ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action24 −塚生−








 ペークシス・プラグマの中でボケっとしている訳にはいかないので、カイ達にはまず現状把握に動いた。

ニル・ヴァーナのシステムは敵に奪われないようにシャットダウンしているが、システムそのものが破壊されたわけではない。

そもそも全システムを完全に停止させてしまうと、生命維持に関するシステムまで停止させてしまうことになる。


艦内にいる全員が酸素不足で死ぬ羽目になるのでマグノ海賊団のみならず、タラーク・メジェール両軍も生命維持システムにまで関与はしていない。


(つまり、空調システムが維持されているエリアの観測は行なえます)

(行ってくるね、ますたぁー!
――ポンコツロボにガキンチョ達、ユメの妹は大事に面倒見ててよね)

(お前もガキンチョだろうが!)

(そうだ、そうだ、生意気だピョロ!)

(あ、あはは……ちゃんと見ているから頑張ってね、ユメちゃん)


 口喧嘩の耐えない子供達だが、この旅を通じて随分と交流を深めている。

タラーク・メジェール出身ではない異星人達、そしてペークシス・プラグマの精霊。異邦人達であるがゆえの交流である。

子供達と表現しているが、その辺の大人たちよりよほど肝が座っている。今の状況でも慌てた様子はない。


赤ん坊のカルーアでさえも母親と離れているというのに、落ち着いた様子だった。


(それじゃあアタシはニル・ヴァーナや母艦のシステムを解析してみるね)

(解析……? ハッキングとかじゃなく?)

(誤解されがちだけど、そもそもハッキングというのはハードウェアやソフトウェアを改変する行為の事だよ。
元々はアタシ達のシステムなんだから改変するのではなく、掌握できるようにするのが適切。

だからまず現状のシステムがどうなっているか解析して、元通り利用できるようにするの)

(分かったような、分からないような……ようするにタラークやメジェールにバレずに、使えるようにするってことだよね)

(そうそう、機関システムのリーダーだからね。自分の専門分野からやってみるよ)


 システム面は素人であるミスティの質問にも快く受け答えして、居残り組のパルフェも自分の仕事に入った。

彼女は敢えて説明しなかったが、ハッキングはコンピューターについて高いスキルを持つ技術者がシステムを解析して改変する行為。

そういう意味ではミスティの指摘も間違いではないのだが、エンジニアの性分として正しておきたかったのだろう。


専門分野にはうるさいエンジニアは、もう一人いる。


(安心せい、お主らのドレッドやヴァンガードは儂ががっちりガードしている。奪わせたりはせんからな)

(ありがたい配慮ではあるんだが、あの物理的な拘束はどうするんだ)

(なーに、保険と思えばよい)

(保険……?)

(拘束しとるということは、少なくとも廃棄や徴収はされぬという事じゃろう。
まあいずれはそうするにしても、現段階ではニル・ヴァーナの保管庫に拘束された状態のままじゃ。

あれらの兵器を使うのはあくまで最終手段、タラークやメジェールを敵に回すつもりはないのであれば使う必要はないからの)

(しかし選択肢としては減ったことにはならないか。いざとなればアレに乗って脱出するしかないかもしれない)

(それこそ最終手段じゃ。それほど思いつめられとるのであれば、それこそやりたい放題やればいい。
爆薬だの何だの使えれば、拘束は解けるからな。まあ、いざとなれば儂に任せておけ)

(なるほど、確かにヴァンドレッド類は切り札からな。今はできる限り使いたくはないな。
だが――)

(分かっておる、何のために儂が残ったと思っておるんじゃ。いざとなればすぐ使えるように準備しておいてやる)

(頼む)


 カイの蛮型を整備するエンジニアのアイも、一緒に残っている。SP蛮型は特殊な機体なので、彼女ほどの天才がなければ整備ができないのだ。

他の整備士達は全面降伏として安全に連れ出したので、彼女が一人残って機体の安否を見守っている。

今もシステム面こそパルフェに任せているが、保管庫内の管理については権限を含めて今も彼女が掌握している。


だからこそ、保管庫内の様子も都度確認できる。カイもその点は安心して任せていた。


(現状についてはソラ達やパルフェ待ちになるが、行動を起こすとすればあの場所だろうな)

(あの場所……?)

(レジシステムだ。男のカイは知らなくても無理はないが、そもそも"レジ"というシステムを正式稼働させたのはガスコさんだ)

(えっ、そうなのか!? あれってメジェールの技術じゃないのか)

(海賊というのは元々お前が持っていたある種のイメージ通り、荒くれ者達も多い。
兵装となると皆強い武器を優先して持ちたがる、それらをパイロット任せにしていると取り合いになってしまうだろう)

(……軍と違って、徹底的な統率も取れないだろうしな)

(だからこその、レジシステムだ。自分が出した成果や報酬を元に兵装が組まれる、独自のシステムなんだ。
タラークとメジェールが組んでいたとしても、レジシステムについては概要も理解できないだろう。

あそこを利用すれば、比較的大事にならず行動が起こせる)

(ガスコーニュの船もあるしな。その辺はドレッドチームリーダーのお前が頼りになるな)

(元リーダーだ、今はディータが立派にやってくれている。
私は一人の人間として、お前と共に戦うつもりだ)

(分かった、よろしく頼む)


 逆境に追い込まれても何一つめげずに、可能性を見出していく。

不敵に笑い合う男女は、未来の兆しでもあった。















<to be continued>







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