ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action50 −第卒−








 母艦はマグノ海賊団が略奪した際、一度徹底的に探索が行われている。

ミスティが持ち込んだウイルスによるシステム停止、スーパーヴァンドレッドによる主力の大破壊。

母艦の戦闘システムは軒並み壊滅させているとはいえ、地球が保有する最大戦力、決して油断はできない。


略奪したからには米粒一つ残さず奪い尽くす事が、マグノ海賊団の流儀であった。


「ミスティの話を聞いて思い出したのだが、我々が捜索した際に幾つかの食料庫を発見した」

「食料……? この母艦、無人で運用されていたんだろう」

「刈り取りの目的は臓器である事は判明されているが、だからといって臓器だけを持ち帰るとは限らない。
人間を資源とするような連中だ、生かしたまま持ち帰るプランもあったかもしれない」

「なるほど……どのみち気分のいい話じゃないな」


 そもそも地球が子孫の臓器を奪おうとしているのも、自身の生存を目的としているからだ。

地球の生態は汚れきっており、生存する地球人達の弱体化した肉体では生き残れない。

その為他の惑星に生きる健康的な臓器を奪って、自分達に取り込もうとしている狂った者達である。


考え方は既に常軌を逸していた。


「各惑星の生体をサンプルとして持ち帰る事により、今後の生存に向けて生かそうとしているのだろう。
どのみちそうして行きて連れていかれたとしても、決して歓迎されるのではない。

実験材料として扱われる以上、死んだほうがマシかもしれない」

「食料はその為のものか。実験動物の餌なのだな」

「目的を考えるとあまり触れたい代物ではないが、それでも食料だ。キッチンクルー達が回収して取り扱っている」

「想像すると確かに食欲は減退するが……まあ飯に罪はないからな」


 元々マグノ海賊団がキッチンクルーという部署を作ったのは、それが目的である。

部署名を聞くと誤解されがちだが、キッチンクルーは料理教室ではない。食料の取り扱いをプロとした集団である。

マグノ海賊団は義賊として敵船を襲うが、第一目的は物資であり、貴重なのが食料である。生きていく上で必要不可欠と言い切っていい。


敵船から奪い取った食料は時として腐っていたり、あるいは毒物を仕込まれていたりする。キッチンクルーはそうした食料を取り扱う者達であった。


「さて、ここからの行動だが――ミスティの話を聞いて、私から提案がある。二手に別れよう」

「チーム編成はどうするんだ」

「私とソラが母艦内の兵器システムを探索、カイとミスティ、そしてユメが地球の手がかりを探せ」


 当初散開するのは望ましくないと考えていたメイアだが、ここへきて方針を改める提案をする。

ソラはカイの命令であれば従うし、ユメはカイと同じチームなのでむしろ賛同する気配を見せている。


とはいえ方針転換なのは事実なので、カイは指摘する。


「チーム編成に問題はないが、お前が別行動するのはどうしてなんだ。
効率面を重視するのはお前らしいと思えるが、この母艦はとにかく広い。

下手に二手に分かれて合流する手間を考えれば、一緒に行動した方が早いんじゃないか」

「お前の指摘は正しい。実は私自身も考えがあって、別行動しようと思っている」

「……ミスティの話を聞いて、お前なりの役目を見出そうとしているのか」

「ミスティは海賊になるのは拒んだが、私はもう立派な仲間だと思っている。仲間が意欲を見せれば、私自身も刺激されるさ」

「お姉さま……感激です!」


 メイアを強く慕うミスティの決意表明を受けて、妹分に刺激されたメイアもまた意欲を見せている。

メイアは昔より感情を見せるようにはなっているが、それでもまだ表面的には分かりづらい。

だからこそというのではないが、彼女は行動として自分の感情を表現するようになっている。


女性らしさというのは表現的に相応しくはないかもしれないが、それでもカイとしては好ましく考えてはいた。


「地球の兵器システムを乗っ取って、今後の決戦への準備とするのか」

「いや、もっと目先の話だ。無条件降伏こそしたが、このままお頭達が帰ってくるのを大人しく待つのは受け身でしかない。
ドクター達がタラークで、お頭達はメジェールでそれぞれ協力者を募るべく行動を起こしている。

だからこそ私も仲間を集めようと思う」


「えっ――お前が仲間探しをするのか!?」

「ちょっとカイ、友達がいないなんてお姉様に失礼でしょう!」

「ミスティ……お前の言い分にも少し傷ついたぞ」


 肩を落とすメイアに、カイ達の言い方が面白かったのかユメが後ろでゲラゲラ笑っている。

メイアが自分から他人を求めると言ったのだ、カイ達からすれば驚いて当然であろう。

彼女は一人で生きていける人間こそ誰よりも強く、そして彼女自身が望んでいた人間像である。


そんなメイアが唱える今後の方針は、そうした彼女の考え方とは一線を画していた。


「カイ。私が誤ってカルーアと脱出ポットで遭難していた時、お前は新型の刈取兵器と戦ったと言っていたな」

「うん? ああ、何かステレスに特化した兵器で姿を――あっ!」


「ステルス兵器がこの母艦にも眠っていれば、タラーク・メジェール両軍に監視されている宙域から脱出できる。
私はアジトへ戻って、帰りを待つ仲間達と合流しようと考えている」


 メイアの目的は――マグノ海賊団のアジト。

一年間留守にしていた自分たちの家へと、彼女は帰る算段を練った。

















<to be continued>







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