ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action11 −就活−








 厳密に言うと違うが温泉発掘により、マグノ海賊団は大喜び。水質検査を継続して行い安全面を確保することを前提に、お頭と副長より正式に温泉施設の建設許可が降りた。

最近新設されたナビゲーションクルー同様の人員穴埋め部署ではあるのだが、長期の旅においては変化も重要である。

クルー達の心の憩いと刺激になるのであれば、と最終的に結論を出して、マグノ達が正式に温泉施設の許可を出したのである。

そこへ便乗したのがイベントチーフ、温泉クルー選出のイベントを提案。このイベント案には、マグノ達もさすがにいい顔はしなかった。


そもそも人員配置はマグノ海賊団幹部達が話し合って決めた、適材適所の持ち場。海賊は最高のスタッフが最高の場所で働くからこそ、チームワークが揃うのである。


クルーの希望も当然配慮はしているが、各人員のスキルや素質を十分に吟味して決めている。でなければ基本のんびり屋のディータを、パイロット配属とはしない。

難渋を見せるマグノ達を相手に、はいそうですかと引き下がらないからこそのチーフ。イベントで即決定とせず、最終的にマグノとブザムが承認を出す形で許可を取り付けた。

まず希望者を募って、面談時間を設定。面談の内容は艦内全域放送とせず、オープンチャンネルとしてクルーの意志で自由に見れる生中継システムとした。



――そして今は長期滞在中で、全員がほぼ暇な状態。当然のように、全員が中継を見ていた。



『皆さん、こんにちは。本日開催する温泉クルー発掘担当、ミカ・オーセンティックと』

『男子面談担当、カイ・ピュアウインドと』

『女史面談担当、ミスティ・コーンウェルでお伝えいたします。皆さん、チャンネルはそのままでよろしくね♪』


 ミスティの可愛いウインクでの挨拶に、同じ女性クルー達から拍手喝采の黄色い歓声が上がる。すっかりマグノ海賊団の人気者となっていた。

彼女本人はマグノ海賊団に所属していないが、その活躍ぶりは各部署で話題になっている。異星人ならではのキャラクターに不気味さより、もの珍しさが優っていた。

そもそもクルー達は全員、カイというある種の強烈なキャラクターの洗礼を受けている。彼に慣れてしまえば、彼女なんて可愛いものだった。


カイとミスティは温泉施設の権利を取り合う敵同士、だからこそ二人並んでのイベントが盛り上がるのである。



『では、早速参りましょう。エントリーbP!』

『バート・ガルサス、元操舵手です。よろしくっす!』



 ――全員が、ズッコケた。お頭やブザムも、例外なく。



適材適所の持ち場とはいえ、柔軟性はきく。転職の余地がある事自体は、マグノやブザムも認めている。完璧な人選、完璧な配置など、この世にはありはしない。

そもそも人間そのものが、完璧ではないのだ。希望する部署と出来る仕事が、必ずしも一致するとは限らない。


だがこの世には、代えのきかない仕事というものだってある。


『面談する以前に聞くけどお前、辞められるの?』

『もう辞めてやる、あんな職場! 僕には耐えられないんだ!』


『いやそうじゃなくて、この船ってお前以外の人間でも動くの?』


 カイの質問に、生中継を見ていた全員が揃ってウンウンと頷いた。完璧なハーモニー、今世紀稀に見る一致団結である。

バートがニル・ヴァーナの操舵手となったのは本人の希望ではないが、本人が船を動かせると言ったのである。

本当は当時捕虜だった己の立場改善を求める嘘でしかなかったのだが、ペークシスの暴走に巻き込まれた彼は本当に船を動かせたので採用された。


そして半年以上経過するが、彼以外にこの船を動かせたものはいない。


『そんなの、僕に関係ないじゃないか。僕の意志はどうなるんだ!』

『お前には、引継という概念がないのか』

『最初の母艦と戦った時だって、僕は一度クビになったんだ。船が動かせないからまたやれなんて、ひどい言い草じゃないか!』


『――そんな事、言ったんです?』

『うっ、それっぽい事を言ってしまったかも』


 最初の母艦戦には居なかったミスティが、ミカに耳打ちして質問。当時の自分達の所業を思い出して、イベントチーフも冷や汗を流す。

バートの感情的な主張に、今度はマグノ海賊団全員が押されてしまう。あの時バートは撃たれて死にかけたのだ、最悪のリストラである。

マグノやブザムも中継を聞いていて、ついつい彼に同情的になってしまった。


『何でもやらせてもらうよ。風呂掃除でも番頭でも、必死で頑張る。とにかくあの日夜休まずこき使われる、あの重労働席から逃げたいんだ!』


『……おい、採用してやりたくなってきたぞ』

『……やばいわ、あたし泣けてきた』

『……まさか序盤からこんなおいしいキャラが来てくれるなんて、誤算だったわ』


 凄まじいドキュメンタリーに、マグノ海賊団全員が涙させられてしまう。涙なしには語れない、悲哀の労働環境であった。

早くも伝説のイベントとなりつつあったが、幾ら何でも最初から採用で終わらせる訳にはいかない。

かといって不採用などすれば、ド顰蹙ものであろう。最強のトップバッターに、面談者であるカイ達が汗を流して応対に困り果てていた。


そこへ生中継ならではの、母の呼びかけが入った。


『バート、もういいよ。お前さんの気持ちは十分わかった、帰って来な』

『い、嫌だ!? 僕はもう絶対に帰らないぞ!』

『休暇と休憩時間を増やすように、BCに言っておいた。こき使って悪かったね、許しておくれ』

『お、お頭ぁ……!』


『なに、このイイ話』

『どうしよう、あたしマジ泣きしてるんですけど』

『よかった、よかったねー、おっかさんと分かりあえて』


 その後わざわざお頭本人が迎えに来るという、夢のサプライズ。バートは感激して縋り付き、感動の抱擁を交わして面談会場を後にする。

後日、彼宛に応援のファンレターやプレゼントが山ほど届いたという。視聴率はこの時点で既にクライマックス、針が振り切れる勢いだった。


カイやミスティ、イベントチーフもその場で拍手喝采で見送る。完璧な、ドキュメンタリー番組であった。


『家族であっても分かり合えるとは限らない。気持ちを口に出す大切さを、あいつは教えてくれたな』

『孫同然の部下に生中継越しに呼びかけたお頭さんの心遣いにも、あたしは感動したわ。あれこそ、家族の絆よ。
喧嘩なんてしないで、まずは話し合わなければ駄目だわ』


『――あのね、あんた達。後で決闘するんだから、先に結論を出して仲直りしないでね』


 既に答えは出ているというのに、カイとミスティは一応決闘するつもりらしい。呆れた話ではあるが、これも娯楽である。

思わぬトップバッターに全員揃って感動させられてしまったが、一応まだまだ応募者はいる。ここで満足するのは惜しい。

正直バート一人でもこのイベントは大成功だったのだが、視聴者は次を貪欲に求めている。イベントチーフである以上、イベントは遂行しなければならない。


感動的な空気を一旦切り替えて、再び彼らはイベントを盛り上げる。


『では次へ参りましょう。エントリー2!』

『ドゥエロ・マクファイル、元医者だ。よろしく頼む』


『何で、代えのきかない奴ばかりくるんだ!?』

『うっ、あたしもう既にワクワクしてきちゃってる』

『よっしゃ。やってよかった、このイベント!』



 ……一応、まだ続くらしい。

























<to be continued>







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