魔法少女リリカルなのはStS〜ストラグル・ストライカー〜

第一話「氷界の死闘」







強烈な吹雪が吹き荒れる極寒の世界。

次元世界においても有数の寒さを誇るこの世界は、一年を通してほぼ氷に覆われ、気温も零度を超える事は無い。

人が呼吸する上で必要な大気は辛うじて保たれているものの、酸素は薄く、どんな場所であっても標高の高い山と同じ。

地面は氷と岩だけで、草木は一切存在しない。

そんな、一面雪と氷、そして岩だけの世界に佇む人間が居た。

「…………………………」

人間、黒を基調にした銀と灰色混ざるロングコートにも似た服を纏い、襟で口元を完全に隠し、顔には大きめのバイザーをしている。

襟の隙間から零れる息は白く、周囲の気温が氷点下を示しているのを表している。

しかし彼の黒い髪も皮膚も、そして服も凍ってはいない。

この世界は平均気温が-45.3℃と、水分は一瞬で凍結し、眼球だって凍ってしまう。

そんな世界に立っていながら、彼は平然とそこに立っていた。

見る人間が見れば、彼の周囲に薄い膜のような物が張られているのが見えるだろう。

彼が着ている衣服、魔力で生成されたバリアジャケットが、この極寒の世界の風から、彼を守っていた。

≪マスター、九時の方角、接近する熱源4≫

「……追いつかれたか…」

彼…声からしてまだ若い青年であろう、その両手に持つ異質な形の武器…とある世界でトンファーと呼ばれるそれが、

側面にある宝玉を光らせて言葉を発した。

言葉を発したのは左手のトンファー。

それに青年は驚かずに、その言葉の示す方向を睨む。

吹雪が吹き荒れる雪原の向こうに、微かに見える動く影。

「タイプは?」

≪前回、前々回と同型と推測≫

「……数が少ないことが救いか…」

与えられた情報に白い息を吐きつつ呟き、両手に持ったトンファーを軽く振る。

すると、内臓されていたリボルバー型のマガジンがスイングアウトして、弾倉がむき出しになる。

弾倉のシリンダー内には、それぞれ右に二つ、左に一つの弾丸…否、カートリッジが装填されていた。

シリンダーの数が左右それぞれ5、合計10であることを考えると、カートリッジの数は少ない。

「残数3…か。一体に一発じゃ倒しきれないな…」

≪マイスター、右を≫

左のトンファーが発する音声とは異なる音声が、右のトンファーから発せられた。

その言葉に従い右の方を見ると、そこには断崖と言っても過言ではない氷と岩の壁。

「なるほど…誘い込むぞ。ノマド、グラン!」

≪ja≫・≪yes≫

弾倉をガキンと音を立てて戻し、走り出す青年。

足場の悪い雪と氷の上を普通の地面と変わらずに走破する彼を追うのは、先ほどよりも確りと姿が見え始めた影。

全部で四つの球体…と言うより、カプセル型と言った方が馴染む形のそれが、彼を追いかけていた。

地面から少しだけ浮いているのを見ると、どうやらホバー移動に似た推進方法を持っているらしい。

コードのような物を機体から生やしたそれは、紛れも無く機械で出来たロボットだった。

「アレが本局から連絡のあったガジェットとかいう奴なら、狙いは間違いなく遺失物だな」

≪情報の一致は95%。恐らく雪上仕様と思われます≫

左のトンファー…いや、トンファーの形をしたインテリジェントデバイスの情報に、青年は後ろを軽く確認しつつ、目的の断崖目指し走る。

生憎、彼の魔導師としてのランクは高くない。

空を飛べないので、管理局の陸士をやっており、ランクは陸戦C。

攻撃力には自身はあるものの、劣悪な環境と連日の戦闘から既に魔力は残り少ない。

頼みの綱のカートリッジも、残り3…。

しかも敵は、魔法攻撃を阻害する能力を持っている。

彼にとって、まさに絶対絶命にも近い状況。

それでも彼は、諦めていない。

「応援が来るまで、それまで逃げ切れば勝ちだ。グラン!」

≪Yes.straight dash!≫

グランという呼びかけに、左のデバイスが答えた。

グランが発動させた魔法により、青年の履いているブーツの踵が弾けた音を立て、彼の身体を加速させる。

魔力を推進剤として爆発させ、踵から放出して地面を滑るように加速する魔法。

追ってくる敵のように地面から僅かに浮いて進むが、速度は段違いに速い。

それを確認したガジェットと呼ばれる敵は、機体正面にある黄色いセンサーのような場所から青い光弾を発射してきた。

周囲に着弾して雪や氷、岩の欠片を巻き上げる光弾。

それを低空ダッシュで避けつつ、引き離そうとする青年。

青年が今使用している魔法には、大きく三つ弱点がある。

それは一直線にしか進めず、方向も多少左右にずらす程度。

そしてもう二つは…

≪マスター、前方にクレバスが多数≫

「何っ!?」

グランの報告に驚くも既に遅く。

青年は巨大なクレバスの上へと身を躍らせていた。

実にその幅6メートル。

深さは見ただけで足が竦むほどに深く、底は見えないほど。

そんなクレバスが、断崖まで延々と幾つも存在していた。

ストレイトダッシュの残る弱点…急には止まれず、また、地面が存在しないと滑れないということ。

「ちぃっ!!」

地面が無くなり、当然ダッシュが止まってしまう青年。

運良くスピードが出たまま突っ込んだので、その勢いを利用してクレバスの端へと飛び乗る。

そのまま立ち止まらず、断崖まで続くクレバスの波を、強化した脚力で端から端へと飛び越えていく。

「くそっ、空が飛べないのがここまで痛いとは…」

嘆きつつ、後ろを見れば、最初のクレバスで立ち止まっているガジェット達。

なんだ、渡れないのか…と少しだけ安心したのも束の間、ガジェット達はその体から伸びるコードと、

その先にあるアンカーを器用に使って、クレバスを越えてきているではないか。

「畜生、これだから非人型はッ!」

叫びつつも飛び越える足は止めない。

ガジェット達は、クレバスを越えながらもこちらに発砲してくる。

青年の跳ぶ周囲を掠める光弾が、足場にした氷や岩を砕き、破片を巻き上げる。

一発でも当たれば、クレバスの底へ落ちてしまうだろう。

そんなギリギリの状況に震える足に力を入れ、青年は跳ぶ。

やがて断崖へと辿り着いた彼は、直ぐにその断崖を右から左に凝視する。

どこか、どこかに入れる隙間があれば…。

その願いが届いたのか、やや左の方に、断崖を裂くような亀裂が入っていた。

大きさは横幅が3メートルもない細い亀裂だ。

「しめた、あそこなら…ッ」

走り出そうとした瞬間殺到してくる光弾。

直撃コースの弾を両手のトンファーで弾き、身を屈める。

周囲に着弾した光弾が派手に破片や雪を巻き上げる中、走り出す。

上手い具合に煙幕になってくれた雪の中を駆け抜け、亀裂へと身体を滑り込ませる。

「意外と広いな…」

亀裂の中は、亀裂の大きさと反比例してかなり広かった。

天井部分は亀裂が走って空が見える。

剥き出しの岩場と突き出した氷の塊の中を駆け抜け、入り口となった亀裂を振り返る。

まだ敵は亀裂まで達していない。

青年は近くの岩陰へと身体を隠し、左手に持つトンファー型デバイス…グランを構える。

グランの短い方の柄の先は銃口にようになっていて、それを亀裂の入り口へと向ける。

「グラン、カートリッジロード…」

≪Load Cartridge. ≫

グランに内臓されたリボルバー型のカートリッジシステムが起動し、カートリッジを撃発する。

それによって上乗せされた魔力がグランの銃口へと集束される。

「タイミング同期…」

集束し、濃い群青色の光を放つ弾丸が形成される。

≪5…4…3…2…≫

グランが接近する敵の距離を算出し、発射のタイミングを計る。

≪1…Target lock!≫

「クラスターバレット!」

≪Maximum Fire!≫

亀裂からガジェットが姿を現した瞬間、発射される群青色の光弾。

それを察知したガジェットが迎撃弾を放ち、両者の間で激突する。

爆発。

だが次の瞬間、青年の放った弾は無数の子弾を進行方向へとばら蒔いた。

まるで散弾のように広範囲にひろがった子弾はガジェットのみならず、周囲の岩や氷にも着弾する。

ガジェットは、その特殊な機能により大した傷は負っていない。

しかし、周囲はそうもいかなかった。

着弾の衝撃とヒビにより、亀裂にさらに亀裂が入り崩れだす周囲。

ビル15階に相当する高さの亀裂にも更に亀裂が入り、巨大な破片を振り撒きながら崩れ落ちる。

亀裂から顔を覗かせていたガジェットは、回避するよりも早く岩と氷に押し潰され、最後は崩落した破片の中で爆発した。

「何体倒したッ?」

≪索敵中……熱源3確認!≫

「ちぃッ」

グランの言葉を聞くや否や、その場を飛び退く。

今まで居た場所を青い光弾が破壊し、穴を穿つ。

崩落による煙が上がる中、光弾を発射してくる影。

「せめて二体、巻き込まれて欲しかったぜ…ッ」

壁を蹴り上がり、崩落した入り口を見ると、無傷なのが二体。

一体は崩落のダメージを負ったのか、一部が凹んでいた。

「やっぱりな、あいつ等の変な機能…AMFだったか、ありゃ物理攻撃には弱い」

魔法や魔力によって形成された攻撃などを阻害して解除してしまうガジェット達の厄介な機能。

だがその機能も、物体や魔法で発生したエネルギー…雷や炎、その他には弱いらしい。

「残り二発…やれるか!?」

自分自身に問い掛けた青年、そんな彼を発見して攻撃してくるガジェット。

青年は不安定な崖の出っ張りを足場に駆け上がり、何とか隙を探す。

追って来るのは二体。

やはり巻き込まれた一体はダメージがあるのか、動きが遅い。

機体のあちこちからスパークも見られる。

「あれなら通るか…?」

≪確立は保障できません≫

「だがそれに賭けないと駄目そうだ。分の悪い賭けだがな…ッ」

天井の亀裂近くまで飛び上がっていく青年。

そして天井近くまで来たところで、突き出した岩の下面を蹴り、強引に方向転換をかける。

下から攻撃してきている二体の遥か上を飛び越え、動きの鈍い最後尾に狙いを定める。

「喰らえ…!」

≪Demolish Storm!≫

上空で蹴りの体勢になる青年、グランから再び魔法の発動が行われ、彼の足先に円形の魔方陣が出現する。

ミッドチルダで発祥し、今や次元世界で幅広く使われる魔法体系、通称ミッド式。

その特徴たる円形の群青色の魔方陣が、青年の蹴りと共に半壊のガジェットに襲い掛かる。

「砕け散れぇぇぇぇッ!!!」

蹴りが当たった瞬間、魔方陣が輝き、それに組み込まれた魔法が発動。

―――Demolish Storm…それは、蹴りが当たった瞬間に足の先の方へと爆発する魔法―――

轟音を立てて爆発する魔方陣。

身体強化+落下のスピードによって強化された蹴りにより陥没した部分を襲った爆発に、ガジェットは耐えられずに爆発四散。

破片と爆炎が吹き荒れる中、地面に片膝をついて着地する。

「残り2!」

≪Burst Move!≫

主の考えを読み取ったインテリジェントデバイスのグランが、近距離加速魔法を発動させる。

立ち上がりつつ振り返った彼の身体が爆音と残像を残して加速し、次の瞬間にはようやく振り返ったガジェットの目の前に居た。

「スパイクセット!」

≪Jawohl!≫

グランではなく、右手に持つトンファー型デバイス…ノマドが答える。

グランの銃口と同じ場所には、柄と同じ太さの、杭のようなスパイク。

それが金属音を立てて伸び、青年が右腕を引絞る。

良く見れば、彼の足元には群青色の三角形の魔方陣。

「撃発!」

≪Explosion!≫

ガキンと撃鉄が落ちるような音を立ててカートリッジがロードされる。

ガジェットが反撃するよりも早く、右腕をノマドごと打ち出す。

「鋼の一撃ィィィッ!」

≪Eisen Angriff!!≫

右手に持つノマドの、スパイク部がガジェットの正面に激突。

火花を上げて装甲を凹ませ、貫く。

その瞬間、カートリッジにより上乗せされた魔力を、そのままガジェットの内部へと爆発させながら放出する。

流石の機能も、内部を直接抉り、穿つ魔力の爆発には効果が無い。

破壊の威力は内部を穿ち抜き、背面の装甲を吹き飛ばす。

ノマドの杭を引き抜き、その場で高く跳び上がる青年。

破壊したガジェットの後方にいた最後の一機が、破壊されたガジェットごと攻撃してきたからだ。

空中に跳ぶ事で避けた彼を追撃しようとするガジェット。

だが彼の方が早かった。

再び空中で右腕を引絞る。

≪Explosion!≫

撃発するカートリッジ。

「鋼のォォォ…ッ!!」

空中に在りながら筋肉を引絞り、最高の攻撃力を叩きだせる状態へと移す。

それは、気の遠くなるほどに積み重ねた、鍛練の結果。

「天撃ィィィィィイッ!!!!」

≪Eisen Angriff U!!≫

上空からの高速突撃。

ノマドの、スパイクとは反対側の柄の先からジェット推進の如く放出された魔力により爆発的な推進力を確保。

それにより一本の杭と化した彼らは、ガジェットが放った光弾ごとガジェットを穿った。

穴が、いや、真っ二つに穿たれたガジェットと、ガジェットを穿ってもまだ威力が衰えなかったその一撃に、

地面にクレーターが出来上がる。

爆発するガジェット。

その中で暫く膝をついていた青年は、自らが破壊したガジェット達を眺め、ゆっくりと亀裂の先へと歩き出した。

先ほどの戦闘で、バイザーの一部は砕け、身体もあちこち負傷している。

既に右腕は限界だ。

「カートリッジもこれで0…魔力ももう空っぽに近いな…」

≪ジャケットを生成するので限界です≫

身体を引き摺るように歩く彼の言葉に応えるのはグラン。

ノマドはアームドデバイスと呼ばれるデバイス故か、グランほど高度なAIは搭載されていない。

故に、彼の言葉に応えるのは大抵がグランだ。

「せめて、完全に空になる前に迎えが来て欲しいな…」

断崖を越え、反対側の亀裂へと辿り着く青年。

既に青年の体力・魔力共に限界にきていた。

それはそうだろう、この極寒の世界を、多数のガジェットに追われながら、三日も逃げていたのだから。

「とりあえず、どこかで身体を休めないと…」

亀裂から顔を出した彼の表情が固まった。

亀裂の先、再び広がる雪原に存在するのは、30体を越すガジェットの集団。

青年の存在を感知したのか、全機がこちらへと移動を始める。

亀裂の入り口で立ち尽くす。

最早、逃げる体力も戦う魔力も尽きた。

連中の狙いは分かっている。

三日前、この世界で発見された遺失物…ロストロギア、プロメテス・ルビー。

30度を越える温度内に存在するだけで、魔力を発生させるロストロギア。

発生する魔力は温度に比例し、高くなれば高くなるほどより大きな魔力を発生させる。

この世界の古代文明が作ったと言われているロストロギアで、製作目的は誰も知らない。

そんなロストロギアが永久氷壁の中から発見され、それの一時的な護衛を任されたのが彼の部隊だった。

本局の遺失物管理の人間が来るまでの、短い任務。

だが、その任務の、この世界で唯一の集落がある場所へと移動する途中で、あの集団の襲撃を受けた。

特定遺失物を探索または収集する自律機械、ここ最近でガジェットドローンと呼称されるようになった厄介な敵。

隊長を含め、部隊の全員で迎撃するも、AMFや劣悪な環境に為に部隊は壊滅寸前。

そこで、彼はロストロギアを持ってその場を逃げ出した。

全てのガジェットを惹き付けて…。

その後三日間、この氷の世界を逃げ続けた。

だがその逃亡も、ここまでとなってしまった。

「やれやれだ…そんなにこいつが欲しいのかよ…」

懐から取り出した、紅い楕円形の宝石。

これがあるから、奴らは執拗に彼を追いかけてくる。

何度か、深いクレバスにこれを捨てようかとも思った。

だがしなかった。

それは、自分が奴らに、そして自分自身に負けたと言う事になるから。

だから、彼は三日間逃げ続けた。

追手のガジェットを追いつかれる度に撃破し、既に満身創痍。

もう、一体だって倒せやしない。

だが、それでも、それでも彼は両手に握るデバイスを構える。

「悪いが、俺は諦めが悪いんでね…」

そう、どんな逆境も、どんな状況も、惨めでも、見っとも無くても、情けなくても、それでも諦めなかった。

それだけが、彼の強さの根底。

今の彼を作り上げた、大切な基礎だった。

迫るガジェット。

青年は逃げることを止め、立ち向かう姿勢をとる。

ガジェット達の黄色いセンサーのような場所が発光し、攻撃を始めようとした瞬間――――





―――――≪Gigantform.≫―――――





「―――――ッ!?」


青年が顔を上げる。

吹雪が暴れる世界で、その音声は確りと聞こえた。

見上げた先には、紅い光を放つ魔方陣。

頂点に円を持つ正三角形の魔法陣、それはベルカ式魔法の証。

その中心で、巨大な鉄槌を振り上げるのは、小柄な、紅いドレス姿の少女。


「轟天―――――」


その少女の声が、氷の世界に確かに響く。

ガジェットが反応する、だが既に遅い。


「爆砕ッ、ギガント・シュラーーーーークっ!!!!」


振り下ろされる鉄槌。

巨大化したその鉄槌は、圧倒的な面による破壊で、集団で固まっていたガジェット達を、上から押し潰す。

その破壊力は凄まじく、着弾点から離れた位置にいた青年に、破壊の衝撃波を伝えるほど。

あまりの衝撃に腕で顔を被ってしまうが、それでも腕の影から確りとその光景を目に焼き付ける。

紅の少女と、その相棒たるデバイスの勇姿を。

「凄い…」

ただそれしか言葉にならない。

やがて、破壊の鉄槌は元の大きさへと戻り、少女はその鉄槌を肩に担ぎ、周囲を見回す。

漏れが無いか確認してから、紅い少女は青年の前へと降り立った。

「よぉ、大丈夫だったか?」

「は、はい…」

小柄で愛らしい見た目とは裏腹に、随分と気さくと言うか、姐御肌というか、兎に角そんな感じだったので面食らう青年。

「お前だろ、ロストロギア輸送部隊の隊員ってのは」

「そ、そうです。ソリオル・スティングレイ二等陸士でありますッ」

「アタシは本局のヴィータ三等空尉だ。ガジェットどもが出現したからアタシらまで借り出されちまったよ」

そう言ってやれやれと首を振るヴィータに、苦笑する青年…ソリオル。

「しっかし、よく三日も無事生きてたなお前。こんな世界で、しかもガジェットに追われながら」

「えぇ、まぁ…劣悪な環境には慣れていますので」

ソリオルの言葉にそっかと答え、通信機を取り出すヴィータ。

この世界は吹き荒れる吹雪に微量の魔力が混ざっている為、長距離の念話が阻害されてしまう。

ソリオルの発見が遅れたのも、これが原因だった。

「うっし、もう直ぐヘリが来るからそれまで体休めてろ。もうボロボロなんだろ?」

「そうなんですが…今休むと眠ってしまいそうなので…」

苦笑するソリオル。

何せ三日も肉体的・精神的に極限状態で戦い、逃げていたのだ。

下手に休んで眠って、それでバリアジャケットが解除されてしまったら…間違いなく凍死だ。

ソリオルの言葉に腕を組んでう〜んと唸るヴィータ。

その姿の愛らしさに多少気が楽になったソリオルは、己の得意な事を一つ思い出した。

「ヴィータ三等空「あぁ、三尉だけで良いぞ、別にそこまで気にしないし」…では、ヴィータ三尉、すみませんがカートリッジの予備があれば分けてもらえませんか?」

「カートリッジ? 良いけど、何すんだ?」

ソリオルの言葉に首を傾げつつ、手持ちのカートリッジを一つ渡すヴィータ。

例を言いながら受け取ったソリオルは、グランの弾倉にそのカートリッジを挿入する。

一発だけでも排夾・装弾する事が可能らしい。

そして、リボルバーが動き、カートリッジがロードされる。

≪Body Heal≫

カートリッジの圧縮された魔力を使って、発動する魔法。

ソリオルの全身を群青色の魔力が包み込み、彼の身体を癒していく。

爆発の破片などで出来た頬や額の傷なども、瞬く間に塞がっていく。

「へぇ、自己回復魔法か」

「はい、これがあったから三日間逃げられました」

手持ちのカートリッジを半分ほど使用したのは、全てこの回復魔法。

接近戦主体なソリオルには、必須の魔法であり、命綱でもある魔法。

「とは言え、三割回復すれば良い方なんですけどね…」

「そっか。ま、ヘリが着たらゆっくり休みな。…そうそう、お前の部隊は全員無事だとよ」

「……そうですか…良かった…」

ヴィータの言葉に、本当に安心した声で胸を撫で下ろすソリオル。

「で・も! お前帰ったら覚悟した方が良いぞ?」

「へ?」

「隊長の命令無視して、ロストロギア持って逃亡。これだけでも十分に厳罰だ」

「う゛…」

「さらに、ただ逃げただけじゃなく、自分を囮に使用した。隊長さん、カンカンだったなぁ…」

「うげ…」

「ま、ありがたーいお言葉を聞く事になるだろうけど、自業自得と諦めな」

「う、うぅ……了解です…」

肩を落として落ち込むソリオル。

そんなソリオルを笑って、背中を叩くヴィータ。

ヘリが到着するまでの間、ヴィータはソリオルを適度に慰めつつ、苛め続けたのだった…。










ソリオルは知らない。

この事件と、紅い少女との出会いが、今後の自分に大きく関わる事になるとは……。







To be continued〜







あとがき

皆様はじめまして、へタレな物書きアヌビスと申します。
今回はリョウ様のリリなのに触発され、オリジナル主人公モノを書き始めました。
基本はStSで、本編にオリ主を絡ませて画いて行こうと思っていますが…
DVD発売までは短編やギャグ主体で行こうと思っております(何)
だって家、ノイズ酷くて見れないですよorz
第一話も辛うじて視聴。でも内容殆ど見えません(何)

オリ主に関しては、そこそこ強いけどそこそこ弱く、そこそこカッコいいけどそこそこアホな子を目指す所存です(ぇ
カップリングは秘密というか未定。
もしかしたらスバルだし、もしかしたらティアナだし、もしかしたらキャロだし、もしかしたらエリオだし(マテ)
あ、アルトやルキノも有りか(何
なのはさん達はヒロインにはならない予定。予定は未定(何)
因みに私、ハーレムとか大好きですからうわなにをするやめ(ry

とりあえず、微妙な作品かもしれませんが、よろしくお願いします。
デバイスの言葉が日本語英語混じりなのは仕様です。
私、英語駄目駄目の子ですから(涙)


あ、ヴィータとはフラグありませんから〜(ぇ
あっても親分子分フラグ(何)












作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。