい強硬すぎなくもないかなと思いますが、原作でも強硬派だったんでこれでOKかなと。

なんにせよ、この人が強引に計画を進めないとテッカマンをアレしてしまうあの武器を作る流れが出来ないので。

友人の方も、現場サイドで経験しているため反対はしないだろうと思いこういった展開にしました。

毎回のことながら全体的に端折った感が否めませんがそこはご容赦を。

次回は近いうちにお届けできればと思っています。

とりあえずはやいとこかませ一号編を終わらせなければ。



それではこの続きは六話で。感想や誤字脱字の報告などの報告お待ちしています。



ミッドチルダの発電施設がラダムに襲撃されたことを知ったDボゥイ。

意図が読めないまま奪還に向かった彼が見たものとは……。

次回、SorrowBrade第六話「Crystal break」 仮面の下の涙を拭え








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