ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 23 "Motherland"






Action16 -古馬-








 ――磁気嵐突破まで残り後五分という地点にまで、到達した。

メインブリッジで今も管轄を行ってくれている副長ブザムの見込みを受けて、集中して作業を行っていたカイやジュラもようやく一息ついた。

結局緊張し通しだったのに、敵は一切姿を見せなかった。まだ油断してはいけないのだが、さすがにもう追撃を仕掛けてくることはないだろう。


つまり、故郷は目前だった。


『お疲れさん、二人共』

「……労いの言葉は嬉しいが、もうすぐ終わる段階で来られるとちょっとムカつく」

「分かるわ、その気持ち。別にいいんだけど、もうちょっと手伝えといいたくなる」

『休めと言ってたじゃないか!?』


 仕事中ではあるのだが、声をかけていい許可を出したのはブザムである。副長なりにも、カイ達に気を使ってくれたのだろう。

意気揚々とブリッジに戻ってきたバートの姿を通信画面越しに見て、二人揃って溜息を吐いた。

操舵手である彼の仕事ぶりは理解しているし、今日務めなければいけない役割も果たしているので、特に問題もない。


ようするに、声を掛けるタイミングが悪かったと言うだけである。


『仕事中悪いけど、少し相談に乗ってもらえないか』

「まあどうせ、後は磁気嵐を出るのを待つだけだからいいけど」

「つまらない話だったら承知しないわよ、あんた」


 ヴァンドレッド・ジュラの運行を自動操縦にして、二人は揃ってバートの話に耳を傾ける。

敵影が出れば即座に対応できる程度の意識は向けているので、二人の間に緊張と同時に油断もまたなかった。

残り数分で突破可能とはいえ、ブザムもブリッジで運行状況を管理している。適度な雑談くらいは、目をつむってくれるだろう。


二人の承諾を受けて、バートは目を輝かせて身を乗り出してきた。


『シャーリーが今年、初めてのクリスマスを迎えるんだ』

「クリスマスが初めてってお前――ああ、なるほどな」

「あの環境を考えると、無理も無いわよね」


 シャーリーは幼いとはいえ生まれてきて何年も経過している、クリスマスの時期くらいは何度も過ごしてきただろう。

とはいえ彼女の故郷は病の惑星であり、彼女本人もまた深刻な病魔に侵されていた。

明日をも知れぬ命、いつ尽きても不思議ではなかった寿命。完治できたのは、本当に奇跡だったのだ。


だからこそ迎えられた今日という日を、祝ってあげたいのだろう。


『折角のクリスマスだ、とびきりのプレゼントを贈って彼女を喜ばせてあげたい。どんなのを贈れば、女の子は喜んでくれるのかな』

「何故それほど大切な相談を、仕事明けの俺らに聞くのか」

「そんな重い相談を聞ける体調じゃないんだけど」


 意外と真剣かつ大切な相談に、カイやジュラは揃って顔を引き攣らせた。

勿論、無碍に否定するつもりは毛頭ない。祝ってあげたいという気持ちは尊く、それほど大切な決心をしたバートという友人が誇らしく思う。

快く相談に乗ってあげたいのだが、あいにくとカイ達も重要な仕事を終えたばかりでトコトン疲れていた。


今疲れているから後で、とは言いづらい。だからこそ文句をいいつつも、一応考えてあげた。


「この前の青髪の誕生日を参考に考えたらいいんじゃないか」

『メイアの誕生日、サプライズという点に重心を置きすぎて肝心のパーティ開催の時点で感極まった感があるだろう』

「うーん、確かにサプライズパーティが出来た時点でみんな喜んでいたもんね。本人も含めて」


 以前行ったサプライズパーティ、色々なアクシデントがありつつも見事に成功した誕生パーティだった。

本人も珍しく素直に喜んでくれて、皆も心から祝福できた素晴らしいイベントだった。

ただ問題はそのパーティが素晴らしかったのであって、プレゼントについては本当に心からの気持ちという印象が強い。


改めて振り返ってみると、みんなそれぞれ自分なりに贈っていたのだ。


「女へのプレゼントとかあまり贈ったことがないからな……金髪が答えてやれよ」

「そりゃあまあ、ジュラは人気者だから今まで沢山貰った事があるけれど――」

『けれど?』

「洋服とか、化粧品とか、宝石とかだから、ちょっと違うでしょう。あの子、女性じゃなくてまだ女の子だしね」

『う、うーん、確かにそういうのはちょっと早いかな……』


 バートも女性の嗜好品には詳しくはないものの、約一年間の同居生活を通じて女性の私生活にもふれている。

彼女達がどんなものを好んで、どんなものを使って生活しているか、少しづつではあるが女性文化にも関わってきていた。

だからこそ、ジュラの言っていることもよく分かる。ジュラが喜びそうな品は恐らく、女の子のシャーリーにはまだ早いのだろう。


化粧をする年齢でもないのだから。


「いや、悪くはないと思うぞ」

「えっ、絶対まだ早いわよ……そりゃ家族のあいつが贈れば何だって喜ぶでしょうけど」

「違う。服だよ、服」

「服……?」


「あの子やツバサ、可愛らしい服とか持っていないだろう。全部生活用品ばっかりだ。
クリーニングクルーの連中に頼んで、子供服を作ってもらえよ。連中、カルーアの服とかも作っているんだから」

『それだ!!』


 ――マグノ海賊団のクリーニング部署は、洗濯や清掃だけが業務ではない。


カイはかつて全部署の見習いを行ったので業務を全て把握している。クリーニングクルーたちの本業は、生活空間の維持にある。

生活用品だけならレジでも補えるのだが、服装の管理はむしろクリーニングスタッフ達が行っているのだ。


洋服作りは時間がかかるが、ツバサやシャーリーの洋服については以前から製作に意欲的だったので相談すればすぐ製作してくれるだろう。


『ありがとう、カイ。可愛い洋服ならきっと喜んでくれるよ、さすがは僕の親友だ!』


「友達だというのならついでにツバサの服も頼んでおいてくれ、俺も便乗したい」

「……チャッカリしているわね、あんた」


 こうしてクリスマスプレゼントも決まって、パーティ開催も目前となった。























<END>







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