おまけ☆(壊れが入ると思われますので、ご注意ください。なお、ご都合主義満載です)





〜まさかの〇〇〇エンド〜







喧騒と静寂、相反する二つが入り混じる巨大な首都クラナガン。

そんな街の一角に佇むのは、シックな外装の建物。

外装が全て、レンガと呼ばれる建築材により作られ、周囲の建物とは違った印象を与える、10階建ての建築物。

その1階全体を占めているのは、『翠屋』と書かれた看板を掲げる喫茶店。

喧騒の街へと慌しく急ぐ人も、静寂の街へと疲れたように歩く人も、つい立ち止まって入りたくなる、そんなお店。

待ち行く人々を誘い、新しい出会いをくれる、優しい風の吹くお店。

喫茶翠屋二号店。

それが、この街の一角にある、人々が集まるお店の名前。

これは、そんなお店の騒がしいけれど、暖かな日々の、ほんの一コマ。








喫茶翠屋二号店、このお店が自慢とするのは、一号店である翠屋と同じく、甘くて優しい味のするシュークリーム。

そして、多くの年代に親しまれるコーヒーと紅茶である。

他にも多種多様なお菓子が並び、持ち帰りだけでなくお召し上がりも可能。

近隣にある聖王教会系列の魔法学院や、管理局の隊舎からも、男女問わずに通う人が多い。

メニューの関係から、女性客が主ではあるが、コーヒー好きな会社員や、店の雰囲気を好む男性客も少なくない。

中には、店員と店主とのやり取りや騒動を見たくて、わざわざ遠くから通いつめる人まで居る。

「オーダーです、6番テーブルにシュークリームとエンゼルケーキ、紅茶のダージリンとオレンジジュースです」

「8番テーブルに、カスタードシューとシナモンクッキー、それにコーヒーをブレンドで」

「あいよ、先に2番テーブルのサンドイッチと飲み物頼む」

翠屋一号店と同じエプロンを身につけた、可愛らしいウェイトレスが長い髪を揺らして注文を伝える。

その後に続くのは、同じく翠屋のエプロンに、ウェイターの格好をした少女。

長い髪のウェイトレスが、カウンター内で仕事をしている男性からメニューが置かれたお盆を受け取り、足早に2番テーブルへと運ぶ。

ウェイターの格好をした見た目華奢な少年な少女は、男性を手伝いにカウンター内に入り、スイーツを準備する。

開店した当初は、まごまごしていて頼りなかった二人も、今では立派な店員として働いている。

そこそこの広さを持つ翠屋二号店内を忙しそうに、しかし楽しそうに行き交う対照的な少女達。

実は双子で、姉に見えるほうが実は妹という、事実を知ると大抵の人が驚く二人。

オットーとディードは、今日も元気に接客業に精を出している。

最初は無口で無表情な二人で大丈夫なのかと心配していた男性…宮本 良介の不安も、今は無い。

むしろ、無表情が多い二人の、時折浮かべる小さな微笑を見たくて通う男女は少なくない。

常連客の男性から大人気のディードと、悲しいかな女性から大人気のオットー。

この二人のお陰で、若年層の確保は問題無かった。

逆に中高年の方々に大人気なのが、ビシッとしたスーツを翠屋の制服風にアレンジした服装の女性。

「いやはや、ウーノさんの入れる紅茶はいつも絶品だね」

「ありがとうございます」

「本当よね、私も紅茶を入れるけれど、この味は出せないわ…」

「趣味が高じたモノですが、喜んでいただければ幸いです。宜しかったら、簡単なコツをお教えしますよ」

そう言って微笑む女性、ウーノの笑みに、同性の女性は憧れ、異性は見惚れる。

丁寧な物腰に、秘書然とした言葉、そして温かな笑み。

この女性に惚れない人間は、そうそう居ないだろうと、店長である良介は常々思っている。

この喫茶翠屋は、通常は店長である良介、マネージャー兼店員のウーノ、チーフウェイトレスのディードと、
ウェイトレス時々ウェイターなオットーで切り盛りされている。

この他に、チーフマネージャーであるアリサと、助っ人である久遠、お手伝いのヴィヴィオとルーテシアが居る。

他にも非番な管理局の局員やら教会関係者が手伝いをしていたりする、実にバラエティ豊かなお店。

イベントにも力を入れており、店員達が仮装したハロウィンデーやら、着物を着た和風デー。

渋いオジサマがウェイターをしてくれるオジサマデーに、女性向けのレディースデー等など。

店長の思いつきやら、居候達の思いつきで開催されるイベントは、かなり好評だったりする。

因みにオジサマデーには、某部隊の隊長達が緊急招集されたりする。

訪れる客は女性客ばかりで、意外な事に若い女性が多かった。

似たようなイベントに、ホストデーというものがあり、ウェイターが全員スーツを着用したイケメンで構成されている。

強制手伝いの人には、某提督艦長とか、眼鏡提督の息子眼鏡とか、ヘリパイロットの武装隊員とか、査察官とかが居る。

こちらは熟女や艶女に大人気。

しかし、店長が誘惑されてから開催はされていない。店員達が大反対したので。

で、本日はレディースデー。

この日は、普段はウェイトレスのオットーがウェイターの格好をさせられる。

理由は至極簡単。オットーが可愛い男の子に見えるからだ。

この事に対して、本人は既に諦めの境地。

時々強制で手伝わされるエリオと共に、女性達から熱い視線を受けている。


因みに、以前この店に強盗が入ったのだが、その時運良く(犯人達には運悪く)管理局や聖王教会などの知り合いが一堂に会していた。

金を出せとナイフを突きつけた瞬間、一斉にデバイスと固有武装を突きつけられた犯人達。

その後は言うに及ばず、フルボッコされた後、陸士の方々が連行した。

以後、この店に押し入る勇気がある犯罪者は皆無となった。

別名がプチ管理局本局なんて呼ばれてる店に、入る馬鹿は居ないだろう。


「ウーノ、ちょっと良いかしら?」

「なんでしょうか、アリサさん」

店の奥にあるスタッフルームからウーノを呼ぶのは、このお店の影の支配者、アリサ。

彼女は忙しい時はウェイトレスをしているが、普段はお店の経営や仕入れの管理、その他の雑務を一手に引き受けている。

ウーノは、その保有するISと性格からアリサの右腕として仕事をしている。

紅茶は彼女が始めた趣味であったが、今ではお店で大人気の腕前になっている。

「小麦粉の物価が急に上がったんだけど、調べられる?」

「少々お待ち下さい」

アリサの言葉に、スタッフルームの扉を閉めてフローレス・セクレタリーを発動させるウーノ。

すぐさま情報を収集、膨大な情報を処理していく。

「原産地の一部で、大きな災害が発生したようです。現在別の原産地からの輸入に切り替えていますが、暫く物価は戻らないでしょう」

「やっぱりかぁ…あそこの小麦粉が一番地球のに近いんだけどなぁ…」

お店で使用する材料は、全て良介が現地で調達、アリサが調査して使用している。

オリジナルである翠屋の味を、ここクラナガンでも作れるように、材料は厳選しなければならないのだ。

地球から直接持ってくるにしても、管理外世界からの物資の持ち出しは原則禁止であり、取引もされていない。

管理局が活動する上でならある程度許されるものの、流石に輸入までは無理である。

「同種の小麦粉が、卸業者の一部にまだ残っていますが、如何致します?」

「ん〜、災害の規模を考えると…3割買い占めて。それで半年は余裕で持つわ」

「了解しました」

アリサの言葉に頷いて、早速手続きを開始するウーノ。

かつては危険な仕事の情報を扱っていた彼女も、現在では平和な情報をやり取りする毎日。

だが、そこに一切の不満がないのは、今の自分に満足しているからだろう。

ただ、時々アリサと共に株とか先物取引で大儲けしているという噂が流れていたりする。

因みに、ウーノはアリサの事を色々な意味で尊敬していたり。





お昼を過ぎると、客足も疎らになってくる。

次に忙しくなるのは、魔法学院の生徒達が下校する3時過ぎ。

それまではゆっくり出来ると思っていた良介が、ふとカレンダーを見て焦りを顔に浮かべた。

「しまったっ、今日はあいつら昼交代の日かっ!」

「「っ!」」

その言葉にディードがパタパタと慌てて厨房に入り、材料を切り始める。

オットーは食器の準備をする傍ら、大鍋にお湯を沸かし始める。

良介も慌てて厨房に入ると、仕込んであった肉を焼き始める。

お店の中に、フレンチな香りが漂い始める頃、店の外から何かの走行音が二つ聞こえてくる。

そして店の前の道で急カーブとブレークでもかけたのか、キキキキィッという甲高い音と共に店の扉が勢いよく開かれた。

「たっだいまーっ!」

「帰ったぞっ!」

飛び込んでくる、青と赤の少女。

その後に続いて、ボードのような物を抱えた少女と、長い髪とリボンを揺らす少女が入ってくる。

「ただいまっす、二人とも速過ぎっすよ…?」

「だだいま。またギンガとチンクに怒られるよ」

「「うっ」」

後から入ってきた二人…ウェンディとディエチに言われ、変な声を上げて停止する二人。

現在特別救助隊のツートップとして人々を救っている、スバルとノーヴェである。

ノーヴェとウェンディ、ディエチは更生プログラムを終了後、スバルと同じ救助隊への道を希望。

高い能力とその後の実績から、晴れてスバルと同じ特別救助隊へ転属。

スバルとノーヴェは部隊きっての突撃コンビ、ウェンディはISを駆使して人々を救い、
ディエチの大砲は、今は災害という名の敵を狙撃している。

因みに、チンクは現在ギンガやセインと共に陸士の捜査官として活躍している。

「帰ってきたのは良いが、お前等少しは静かにしろっての」

帰ってきた居候達を見て、やれやれと首を振る良介。

本日は、昼で部隊の勤務交代が行われる日であり、昼前まで働いていた彼女達が、腹を空かせて帰ってくるのだ。

「えへへ、ごめんなさい」

「悪い、騒ぎ過ぎた…」

ぺろっと舌を出して謝るスバルと、罰が悪そうに謝るノーヴェ。

昔は犬猿の仲だった二人も、思えば仲良くなったものである。

「お帰りなさい皆。今日は部隊の子は一緒じゃないの?」

ウーノが帰ってきた妹達に、特製の紅茶を振舞う。

以前にも増して、慈愛的な姉となったウーノに、妹達は大歓迎だった。

「あれ、そう言えば皆は?」

「やべぇ、どこかで置いて来たか?」

今頃になって気づいた二人。

普段、仕事が昼で終了した時は、同じ部隊の後輩や同僚を連れて来るのだが、今日は誰も居なかった。

と、二人が顔を見合わせた所でお店の扉が開き、息を切らせた管理局の局員達が重なり合うように崩れ落ちた。

「スバル、陸曹、速い、ですって、ばぁ…はぁ、はぁ…っ」

「ノーヴェ一士、置いて、いかないで〜…はうぅぅ…」

「先輩達、速すぎるッスよぉ〜…」

「ぜい、ぜい…も、だめ、死ぬ、死んでまう…」

男女それぞれ二名ずつが、息も絶え絶えで訴えていた。

「お前等、徒歩の連中を連れてきたのか」

「あ、あははは、そう言えば誰も運転できないんだっけ…」

「わ、悪い、うっかりしてたっ」

救助隊に転属してから実績を積み上げ、陸曹となったスバルと、一等陸士として活躍するノーヴェ。

そんな二人に憧れる後輩達は、先輩達から誘われたものの、誰も車が運転できない為、
隊舎からお店までの4キロを全力で走らされたのだった。

「情けないっすねぇ、良介さんなら3キロどころか、ここから本局まで走って行けるっすよ?」

「マスターと比べないでほしいッスよっ!?」

体育会系なのか、口癖がッスな二等陸士はウェンディの言葉に即座にツッコんだ。

「あぁん? それはあれか、俺を化物とでも言いたいのかコラ?」

「ち、ちちち違うッスよ、そんな事言ってないッス!?」

誰が噂を撒いたのか、管理局内で宮本 良介という名前は色々な意味で有名だった。

曰く、自転車でクラナガンの端から端まで猛スピードで移動する。

曰く、次元航行艦に自転車で乗り込める。

曰く、地上本部の偉い人とタメ口が出来る。

曰く、管理局本局から重要人物として認定されている。

曰く、彼の危機には陸・海・空全てのエースが駆けつける。

曰く、管理局の白い悪魔を片手で倒せる。

曰く、竜をデコピンで倒せる。

曰く、12人の妹が居る。

曰く、5人の母が居る。

曰く、ハーレムを作っている(現在も増加中)。

それらの噂から、翠屋のマスターである良介は、局員、特に新人から畏怖と尊敬の目で見られていた。

無論、どれも嘘…とは言わないが、かなり誇張されているのは確かだ。

「まぁいい、どうせ腹減らして来るだろうと思って大量に作っておいたから食っていけ」

「「「「ありがとうございますっ!!」」」」

新人なのだろう、礼儀正しい4人。

「因みに料金はスバル達から請求するから」

「「「「えぇーーっ!?」」」」

「「「「先輩、ゴチになりますっ♪」」」」

良介の言葉に、誘うんじゃなかったーと叫ぶスバル達。

身体が資本な陸戦魔導士。

特に救助隊のフォワードを始めとした前線隊員達は、兎に角食べるのだ。

そんなメンバーが4人、さらに自分たち。

いくらスパゲッティやサンドイッチがメインでも、お値段はかなりの物になる。

スバル達が嘆くのを眺めてからカウンターへと戻る良介。

「結局お金は取らないのに、意地悪な人ね」

「居候してる上に、毎度毎度ただ飯食われるんだ、少し位苛めても問題ないだろ」

くすくすと笑うウーノに、肩を竦める良介。

翠屋が入っている建物は、実は土地を含めて全部が良介の…と言うより、アリサの所有物なのだ。

1階は翠屋が丸々使い、2階から上は寮として機能している。

入居者は、良介やアリサ、ウーノを始めとしたオットー・ディードの翠屋従業員に、スバル・ノーヴェ・ウェンディ・ディエチの4人。

更に、チンクとセイン、ギンガ、首都防衛隊で活躍中のトーレとセッテ、執務官補佐として仕事をしているティアナの部屋もある。

上の階を寮として開放したのは、良介が海鳴での思い出を忘れない為に、
ここを、翠屋のように安らげる場所として、そしてさざなみ女子寮のように、笑いの絶えない場所にする為に、アリサに提案したのだ。

因みに他にも入居者は居り、セカンドハウス的に使用している人も居る。

ほぼ全員が女性なので、良介の噂のハーレム疑惑が濃厚になってしまったのは、悲しい誤算。

因みに、先ほど名前が挙がらなかったドゥーエにクアットロはと言うと……。

「あぁん、リョウスケちゃ〜ん、そろそろ解いて〜」

「あぁ、キツイ…でも、イイっ」

………縄でグルグルに縛られ、蓑虫の如くスタッフルームで吊るされていた。

良介流お仕置き、蓑虫放置。

名前のまんま、蓑虫のようにグルグルに縛られて吊るされ、放置されるこのお仕置き。

肉体的にも精神的にもかなり辛いのだが、ドゥーエはむしろ喜んでいる気がしないでもない。

「うぅ、ちょ〜っとIS使って盗聴と盗撮しただけですのにぃ〜…」

「うふふ、まだまだ甘いわねクアットロ…私なんて、ISで変身して抱かれようとしたのよ。
でも一目見ただけで見破られてしまったわ…あぁ、流石ですわリョウスケ様…なんて深い二人の愛、思わず嫉妬で狂いそう…うふふ…」

「私は精神的な苦痛で狂いそうですわ、姉様…」

「ダメですわねクアットロ…良い事、これはリョウスケ様の愛と思うのよ」

「あ、愛…?」

「そうよ、愛よ、愛なのよ! このグルグル縛りは、私達を二度と手放す気のないと言う意思表示! 
そして放置されているのは、その間私達がリョウスケ様への想いを募らせる為の行為! 
長く放置されればされるだけ、私達のリョウスケ様を求める想いは強くなるのっ、解放される為に、そして愛される為にっ!!」

「な、なるほど、流石ドゥーエ姉様、これは愛、リョウスケちゃんからの屈折した愛なのね! 
あぁぁ、そう思うと、なんだか、んぅ、縄の感触がぁ…」

「んふふ、良い表情よクアットロ…そのまま、全てを捨てて、受け入れるのよ」

「あぁぁんっ、姉様ぁ、ドゥーエ姉様、なんだか、凄く気持ちよくなってきましたわぁぁぁ……っ」

「…………ウーノ、生ゴミの日はいつだ。なんなら素材ゴミの日でも良い」

「残念ながら、どちらもつい先日です」

「あいつ等ドクターのとこに送り返せ! もしくはもう1回更生プログラム受けさせろっ、えぇい面倒だ、ギンガだ、ギンガを呼べぇっ!!」

良い感じに錯乱している良介。

流石の良介も、ドSからドMへとなった諜報者と、姉の再教育で徐々にMへと成りつつある眼鏡は、見るに耐えなかったらしい。





さて、救助隊の隊員達が腹を満腹にして帰り、ただ飯の料金代わりにスバル達を働かせつつも、学院帰りの学生が訪れる時間帯を乗り切り。

夜の為に軽い軽食を仕込んでいると、馴染みの顔が現れた。

「邪魔をする」

「よう兄貴、元気そうだな」

「お前もな。店は順調か?」

訪れたのは、良介が兄と慕う男、ゼストであった。

「ぼちぼちだな。そう言う兄貴はどうなんだ?」

「こちらも似たようなものだ。レジアスも死人に酷な仕事をさせる」

苦笑して、カウンター席の端へと座るゼスト。

「ま、それだけ兄貴を信頼してるってこったろ。何にする?」

「いつもの。それと、土産にいくつか見繕ってくれ」

ゼストの注文に答え、彼がいつも注文するコーヒーと、土産用のケーキとシュークリームを包む。

「首都防衛隊の戦技教官だっけか、また大変そうな仕事だよな」

「相変わらず、地上は人手も技量も不足していてな。死人にすら仕事をさせるほどだ」

「オッサンは使えるものは何でも使うからなぁ…でも、前よりマシになったんだろ?」

「あぁ、以前より…レジアスと俺が、かつて求めたモノに、なりつつある。これも全て、お前のお陰だ」

「止してくれよ、俺は何もしちゃいないって」

ゼストの真っ直ぐな感謝の言葉に、照れたのかおどける良介。

「謙遜するな。あの事件の功労者はお前だ。少なくとも、俺とレジアスはそう思っている」

「兄貴は兎も角、オッサンがねぇ…」

「あれでレジアスはお前を気に入っている。だから陸士に誘っているのだろう」

「オーリスが買いに来る度に管理局のパンフレットを置いて行くのはそれか…」

シュークリームを買いに来る度に、管理局の、特に地上本部と陸士の資料を置いて行くオーリス。

父親の指示なのか、それとも独自の行動なのかは謎だった。

「そう言えば聞いたか、スカリエッティがまた難病の治療法を発見したそうだ」

「へぇ、これで26個目だったか、ドクターもやるじゃねぇか」

「あれで奴は天才だからな。今まで他者に誇示するだけだった才能を、他者を救う為に使い始めたのだ、むしろ当然と言えよう」

ジェイル・スカリエッティは現在、管理局の監視の下、医療技術の発展の研究を行っていた。

監獄内に特別に設置された研究フロアで、日々難病や奇病の治療法を研究して過ごしている。

「しっかし、あのドクターが本当に医者になるとはね…世の中何があるか判らないもんだぜ」

「ふ、その原因がそれを言うのか?」

「あん?」

「奴に、他者を救うという道を指し示したのは、宮本、お前だ。あの時、死に掛けたお前を救う為に、あのスカリエッティが泣き叫んだ。

私に治療させろ、私なら彼を救える、私が宮本君を助ける、そう叫び、訴えた。あれが今の道の始まりだったのだろう」

「………………」

「望まぬ生まれ、他者と違うという孤独。それが奴を、あの夢へと堕としていった。
だが、同じように孤独を纏ったお前と言う存在が、奴に初めて仲間という意識を持たせた。友と言っても良い。
これまで奴と接してきた者たちと全く違う、遠慮も配慮も無い態度と言葉、
建前もなにもない、本音で話してきた唯一の存在、それがお前だ」

「………別に俺は、言いたいこと言ってただけだぜ?」

「それが奴にとっては初めての経験だったのだろう。孤独に生まれ、孤独に育ち、孤独だけに愛された者同士。
しかしお前は、誰かの為に、何かの為に、命を捨てる覚悟で戦った。その姿に、奴も突き動かされたのだろうな」

「……………」

「長い話になったな。………美味いコーヒーだ。また寄らせてもらう」

コーヒーを飲み干し、席を立つゼスト。

「兄貴」

代金を支払い、土産を持って店を出ようとするゼストを呼び止める良介。

「良い酒が手に入ったんだ。ゲンヤのオッサンにも声かけてある。兄貴も、オッサン誘って来てくれよ」

「………あぁ、必ず行こう」

互いに、男臭い笑みを浮かべて、二人はそれぞれの仕事に戻る。

ゼストは幸せな場所を守る為に。良介は幸せな場所を作る為に。

それぞれの役目の場所へ、誇りと誓いを持って。

「ウーノ」

「なんですか?」

「今度、ドクターに逢いに行くか。全員で、さ」

「……っ………はい」

良介の言葉に、ウーノは少しだけ瞳を震わせ、小さく頷いた。















夜。

喫茶翠屋は閉店し、明日の仕込みも終了した。

後は一日の疲れを癒し、明日へと備えるだけ。

「なんだがなぁ……」

「ん…何がですか…?」

ポツリと良介が呟いた言葉に、首を傾げるウーノ。

良介の傷痕に、丹念に、丁寧に、想いを込めてその柔らかな唇で口付けていたウーノ。

良介の、腕や身体に刻まれた傷痕にキスするのが、ウーノの慎ましい愛情表現。

この傷痕も、その傷痕の理由も、全て受け止め、愛するという、深い愛の表れ。

「いや、明日も仕事なのに、なぁと…」

「お疲れですか、“アナタ”…?」

良介の呟きに、少し済まなそうな顔で問い掛ける。

意外な事に地球の、日本の文化が気に入った彼女は、プライベートでは良介の事を夫としての呼び方、アナタと呼ぶ。

そんなウーノの左手に光る、銀の指輪。

指輪の位置は、言わずともわかるだろう。

「いや、疲れはないんだが…」

「歯切れが悪いですね…もしかして、まだ慣れてないの…?」

ウーノの言葉に、うっと呻く良介。

「し、仕方ないだろ、まさかお前とこんな関係になるとは思わなかったし…ここまでお前の事を愛せるとも思ってなかったしな」

「ふふ、私もです。最初は、ドクターに無礼を働く厄介者という認識でしたからね」

クスクスと笑い、ベッドで寝そべっている良介の厚い胸に頬を摺り寄せるウーノ。

彼女の長い髪が、良介の身体を流れる。

「ですが、いつの間にか貴方は姉妹達の大切な存在となり、ドクターの友となっていた…
アナタにその認識が無くても、ドクターは友と思っていた…。
そしてアナタが死に掛けた時、私はそれまで最優先であったドクターの事を……忘れてしまった。
ただ、アナタが死ぬ事が怖くて、何も出来なかった」

「ウーノ……」

「ドクターが貴方を治療している間、私は祈る事しか出来なかった。その時気づいたんです、アナタを、愛しているのだと」

失いそうになり、初めて知る、幸せ。

失いそうになって知る、愛するという意味。

「姉妹達も、そしてドクターも、貴方を失う事を恐れた。ディードやオットーが、貴方の傍にいるのは、貴方を守る為なんですよ?」

「初めて聞いたぞ、そんなの…」

「言ってませんから。ドクターと、私達姉妹全員で誓ったんです。もう二度と、貴方を傷付けさせないと」

「……ノーヴェやセインが、指切った時やたら動揺するのはそれか」

「トーレが貴方を鍛えるのも、ドゥーエが常に貴方を見ているのも、全ては貴方を守る為に。勿論、私もですよ、アナタ」

「なるほどな……俺がお前達を守ってるつもりだったけど…逆だったか」

ウーノの柔らかな手が、良介の頬を撫でる。

「守って貰っていますよ」

「ん?」

「この幸せな気持ちを…優しい時間を。アナタに…」

そう言って、ウーノは優しく微笑み、口付けを交わす。

甘く優しい口付けを受け入れながら、良介はウーノを抱く手に力を込める。

これからも、ずっと守っていくと心に誓いながら………。













「アナタ、お疲れなら私がしますから…そのままで…」

「いや、どの道疲れるから。と言うか、今日は激しくないか?」

「そうですね、少し私も大胆かもしれません。でも、立場は明確にしておかないと」

「は?」

「誰が、アナタの妻であるかと言う事を。“ドアの前”の愚妹達に…ね……?」






「うわ、バレてる…っ」

「ウーノ姉、最近鋭すぎるっす…」

「愛の成せる技だね」

「って言うか、逃げようよ、ギン姉達に怒られちゃうってば!」

「既に手遅れかと……」

「きっと、ボク達のこと連絡済みだろうね…」

良介達の部屋の前で、小声で騒ぐ泥棒猫候補達。

そんな彼女達に見せ付ける…むしろ聞かせるように、嬉声を漏らすウーノ。

その声を聞いて、ノーヴェとスバルが真っ赤になり、ディードが気絶寸前になっていたりした。

















「はぁ、はぁ、リョウスケちゃん、リョウスケちゃぁん、お姉さん、お姉さんはもう、もうぅっ!」

「……………………もしかして、本気で忘れて放置されてるのかしら…?」

いよいよドMの境地へと突入し始めたクアットロの隣で、現状に気づいたドゥーエが冷や汗を垂らしていた。










〜まさかのウーノエンド・終わり〜











あとがきのさらにあとがき。

やっちまったと蝶・後悔!
だけど止めれぬ妄想道!
しかしまたリョウさんのネタを元にしてしまった、ごめんなさいリョウさん!(土下座)

すみません、仕事で色々あってついカッとなって書いちゃいました。
実際にはありえないカップリングで書いてみた。無理があったなぁと絶望。
このお話のウーノさんは、ドクターを父親として見ていますから。
あとドクターが若干良い人。
また書くかもしれないし、書かないかもしれません(何)
とりあえず、濡場の文章を削除削除っと(マテ)

一部キャラが酷い方向に壊れておりますが、仕様ですので(コラ)
因みにドゥーエの様呼びとドM化、クアットロの性格矯正はリクエストを元にしております。




あれ、もしかしておまけの方が長い?(滝汗)







作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。