ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action34 −神路−








"軍部に話をつけてもらえますか、我々の賛同者を増やします"


 ――ドゥエロ・マクファイルが狙うのは、かつての自分達の同胞。


バート・ガルサスとドゥエロ・マクファイルはタラークにいた頃、士官候補生であった。

軍事国家タラークでは珍しい進路ではなく、むしろ軍役は当然であったと言い切ってもいい。


船団国家メジェール――怨敵が隣にいるこの現状で、軍人として生きていく以外の道はあまり残されていない。


「極秘任務を受けていたんだってな、ガルサス。すまん、お前のことをお坊ちゃんだと見損なっていた」


 本人達の意思に関係なく、若者達は軍事学校の門を叩く。

バートやドゥエロはそもそも軍人になどなる気はなかったのだが、軍役によって渋々士官候補生となるしかなかったのだ。

そもそもガルサス財閥の御曹司であるバートはそのまま財閥を継ぐ道だってありえたし、本人だってそのつもりでいたのだ。


だからこそ彼はなんとか生き残るべく要領良くヨイショしてまわり、軍事学校の同期からは馬鹿にされつつも人気自体は悪くなかった。


「よく無事に帰ってきたな、マクファイル。お前はやれる男だと信じていたぜ」


 今から一年前に卒業し、今は軍人となった――士官候補生達。その中でドゥエロ・マクファイルはトップエリートだった。

本人は社交性こそ皆無で、友人関係は壊滅的だったが、全ての分野でずば抜けた成績を収めて主席で軍事学校を卒業していた。

軍隊においては、実力こそ全てと言える。本人の意志は別にして、ドゥエロの才能は皆から認められていた。


ゆえにこそ、この二人が生きて帰ったことは同期達にとっても喜ばしい出来事だった。


「いやいや、皆との地獄のような士官候補生時代あってこそさ」

「心配をかけたが、皆の元気な顔が見れて安堵している」


 士官学校を卒業した生徒たちは自動的に軍部へ所属となり、それぞれ別の配属先となる。

華やかな学校とは違って同窓会なんて暇はなく、仲間たちが集まるなんてことはありえない。

しかしながら、軍部から許可が下りれば話が違う。例えば――


ガルサス食品の頂点に君臨する会長から、よしなにと一声かかれば、流石に配慮しないわけにはいかない。


「そういう君達こそ無事で本当に良かったよ。何しろ僕達は海賊達ごと遠い場所へ自己で飛ばされたんだからさ」

「我々は何とか生きてこられたが、残された仲間たちのことが気がかりだった」


 ――この点は戦略や戦術を度外視して、二人が多少なりとも気にしていた事ではあった。


ペークシス・プラグマが起こした暴走によって発生した、ワームホール現象。

タラーク軍船イカヅチとメジェール海賊船が融合を引き起こし、遠き彼方までワープさせられた事故。

バート達は何とか無事だったが、あの場に残された者達の安否は不明だったので気にはしていた。


友達こそなかったが、今のバートやドゥエロは決して無慈悲ではない。同級生の死など望んでいなかった。


「ああ、俺達は特に怪我もなく救助されたよ。船は丸ごとなくなっちまったがな」

「むしろガルサス達だけ行方不明になってしまって、当時後味の悪い思いはさせられたな……
軍部に捜索を願い出ても、何しろあの大爆発だ。海賊ごと吹っ飛んで犠牲者が少なかったからって――あ、悪いな」


 軍部からの決定と決断をきまり悪そうな顔で同僚より聞かされても、バートやドゥエロの顔色は変わらなかった。

マグノ海賊団がタラークの軍船を襲い、軍人たちを人質にとったのは事実である。

彼女達にも事情があったとはいえ、敵国の軍船を襲うなんて真似は略奪行為そのものだ。


カイも当時批判していたが、彼女達が取った行動は国から見れば立派に犯罪である。


「気にすることはない。海賊達が軍船を襲ったのは紛れもない事実だ」

「全員とっ捕まって物資を奪われそうだったところで起きた事故だ。
海賊全員吹っ飛ばせて、僕達の犠牲で済んでよかったと思うのは当然だろうね」


 バートやドゥエロも旅に出た当初は、マグノ海賊団より捕虜としての扱いを受けていた。

あてがわれた部屋は監房だったし、マグノ海賊団からも仲間だとは思われていなかった。

旅に必要なスキルがあったからなんとか生かされたというだけで、お荷物だったら放り出されていただろう。


彼女達の当時の所業を振り返り、バート達も苦笑いするしかない。


「あんな事故があったんで、軍事パレードも当然中止。せっかくの軍船もオジャンになって、軍部もカンカンだったな」

「ああ、俺達も華の門出だったのに、海賊連中のおかげでケチつけられたからな。
海賊達に負けて不甲斐ないってんで、一時は士官学校卒業の取り消しも検討されていたんだぜ」


 後は野となれ山となれといった具合に、これ幸いと軍人にならずに済んだドゥエロ達とは雲泥の差だったようだ。

何しろ新造艦イカヅチの出撃に士官候補生卒業で、その日国中がお祭り騒ぎだったのである。

これでメジェール相手でも勝てると息巻いていたのに、女海賊達に負けたとあっては人々の笑いものである。


盛り下がること夥しく、国民達の信頼さえ失いかねない大事にまで発展したらしい。


「で、当然責任問題に発展してしまって――」

「士官候補生の俺らが未熟なせいだと、軍部の連中が責任をなすりつけやがったのさ」


「げっ、そこまで難癖つけられたのか」

「当時の不甲斐ない状況が相当取り沙汰されたようだな」


 当時未来ある若者達の門出を祝う話であったというのに、完全に逆転してしまっている。

確かに軍船には士官候補生達が乗り込んでおり、彼らが戦いに出て破れたのは事実である。

しかしそもそも軍人になったばかりの若者達に、百戦錬磨の海賊達相手に戦えというのも無理な話なのだ。


緊急事態で臨機応変に動くのは必要なスキルではあるが、それら全てを彼らに任せっぱなしというのは酷である。


「あの事件からだったな、軍部――というか上の連中がおかしくなったのは」

「むっ、何かあったのか」


 バートやドゥエロ、そしてカイが居ない軍事国家タラーク。

一年もの月日で何があったのか、何が起きてしまったのか。


語られる真相は意外であり――それでいて当然とも言える話であった。

















<to be continued>







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