ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action14 −新生−








 男女決闘イベントの前座である就活イベントは、大成功に終わった。


メインゲストは男達一色だったが、どの男たちも個性が強い上に各職場での環境は悲哀に満ちていてドラマ性があった。

結局採用こそされなかったが、労働改善には繋がったという意味でも就活イベントの役割は果たしている。事実このイベント後、各職場で労働改善を話し合う機会が生まれたという。

長期滞在中の今だからこそ直すべき点は直していくべき、人としての営みに目を向ける良い機会でもあったのだ。イベントチーフはお頭直々に、表彰状を頂いた。



そして何より、肝心の温泉クルーについては――



『今日から新設される温泉を取り仕切る事になった、ツバサだ。アタシがチーフとなったからには、宇宙一にするつもりなんでよろしく』

『ふ、副チーフの、シャーリーです……本当にわたしでいいのかな……が、がんばります』


 子供店長だと揶揄する声も無くはないが、ツバサもシャーリーも子供ながらに苦労人である。可哀想な環境育ちではあるが、だからこそ自立心が非常に強い。

学ぶ姿勢は貪欲で、環境に慣れる資質は人一倍。居場所を求めて旅立ったからこそ、居場所を作る気概に満ちている。子供だが、大人顔負けの二人である。

そもそもマグノ海賊団に、年齢など関係ない。パイウェイはドゥエロが船医となるまで、一人で医務室を預かっていた。大切なのは実力だ。


そしてこの二人は異星の出身――病の星の病院やミッションには地球の古書等があり、詳しくでは無いが温泉についても知っていた。


知識があれば何でも出来るわけではないが、基礎知識も無ければそもそも話にならない。特にシャーリーは治療の一環で、温泉の効能等にも詳しかった。

ただ何もかも二人に任せられる訳ではない。大人顔負けでも子供、心配する大人も当然居る。


『シャーリー、大丈夫かな……いきなり働いたら病気とか悪化するんじゃないかな』

『うちのツバサと毎日走り回ってるじゃねえか、あの子。大丈夫だよ』

『駄目だよ、ますたぁー! あの子達はユメの部下なんだよ、これから一緒に頑張るつもりだったのにぃー!』

『何かあれば力になってあげましょう、ユメ』


 保護者達の要望もあって、ツバサ達には優秀なスタッフがつけられた。非戦闘員を主にした構成員で、年代も比較的若い年頃。ツバサ達も物怖じしない人達である。

彼女達は生活区の住民で仕事こそあるが、役職の無い人間である。適材適所の環境でも、全員完璧には一致しないものだ。新設部署は遣り甲斐のある職場だった。

日頃カイ達が最前線で苦しい思いをして頑張っている姿を、彼女達は見ている。男達を侮る気持ちはもう無いが、だからといって何もかも任せてのんびりしていられる人達ではない。



こうして温泉クルーが設立、温泉施設の建設は決定となった。



『もう引越ししたとはいえ、此処も正式に引き払う事になったな』

『監房の中の生活なんて嫌で仕方なかったのに、何だか寂しいよね。そうだ、タラークに帰ったら三人で一緒に生活しようよ。
部屋とか必要なものは全部、僕のおじいちゃまに頼んで用意してもらうからさ!』

『俺とお前らの階級差を前提にしてから案を出せよ、お前は』

『ふふ、私としては異存は無い。ただ彼女達との縁もある、また男女別の生活になるとは限らないだろう』


 ――元監房、カイ達の部屋の閉鎖も決定。工事中の立て札を前に、男達は夜集まってこんな会話をしていたという――


監房なんて犯罪者が収容される部屋、捕虜扱いとあって最悪の生活環境だった。楽しい思い出より、苦労の方が断然多いだろう。

元から仲良しこよしの関係ではなかった。三等民と士官候補生達、喧嘩も多く、元の生活環境も異なっていて不平不満の日々だった。

監房なんてむしろ出て行きたかったのに、こうして失うと喪失感が出てくる。人間というのは何とも不思議なものだ。語り草は多く、男達は過去を語り合う。


それでも男達に、悲哀はない。若者達には未来があり、展望もある。今日は言わば卒業式――飛び立つ前に、思い出を懐かしむだけ。


彼の家族であるツバサやシャーリーがこの先、この場所を守ってくれる。大勢のお客さんを呼んで、皆を楽しませる明るい場所へ変えてくれるだろう。

繋げられる誰かが居るのであれば、それは幸せな事だった。男達はこうして、新しい居場所へ旅立っていく。


『温泉発掘は事故による偶然の産物だ。降格等の処罰はしないが、責任は取ってもらうぞ』

『げっ、許されたと思ったのに、とほほ……元はといえば、お前のせいだぞ』

『べんごしをよんでくださーい』


 メイア号令の元行われている艦内大清掃は、事故こそあったが引き続き進められた。水道管事故を起こした警備チーフとクリーニングチーフも、清掃メンバーに駆り出される。

カイ達は元監房を引き払い、メイア達は元軍艦や海賊船の清掃と改装に励む。古い場所の整理整頓と、新しい場所の設立が同時に進められたのだ。

半年以上刈り取り部隊を相手に戦い、ニル・ヴァーナ全体がダメージを負っている。ペークシスで修復されても、船である以上航海すれば損傷は蓄積されてしまうものだ。


使われていない部屋の整理や、倉庫の点検なども積極的に行われた。


「ミスティ、この衣類について何か心当たりはないか?」

「わっ、これ湯着ですよ!? やった、これであいつと勝負出来る!」

「他にも小道具が沢山あるようだが……何故温泉に関連する道具が、船に保管されていたのだろう」


 元地球の船だけあって、祖先の星の品も幾つか発見された。形に残らないデータ関連もあって、急ピッチで復旧作業が進められている

大抵は戦闘には使用出来ないものだが、地球という敵を知る上での手掛かりにはなる。今まで正体不明だった品々も、ミスティ達異星人が居れば分析出来る。


物資はあればいいというものではないが、あるに越した事はない。こうして大々的に検品が行われて、マグノ海賊団は多くの品を手に入れられた。


「第二居住区も前々から生活環境の苦情が上がってた。倉庫整理も済んでるし、いっそ移住させよう」

「しかし、元男達の船だ。生活するのに抵抗はないか?」

「カイ達だけじゃなく、ミスティやツバサ達まで好きな部屋で好き勝手に住んでいるんだ。自分達もそうしたい、だとさ」

「やれやれ、彼らをあまり見習うべきではないと思うが」

「ふふふ、逞しい限りじゃないか。あの図太さは見習うべきだよ、BC。ガスコーニュ、許可は出すから引越しを手伝ってあげとくれ」

「了解です」


 改装作業を通じた、職場と生活環境の改善。元いた場所に固執せず、必要かつ最適な場所へとそれぞれが移っていく。大移動が行われた。

自分達の生活や価値観にこれまで囚われるあまり、新しい世界に触れる事が出来なかった。その垣根を壊したのが、カイ達だった。

男達だけでは移住まで考えなかっただろうが、同じ女のミスティやツバサ達もより良い環境を作って楽しく毎日を過ごしている。憧れない筈がない。


こうして行われた、大移動――各部署は一新し、各居住区はそれぞれ新環境へと移設された。


男の船、女の船、そうした垣根は既にない。どこに男と女が居るのか、ではなく、何処にどんな人がいるのか。人として区別するようになったのだ。

適材に続く適所、新しい環境は大きく改善されて、機能も効率も飛躍的に高まった。物資や機材も一新されて、能動的かつ機能的に各クルーが手腕を発揮するようになった。


修繕も行われて傷も癒え、所変わって使われていなかった施設も機能する。全てにおいて、新しく生まれ変わる。



新生――この先地球と戦うべく、あるべき男女の世界が創世されたのである。



「じゃあ、決着と行こうか」

「ええ、あたしとあんた――男と女、どちらが上か!」


 後は、決着をつけるのみ――タラークとメジェール、男と女。

長きに渡った因縁に、真の決着をつける時がきた!

























<to be continued>







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