ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action31 −官寺−








 タラークに戻ったドゥエロ達や、監獄へ投獄されたマグノ達。一致団結する彼らとは違い、ニル・ヴァーナ組は現在別行動を取っている。

ソラやユメが乗り出したのは、空調システムを通じてニルヴァーナ内の観測。どの程度掌握されているのか、各部署を確認しに向かった。

彼女達の能力であれば乗っ取ることも不可能ではないが、流石にタラークやメジェール両軍に感知される。慎重に動く必要があった。


結果としては、拍子抜けであった。


『半ば放置されているようですね』

『人間って甘々だね、セキュリティロックも旧世代すぎてわらえる』


 ――カイ達が疑問に思っていた答えの一つが、ここにあった。

タラークはテラフォーミングこそ成功しているが、惑星の環境は最悪であり軍事技術も含めて旧世代より抜け出せていない。

メジェールは医療技術こそ発展しているが、テラフォーミングには失敗。生活改善がされず、移民を出すほどに不自由を強いられている。


刈り取りを行えるほどの技術力がある地球より旅立っているのに、知識や文明性に発展性がないのは何故なのか。


『地球より旅だったとはいえ、指導者達は今も手綱を握られていますからね。
技術進化による不興を買いたくはなかったのでしょう』

『ユメも愛しいますたぁーに会えるまで、いいように使われたからね。あいつら、ほんとムカつく』


 ようするに、タラークやメジェールという国は常に地球の顔色を伺っていたのである。

この判断はあながち間違えてはいない。確かに技術を発展させれば、地球の不興を買っていた可能性は確かにある。

実際ヴァンドレッドやペークシス・プラグマを保有するマグノ海賊団は脅威とみなされて、執拗に狙われていたからだ。


軍事技術などを急激に発展させないことで、餌として見せていたのである。


『それで素直に刈り取られては何の意味もないはずです。ユメの台詞ではありませんが、人間とは不合理な存在ですね』

『ま、いいんじゃない。ユメ達はますたぁーがいるんだからさ、バシバシ力になればいいんだよ』

『無論です。では、取り掛かりましょう』

『はーい』


 タラークやメジェールの歪さに首を傾げつつも、カイ達以外はどうでもいいと割り切れる辺りに非人間性が垣間見える。

全ての人間は救えない。世界の全てを支配できない。精霊としてこれまで観測し続けていた彼女達の結論は変わらない。

変わったことといえば、主が出来た事。主が人間で、男と女の垣根を超えて絆が広まっているという事。


その中に自分達さえいられれば、あとのことはどうでも良かった。

















 大人達の事情には知らん顔している者達は他にもいる――子供達だ。


『アタシらも何かやろうぜ』

『何かって何……?』

『それを考えるのがお前の仕事だろう、シャーリー』

『えええっ!?』


 ペークシス・プラグマの中で隠れている子供達は、和気藹々と密談を繰り広げている。

実際は、何もしていない訳ではない。エズラより預かった赤ん坊カルーアを守るのが子供達の任務である。

丁重に託されたカルーアは親御と離れても泣き出さず、今はぐっすり眠っている。


マグノ海賊団全員から愛されている赤子にとって、全ての人間が親であり、家族であった。


『だ、駄目だよツバサちゃん……外を歩き回っていたら、大人の人に見つかっちゃうよ』

『へっ、アタシを舐めんなよ。前まで住んでいたミッションじゃ、この逃げ足で威張りくさった大人達から食料巻き上げたりしてたからな』

『……ツバサちゃんがカイお兄ちゃんと一緒に来たの、ほんとは逃げ出したかったからじゃ……』


 可憐な容姿と可愛らしい声をするツバサだが、大人顔負けの悪ガキぶりにシャーリーは引きつった顔をする。

自分達はいわば異星人であり、タラークやメジェールの人間に見つかるとどんな扱いを受けるのかわからない。

本来は子供達に言うべきことではないが、非遇な少女たちの強さを知っているカイやバートは真実を伝えた上で諭している。


シャーリー達は聡く、カイ達の言うことを素直に聞いてはいた。


『大人の武器を奪うってのはどうよ』

『それって泥棒だよね』

『ぐっ……じゃ、じゃああいつらの船を隙を見て奪うとか』

『それって海賊だよね』

『ぐぐっ……』


 絶妙なツッコミをするシャーリーに、ツバサは歯噛みをするしかない。

ミッションでは食料などを盗んだりしたこともあったが、そもそも子供の食料分をぶんどっていた意地汚い大人達が原因だった。

だが、この状況は違う。相手に非があるとはいえ、向こうは軍人である。


子供でも見つかればどうなるか、分からない。


『むしろ逆に子供ってことを利用するのはどうだ』

『うーんと、どうやって?』

『海賊の連中に捕まってたとか何とかぬかして、助けを求めるんだよ』

『うーん、危険だと思うけど……その後は?』

『それでだな、油断した隙を狙ってそいつら踏んじまって、皆を助けるんだよ』

『最後のところが無謀すぎるよ!?』


 意外と物騒な密談を繰り広げる子供達。

実のところ彼女達のような子がいるからこそ、カイ達もまた絶望的な状況でも諦めずに頑張れる。

そういった意味では実に役立っているとも言えるのだが、自分自身における価値をそこまで見いだせない彼女達は頭を悩ませている。


聡明で逞しいからこそ、彼女達は自分にできることをやろうとしてしまう。

















<to be continued>







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