ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 20 "My Home Is Your Home"






Action4 −発見−








 メイア・ギズボーン決起による、ニルヴァーナ一斉点検。点検と聞けば簡単そうに思えるが、融合戦艦ニルヴァーナは全長三キロメートルに及ぶ巨大戦艦である。

上下左右、縦横無尽、あらゆる角度から検証してもだだっ広いの一言に尽きる。点検範囲は艦内全域ともなれば、クルー全員が悲鳴を上げるのも無理はなかった。

仕事ならまだしも、現在稀に見る長期休暇中である。母艦を撃破した直後とだけあって、全員のやる気は全くと言ってもいいほどなかった。抵抗しても無駄だと、知りつつも。


そんな怠惰な大人達と比較して、マグノ海賊団自慢の子供達は冒険心に満ち溢れていた。


「ユメ、大変だピョロ!?」

『どうしたのよ、いきなり』

「メイアにこちらの動向を気付かれたピョロ!?」

『あの青い髪の女の事? もう、ユメの邪魔するなんて許さない! 殺してやろうかな』

「お前はすぐ物騒なことを言うピョロね……駄目ピョロ、メイアはカイとコンビを組んでるピョロ」

『むぅ、ますたぁーの"白きアスディワル"じゃなかったらすぐ壊してやるのにー!』


 工事用ヘルメットを被るピョロと、白いハチマキを巻いたユメ。艦内名物のナビゲーションチーム、御存知の通り二人組である。すっかり、艦内でも有名となっている。

二人揃って珍妙な格好をしているのは、彼らなりの作業着であった。そもそもユニフォームそのものがない部署なので、服装の規律は適当である。

このチーム、先日の母艦撃破の活躍を正式に認められて、何と人員の追加を許可された。五人になると正式部署としてマグノ海賊団より予算の分配がされて、設備や資材の支給が行われる。


追加されたメンバーは、三名――


「おやつ見っけ。どれどれ……ぺっ、何だこれ。味が薄いじゃねえか」

「だ、駄目だよ、ツバサちゃん!? 変なもの食べたら、お腹壊しちゃうよ」

「お前はいちいちうるさいんだよ、シャーリー。大体これって、お前の兄貴が食ってるのと同じ形してるぞ」

「あっ、本当だ。でも、お兄ちゃんが食べていたのはもっと綺麗だったよ」

「こんな倉庫に積まれていたんだ、保存食かなんかじゃねえのか。食えるならいいじゃん、貰っていこうぜ」

「いいのかな、勝手に取っちゃって」


 パジャマ姿のシャーリーと、三等民支給服のツバサ。病の星とミッションより連れられた子供達二人は、ピョロの部署になし崩しに動員させられている。

基本的に二人はバートとカイ預かりなのだが、大人にお世話になりっぱなしの弱い子供達ではない。病に吹き溜まり、悪環境より立ち直った子供達は大人顔負けの強さを持っている。

マグノ海賊団もまた、パイウェイのような子供でも働かせる組織である。二人の自立心を考慮して、部署入りを認められた。

本人達は海賊入りするつもりはないのだが、自分の食い扶持を稼ぐべくこうして頑張っている。


「こらー、そこの二人。遊んでいる暇があったら、トンネル掘りを手伝うピョロよ!」

「カルーアとかいうガキの所へ行く道を作るんだろ、暇なロボットだな」

「ツバサちゃん、カルーアちゃんは可愛いよ!」

『そうよ、あの子はユメ達の新しい仲間なんだから!』


 ピョロ、ユメ、シャーリー、ツバサ――そして五人目、カルーア。エズラの子供であり、産まれたばかりの赤ん坊。無論、黙認に近い非公式扱いである。

職務復帰したエズラの代わりに、普段ユメとピョロが面倒を見ているのでカルーアも二人の顔を見て笑っている。子供の笑顔に大いに気を良くして、二人もまた溺愛する。

母艦撃破の褒美とマグノやブザムに日夜懇願し、母親のエズラに嘆願して、絶対に連れ回さない事を条件にクルー入りを認められた。


育児は、遊びではない。それが分かっているからこそ、二人も本気で行動している。


「仲間、ね――」

「? どうしたの、ツバサちゃん」

「よく分かんねえの、仲間とかそんなの。あそこじゃ、食うか食われるかだったからよ」


 シャーリーは、ツバサの事情を知らない。お兄ちゃんが自慢しているお友達が連れて帰ってきた、女の子。言葉遣いは非常に悪いが、この場にいる誰よりも女の子らしい声の少女。

死の病を完治したばかりのシャーリーは顔立ちは綺麗だが、長年の寝たきり状態による栄養と運動不足でやせ細っている。病状上がりの子にとって、ツバサは憧れの女の子だった。

中継基地に閉じ込もっていた汚らしい格好や風貌も、洗い落せば可憐な女の子。穴蔵育ちにより言葉や態度が悪いだけで、容貌は見目麗しいと言ってもいい。

そんな子に友だちがいないと聞かされて、むしろシャーリーは戸惑ってしまう。自分もまた長く、友達がいなかったから。


「仲間が分からない? それは非常に問題ピョロね、チームワークと言うものをリーダーの務めとして教えてあげないといけないピョロよ!」

『何言ってるの、このオンボロロボット。リーダーはこのユメよ!』

「じゃあリーダー、新メンバーに仲間とはなにか教えてあげてピョロ」

『むっ……』


 シャーリーは期待に満ちた目を、ツバサは投げやりな目を向ける。この時初めてピョロに一杯食わされたと、ユメは立体映像ながら歯ぎしりをする。

仲間、友達。他の誰でもない、最愛の主が尊重している存在。ユメは正なる感情の全てを嘲笑っていたが、カイの言う事が全てだと今は肯定している。

言い換えればカイが正しいと言っているから肯定しているだけで、本当に何が正しいのか分かっていない。分からない。言葉に出来ない。


教えてあげられない。


『な、仲間とは――』

「仲間とは?」

『愛よ!』

「……は?」


 子供らしい、真っ直ぐな主張。ゆえに、何の説明も入っていない。なので、分からない。その全てを示すかのように、ツバサが実に分かりやすく首を傾げた。

後ろでピョロが吹き出すのを見て、ユメは涙目で睨みつける。絶対いつかスクラップにすると固く心に決めつつも、自分の言葉に羞恥を感じざるを得ない。

この中で一番子供らしいシャーリーが、手を挙げる。


「お姉ちゃん、質問です!」

『な、何よ……? 馬鹿にしたら殺すわよ!』

「愛とは、何ですか!」

『えええっ!?』


 シャーリーの故郷である星は絵本すらない、過酷な環境だった。病室の窓から見えるのは寂れた景色と、広大な空のみ。

冒険心には目覚めても、恋や愛は絶対に芽生えない。シャーリーには理解不能どころか、そもそも言葉の意味も何も分かっていなかった。


凄そうだという好奇心のみで、目を輝かせるシャーリーという少女――ユメには意味不明な生き物だった。


「ふふん、ピョロをリーダーと認めるなら交代してやるピョロよ」

『ううう……』


 なんという誘惑、なんという悪辣、負の感情より産まれたユメさえ戦慄する狡猾なピョロの罠。思わず、頷いてしまいたくなる。

この場に一人でも大人がいれば大人げないと叱るだろうが、生憎とこの場には子供しかいない。無邪気な罠に、恐るべき力を持つユメが追い詰められている。

ユメが困り果てる姿、ソラがこの場にいて目の当たりにすれば驚いていただろう。

子供であるがゆえに、謝るのも苦手。ユメは意地だけで救いの手を払いのけた。


『あ、愛とは――』

「愛とは?」


『愛とは――赤ん坊よ!」


「――赤ん坊、ですか」

『赤ん坊こそ愛の結晶。愛溢れる存在、愛こそ全て。だからこそ、ユメ達にはあの子が必要なのよ!』

「なるほど、それでカルーアちゃんを仲間にするんですね!」

『そうよ、よく分かってるじゃない。ユメはぜーんぶ、計算尽くなんだから!』

「すごいです、カッコイイですリーダー!」

『ふふふ、お前は特別にユメの一番の家来にしてあげる。ついてきなさい!』

「はい!」


 倉庫の片隅で愛を叫ぶ少女達は意気投合して、通路作りの突貫工事を進める。メイアが接近しているという事実も、忘れ去られているようだ。

カルーアの名を叫んで盛り上がる二人に呆れたようにため息を吐き、ツバサはふと顔を上げてニンマリと笑う。

ピョロに近付いて、そのままポンポンと叩いた。


「お前、リーダー降格だな」

「えええええっ!? い、今ので、あいつが認められたピョロか!?」

「仕方ねえな、お前はアタシが拾ってやるよ。しっかり働けよ、三下」

「しかも新人落ち!? 何で、何で!」

「うるせえ! アタシが発見したお宝全部運び出すぞ、お前が担げ」



 大人がだらしない中、子供達は日々の発見に目を輝かせて逞しく生きている。

























<to be continued>







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