ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action3 -話路-








「タラークは今後、どう出ると思いますか?」

「……女達を生かすも殺すもお頭が刈り取りの情報をどう扱うか、だ」


 ブザムこと浦霞天明とは、何とか協力関係を結ぶこと自体はできた。

彼女であり彼であったブザムはマグノ海賊団にとっては裏切り者になるかもしれないが、カイ達とは別段敵対していない。

むしろ出身がタラークであるというのであれば、協力を結ぶ事に異存はない。


内心どうあれ、本来助け合うべき立場なのだから。


「つまり、切り札は刈取りというわけですか」

「そして、お前達だな」


 ゆえにこそドゥエロは平然と意見を求め、ブザムは内心複雑になりつつもきちんと意見を述べた。

タラーク・メジェール両軍より無条件降伏を要求された、この状況。戦わないのであれば、受け入れるしかない。

その上で今後どうするべきか、先行きを見通した上で対策を講じなければならない。


ブザムの見解はカイ達と一致したので、全員揃って頷いた。


「だったら身寄りのない俺達はひとまず避難しておくか」

「お、お前はその……戻らなくていいのか。故郷には、親がいるんだろう」

「考えてみれば別に急ぐ話でもないしな、平和になってから会いに行くことにするよ。
俺は労働階級の使い捨てだから、平穏無事に家に帰れるとは限らないし」


 ドゥエロやバートのような士官候補生のエリートとは違い、カイは労働階級の三等民である。

そんな彼が軍艦タラークに乗船したのはコネであり、正規の雇用とは言い難い。

加えて軍艦タラークが海賊に略奪された事や刈り取りの事も含めて、カイは多くの暗部を知ってしまった身。故郷へこのまま連行されたらどういう目に合うか――


口止めして解放、とはまずいかないだろう。口封じした方が早いからだ。


「私やバートも命懸けで彼を守るつもりだが――」

「全部片付いて、平和になってからの方がいいだろうね。事が全部明るみになってからのほうが、話も早いでしょ。
まあ、安心しなよ。僕がおじいちゃまを何とか説得して、お前の身の安全を確保してやるから。

最悪、僕が身柄を引き取ればいいしね」

「私も保証人となろう。君が口封じされるなど見ていられないからな」

「悪いな、お前ら。その代わりといったらなんだが――こいつらの面倒は、俺に任せてくれ。 ユメやソラもいるし、絶対にタラークやメジェールには渡さないからな」


 男達三人は熱心に話し合って、二手に分かれる事になった。

バートとドゥエロはブザムと同行して本国へ戻り、有力者達を説得して協力の輪を広げる。

カイはこのままニル・ヴァーナに残り、シャーリーやツバサのような身元不明者達を守る。


バートはかなり渋ったが、自分の成すべきことを果たすべく泣く泣くシャーリーと別行動を取ることにした。


「ごめんよ、シャーリー。必ずおじいちゃまを説得して、シャーリーと一緒に生きていくことを許してもらうから!」

「ありがとう、おにーちゃん。シャーリーのことは、心配しないで。
ツバサちゃんもいるし、ソラちゃんやユメちゃんもいるから、寂しくないよ!」

「うう、なんていい子なんだ……君たち、よろしく頼むよ」

「ちっ、男のくせに泣くんじゃねえよ――安心しろ、ちゃんとあたしが傍にいてやるから」

「まあ、ユメはこの子達の上司だからね。面倒くらい見ててあげるわ」


 普段は何かと小馬鹿にする二人だが、バートにガン泣きされてツバサやユメも渋々頷いてあげた。

旅の間は紆余曲折あったが、少なくとも今はバートの事については過小評価はしていない。

結果を出しているのは事実だし、何よりもカイの大事な友人である。


カイの安全のために命をかけるとまでいう人間を、二人は決して侮ったりはしない。


「カイ、パルフェも説得して残ってもらおうと思う」

「えっ、何でだ」

「両国にとって、ニル・ヴァーナは未知の戦艦だ。地球が迫っていることも承知の上であれば、即座に破壊したりはしないだろう。
とはいえどんな細工がされるか、検討がつかない。このまま船に残ってもらい、留守をお願いしようと思う」

「僕も操舵席も一応ロックしておくけど、ソラやユメがいれば緊急時に発進できるからな。
僕達が故郷に連行されて何かあった場合、助けに来て欲しい」


 ブザムとも話し合った際、融合戦艦ニル・ヴァーナが両国に拿捕される可能性は低いとの結論が出た。

全長三キロを超える巨大戦艦だ、極秘に両惑星へ持ち込むことは難しい。というより、不可能だろう。

そもそも両国はなぜか連携が取れてこそいるが、元々は敵国同士だ。ニル・ヴァーナという戦力をどちらが保有するか、まず争いになるだろう。


となればこの空域で停止させるか、破壊するしかない――そして地球という脅威が迫る以上、選択肢は一つだった。


「私も残ろう」

「えっ、お前も!?」

「私が残るのは不服なのか、カイ」

「だって青髪、お前はマグノ海賊団ドレッドチームのリーダーじゃないか」


「ヴァンドレッドシリーズを使用する上で、一人は残らなければならない。
私とお前のヴァンドレッドは加速に特化した機体だ、いざとなれば緊急離脱は可能だ。

私が行ってもいいが、ディータやジュラが残る羽目になるぞ」


「何卒よろしくおねがいします」

「初めからそう言え」


 いざという時にディータやジュラの二人では、不安である。カイは大人しくメイアに頭を下げた。

ディータもリーダー候補として随分頼もしくなってきているが、これほどの有事を任せられるほどではない。

ジュラにいたっては、サブリーダーである。むしろ責任者の代行として、メジェールは二人に任せた方がいい。


責任者とは責任を取るべき立場であり、同時に責任を果たす者である。


「お姉様が残るなら、私も喜んで残るわ。冥王星出身の私が行くわけにもいかないからね」

「確かに地球に近い立場として、下手すると俺と同じく抹殺されてしまうかもな」

「家なき子は大変だわ、ホント」


 悲痛な立場ではあるが、同士がいれば笑い話になる。ミスティとカイは顔を見合わせて笑った。

二人の関係は、何とも不思議である。友人であり仲間でもあるが、何より家族とは違う距離感の近さがある。

異星人としての繋がりは奇妙であり、同時に連帯感が強い。男と女という性別の違いも、不思議な関係を彩っている。


メイアは二人の関係が喜ばしくもあり、羨ましくもあった。


「カイ、これは決してピョロのワガママだけじゃないけど」

「どうした」


「カルーアはピョロやユメが預かった方がいいんじゃないか?」

「うーん……」


 子供可愛さ、と一蹴は出来ない。ユメもピョロの傍らで、真剣な顔をカイに見せている。

当然だが無条件降伏を受け入れたところで、捕虜としての扱いが良くなるとは限らない。

そもそも海賊は犯罪者であり、重罪に等しい行為だ。その子供が赤子だからといって、優しく扱う必要はない。


「俺達に関する報告も含めて、メインブリッジにつないで相談しよう。おふくろさんもいるからな」

「了解ピョロ」


 仮にも国家である以上、赤ん坊を虐待したりはしないとは思うが――あくまで思う、でしかない。どうなるか、不透明だ。

殺されるのも論外だが、引き取られるのも困る。故郷の収容施設に贈られたら、取り戻すのは困難だ。


今後についてマグノ達と相談し、行動に移す。















<to be continued>







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