VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 5 -A shout of the heart-






Action13 −呼びかけ−




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 レーザーによる完全包囲に、砂に取り付くメカの集団行動によるシステム破壊。

砂の惑星に仕掛けられたトラップの数々だが、どちらも言ってみれば侵入者を封鎖させるに止まっていた。

大規模なシールドの展開はカイ達の逃走経路を完全に遮断するために、

砂粒の一つ一つを操る微小メカ群はカイ達が逃げられないように行動不能にするために、

敵側からの念入りな罠はそれぞれに段階的な意味を持っているようだ。

逃げる道を無くし、逃げる足を奪う。

では完全に行動不能にした後、次に行われる段階があるとすれば何であろうか?

答えはたった一つ――

侵入者の完全破壊である。


「いやぁっ!?こんなのどうすればいいのよ!!」


 普段は女性らしいアクセントのあるジュラの声は、完全に恐怖という闇に染まっている。

砂嵐を形成していた小型メカが一つ一つ密集して、砂が形を成し集合体と化したのだ。

ただ砂が固まりになったのなら、まだジュラがこれほど悲鳴を露にする事はなかったであろう。

問題は形成された砂の外見である。

プログラミングによって行動する微小メカの群れが、事もあろうにカイ達の乗る機体−蛮型−に化けたのだ。

もちろんそのまま機械化された訳ではなく、ただ砂が固まって偽装しているに過ぎない。

すぎないが、自分の乗る機体に化けた砂の塊が数十体もの軍団を結成させられてはたまらない。

周囲の状況を探っていたバーネットが砂の動きの変化に気がついた時には、もう後の祭りだった。

三体もの砂の偽装に攻撃されて、バーネット機は破損してしまう。

危機に勘付いたカイが援護に駆けつけた時には既に遅く、周囲を完全に囲まれてしまっていたのだ。

ディータやジュラも砂の軍団の包囲を突破すべく反撃を試みてはいるが、さほど効果は出ていない。

何しろ今日初めて蛮型に乗ったばかりの素人なのだ。

陸上を行動するだけで精一杯であり、とても攻撃パターンを駆使するレベルには達せられない。

ジュラも無我夢中で手足を動かすが、砂の偽装体が突き出した掌より頭部を圧迫されて軋みを立てた。

九十九式は機体とパイロットが直接リンクしている訳ではないが、被害状況はリアルに伝える。

警告音が鳴り響き危機を知らせるレッドランプが点滅して、ジュラは身体をガタガタ振るわせた。

最早完全に戦意は焼失しており、ジュラの瞳は死への恐怖で濁っていた。

今の今まで自分が今日死ぬとは思ってもいなかったのだろう。

心に覚悟も出来ておらず、ジュラはあまりの恐ろしさに失禁しそうだった。


「だ・・誰か・・・・誰か助けて!!!」


 通信する事も、機体を稼動させる事も忘れて、ジュラはいやいやとばかりに目を閉じて首を振った。

生まれて初めてかもしれない命への懇願だったが、敵は少女の懇願に情けをかけるような相手ではない。

容赦すら知らない敵はがっちりジュラ機を掴み、捻り潰すべく頭部へ力を込めて行く。

被害状況は切迫していき、頭部破損から徐々に大破へと移行されていく。

中央モニターに映し出される偽装体のアップをジュラが怯えて見つめていた次の瞬間、驚愕に見開いた。

執拗に頭部を掴んでいた砂の蛮型が上下に分断され、崩れ落ちたのだ。


「え・・・・・・?」

『何ぼけっとしてやがんだ、この馬鹿!!』


 まるで夢から覚めさせるような啖呵のこもった大声に、ジュラの瞳は正気に戻った。

まだ恐怖の余韻で脈動する胸を抑えつつ、ジュラは怯え顔で通信モニターのカイを見つめる。

「え、あ・・・・」

『え、あ、じゃねえよ!俺は色々忙しいんだよ!!
ボケッとしてないで、こっち来い。一箇所に集まった方がいい』


 乱雑に手を伸ばすカイをじっと見つめ、ジュラはまだ呆然とした顔だった。

カイ機の差し出す手の平の反対、利き腕には小型のナイフが装備されていた。

宇宙での戦闘時はブレード形態で戦ってはいるが、二十徳ナイフはそもそも基本はナイフ形態である。

シールドで封鎖された狭い空間内で戦う上でブレードは不利だと考え、カイは変形させずにいるのだ。

ジュラの危機を救ったのもこのナイフで、背後より忍び寄って真横に偽装を一閃。

元々は砂の塊であるがために大したダメージにはならないが、偽装を崩す事には成功した様子だった。


『聞いてんのか、お前!早く逃げないとまたやられるぞ。
ほら、来い!』


 不機嫌なカイに、ジュラは意外にも何も言わず素直に頷いて手を取った。

がしっと掴んだ力強い手はそのままジュラを引っ張っていき、起点へと誘導していく。

黙々とカイが連れて行く中で、ジュラは俯いたままぼそりと漏らした。


「・・・結構頼りになるわね、あんたって・・・」

『ん?なんか言ったか、金髪?』

「ふふ・・・・何でもないわよ」


 恥らうように頬を赤らめて首を振るジュラに、カイは怪訝な顔をしたままそれ以上何も聞かなかった。

その後次々と偽装の群れが襲い掛かってくるが、初めこそびっくりはしたがカイは恐怖は感じてはいない。

襲い掛かる群れの一体一体をナイフで切り払い、近寄らせる事すらさせなかった。

ジュラはと言うと、健闘するカイの背後に寄り添って防御体制に入っている。

一時は恐怖に支配はされていても、そこはマグノ海賊団ドレッドチームナンバー2。

蛮型においての陸上戦に自分のテクニックでは太刀打ちできない事を理解して、半端な行動は避ける。

自身を自重する、これは周りを信頼しなければ出来ない行動である。

元来派手好きなジュラは自分が一番に活躍しないと気が済まず、自身が目立っていないと嫌なのだ。

そんなジュラだが、今は戦いを任せている事に不平・不満は一切なかった。

目の前の男が自分を守るために矢面に立って戦っている事に、もう疑いを持っていなかったのである。

ジュラの信頼を寄せつつある当のカイだったが、本人は本人なりに危機感を持っていた。

姿形こそ蛮型に似せて異様さを見せる微小メカだが、その実単純なメカニズムしか持ち合わせていない。

例え人型兵器を模していても、殴る・蹴る・掴む等の単純動作しかできないのだ。

幾度攻撃されようと予備動作は緩慢であるために、パターンは完全に読めて防御が可能なのである。

素材も砂であるために脆く、一度攻撃しただけで崩れさっていった。

攻撃力・防御力はほぼ皆無であり、戦闘的な観点からすればこれまでの敵の中で最低レベルといっていい。

だが、問題はその特殊な機能にあった。

何度切り付けようと、何度破壊しようと、すぐに立ち直って来るのだ。

偽装するための材料が鉄鋼類ならば一度破壊すれば復旧不可能だが、相手側は砂を原料としているのである。

砂は潰しても潰しても単位がミクロの物質であり、壊す事は実質不可能に近かった。

倒す事は簡単だが、すぐに立ち直る敵。

二桁を超える砂の偽装体を切り飛ばして体力を削られていっているカイは、その脅威に顔を歪ませる。


「これじゃあきりがねえ・・・・どうする・・・」


 攻撃を重ねても完全に消滅させられない敵に、カイは徐々に焦りを覚えていった。

驚異的なトラップの数々に苦難している事もあるのだが、カイには不安要素はまだある。

メイア=ギズホーン、彼女の存在である。

数分前に母船より連絡を受けて、メイアが敵に襲われて反応が消えたと聞いている。

何か問題があって動けない状況にいるのか、もしくは最悪機体そのものを破壊されてしまったのか。

敵の脅威に晒されても冷静な対応を行っているブザムやマグノが苦渋をにじませていたのだ。

恐らくよっぽどの危機にメイアは今あっているのだろう。

メイアがそれほど心配かと聞かれれば、カイは即座に違うと断言する。

互いに不干渉、それがメイアとカイ唯一の暗黙の了解だった。

自分が助けようとしてもメイアは喜ばない事は分かっているし、カイとてメイアに助けられても嬉しくない。

男と女は理解し合えない関係であり、自分達は永遠に交差できない。

カイはそう感じ取っているからこそ、メイアに対しては空気のように相手にしないようにしていた。

今こうして助けようとしているのも、マグノ達に助けを乞われたから仕方なくである。

そう思っている、思ってはいるのだが・・・・・・・

メイアへの悪い可能性ばかりが心に膨らんでいき、カイの胸の内に焦燥感が積もりゆく。

助けに行くにしても包囲網を突破しないといけない上に、他のメンバーも危険に晒されているのだ。

その最たる主がディータ=リーベライだった。

ジュラのように恐怖に食われてじっとしているのならまだいい。

ディータの場合攻撃されると抵抗をするので、その都度襲われているのだ。

特に蛮型の操縦に関しては上陸班内では最低ランクの彼女である。

襲撃されて対応出来る程に、ディータはカイ程蛮型の実戦経験を積んではいなかった。

砂の偽装体に抱き付かれた形で全身を締め付けられ、ディータは慌てて機体を揺り動かしていく。


「う〜、離れて、離れてよ!!」


 手足をばたつかせて振り払おうとするディータだったが、相手側はびくともしなかった。

人型同士が抱擁を交わしているように、抱きしめる腕はまったく離れない。

困惑と嫌悪に涙目になるディータだったが、機体状況を示すコンディション表示計を見て悲鳴を上げる。

砂嵐時と同じく偽装化された砂に接触されている箇所から、蛮型のメインシステムに干渉を受けているのだ。


「す、砂がヴァンガードのシステムをコピーしていってる!?
まるで血を吸われているみたい・・・・」


 トラップによる敵の恐ろしい機能の一端に触れて、ディータの純真な心が負の感情に犯される。

抵抗しようとする前向きな気持ちが、そのまま吸収されていくような感じだった。

表示計は次々とシステムへの侵入を警告しているのだが、ディータにはどうする事もできない。


「宇宙人さん〜!宇宙人さ〜ん!!!」


 仲間より誰よりも、この場で一番頼りになる人を呼ぶ。

ディータの心にはカイへの信頼で満たされており、本当にヒーローのように慕っているのだ。

どのような絶望的な状況でもきっと助けてくれる。

タラークとメジェールの垣根を越えた思いの矛先が生まれつつあった。

ディータからの救難を聞きつけたカイは、呆れと怒りを表情に出して怒鳴った。


『お前はいちいち俺が助けないと何にもできねえのか!!』


 頼られる事は嫌いではないが、時と場合による。

ジュラを守りながら、メイアの身を案じているカイは両手両足を駆使しても追いつかない。

カイの怒鳴り声にしゅんとして、ディータは申し訳なさそうにする。


「ごめんなさい、宇宙人さん。
何とか頑張っているんだけど、この砂が何度やってもすぐバ〜ンと立ち直ってくるの」

『そんなもんは分かってるよ!だから俺から離れるなって言っただろう!』

「う、うん。
だけどディータ、宇宙人さんの力になりたかったから・・・・」 


 真剣な気持ちを視線にこめて、ディータはされど恐縮したような態度で言葉を綴る。

カイとしてはそう言われてしまえば、それ以上文句は言えなかった。

状況が悪化している中で、何とか頑張ろうとする気持ちは同じだからだ。

だが、カイとて全てを一緒にこなすには限界があった。

ジュラを守る、ディータを助ける、敵を倒す、トラップを破壊する、メイアを助ける・・・・・

やるべき事は山のようにあるのだが、どれを優先しても短時間では済ませられない。

かと言って、どれもほったらかしには出来ない選択事項だった。

カイは悩みに悩みぬいた末結論に至って、通信回線を開く。

リンク先は現状女性メンバーの内で一番冷静さを保っているバーネットだった。


「黒髪、聞こえるか?俺だ」

『カイ?そっちは無事なの?』


 果敢に襲い掛かる偽装に抵抗を続けるバーネットは、整った顔立ちをモニターに向ける。

対するカイは真剣な表情を崩さずに言った。


「青髪が行方不明になっているのは知っているよな?」

『ええ、副長から聞いたわ。探しに行きたいけど、敵が邪魔しているのよ』


 鬱陶しげに外部モニターを見て毒づくバーネットに、カイは言葉を続けた。


「いいか、今から派手に暴れて俺がこいつらをひきつけるから、お前は青髪の捜索に行け」

『で、でも・・・』


 バーネットが見る限り、偽装の群れはまだまだ数が多い。

何度崩しても立ち直るので、実質上数は減ってないと言っていいだろう。

四人で懸命に頑張っても成果を上げられないのに、自分が抜けたら大丈夫なのか?

バーネットの心配に、力強い笑みでカイは答えた。


「赤髪と金髪は非常に不本意だが俺が守るから安心しろ。
あのくそ馬鹿、勝手に飛び出してきてトラブってやがるんだ。
サポートに行ってやってくれ」


 カイとてマグノ達に頼まれた以上は自分の手で何とかしたかった。

だが自分の面子を優先している状況ではない事もまた事実なのだ。

自分だけを押し通せば願ってもいない結末が起こりえるかもしれない以上、過ちをおかす訳にはいかない。

過去自分を押し通してアマローネ達と喧嘩した経験からだった。

カイの申し出にバーネットは迷いこそ見せたが、すぐさま頷いた。


『分かったわ。メイアを連れて必ず戻ってくる。そっちはお願いね』

「おう、お前もよろしくな」


 互いに頷きあって、二人は行動を開始する。

一人は群れの中心へと突撃、一人は戦線を離脱。

二人は正反対へと向かって、それぞれの役割を果たすべく死の砂漠を駆け抜けた。
















 後ろ髪引かれる思いもあったが、バ−ネットはメイアの探索を第一に機体を加速させる。

目標は、ブリッジより転送されたメイアの反応消失ポイントだった。

不幸中の幸いか、周囲を遮断していたシールドは現在上空のみの封鎖に解除されていた。

カイが上空を飛び出した際に発射されたレーザーの初段階では、上下左右隈なく覆われていた筈である。

これはトラップが次の段階、所謂攻撃態勢へ入ったからであった。

地表面の砂そのものが蛮型に偽装化して襲い掛かるために、左右まで遮断できなくなったのだ。

カイ達を破壊するための敵側の都合であったが、バーネットにとってメイアを助けるには好都合だった。

前線でカイが奮闘を見せているせいか、偽装の蛮型軍団はバーネット機には襲い掛かってこない。

バーネットは改めてカイに対して不思議な感情を抱いていた。

冷遇している自分達に悪態をつきながらも、見捨てようとはしない。

自分達が決して男を信頼する訳がないと分かっているであろう筈なのに、助けようとすらしている。

かと言って、自分達に何かを求めようとしているのかと思えばそうでもない。

例えばあの操舵手は自分達に露骨に媚びて、取り入れようとしている。

当然ながらそんな思惑は簡単に看破出来るので、仲間達からは敬遠される一方だった。

もう一人の男のドクターは自分達に一定した距離を保っており、医者としての職務に留まっている。

捕虜としての自分の立場を一番理解しているのがドクターだった。

自分達と向き合う事もなければ、目を背ける事もしない。

男も女も、あのドクターからすれば全て平等なのだろう。

では、カイは一体どういう男なのだろうか?

自分達女に対して操舵手のように自分達に取り入れようと言うには、カイはあまりに態度が悪い。

悪態はつくし、自分の本音を言いたい放題に言って仲良くしようという気はないように見える。

ドクターのように自分達に距離を置いていると言うには、カイはあまりに自分達に近づきつつある。

ほって置けばいい事に首をつっこみ、助けなくてもいい相手を助けようとする。



『いいか、今から派手に暴れて俺がこいつらをひきつけるから、お前は青髪の捜索に行け』



 カイとメイアの劣悪な関係は、クルー達の周知の事実だった。

母船内で一番仲が悪いのは誰かと尋ねられたら、誰もが皆カイとメイアだと言うだろう。

それほどまでにこの二人は互いを嫌い、牽制していた。

なのに、カイは自分の身体を張ってまで助けにいけと言う。

考えれば考えるほど、バーネットはカイという男が理解できなかった。

今までにない存在という事もあるのだろう、バーネットは戸惑いを隠せない。

好きか嫌いかと聞かれたら嫌いと答える。

生かすか殺すかと聞かれたら生かすと答える。

出会いの頃から比べれば進歩した関係だが、歩み寄れば歩み寄る程理解できない存在だった。

だが、同時にこうもバーネットは考えていた。

自分が理解できない存在。

カイ=ピュアウインド、あいつこそが本当の「男」なのではないかと――


「・・と、ここが問題のポイントね」


 考え事をしている間に目的地へと到達したのか、コックピット内のモニターの観測表示が点滅していた。

修羅場となっている戦場からやや離れた広大な砂漠にて、バーネットは周囲を見渡した。

観測データに間違えがなければ、このポイントでメイアに何かあった筈なのだ。

大分慣れてきた蛮型の操縦を駆使して、周囲に怪しいものがないか丹念に調べる。

メイアを襲ったであろう敵がまだ近くにいるかもしれない。

静かな雰囲気に逆に警戒心を強めながら、バーネットはゆっくりゆっくり歩行していく。

とその時、前方1キロメートル先に砂に埋もれて倒れている機体が目に止まった。


「あれは・・・・メイア!?」


 大部分を砂に埋もれさせながらも覗かせる操行の表面は白亜だった。

ドレッドでも馴染みのメイアのシンボルカラーである。

バーネットは顔色を変えてメイア機に近づき、通信回線を開いた。


「メイア、大丈夫!?応答して!」


 盛んに呼びかけるが、メイアからの応答は全くなかった。

砂によってシステム関係を完全にダウンさせられているのか、本人に何かあったのか。

バーネットは判断が出来なかったが、メイアがピンチである事に変わりはない。

メイア機に近づいたと思うと、バーネットは背中の収納ホルダーから装備を取り出す。

蛮型の標準装備である十得ナイフだが、応用化すれば簡易的なスコップに使用も出来る。


「しっかりしてよ、メイア。今砂を取り除くから!」


 序盤砂にやられたカイをジュラが助けた時、砂を取り除いた事によってシステムは回復した。

カイがブリッジへ連絡を取れた事がその証拠である。

ならばメイア機に侵食している砂を取り除けば、同様にメイアも復帰出来る筈だ。

そう考えて、バーネットはスコップを動かしてザクザクと砂を払いにかかった。

必死で単調作業を繰り返し砂を払おうとするバーネットだったが、この砂はただの砂ではない。

ミクロの単位で砂を操って侵食を繰り返す悪質な敵なのだ。

バーネットの救助を察したのか、微小メカがそうはさせるかとばかりに活動を行った。

メイアに取り付いてから数十分が経過している。

この時間はメイアを取り込むのに十分な時間であり、行動不能にさせるに確実すぎる時間でもあった。

システムの隅々まで把握した微小メカは蛮型の全てを取り入り、掌握に成功した。


「わあっ!?メ、メイア・・・?」


 スコップを振るうバーネットを突然弾き飛ばして、メイア機は立ち上がった。

一瞬砂を少しは払った事によりメイアが回復したのかと喜んだが、次の瞬間バーネットの表情が強張る。

突如背中のブースターを最大噴射させ、上空に飛び上がったのだ。


「メイア、駄目!ここからは逃げられないのよ!!」


 上空へ舞い上がりレーザーで打ち抜かれたカイを脳裏に浮かべ、バーネットは絶叫した。

危機に焦ったメイアが非難しようとしたのかと思ったのだ。

が、メイア機の行動はバーネットの考えを遥かに逸脱していた。

メイアが砂に襲われた後、再び張り巡らされたであろう上空のレーザー網を指先でちょんと摘んだのだ。

摘んだ先からは覆われている砂とレーザーが火花を起こして散る。

途端、地表面全ての建築物が大規模な警告音を発生させた。

不吉なアラーム音がシールド内に鳴り響き、バーネットは顔を青ざめて周りを見る。


「な、何!?何が起きたの!?」


 バーネットの動揺を嘲笑うかのように、周囲の警告音が鳴り響きを止めようとしない。

上空に飛び上がったままのメイア機はというと、頭部中央のモノアイを赤く点滅させている。

メイアが稼動させているには、あまりに怪しすぎる行動だった。

その状態に、ようやくバーネットが事の原因を思い立った。


「砂に操られている・・・・?メイア!メイアぁ!!」


 何度も何度も通信回線を開き、バーネットは必死でメイアに呼びかける。

機体が操られているのなら、搭乗者本人であるメイアに何とか連絡をとればいいと考えたのだ。

カイも砂に埋もれた時は機体こそ動かせなかったが、カイ自身は正気だったのだから。

上空に静止したまま手が出せない状況のメイア機に呼びかける事数十回、ようやくリンクが繋がる。

反応が返ってきた事に喜色を表情に浮かべて、バーネットはメイアに呼びかけた。


「メイア、大丈夫?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「メ、メイア・・・?」


 通信モニター先に映し出されたメイアの表情を見て、バーネットは困惑する。

恐ろしい程静かな表情をしており、瞳は普通にはない色をたたえていたからだ。

瞳に映るのは何もない空洞の闇。そして――


「か・・・・・い・・・・・・・・」

「え?メイア、ちょっとどうしたのよ」

「かい・・・・・カイ・・・・・・・・・kai・・・・」

「メイア!ねえ、どうしたのよメイア!」

「・・・・・・」


 そのまま通信は力任せにシャットアウトされる。

メイアの異常に飲まれたバーネットを尻目に、メイア機はブースターを吹かせて上空を駆け巡った。

明らかにシールドの範囲内である筈だが、建築物からの射撃は一切行われない。

全身を覆い尽くしている砂を認識しているのだろう、メイアへの攻撃は一切行われなかった。

建築物はただレッドランプとアラーム音のみ発生させている。

コックピット内では、完全に照明が消えて真っ暗な状態でメイアが俯いていた。

砂に完全に心を侵食されたのか、それとも本人の意思からか。

メイアの表情はありえない程に暗く荒んだ表情を浮かべていた。

ぽつぽつと何か呟くが何の感情もなく、ただ言葉としてのみの意味合いでしかなかった。

しかし、その静謐な声にこそ不気味さすら感じさせる。

高き空を飛翔し続けるメイア機はやがて目的に到達したのか、急降下を行った。

どうやら突然の行動にも意味があったのか、その動きに余念はない。

降下して無事に着陸を終えて、メイア機はある一点へと歩行する。

ズシン、ズシンと砂に足跡を残して、ただ目の前のそれへ近づく。















そして・・・・・





辿り着いた・・・・














 周囲を偽装蛮型に囲まれながらも、堂々と立っている金色の蛮型。














手に持つナイフは砂にまみれていたが、敵を切り裂くには十分な輝きを発している。

背後より接近するメイア機に気がついたのか、その機体はゆっくり振り向いた。

見上げるは、砂の丘に立つ砂に覆われた機体。
















対立する金色の蛮型と砂に包まれた白亜の蛮型。
















コックピット内のメイアは目標が何か分かり、その表情をある感情に満たした。

コックピット内のカイは目標が何か分からず、その表情をある感情に満たした。
















その瞳に映るのは何もない空洞の闇。そして――





憎しみ・・・・・・・・































その瞳に映るのは前を向いている輝かしい光。そして――





闘志・・・・・・・・















二人は、激突した。




















<続く>

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