ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action61 −長念−








 ――故郷へ向かう旅の間、男達三人はこんな会話をしていた。


『実家……?』

『カイ、お前三等民だろう――ああ、別に差別とか馬鹿にしている訳じゃないんだ』


 故郷タラークへは順調とまでは言わずとも、着実に近付いている。

ドゥエロとバートは士官学校の同期で当時気心こそ知れずとも、お互いの身分は分かっている。

だがカイは三等民で、労働階級。このような奇縁でなければおそらく一生知り合える機会はなかっただろう。


故郷へ辿り着けば再び、元の生活へ戻るかもしれない。


『僕達は故郷へ返ったら、メジェールの関係も含めて見直さないといけない。
でもほら、僕達だけで声を張り上げたって急に何もかも変わる訳じゃないだろう。

お前が不当な重労働に晒されるのを見過ごせないし、良かったら僕がお前の家にも働きかけるからさ』


『……こいつ、自分の家族ができてから急に堅実になったよな』

『家庭が出来るとはこういうものなのだろう。一家の大黒柱となる覚悟が出来たのだ、有人として祝福しようではないか』

『何でそんな生暖かい目で僕を見るんだ、君たち!?』


 全てが元通りにはならないが、過去は簡単に振り切れない。

バートの指摘はしごくもっともなのだが、彼が言うからこそその顕著な心境の変化に驚かされた。

カイやドゥエロも揶揄こそしているが、その変化は喜ばしく受け止めている。


何より友人を心配しての申し出だ、嬉しくないはずがなかった。


『前にも行ったと思うけど、おれはいわゆる養子だよ。酒屋の親父に拾われたんだ』

『大怪我して倒れていたんだったよな、記憶も喪失していて。普段見ていると、そういう感じはしないけど』

『怪我の影響で大きな衝撃を受けて、記憶が失われた可能性は大いにある。
メジェールの医療技術を活用すれば改善されるかも知れないが、今が安定している分踏み込むのは悩まれるな』

『ああ、その点は大丈夫。特に困っていないし、掘り起こしたいほどではないから』


 カイの記憶は精霊の試練を受けて、きちんと元通りになっている。

ただドゥエロが指摘した通り、下手に追求するべき記憶ではないので、遡及する真似はしない。

問われれば打ち明けるかも知れないが、別段誰かに言うほどではない。


地球で過ごした記憶、カイにとっては温かい思い出ではないのだから。


『うちの酒屋は場末もいいところで、軍事国家タラーク様がわざわざ問題視するほどの店でもないんだ。
ハッキリ行ってほったらかしで、利益とかも出ていない趣味同然の店だ。

客さんも常連しか来ないし、あのおっさんの暇つぶしみたいなものだ』

『よくそんなんで成り立っているな、その店』

『タラークは軍備増強の一途で、内政は全く力を入れていないからな。
区画整理も満足に出来ていないので、首都も放置された区域が非常に多く治安も悪くなっている』


 軍事国家タラークは対メジェール、対女を掲げていてその視点は外へ向いている。

その為国家の内情はいいとはお世辞にも言えず、労働階級に無理を強いて基盤を支える仕組みとなっている。

首都も人口増加に合わせて拡張したのはいいが、整備が出来ていない為に放置区域も出ていてチグハグとなっていた。


その恩恵というのは変な話かもしれないが、場末の酒場なんてほったらかしだった。


『酒も何処から仕入れているのか未だに謎だが、まあペレットとは違って支給品ではないからな』

『タラークは娯楽に乏しいから、酒とかそういうのは手に入れやすいもんな』

『飲酒の文化は私に馴染みこそないが、軍人達が酒場に行くのは特に珍しい話ではない』


 意外に思われるかも知れないが、軍事国家タラークは飲酒関係にはどちらかといえば温い。

ペレットなどの食料事情には規制まで入って厳しく管理されているが、その分緩くなっている分野もある。

商業が何も成り立たなければ国家は成立しないである種当然かも知れないが、


そういったバランスの悪さが、タラークの腐敗を物語っているかも知れない。


『前にも話したけど、うちの常連に軍人のおえらいさんが居て今回イカヅチへの乗船を融通してくれたんだ』

『お前が僕達の船に乗り込んでくれたキッカケになったんだよな。実際、誰なんだ』

『お前達のことは信頼しているが、その人のおかけでお前達を知り合えたからな。
悪いが迷惑を欠けたくないので、口を閉ざさせてくれ』

『ああ、それは当然だろう。気に病む必要はないし、詮索する気はない』


『そういってもらえると助かるよ。
その代わりうちの店の場所は特別に教えるから、平和になったら一度遊びに来てくれ。

酒くらい奢るぞ』

『シャーリーを連れていきたいから、子供でも飲めるものにしてくれ』

『ふふ、飲酒の習慣はないが、その酒の席は楽しくなりそうだ』


 ――こういう会話を行っていた。


だからこそバートとドゥエロは、軍人の偉い人が通うカイの実家を知っている。

















<to be continued>







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