VANDREAD連載「Eternal Advance」



Chapter 1 −First encounter−



Action9 −侵入−




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 タラーク軍の母船イカヅチに向けて、攻撃が苛烈を極める中―――

マグノ海賊団率いるドレッドチームが、チームリーダーであるメイアを先頭にイカヅチに肉薄する。

ドレッドの性能、チームの統制、パイロットの腕。

どれを挙げても超一流の彼女達になす術もなく、タラーク軍は追い込まれていた。

・・・・・かに見えたが――――





「うおわぁぁぁーーーー!?」

「くうっ!?」





 旧艦区の外部出撃ポイントで、一体の蛮型とドレッドが激しい火花を散らして互いにぶつかり合った。

パイロットはそれぞれ、カイ=ピュアウインド・メイア=ギズボーン両名である。


「つつっつ・・・・」


 蛮型のコックピット内において、カイはクラッシュ時の視界の暗転に頭を何度も振る。

余程激しいショックだったのか、正面のモニター画面に各所の破損状態を知らせる文字が並ぶ。


「ふう・・・・何なんだよ、今のは!?敵の攻撃か!?」


 せっかく意気揚々と初めての宇宙の出撃に闘志を燃やしていたのに、当初からつまずいていた。

基本操作すら満足に扱えない上に、機械の知識すらまるでないカイには何がなんだかまるで分からない。


「とりあえず状況確認をしたいんだが・・・・」


 手元に設置されている操作類をまじまじと見つめるカイ。

どれを操作すればどのように動くのか、彼にはさっぱり理解できなかった。

額に汗を一筋流しながら、それでもめげずに彼は蛮型のコントロールを試みようとあちこちを触る。


「これはたぶん操作レバーだから・・・・おい!これ、どうやって動かせばいいんだ?」


 抱えこんで無理やり同乗させた六号に尋ねるカイ。

六号はすぐさま操作マニュアルを画面に表示する事によって、ようやくカイは蛮型を立て直す事に成功した。

被害状況を知らせる損傷データを出力させ、外部モニターに切り替える。

すると、


「あ!?あいつら、まさか船に向かう気か!!」


 カイが見つめるモニターの先には、海賊達のドレッドチームが編成している様子が映っていた。


「ピピ、テキハイカヅチキュウカンクノカタパルトヨリシンニュウスルモヨウ」

「何だと!?くっそぉぉぉぉぉー、ちょこざいな真似を!?
あいつ等に好き勝手させてたまるか!先回りしてくい止める!!
おい、あいつらの詳しい侵入経路を教えろ!!」


 カイの言葉に、画面を激しく点滅させて六号は反論した。


「ムボウデス。アナタノセントウリョクトテキノセンリョクヲヒカクシテクイトメラレルカノウセイハ・・
・・・・・・・・・・・・ケイサンカンリョウ!
テキセンメツカクリツ、0,00000000000000000000000001パーセントミマン」


 画面に映し出される零が数多く並ぶ数字の低さはまさに絶望的だった。

タラーク軍の護衛艦隊や守護艦が翻弄される相手なのだ。

パイロット訓練の一つもうけていない人間がいくら奮闘したところで、逆転できる戦況ではない。

勢いと度胸だけでは、百戦錬磨の海賊達を止めることはできない・・・・・・


「・・・・・・・へ・・・」


 画面の数字をじっくりと見て、カイは親指で鼻をこする。


「要するに0じゃないんだろう?だったら、やってみるまでだ!
男カイ、敵を前におめおめと逃げる程腐っちゃいないぜ!!」


 カイにしても状況は薄々とだが理解できていた。

タラークの軍が敗れつつある事、海賊達の戦力は想像を遥かに超える規模である事。

そして、自分一人ではどうにもならない過酷な現実を――――

だが、それでも・・・・・・・・・カイは諦めたくはなかった。


「何事もやってみなければわからねえ・・・・・
ここで立ち向かわなければ、俺は二度とヒーローと名乗る資格はねえ!
心配してくれる気持ちは嬉しいが、悪いけど俺は引き下がる気はないぜ」


 カイはそう言って、にっと清々しく笑った。

元々六号はカイを心配して助言しているわけではない。

全ての行動がプログラミングされているだけで、ただ単に命令をこなしているに過ぎない。

だが、カイは六号をただの機械以上の視線で見つめているようだ。


「ピピ、リョウカイ。テキカンタイキドウ、ケイサンシマス」


 六号はカイの眼前にふわっと浮かび、自身の表示画面を切り替える。

すると大まかな戦況図が表示され、敵ドレッドの進入経路がわかりやすく表示される。


「なるほど、先回りするのは・・・・・」


 六号が弾き出してくれる計算データを参照に、カイは慣れない手つきで操作レバーを手にかける。















一方、その頃。





「メイア、大丈夫!?どこか損傷したんじゃあ!?」


 メイアのドレッドに誘導される形で追尾していたジュラだったが、突然起こった接触事故に顔色を変えた。

慌てて、ドレッドの起動を曲げてメイアのドレッドに接近する。

モニター画面で見た限りに損害はない様子だが、それでも気にかかって仕方がなかった。

緊急の通信を入れて尋ねるジュラに、メイアは小さく頭を振って通信をオンにする。


「問題はない。突然の進路妨害に対処しきれなかっただけだ」


 ヴァンガードの不意を予想できなかったのが悔しいのか、メイアの声に張りがない。

どうやらドレッド自体に大きなダメージは受けてはいないようだ。

ジュラはほっとして、普段の余裕のある表情を取り戻す。


「一体なんだったのよ、あのヴァンガード。狙ってやったのかしら?」


 最高速度で宇宙を巡航するドレッドに進路妨害など、普通は考えられない事だ。

常識では理解できない行動に、ジュラは悩んでいるようだ。

逆に、メイアはジュラの通信により冷静さを取り戻した。


「考えていても仕方がない。たかが一体の蛮型だ、気にする程の事ではない。
ドレッドチームを立て直して敵母船に侵入を試みる。ジュラはAチームの指揮と誘導を頼む」

「了解。こっちは任せて」


 ドレッドの体勢を立て直して、メイアは再びイカヅチへ突撃をかけた。

ぐんぐんスピードは上がり、イカヅチ本船へと近づき始める。

接近する敵影を発見したイカヅチクルーは巧みに艦を操作し、激しいエネルギー射撃の雨を降らせる。


「攻撃にひるむな。陣形はそのまま、母船に突撃する!」

『ラジャ−!!』


 メイアの指揮により、ドレッド達はイカヅチからの攻撃も苦にせず接近する。

タラーク軍も徹底抗戦を繰り広げるがドレッドチームに微々たる損害しか与えられず、翻弄されるままであった。

新型の蛮型も奮闘はするものの、ドレッドに近づく事すらできない始末である。

そもそも蛮型は機体の外見上、戦闘においてのタイプは接近戦用である。

比べて遠距離の射撃が可能なドレッドと比べると、機能的にかなりの不利である。

武装も満足に整っていない蛮型では相手にすらならなかった。


「そろそろ母船よ。獲物はすぐどこだわ!」


 順調に男達の軍を蹴散らしてきた事もあって、ジュラは余裕を含めて操作レバーを滑らかに操る。

流麗な赤い軌跡を宇宙に描いて艦対砲をかわし、母船の後方へ向かった。

残存するタラークの艦も体勢を立て直そうとするが、もはや間に合う状態ではなかった。






しかし――――





「ちょ、ちょっとあれ!メイア」

「!?あれは・・・・・・・・・・・」


 イカヅチ後方カタパルト、旧艦区へ繋がる発射口の前に一体の蛮型が立ちはだかっていた。















「ふう、タッチの差か・・・・・・」


 全身に重い疲労感を感じながら、カイは鋭くメインモニターを見やる。

慣れない操縦に、対ショックを和らげるパイロットスーツも着ていない生身の身体には相当こたえたようだ。

操縦レバーを握る手も若干震えている。


「ひい、ふう、みい・・・・大よそ五十隻以上か。デビュー戦にはもってこいの相手だな」


 カイの乗る蛮型、正確には後ろのカタパルトを目掛けてドレッドが急速接近してきている。

初めての実戦とあってカイは疲れとは違う感覚に犯され、手の震えを止められなかった。


「ピピ、テキセッキン。イッチョクセンニコチラヘムカッテイマス」

「そんなもん見ればわかる!!」


 胸の奥から湧き起こる恐怖と興奮を深呼吸で抑え、キッとカイはモニターを睨む。


「さーて、悪いがお前らの好き勝手にさせる訳にはいかないからな。
悪あがきくらいは・・・・・・・」


 震える手をぎゅっと力強く押さえて、レバーを勢いよく傾ける。


「させてもらうぜ!!!」


 蛮型九十九式、足に誓いを刻まれた「カイの機体」は力強い輝きを発してドレッドへと突撃をかけた。















「何よ、あのヴァンガード。たった一体で私たちとやり合えるつもりかしら」

「・・・・・・・・・・・・・」


 普通に考えればどうというほどの事ではない。

母船や戦闘艦クラスならまだしも、たかだか一体のヴァンガード。

ただそれだけである。

チームで集中砲火を浴びせるなり、自身のドレッドでビームをぶっ放せばそれで事足りる。

しかし、メイアの心の中にはある種の迷いがあった。

自分達に向かって突撃してくるあのヴァンガードに他とは違う何かを感じるのだ。

何が違うのか?と問われるとメイア自身も答えられないほど微々たる感覚だったが、彼女は即断が出来ずにいた。


「メイア、どうしたのよ。とっとと片付けちゃいましょう」


 返答が帰ってこない事にイライラしながら、ジュラは自分の率いるチームを待機させている。

チーム内の統制の乱れを感じたメイアは一瞬目を瞑ったかと思うと、


「・・・あのヴァンガードにかまうな。敵母艦に集中する!」

「了解。しっかりしてよね、メイア」


 いつもとは違うメイアを心配してか、ジュラはそっと励ましを送る。

ジュラの言葉に迷いを振り払うように頭を振ると、自分のドレッドの速度をあげた。

左右にある大きな両翼が白く輝き、鋭い直線の動きでメイアのドレッドは加速していく。

そしてそれぞれのチームリーダーの動きに合わせる様に、他のドレッドも急加速をかけて接近する。

そんな迫りくる海賊達をみすみす見逃すカイではなかった。


「そうはさせるか、この!!」


 宇宙での戦闘には攻撃手段を持たない蛮型だが、カイは懸命に操縦して近づいた。

ビリビリと絶え間なく襲いかかるGに歯を食いしばりつつ、蛮型はドレッドに迫ろうとしていた。


「邪魔よ、あんた!!」


 迫る蛮型をまるでハエでも追い払うかのように、ドレッドチームの一体がビームを放つ。

高速で襲いかかる細い光の線を、若葉マークのパイロットにかわせる筈がなかった。


「ぐああぁぁ!?」


 左肩の部分にビームに着弾し、木の葉のように揺れるカイの蛮型。

そんな彼の期待を嘲笑うかのように、ドレッドチームは次々と横を通り過ぎていった。


「く、くそ・・・・待ちやがれ、てめえら!!」


 異常を知らせる機械音とモニター画面を無視して、カイは蛮型の態勢を立て直す。


「悪いがもうちょっと付き合ってもらうぜ、相棒!」


 次々と離れつつあるドレッド達を見ながら、カイは懸命に操縦をこなそうとする。

と、そこへ見覚えのある機体がメインモニターに映し出された。


「あっ!?あれはさっきいきなり攻撃しやがった奴じゃねえか!!」


 画面に映し出された機体は、白い輝きを発するメイアのドレッド。

本当はただの事故に過ぎないのだが、突然宇宙に放り出されたカイに現状把握は不可能である。 

怒りと闘志に瞳を輝かせて、カイはメイアのドレッドに接近する。


「てめえ、さっきはよくもやってくれたな!!」

「こっちに来る!?」


 そのまま一直線に接近し、メイアのドレッドの先端部分をがしっと掴むカイの蛮型。

突然の襲撃と後に響くショックのために若干操作を狂わされたはしたものの、超一流の腕を持っているメイアを揺るがせる程ではなかった。


「邪魔だ」


 巧みに操縦桿を操り、カイの蛮型を振り払らうべく機体を左右に振り払う。

これまで襲い掛かってきた他の蛮型も、この巧みな操作により振り払われたのだ。


「う、うおっ!?」


 急激にかかる左右からの激しい衝撃に操作レバーの手が離れかけ、視界も歪み始める。

眩暈すら起こる身体機能の異常に、カイは吐き気がこみ上げる。


「うぐぐぐぐぐぐぐ・・・・・・・こ、こんな程度・・・・」


 重い操縦レバーを必死で握り、振り払われまいとカイは奮戦する。


「・・・・しぶとい奴だ」 


 他のヴァンガードとは違ってなかなか離れないのを訝しげに思いながら、メイアはそのまま後方カタパルトの侵入経路を確保する。

そのままイカヅチ艦内に入り込み、先端にしがみ付くヴァンガードを隔壁に叩きつける。


「あがぁ!?な、何て真似しやがる・・・・・」


 背中に押し寄せる衝撃と激痛に、カイは一瞬呼吸すら満足にできなくなった。

弱々しい息吹をしながらも、握る操縦レバーは決して離そうとしない。


「どういう事だ・・・くっ!くっ!!」


 カタパルトを通り抜け旧艦区内にドレッドを進めながら、メイアは絶え間なく蛮型を隔壁に叩きつける。

  だが、どうしてもカイの蛮型を引き離すことができなかった。

初めは冷静に対処していたメイアだったが、徐々に焦燥感が胸に生まれる。


「何故、離れない!!」


 思わず口に出る疑問と焦り。

うっすら汗がでてくるのは防護服を着ている為だけではないだろう・・・・・


「う・・・・う・・・・・・・・・」


 目の先に火花が散り、もうモニターを認識するのも危うい。

叩きつけられる事により機体は気味悪い音を立て、コックピットのパイロットにまで影響を及ぼす。


「ピピ゚、コレイジョウノセントウニハタエラレマセン。スグニタイヒヲ」


 カイの胸元で小さい画面を点滅させて、カイに訴えかける六号。

しかし、カイの耳には六号の緊急避難勧告は聞こえてはいなかった・・・・・・


「くそう・・・・終わりか・・・」


 ガクガクする蛮型全体の揺れに手は痺れ、感覚すらなくなり始める。

何とか掴まろうとするものの、メイアとカイでは操縦テクニックが違いすぎた。


「畜生・・・・・・・だめだったか・・・・・」


 衝撃、反転、軋み始める機体。

全ての状況の悪化に視界は暗くなり、操縦レバーを握る手も弱々しくなる。

手からはすでに血が滲み出しており、痛々しいまでにコックピットの操作類を紅く染める。

やがて意識すら朦朧となるカイ。


「せっかくここまで・・・・・・こ・・れた・・・のに・・・・」


 暗闇に視界は閉ざされ、全身のすべての感覚が途切れ・・・・・・・




















―――green, red roses too―――

























(・・・?歌・・・?)















・・・・・・And I think・・・・ to myself・・・・・・















優しい旋律、そして澄みきった音色。

耳の奥で・・・・

脳裏に・・・・・優しく、優しく・・・・・










『・・・・what a wonderful world・・・・・・・・・』























「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!!!!」


 力強く操縦レバーを握り締め、カイは全身の疲労と苦痛を吐き出すかのように雄叫びをあげる。

水で洗い流されたかのように視界はクリアーとなり、モニターの全てが見渡せた。


「いつまでも調子に乗ってんじゃねえぞ、こら!!」


 メイアのドレッドの先端をしっかりと掴み、隔壁を背もたれにして、ドレッドの進路とは逆ベクトルに推進力を噴かした。

ギャリギャリと隔壁と蛮型の間で激しい火花が走り、蛮型の機体の表面はボロボロになっていく。


「馬鹿な!?そんな事をすれば機体もただではすまないぞ!?」


 隔壁との摩擦を利用したドレッドの停止という戦法をとる相手に、メイアの全身を戦慄が貫いた。

確かにスピードを逆に利用して、人型である事を生かして隔壁に踏ん張りをとれば、負荷がかかり強制停止させられる。

だが、恐ろしい程の重圧がかかるゆえに蛮型本体もただではすまない。

下手をすれば圧力の限界を超えてバーストする恐れもあるのだ。


「何者だ・・・・このパイロットは・・・・」


 危険を感じたメイアは蛮型を振り切るために、最大出力でフルブーストをかける。

操縦は二の次にして、隔壁に叩き込み蛮型を潰すつもりだった。


「ぐががが・・・・・い、意地でもはなさんぞぉ〜!」

「お前にかまっている暇はない!」


 互いに一歩も譲らずに、ドレッドとバンガードは艦内を迷走し続ける。

他のドレッドチームは、メイアの奔走に戸惑いを隠せなかった。

ジュラやバーネットも何度も通信を開こうとしたが、メイアからの応答はない。

それほどまでにメイアも、そしてカイも冷静さを欠いていた。

それが逆に事態をさらに深刻な状況へ追い込む羽目になった。


「こ、この・・・・・・止まりやがれーーー!!!」


 残っている最後の残存エネルギーを全て出力させて、カイはドレッドに体当たりをかける。

すると摩擦エネルギーとドレッド、蛮型からの圧力に耐え切れなくなった側面の隔壁が壊れる。


「うあわーーーー!?」

「あああーーーーー!?」


 メイアとカイ、ドレッドとバンガード両機が、壊れた隔壁の先に位置する旧艦区のある格納庫に墜落する。

その格納庫内には―――









ラジエーターに覆われた結晶体がオレンジ色の光を放っていた・・・・・・・



































<First encounter その10に続く>

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