ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action2 -肚裏-








 マグノ海賊団を束ねるマグノ・ビバンが全面降伏する事自体は、カイ達も分かっていた。

タラーク・メジェール両国家が率いる軍隊相手に戦う選択肢はまず、ありえない。

ニル・ヴァーナとヴァンドレッドシリーズがあれば倒す事も出来なくはないが、決して勝利ではない。


相手はともかく、自分達は彼らを敵だと思っていないのだから。


「マグノばあさんは、全面降伏を選択した。多分ニル・ヴァーナを無血開城し、船員達は無抵抗で拿捕される事になる。
そこで、俺達の今後の身の振り方について相談しよう」

「……何故、私の前で堂々と相談するんだ」


 ブザムこと浦霞天明が投獄されている監房の前で、カイが呼びかけたメンバーが勢揃いしていた。

男達三名にミスティ、シャーリーにツバサ、ソラとユメ、ピョロと育児籠に乗せられたカルーア――


そしてそんな彼らの動きに気づいて追い掛けた、メイアが並んでいる。


「あんたはタラーク側のスパイであり、同時に俺達が身元不明であることを知る有力者だ。
タラークを裏切らない程度であれば、進言を求めてもかまわないだろう」


 ドゥエロやバート、メイアやカルーアを除けば、彼らは異邦人である。

カイはタラーク育ちだが地球出身であり、タラーク国に登録されていない労働階級である。


もしも捕まって出自を確認されたら、彼らは身元が保証されない。


「お前達の敵だという認識はないのか」

「これほど状況が煮詰まっている中で、人間同士が敵か味方かなんて些細な事じゃないか?
どうせ刈り取りがやってきたら、全員平等に臓器を刈られるよ」


 カイの言い方は身も蓋もないが、真実でもある。

狂気に侵された地球側が、タラーク・メジェールの人間を選ぶとは思えない。誰であろうと関係なく刈り取られるだろう。

だからこそ両国の上層部が何を考えているのか不明なのだが、それこそ聞き出さなければ何とも言えない。


最悪地球側に属しているのかもしれないが、そうであってもカイ達の進むべき道は変わらない。


「万が一お前達が捕らえられた場合、まず真っ先に男女で隔離されるだろうな」

「うむ、それぞれ男と女で、タラークとメジェールに分けて確保されてしまう」


「冗談じゃない、僕はシャーリーと絶対に離れないぞ!」

「おにいちゃん!」


 メイアやドゥエロに引き離されると言われて怯えるシャーリーに、バートは必死の形相で抱きしめる。

ツバサは表情にこそ出ていないが、しっかりとカイの服を摘んでいた。いざとなれば、絶対離さないだろう。

ピョロは大慌てでカルーアを抱きしめようとして、ユメに突き飛ばされている。本人は映像なのだが、そこはリアクションというものだろう。


冷静な指摘を受けて、ジャーナリストであるミスティは現実的に事実を受け止める。


「お姉様の言う通りだとすると、私達はこのまま捕まるわけにはいきませんね。私は別にお姉様と一緒ならどこでもいいですけど」

「私は海賊だ、お前には悪いが庇ってられる余裕はない。最前線で戦っていたからな、多分手配もされているだろう」

「そう、ですか……」


 メイア・ギズボーンは、自分の罪を受け入れていた。

孤高に強くなるという理由で自ら最前線で戦いに明けいれて、略奪を繰り返してきたのだ。

生きるためには仕方がなかったとはいえ、自分の罪を認識する余裕もなかった。その結果、多くの人達を傷つけたのは事実なのだ。


特にタラーク側に対してはメジェールの教育もあって、男達には容赦しなかった。


「反省なら、いくらでも出来る。人類滅亡の脅威が迫っている中で、まず出来ることを考えよう」

「ああ、分かっている」


 海賊を今まで否定してきたカイもメイア達の苦境を知り、正面から糾弾することはなくなっている。

結局故郷へ辿り着くまで海賊の仲間になることは一切なかったが、メイア達本人の大切な戦友として肩を並べて戦えるようになっている。

その事により二人の距離感も劇的に縮まり、割り切った関係でこうして話せている。


そうした二人を、ブザムこと浦霞天明はこころなしか柔らかい眼差しで見つめていた。


「私も今更タラークへ帰属するつもりはない、故郷で帰りを待つ者もいないからな。だがバート、お前は違うのではないか」

「日頃から爺さん自慢をしていたじゃないか。お前を大事に思う家族じゃないのか」

「うっ、それは……」


 バート・ガルサスは士官候補生でこそあるが、バルガス財閥というタラーク有数の財閥で期待された御曹司でもある。

祖父には大層可愛がられており、士官候補生入りは軍規で仕方ないとはいえ、本人には不向きで随分心配された経緯があった。

バート本人も軍人として生きていくつもりはまったくなく、徴兵を遵守した後はさっさと退役するつもりだったのだ。


その矢先に海賊に襲われた挙げ句の、ワームホール事故による行方不明である。生死不明で、さぞ心配しているだろう。


「お、お前こそどうなんだよ、カイ。確か酒場の息子だとか何とか言ってたじゃないか」

「マーカスの親父には確かに一度顔を出しておきたいところだが……俺の場合、リスクの方が大きいからな」


 記憶こそ思い出せているが、地球には両親と呼べる存在なぞ皆無だった。

孔明な博士の代わりとして生み出され、役立たずと廃棄された現実しかない。思い入れなんてなにもない。

むしろこんな自分を育ててくれた酒場の親父のほうが、余程父親だった。


旅立った義子が行方不明となれば、豪快な親父であれど少しは心配するだろう。


「そもそもカイはどうして軍艦イカヅチに乗船できたのだ。労働者として乗船したとはいえ、あの軍艦は乗員を選別される」

「ああ、軍隊のお偉いさんがうちの酒場の常連だったんだ。何とか頼み込んで、乗船してもらった」

「何だか妙なツテがあるのね、あんた」


 ミスティが呆れた口調で言うが、乗船した理由については聞かなかった。察しが付くからだ。

労働階級と一口で言っているが、結局のところ奴隷に等しい。死ぬまで働かされて、人生は終わる。

ならば、どこかで一発逆転を狙うしかない。軍艦イカヅチの乗船は、自分を変えるチャンスだったのだろう。


無謀な挑戦だが、誰も笑わなかった――実際こうして、実っているのだから。


「でしたらマスター、私から提案があります」

「おっ、何か出来ることはあるか」


「御存知の通り私はペークシス・プラグマの精霊。本体である結晶体の中に、皆さんを匿うことは可能です」


 タラークやメジェールへ渡るのではなく、第三の居場所――

男女共同を実現できたこの船、ニル・ヴァーナである。















<Chapter 24 "Men and Women" 開幕>







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