その日、地上本部を統括するレジアス・ゲイズのオフィスは夕日に彩られていた。
椅子に座り、夕日を背にしたレジアスの前にひとりの局員が直立不動の姿勢でその場に立っている。
「報告は聞いている」
机の上に広げた報告書を見やり、すぐに若い局員へと瞳を向ける。
「…よくこれだけの被害におさえて皆を帰還させてくれた。礼を言う」
若い局員を労い、立ち上がったレジアスは眼下の街を見つめ、今回の事件を思い出す。
ひとつのロストロギアを巡る事件。
本来なら地上部隊が出動する事件ではなかった。
しかし次元航行部隊のミスによってロストロギアは暴走。三隻の次元戦艦を消滅させ、さらに地上をも巻き込んだ。
事の重大さにレジアスは幾つかの地上部隊を緊急出動させ、次元航行部隊も出動。
その結果。
次元航行部隊のチームは重軽傷者十五名で、死亡者三名。
それに対し地上部隊は重軽傷者二十八名。さらに死亡者は七名という損害であった。
報告に上がってきたその内容に、レジアスは己の無力を呪った。
「私の責任だ。恨んでくれて良い」
そう言ってレジアスは、功労者である若い局員へと向き直った。
かつて地上本部での活躍をレジアスが有望していた青年である。青年は魔導師としての能力も高く、同期生からの人望も厚かった。そして、有能だったために本局に引き抜かれた。
管理局という組織にいる以上は転属は止む無しと青年は苦笑いして、地上を去った。
そして今回起きた事件で、青年は残った局員の命を守るためにその右脚を失った。
「本当に済まない…」
レジアスが再度、頭を下げる。
だが、それに対して青年は静かに笑って返した。
「頭を下げるべきは私のほうです」
一礼し、青年は続ける。
「私の、地上への技術部転属願いを強行してくれてありがとうございます」
自分専用の義足が出来ていないため、あり合わせの義足をつけた青年は笑う。
「それぞれの立場に身を置いてよくわかりました。私が居るべきは海ではなく、この地上にいるべきだということ。そして魔力という力を持たぬ者たちの力を、多くの人々に示してみせます」
再び一礼。
「これからは実働部隊ではなく、技術部としてこの地上本部の力になることをわたし…」
そう言って顔を上げた青年の顔を夕日が照らす。
「エンス・サイは、ここに誓います」
それが数年前にあった出来事だった。
◆Three Arrow of Gold◆
第四章『電光石火!』
「へぇー、フォワードの子たち休暇? よかったねーーー。え? そのかわりエンスさんたちは待機? いやぁーーん」
メンテナンスルームでデバイス調整を行っていたイルドからスバルたちの休暇を聞いたエンスが最初に口にしたのが、今の言葉である。
作業する手を止めずにエンスがしみじみと言葉を続けた。
「いやぁーーー、エンスさんちょっと心配してたんだよーー。高町一等空尉にちょっとスケジュール見させてもらったら、びっちり訓練なんだもんねーー。いつぶっ倒れるんじゃないかって、エンスさんもうドッキドキぃーーー」
「そんなに凄いのか」
機動六課に出向してまだ日が浅い咲希はフォワード陣のハードワークを知らなかったのである。イルドが説明し、その内容に咲希が渋い顔になる。
「正直な話、そんな訓練でエリオとキャロの子どもたちは大丈夫なのか? まだ身体も出来ていないだろう」
咲希のもっともな疑問に、エンスは口の端を歪める。
「そだねーー、でもミッドと地球に住む人って似て非なるものなんじゃないかなー。身体のつくりがどこか違うんじゃないのかなーー?」
「そう言うモノか」
咲希は納得は出来ないがそう納得し、調整を終えた右手のガントレットのチェックを行う。右のガントレットで掴んだスチール缶に力を込め、たやすく潰す。
チェックシートの項目を一つずつ確認し、エンスが疑問に思ったことを口にする。
「で、休暇っていつ? エ? 今日? これから? ほんと? 急だねーーー。まー、ゆっくり休んでほしいよねー。どーせ、事件なんてそうそう起きないだろうしねーー」
そう言って、エンスは嬉しそうに笑ってみせた。
ひとまず作業を終えたエンスたち技術部一行が食堂に顔を出すと、六課の隊長陣が全員揃ってテレビを眺めていた。
「相席よろしいですかー?」
返事も聞かずに座るエンス。
なのはに促され、イルドと咲希も会釈をして座り、テレビを見やる。
その画面では管理局地上本部を統べる人物、レジアス・ゲイズ中将が熱弁を振るう姿があった。
「このおっさんはまだこんなこと言ってんのか」
呆れたようにヴィータがそう言うと同時に、エンスは楽しそうに手を叩いた。
「さすが中将。言うことが立派だよー。エンスさんは男に惚れるなんて事は絶対ないけど、惚れちゃいそーーって言ってみるよーー」
その瞬間。
一同の目がエンスへと集中する。
「それはどういう意味だ?」
最初に口火を切ったのはシグナムだ。
彼女の射貫くような鋭い瞳を向けられながらも、エンスは楽しげに笑う。
「言葉通りだよーー、男には惚れないけ」
「そこじゃねぇ!」
人をバカにした物言いに苛立ったヴィータがテーブルを叩き、エンスを睨みつける。だが、それを受けてなおエンスは楽しそうに言葉を紡ぐ。
「ヴィータ副隊長、何を怒っているんですかー。エンスさんはただ立派だなーーて感想を言っただけじゃないですかーー。それとも言論の自由は認められないとでもー?」
「そ、そうじゃねえけどよ…」
ヴィータが押し黙るのを見て嫌らしい笑顔を浮かべるエンスへと、一同を代表して今度ははやてが口を開いた。
「エンス主任には何か意見があるみたいやけど、いまここでお聞きしてもええかな?」
「はいはい、いいですよー。エンスさん何でも言っちゃうよー」
気安く応じたエンスは緑茶を一口飲んでから、一同へと良く通るいつもの軽い声で答えた。
「まぁ凶悪事件が増加してそれに対応できる環境があるのなら、エンスさんは今のままでもまったくもって問題はありませんがねー。しかし、現実問題として事件の発生率が増えていてさらに検挙率が下がっている。こうなったら人々の平穏と世界の治安を守る管理局としては何とかしないといけません。今の平和を守るためにはあらゆる手段を模索し、解決への努力をせんといかんでしょうが。今回はたまたま、レジアス中将があーいう手段を取ったっていうだけですよー」
いったんそこで区切り、緑茶を飲んでのどを潤すエンスの意見に対し、フェイトが意見を述べる。
「でも質量兵器は禁止されていて…」
「ハッハッハッ、ハラオウン執務官も何を言うかと思えばそんな常識を。言っときますけど、それぐらいのことはそこらへんの子どもにだって言えますし、エンスさんも嫌と言うほど理解していますよーーー」
そのエンスの笑い声にシグナムの瞳が鋭くなるが、構わずエンスは軽い調子で続ける。
「ではね、この場にいる皆さんにこそ、こう質問してみよう。今でこそ禁止されているその質量兵器を“禁止”したのはいったい……何者だ?」
普段の軽い調子から一転して、聞く者の心が底冷えするような声音でエンスは問いかける。
直後。
一同が黙り、それを確認したエンスは唇の端をつり上げて笑う。
「みなさん無言ということはご理解いただけたようですねー。そう質量兵器を禁止した決まり事を作ったのが私たち“人間”ならば、その決まり事を破ることも壊すことも私たち“人間”が出来るんですよねー」
右の人差し指を楽しそうに回しながら、エンスはさらに続ける。
「時代遅れの法に縛られて今を見ないのはバカがすることー。つねに変わり続ける世界に正面から向き合って努力をする人たちをエンスさんは応援するーー」
人を小馬鹿にするようにエンスが笑う。
「ちなみにエンスさんも皆さんと同じ魔導師ですがねーー」
一拍の間を置き、エンスはその瞳を細めて再び氷の言葉を放つ。
「貴様らみたいな魔導師の考え方には反吐が出る」
険呑な空気が張り詰めたその瞬間。
勢いよく両手を打って立ち上がったエンスは、いつものうさんくさい笑顔で笑う。
「いやぁ、皆さんすみませんねー。楽しい楽しいお食事のお時間に、あーまーりーにーもーエンスさんは無粋なことを言って空気をぶち壊してしまったー。さぁ、皆さん。エンスさんは戻るんで、楽しいお食事タイムを再開してねーーー」
にこやかに手を振りながら悠然と去っていくエンスを見送ったあと、今まで黙っていた咲希が口を開いた。
「下らん」
「…どういう意味だ?」
吐き捨てるように放たれた言葉にシグナムが静かな口調で問いかけ、咲希を射貫くような瞳で見やる。だが、咲希は気圧されることもなく、いつもの淡々とした声音でシグナムに返す。
「そのままの意味だ。俺に言わせれば魔法だろうと兵器だろうと所詮人殺しの“道具”に過ぎん。全ては使い手次第。それなのに魔術は許されて、質量兵器は認められないなどとは、魔導師にとって随分と都合が良すぎる話ではないか」
そこで咲希はシグナムを真正面から睨み返し、感情を込めずに問いかける。
「こう言っては失礼だが俺を含めた、今この場にいる者ならば人ひとりぐらい魔法で容易く殺せるだろう?」
「貴様…!」
静かな怒気をはらんだ声を放つが、シグナムは拳を握りしめてそれをこらえる。
対して咲希は平然と紅茶を飲み終え、組んだ両手をテーブルにおく。
「良い機会だから俺も答えておこう。平和を守るために最も必要とされるものは、それを行うことが出来る純粋な力のみ。力なき理想など所詮弱者の言い訳。正義を謳う管理局に敗北は許されず、如何なる悪にも屈してはならない。勝利を望む以上、力を拒んではならない。そのためならば、いかなる力をも手札に加えるべきだ」
静かに立ち上がり咲希は一同へと敬礼。
「これ以上、ここで無為な時間を過ごす必要はないと判断する。では失礼」
一礼し、咲希は踵を返して食堂を立ち去る。
「ちょ、ちょっと咲希さん…!」
慌てて立ち上がったイルドが制止の声をかけるが、その声を無視して咲希は食堂を出て行く。
その咲希の後ろ姿を見送りながら「取り残されてフォローしようとしてる人間のことを少しは考えろ!」とイルドは心のなかで二人を呪う。だがすぐに、あの二人は他人の目を気にしない人種であることと、フォローされることを望んでもいないということに気づき、自分で掘る必要もない大きな墓穴を掘ったのだと言うことを、今更ながらにイルドは思い至った。そして我に返ったとき、視線が自分に集中しているという事実に気がつきイルドはほほが引きつるのを感じた。
「……えー、そのですね…」
「ん、気にせんでええよイルド君。でも二人の意見は過激というか極端というか」
フォローしようと口を開いた瞬間、はやてに出鼻をくじかれたイルドが彼女へと視線を返す。
それに対し、はやては軽く笑みを浮かべて、一言。
「で、イルド君の意見は?」
はやてのその一言に、イルドへと集まる視線がさらに熱くなる。
気分は公開処刑だ。
鼓動を落ち着かせるために水を飲みながらも『こんな状況で女性の注目を集めたくない! あ、シャマル医務官もそんな目で僕を見ないで!』などと思うあたり、まだイルドにも余裕があるのだろう。
コップに入っていた水を全て飲み干し、姿勢を正したイルドは気持ちを切り替えて、はやてを真正面から見据えて意見を述べはじめた。
「最初に結論を述べますが、自分も同意見です」
その言葉にシグナムとヴィータの目が鋭くなり、シャマルが悲しそうに俯く。だが、あえてそれを無視してイルドは言葉を続ける。
「管理局はあくまで人々の生命と自由、権利、平和を守るためにあるべきです。その組織が人々を守る力を持たぬと言うのならば、そのような組織が存在する意味も必要もありません。だから自分は“質量兵器禁止”という言葉だけで単純に全てを否定する気はありません」
一同が黙ってイルドの言葉に耳を傾ける。
「現実に地上と本局が有する戦力…すなわち魔導師の数は本局側に比重が傾いているのも現在の状況を生み出した原因の一つです。しかし、だからこそ魔術という力を持たない者は、持たないなりに管理局の一員として努力をするべきだとも自分は考えております。僕たち技術部はそのためにいるのですから」
そこでいったん句切り、息を整えすぐに続ける。
「それと先ほどの主任の“法を破る”という言葉は確かに過激なうえに極端ですが、いま現在起きている事件に対しその法律が機能しない…もしくは足かせになるというのならば、それを見直し新たな法律を作るべきです。時代が変われば人も変わり、法も変えるべきです。管理局にも政府にも次元世界の代表者たちにも、それだけの責任と権利と義務があるはずです。以上、荒い部分があると思いますがこれが自分の意見であります」
イルドが意見を述べ終え、なにやら考えていたはやては静かに頭を下げた。
「まずは最初に謝らせてな、イルド君。そしてありがとう。こない上役ばかりに囲まれて話しにくい状況で真面目に話してくれて…本当にありがとう」
深く頭を下げるはやてに対し、イルドも恐縮し頭を下げる。
「八神部隊長、頭を上げてください。本当なら先に頭を下げるのは僕たちのほうなんですか……ら!?」
気づくと同席していたメンバー全員、さきほどまで睨んでいたヴィータまでもが頭を下げている。
下っ端局員であるイルドにとって、驚愕以上に恐縮してしまう光景であった。
「や、止めてくださいよ!」
悲鳴に似たイルドの声に、やっと一同が顔を上げ、それぞれが席を立つ。
「さっきは睨んで悪かったな。でもよくあそこまで言えたな」
「ヴィータの言うとおり確かによく言った。それと言っておくが、あくまでお前ひとりを認めただけだからな」
ヴィータとシグナムにそう言われて再び身体が凍り付くイルドに、今度はなのはとフェイトが微笑を浮かべる。
「イルド君、よく頑張ったね」
「格好良かったよ」
順々に思い思いの言葉をかけていき、はやてがにこやかに笑う。
「ほな、イルド君。私たちは仕事に戻るからゆっくりご飯食べていき」
「はぁ…」
食堂を去っていく五人の姿を敬礼して見送ったあと、緊張の糸が切れたイルドは椅子へと倒れ込むように座り、息を吐く。
「はぁ〜…疲れひゃあ!?」
首筋に何か冷たいモノが触れ、悲鳴を上げたイルドは勢いよく後ろを振り返る。
そこには缶ジュースを手にし、イルドの驚きように目を丸くしたシャマルがいた。
「ご、ごめんなさい。そんなに驚くなんて思わなくて…」
「…いえ、こ、こちらこそお見苦しいところを…」
互いに頭を下げて、シャマルに席を勧める。
向かい合って沈黙。
「…こ、これどうぞ。のど渇いたでしょう?」
「あ、ありがとうございます…」
受け取った缶ジュースを開き、もの凄い勢いで飲む。自分が思っていた以上に水分を欲していたらしい。ひんやりとした冷気がのどに染み渡る。
水分を補給したことで幾分気が落ち着いたそんなイルドの様子に、両手を合わせたシャマルが楽しそうに微笑む。
「いい飲みっぷりですねぇ。お酒もいける口ですか?」
「あ、僕は酒もたばこもやらないんです。それにまだ一八歳ですし」
「あら、健康でいいじゃないですか。ん? ということはもしかしてイルド君は甘党なのかしら? ケーキとか好き? 私美味しいチーズケーキのあるお店知ってるんだけど教え…ま……す?」
楽しそうなシャマルの何気ない言葉に、ふとイルドの目から涙がこぼれ落ちる。
「あ……あれ…?」
慌てて涙をぬぐうが、さらにあふれ出す。
イルドは慌てて俯き、謝罪。
「すみません」
「い、イルド君?」
身体が震えはじめる。
心配しながらシャマルが手を差しのばすが、イルドは頭を振って再び謝罪。
「すみません…すみません」
あふれ出る涙をぬぐうのも忘れ、何度も謝る。
両手で顔を隠しても、涙がこぼれ落ちる。
謝る必要も、いま泣く理由もないのに、身体が勝手に動く。
心のなかで何度も止まれと叫ぶがブレーキの壊れた車のように涙は止まることはなく、よりいっそう強く流れ落ちる。
「え? え? どうしたのイルド君!?」
シャマルの困惑する声だけがイルドに届いた。
「カスタムU、修理完了!」
叫び、スカリエッティは満足そうに二機のカスタムUを眺める。ついで振り返り、控えていたナンバーズへとその金色の瞳を向ける。
「ウーノから伝えられていると思うが、市街地で私が欲しているものが発見された。みんなにはそれを取ってきてもらいたい」
トーレ・クアットロ・セイン・ディエチがすでに出撃準備を整えており、あとはスカリエッティの号令を待つだけだった。
「では、みんなよろしく頼むよ」
そう言って四人を送り出したスカリエッティは、ノーヴェとウェンディを呼び出してコントローラーを渡す。
「うひょーー、待ってましたッスよーー!」
「ふん、しょうがないからやってやるよ…」
喜びを隠そうともしないウェンディと、ぶっきらぼうだがほほを染めてコントローラーを受け取るノーヴェの姿に苦笑しながら、スカリエッティは最後の確認をする。
「あくまでこれは蒼騎士と紅騎士用だから、ほかのと戦ってはいけないよ」
「はぁい、わっかりましたッス!」
「…わかったよ」
二人の対照的な返事に頷いたスカリエッティは、ウーノへと指示を行う。
「済まないがウーノ。私はちょっと眠ってくるので、みんなを見ていてくれ」
「わかりました、ドクター。お休みなさい」
深々と頭を下げるウーノに見送られ、スカリエッティは自室へと向かっていた。
食堂から医務室へと場所を変えたあともイルドの涙は止まらなかったが、いくぶん落ち着いたらしく静かに理由を話し始めた。
「味が…わからないんです…」
「わからないって、感じないっていうこと?」
俯いたまま頷き、イルドは話を続けた。
「子どもの頃、ちょっとした事故があって、それ以来なにを食べても……飲み物もただ冷たいか熱いかぐらいしかわからなくて」
涙を流した理由。それはイルド自身にもよくわからなかった。
ただシャマルの笑顔と言葉に胸が痛くなったことだけは理解できたが、それ以上のことはわからなかった。
「医者はもう無理だって……諦めて……」
顔を上げることがイルドは出来ず、シャマルがどんな表情をしているのかもわからない。たとえ、いま顔を上げたところで涙で滲んでわからないだろうが。
「……悲し…て……悔し……羨……ましくて……」
味覚を失って十年以上も過ぎた。
自分でも諦めた。
美味しそうに食べる友人の姿を見ることにも慣れた。
それに付き合って美味しいと笑って言う“演技”も覚えた。
なのに、なぜここに来てそんな感情を思い出したのか。
訓練を終えたあと美味しそうにご飯を食べるスバルたちの姿が、何度も輝いて見えたのが原因なのだろうか。
「まえに……リンディ…提督に……日本茶を……提督が淹れて……くれた、お茶で…何年ぶりに……味を……感じ…のに………!」
義兄エンスがいる技術部に転属される前の部隊にいたころ、リンディ提督のもとに行くことがあった。
そこで、振る舞われた一杯のお茶。
恐ろしいほどの量の砂糖を入れたお茶に、さらにクリームを大量に入れる。そんなお茶を初めて見たとき、いったいカロリーはどのぐらいのものかとそれは恐ろしく思ったが、振る舞われたお茶を飲まないのは提督に対して失礼と思ったイルドは、どうせ味などわかりはしないと覚悟して一口飲む。
それがイルドの喜びでもあり、悲劇でもあった。
一口飲んで味を感じたことに驚きを覚えたイルドは思わず飲み干して、そのあとも何杯かお代わりしたのである。リンディ自身も同好の士が出来たと喜び振る舞う。その後、イルドは健康のことを考えリンディ茶を控えるも、リンディ茶を飲む日を月に何回と決めて楽しみにしていたほどであった。
「……でも……ここで………違う…て」
それを思いだし、涙があふれ落ちる。
地球の文化を知らず、振る舞われたお茶を“普通のお茶”と思い込んで、唯一と言っていいほど楽しんでいたそのお茶が“普通ではないお茶”という事実に激しいショックをイルドは受けた。
認識していた事実をさらにえぐるように突きつけられ、やはり人並みに味を楽しむことはもう出来ないのかと、イルドは人知れず悩んでいたのだ。
「それを知っているのは?」
シャマルに髪を撫でられながら、イルドは答える。
「……義兄さ…んたち…と咲…希さん」
誰に相談しても無駄だと、何も変わらないとすでに諦め、話す必要もないとしてほかの誰にも言わなかった。
「……我慢しなくて良いんですよ」
シャマルは優しくイルドを抱きしめ、髪を撫でる。
「どうしようもないほど悔しいとき…どうしようもないほど悲しいときは…我慢しないで泣いていいんですよ」
包み込むように抱きしめ、シャマルは優しく言葉を紡ぐ。
「…いまここで…イルド君が今までため込んでいた悔しさも悲しさも涙といっしょにぜんぶ流しちゃってください。誰も見ていませんから…ね?」
その言葉に、イルドの涙をふさいでいた最後の堤防が決壊した。
「あぁぁぁっぁぁぁああ!」
子どものように泣きじゃくるイルドの声が医務室に響き、数分後。
もともと紅い両目をさらに紅く染め上げたイルドが、シャマルに深く頭を下げていた。
「……本当に、ありがとうございます」
「いえいえ、すっきりしました?」
にこやかに笑うシャマルに向けて、再度イルドは頭を下げた。
「…こんな詰まらないことで時間を取らせ、本当に…む!?」
「つまらない事じゃありませんよ!」
両手で顔を押さえられたイルドの目を真正面から見つめたシャマルの瞳が少し怒っている。
「イルド君は自分を卑下するようなことを言っちゃいけません!」
目を白黒させるイルドに向けて、さらにシャマルは咎めるように言う。
「そんな風に自分を悪く言っていると、本当に悪い人になってしまいます! イルド君は優しくていい人なんだから、悪い人になるのは私が許しません!!」
「は、はぁ…」
「私にはイルド君の問題を解決することは出来ません! でも、コンプレックスの悩みや相談を聞くことなら出来ます! だから困ったときは相談してください! イルド君わかりましたか!?」
「は、はい…」
「声が小さいです!」
「はい、シャマル医務官!」
そのイルドの返事に満足し、シャマルは満足そうにおどけながら微笑んだ。
「よろしい」
直後。
通信が入り、ホログラム通信のはやてが空中に浮かび上がる。
『シャマルー、イルド君居るー……てなにしてん!?』
ホログラム通信のなかで驚くはやてに、イルドとシャマルは改めて互いを見る。
シャマルの手がイルドの顔にそえられ、見ようによってはシャマルがイルドにキスを迫っているようだ。
『みんなーー、一大事や! シャマルがイルド君に告ったぁーーーー! オフィスラブ一歩手前やーーーー!』
そのはやての言葉を契機に、いっせいに二人の周りにホログラム通信が乱立する。
『ホントか!?』『シャマルさんから告白したの!?』『マジッスか!?』『いつ結婚ですか!?』『もう指輪もらったんですか、イルドさん速い!』『おーい、みんなご祝儀集めるぞーー!!』『うへぇ、マジッスかぁ、俺今月ピンチなのに』『そんなこと言わないの、六課初のカップル誕生なんだから』『そう言えばそうだね!』『結婚式はやっぱりゴンドラ?』『今でも流行ってるのそれ?』『教会風? それとも和風? いやはや神道?』『プロポーズの言葉は何ですか!?』
「…みんな黙れぇーーー!!」
ロングアーチのやじうま軍団に向けてイルドが吠え、場がしんと静まる。それを確認してから、イルドは努めて冷静に答えた。
「これは八神部隊長の誤解だ。僕とシャマル医務官はそんな関係じゃない。そして、八神部隊長?」
『は、はい?』
いきなり名指しされたはやてのホログラム通信がおっかなびっくりとしたふうに、イルドの前に現れる。
そのはやての反応にイルドは片手を額にやり嘆息。
「はい? じゃなくて何か用件があったんではないですか?」
『おおぅ、二人とも出動や! エンス主任たちもすでにスタンバッてるよ!』
「それを早く言ってください!」
イルドの咆吼にいっせいにホログラム通信が消え、嘆息。
シャマルへと向き直ったイルドは表情を変えて一言。
「行きましょうシャマル医務官」
「は、はい!」
その気迫に思わずシャマルは敬礼してしまうが、ヘリポートへ向かいはじめたイルドの背を慌てて追いかける。
廊下を足早に突き進む途中で数人の職員が興味深そうに二人を見やる。
それを視界におさめたイルドが、申し訳なさそうにシャマルへ謝罪する。
「すみません、あんなことになってしまって。僕では迷惑でしょう?」
しかし、シャマルは笑顔で否定した。
「嬉しかったですよ」
「…え?」
その返事に思わずイルドは紅い瞳をシャマルへと向け、普段とは違う彼女の、少女のように無邪気でまぶしい笑顔を見た。
「女の子はいつだって、そういうのに憧れを持っているんですよ」
出動からしばらく経って市街地に降り立ったヘリは、エリオたちと合流した。
咲希はサーフボードのようなモノをヘリから路上に運び出し、エンスはスバルからレリックケースを受け取ってヘリに乗り込み、イルドは保護された少女を抱き上げる。
「…この子が?」
「はい!」
保護された少女を抱きかかえたイルドが、その子をヘリに収容しシャマルに託す。
「シャマル医務官、この子をお願いします」
「はい、お願いされました」
子どもを寝かせ、その髪を優しく撫でてから地上へ向かうイルドの背中へとシャマルが声をかける。
「怪我してもすぐ治してあげますからねー」
「わかりました」
振り返り軽く右手を挙げてシャマルへと返事を返したイルドは、ヘリから離れたところで待っている咲希へと向かう。
そして、咲希の横に立ったイルドは右手を振ってヘリを見送る。
そのイルドの横顔を見やり、咲希が一言。
「……告白でもしたか」
「し、してませんよ!」
一気にほほを染めたイルドの様子に嘆息した咲希が問いかける。
「ならば、どうした?」
「………あの話しをしました」
それだけで理解した咲希は、イルドと同じようにヘリを見送る。
「……良かったな、悩みを言える相手が増えて」
イルドは頷き、笑う。そんなイルドの吹っ切れた笑顔に、咲希も微笑で返す。
そして、二人は気持ちを任務へと切り替え、デバイスを装着。
起動音が響き、二人の声が重なる。
「「変身!」」
二人の身体が光りに包まれ、機械音声が変身完了を告げる。
『THE TRANSFORMATION COMPLETION』
プロテクターが全身に装着され、二人の鋼鉄闘士がその姿を現す。
ヘルメットに内蔵された通信機からヘリで帰還中のエンスの声が届く。
『んじゃあ、イルドたちはビルのほうに向かってくれないかなー。マップはいま転送するからねーー』
ヘリで帰還したエンスからの通信に、イルドと咲希が顔を見合わせる。
転送されたホログラムマップとそれにチェックされている部分を見やり、咲希が訊ねる。
『エンス、ここに何があるんだ?』
『伏兵がいればいいねーー』
内心で「そんなもんはいらん!」と言いながら二人はエンスの話を聞く。
『エンスさんだったら、砲撃してヘリを狙うよー』
『……貴様のような奴が敵側にいないことを祈る。いくぞイルド』
イルドを促し、先ほど運び出したサーフボードのうえに立つ。乗った瞬間、ボードが勝手に宙に浮かぶ。
『今回はそのジェットボートをテストしてー。目的地まですぐに行けるよー。ちなみに乗っている間は磁石みたいにくっついてくれるから落ちることはないはずだよーー』
後半、微妙に頼りないことを言うエンスへ突っ込むのを無視し、サーフィンをするように二人はボードに乗る。
『なるほど、前のめりで前進加速。後ろにすると減速か』
ボードに乗り、イルドと咲希がチェックされたビルへと向かい初めて十数分後。
突如として上空に姿を現したガジェット軍団に対し、限定解除した八神部隊長が次々とそれらを撃破していく。それと時を同じくして地下水路でも戦闘が始まり、状況はさらに混迷を深めた。
そして、それはイルドたちも例外ではなかった。
チェックされたポイントへ近づいたとき、紅と蒼に彩られた二機のカスタムガジェットUが襲いかかってきたのだ。
『……あたり』
『らしいな……』
このタイミングで敵が迎撃に来たと言うことは、近づけたくない理由があると判断。ほかに伏兵がいることを示していると、二人は結論付けた。
エンスの予測が的中したことに二人は舌打ちするが、カスタムUを迎撃するため加速。
それと同時に空を飛ぶカスタムUがその姿を戦闘機から人型へと変え、空から襲いかかってきた。
『ガー…ド!』
シールドを合わせ、巨大シールド“常山蛇勢”を形成し、紅いカスタムUの蹴りを防ぐ。
空中でぶつかり合い、火花が散る。
瞬間、その衝撃でボードが支えきれず深く沈み込む感覚を覚える。
『重い…が!』
叫び、足に力を込めるとボードが加速。その勢いでレッドUを押し返す。
そのイルドの後方では、ブルーUと咲希が戦いを繰り広げていた。
ブルーUが魔力弾を放ち、咲希が回避しながら接近する。
そして、間合いに入った瞬間、横薙ぎに手刀を振るう。
『斬る』
だが、ブルーUは戦闘機へと変形し回避。ついで、再び距離を取って人型に戻った後、魔力弾を放つ。
『…小賢しい』
呟き、手刀を振り上げ魔力弾を一刀両断。
直後。
ヘルメットの索敵装置が警告を発すると同時に、ロングアーチの緊急通信が入る。
『市街地にエネルギー反応!』
ついで視界に送られる数値にイルドの目が驚愕で見開かれる。
『…推定……Sランク!?』
その瞬間。
思考するよりも早く身体が動いたイルドはカスタムUを無視して、ボードを踏んで全力加速。
向かうはヘリ。
『いっけぇえぇぇぇ!!』
咆吼。
そして空を引き裂き、一条の閃光が放たれる。
両腕を構え、ヘリを守るためにその閃光に突撃。
『リンカードライブ、チャージアップ!!』
デバイスがその出力を上げ、イルドの魔力を増幅し、さらにプロテクターとシールドの硬度を上げる。
自らを砲弾として、襲い来る砲弾をイルドが迎え撃つ。
巨大シールド『常山蛇勢』と砲弾が激突。
地上にも爆発音が響き渡るほどの盛大な爆発が起こる。
『…イルドぉおーー!』
我に返った咲希が叫び、その爆発へと全力加速でボードを奔らせる。
ロングアーチの混乱した通信が聞こえるが構わず踏み込みさらに加速。
すると爆発で生じた黒煙のなかから蒼い何かが落下してきた。
『イルドぉ!』
その姿を確認した咲希の獣のような咆吼と同時に、通信機からヘリの無事を伝える歓喜の声が届く。
腕を伸ばし、落ちてくるイルドをキャッチ。
『……ヘリ…は……?』
『無事だ……無事だ! 無事だ!!』
意識が朦朧としているイルドに何度も咲希は必死に叫び、そのぼろぼろの姿を見る。
砲撃を防いだ両腕のシールドガントレットはぼろぼろとなっていたが、イルドの身体は五体満足の状態であった。
『…咲希……さん? 僕は…?』
『生きている…お前はまだ…生きているんだ!』
その咲希の言葉に、ロングアーチからさらなる歓喜の声が上がる。
自分の無事を喜ぶ声に我を取り戻したイルドが、咲希の後ろに回り叫ぶ。
『……こちらイルド・シー一等陸士! 戦線に復帰する!!』
直後。
ひときわ盛大なロングアーチの声が響き、イルドの戦意が高揚する。
ついで後ろを見やると、戦闘機へと変形した二機のカスタムUが二人を追撃してくるのを確認。
『行きましょう咲希さん!』
『あぁ!』
叫び、ボードを加速。
同時にシステム起動。
『リンカードライブ!』
『…チャージアップ!』
デバイスによって増幅された魔力が全身に行き渡り、一瞬だけ白銀に輝く。
その直後。
ボードを蹴って跳躍したイルドと咲希が、弓から解き放たれた矢のごとく飛翔し、 カスタムUのボディを貫く。
空に爆発が広がり、カスタムUの破片が舞い散る。
『撃!』
『破!』
爆発音を聞き届けながら、互いにビルの屋上へと滑り込むように着地。
その衝撃でコンクリートが削れ、長い爪痕を穿つ。
咲希が静かに立ち上がり、その爆発を確認する。
『撃破完……イルド!?』
爆発を確認し振り返った咲希の目の前でイルドがまるで操り人形の糸が切れたように膝をつく。
しかし、焦る咲希に対してイルドは、片膝をつきながらも安心させるように片手を上げて振ってみせる。
『大丈夫…さ、はやく回収して…も……』
そこで気を失ったイルドは頭から倒れ込んだ。
「……今日は医務室にいる時間が多い気がする」
帰還後、すぐに医務室へ担ぎ込まれたイルドはベッドの上でそう呟いた。
両腕は包帯を巻かれており、じつに動かしにくい。
「しばらくそこで休んでいてくださいね」
なにやら機械を操作していたシャマルはそう言って、ベッドの横に備えていた椅子に座り、イルドを見つめて頭を下げた。
「イルド君、ありがとうございます」
穏やかに微笑むシャマルの瞳を直視してしまったイルドは、太陽を見てしまったように慌てて顔を背ける。ついで赤くなった顔を見られないように気をつけながら言葉を返す。
「れ、礼はいりませんよ。当然のことですから…」
顔を直視できないため確認できなかったが、その反応にクスクスと声を殺してシャマルが笑っているのを、イルドは感じた。
気恥ずかしさを感じたそのとき医務室のドアがノックされ、はやてが顔を出した。
「八神部隊長?」
「はやてちゃん?」
「あ、敬礼せんでええよ」
ベッドの上で敬礼しようとしたイルドをそう言って制したはやては備え付けの椅子に座り、軽く微笑んでから頭を下げた。
「部隊長として、そして八神はやて一個人として礼を言わせてもらいます。みんなを、そしてシャマルを守ってくれて今日は本当にありがとうな」
「八神部隊長…自分は管理局の一人として仲間を守っただけですよ」
その言葉にはやては今度は悲しそうに微笑む。
「……イルド君はほんとに優しいなあ。でも私は君を疑っていたんよ」
「疑う…?」
訝しむイルドに向けて頷いたはやては語り出す。
「地上本部がうちの部隊を調べるために送りこんだスパイじゃないかってこと。でもスパイやったら、今日みたいな事はしないと思うんや」
直後。
「ハハハハハ…ハハハハハ!」
イルドは声を上げて笑いはじめた。
二人が呆然とするなか、ひとしきり笑い終えたイルドが両手を組んで、はやてを見やる。
「これから言うことは話半分で聞いてくださいよ。おそらく義兄エンスには、そのような話しがいっているはずです。どこの上役かは知りませんが」
いきなりぶちまけられた話に、今度ははやてとシャマルが目を丸くする。
その様子を見ながら、イルドはさらに続ける。
「でも勘違いしないでください。義兄はそんな事しませんよ。いや何というか、いま現在の義兄は…“正義のマッドサイエンティスト”でいいかな? 自分の造った技術が使えるかどうかしか考えていません」
「ほな…」
何か言おうとするはやてを制し、イルドは微笑む。
「何よりも義兄は、派閥争いには興味はないですよ」
「…それを私に信じて欲しい…と?」
はやての問いに、イルドは大げさに肩をすくめてみせる。
「そこは部隊長のご自由に。でも義兄を敵にするなら気をつけた方が良いですよ」
「今日のでじゅうぶん敵に思われている気がするんやけど?」
かぶりを振って、水を一口飲んでから返す。
「あれは本局寄りの思想が嫌いだから喧嘩を売ったんですよ。なんだかんだ言って思考は地上寄りですからね。地上の戦力不足は事実ですから。義兄はそれに腹を立てて本局の実働部隊から地上の技術部に転向したんですからね」
「そーかー、とりあえずイルド君は信じることにするわ。と、もうこんな時間や、じゃあ私戻るわ」
椅子から立ち上がり、医務室を出ようとしたはやては何を思いだしたか振り返り、シャマルへと一言。
「ごめんシャマル、ちょっと席外してくれへん?」
「…いいですけど?」
医務室から出て行ったシャマルがドアを閉めるのを確認してから、はやてはイルドに向けて意地の悪い笑みを浮かべた。
「で? じっさい告られたんか?」
「…違いますって!」
「ふーーん……うんうん」
ほほを染めたイルドを品定めをするように見てから、何度もはやては頷き、破顔。
「イルド君なら、八神家の一員になってもええよ?」
笑顔で言い放ったはやての笑顔に、イルドは諦めて目を閉じた。
「……また、破壊されたか」
カスタムUと鋼鉄闘士の戦いをモニターで眺めていたスカリエッティはそう言って、なにやら考えはじめた。
その姿にウーノが問いかける。
「もう一度、ドローンをぶつけますか?」
「いや、いい」
一言で返し、スカリエッティは地上本部と機動六課を映すモニターを眺める。
「データもそれなりに貰ったことだし、ちょっかいをかけるのは辞めて計画のほうに力を入れるとしよう」
そして、笑いはじめたスカリエッティの後ろには、三体の巨人が静かにたたずんでいた。
NEXT STAGE
『心身休息?』
●おまけ第四章●
医務室でイルドがはやてにからかわれていた頃。
「この死に絶えたデバイスを甦らせるには、魔導師の血が必要です」
「死んでいない」
「あと、スターダストサンドとガマニオンにオリハルコンが必要」
「くどい」
エンスが日本の漫画を読んだことが発覚した。
◆説明補足・第三章:能力レベル◆
純粋な魔力量だけで比較すると、イルドは一般武装隊員よりも低く、咲希は一般武装隊員よりも少し上ぐらいで、極めて強いわけではない。すなわち機動六課の主力と比べるべくもない程度の能力である。
しかし彼らは試作デバイスと戦闘経験、それと自分自身の技巧を駆使して戦うことにより、フォワード陣と比肩する事が出来る。
◆説明補足・第四章:桐井咲希◆
・所属:階級:魔導師ランク
時空管理局地上本部:第十三技術部・三等陸士:陸戦Cランク
・年齢
二十一歳・男性・189cm
・設定
イルドのパートナーで、阿吽の呼吸で連携を取ることが出来る。
もとは次元漂流者で、出身世界は日本。次元世界で生きることを希望し、管理局に入局する。
性格は不言実行がモットーの武人で、口数は少ない。しかし、言葉にはしないが仲間を想う心は誰よりも強い。
黒髪黒目。目つきが鋭すぎるので普通に歩いているだけで通りすがりの子どもをびびらせることが出来る。
戦闘スタイルは“先手必勝・一刀両断”が基本。手刀でなんでも一刀両断。
・デバイス
基本カラーは紅。
ベルト型試作デバイス“タイプ・β”は、接近戦を基本コンセプトとしたデバイスである。
日本刀をイメージして制作されたため、全体的に鋭利な形状でまとめられている。
タイプγと違ってオプションによる拡張性は考えられていないため、整備及び点検が容易いという利点がある。
・蛇足のイメージ
性格は聖闘士星矢エピソードGのシュラ。やってることも変わらないしね。
外見はKOFの八神庵。胸ボインの逆三角形体型。髪は紅くないけどね。
◆後書き◆
今回の話すなわち「アムドライバー」となります。
ヒロイックセンセーション!
レジアス中将、好きです。つーかあの手の演説シーンのたぐいが好きです。
しかし、ほんとこの世界の『質量兵器禁止』という法律は好きです。魔法文化にいたるまでの話を掘り下げたら面白いことになりそうです。
あと、やっと三バカが地上本部寄りの思考だと言うことが書けて一安心。
イルド、隊長陣にちょっと認められる。そして号泣。もっと泣け。
エンス、隊長たちに凄い嫌われる。でも気にしない。マイペース。
咲希、頑張って喋れ。でも本人は気にしない。すごいマイペース。