ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action16 −冴草−








 首相直々による受勲式を終えた三名は、軍事拠点を後にする。

名誉の授与を終えたバート達は受勲式に参列した軍人たちに、見送られる。

拍手喝采であり、この場において彼らは英雄だった。彼らを見る目は羨望と信望に満ちており、主張直々に賜った栄誉を眩しげに見ている。


当の本人達の心境を、置き去りにして。


(言い繕ったのはいいけど、僕達だけが栄誉を受けるというのは納得いかないな)

(君は、本当に変わったな。昔のバートであれば、人から受ける称賛に喜んでいただろうに)

(僕達だけの手柄じゃないといいたいんだよ。あいつだって――カイだって、一生懸命努力したんだ)

(分かってる。友人である我々が、彼が栄誉に値する人間であることを理解している。今は、それでいいじゃないか)


(うーん、ドゥエロ君がそう言うなら……でも本当、残念だよね。あいつ、ヒーローになりたがってたってのに)

(フッ、違いない。英雄に相応しい人物だ)


 タラークへ帰還してからというもの、他者に聞こえないように小声で会話するのも彼らは慣れてしまっている。

元より、喜び勇んで故郷へ帰還したのではない。全ては地球と戦う為、そしてその後の世界を変えるべく今努力している。

タラーク上層部に嘘を貫き通したのも、今後の行動を確かなものとするためだ。


でなければ、誰が友達の功績を奪うような真似をするものか。


「お疲れ様です!」

「任務達成、おめでとうございます!」

「うむ」


 態度にこそ出さないが不満げな彼らに対して、勲章を与えられたブザムこと浦霞天明は平然としたものだった。

マグノ海賊団へのスパイだったことが明らかとなり、内部情報を伝えたことで彼は立身出世を確かなものとした。

特にグラン・パ、タラークの最高指導者よりお褒めの言葉を自ら与えられた事は大きく、彼は軍人達の憧れの的となっていた。


本人は平然と部下達の挨拶を見送って、バート達の前を堂々と歩いている。


「――君達は確か、帰還を許されたのだったな」

「ハッ、長旅と任務の疲れを洗い流すようにご配慮頂きました」


 本来任務を終えた軍人は次の任務を与えられるものだが、バートやドゥエロは今回休暇を与えられたのである。

何しろ士官候補生だった彼らに降ってわいた海賊騒ぎと、その後の故郷への旅路だったのだ。

女海賊達を相手に一年間戦い続けて、見事彼女達を屈服させることに成功。海賊は捕らえられて、任務は達成された。


これほどの功績を成し遂げたのだから、休暇を申請せずとも首相より労われるのは無理もない話だった。


「上官はいかがなさるのですか」

「君達同様休暇、といいたいが生憎と書類仕事が溜まっている」


 バート・ガルサスは自分の家へ帰り、家族を説得するつもりだった。

彼の生家であるガルサス食品はタラーク有数の企業であり、食品を一手に引き受ける巨大な産業そのものであった。

彼の祖父はガルサス食品の会長を努めており、孫であるバートを殊の外可愛がっている。


シャーリーの事や、カイやマグノ海賊団との関係などを含めて――なんとしても、味方にしたい人物である。


「残務を終えたら――今後の身の振り方を、考えるつもりだ」

「……そうですか」


 ドゥエロは天涯孤独の身であり、士官候補生の彼は社交的とは言い難い孤高の存在だった。

この点について、ドゥエロ本人は激しく後悔している。何故もっと人脈を広げ、自身の力を広げることをしなかったのか。

一年間の旅で成長したからこその公開であり、今悔やんでも詮無き話ではあるのだが、本人は悩み苦しんでいる。


そしてそれは――浦霞天明もまた、同じであった。


「君はどうするのかね」

「私は家族のいない身。帰るべき家もありませんので、彼からの招待に預かるつもりです」

「彼とはこの一年共に過ごし、任務中ではありますが戦友となれました。祖父に紹介したく、思っています。

その……上官もよろしければいかがですか」

「! 君は……」


 バートは真っ直ぐな目で浦霞天明を――ブザム・A・カレッサを見つめている。


彼の眼差しが意味することはよく分かっている。だからこそ、浦霞天明は不覚にも驚きを顕にしてしまった。

自分の家に、招待する――


バート・ガルサスは、帰ってこいと言っているのだ――ブザムに。


「……すまないが、仕事がある。またの機会にしておこう」

「……はっ、出過ぎた真似をいたしました」

「いや、君の気持ちは嬉しかった。ゆっくり休むといい」


 浦霞天明からの拒絶を受けてバートは肩を落とすが、ドゥエロはそんな彼の肩に手をおいた。

意志は、十分に伝わっている。拒絶はされたが、明確な拒否ではなかった。

浦霞天明が先程述べたとおり、彼もまた今後の身の振り方を悩んでいる。どうすればいいのか、考えている。


だから仕事に戻る――自分の成すべきことが、あるかのように。



彼らは、それぞれの戦場へと戻っていく。















<to be continued>







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