VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 4 −Men-women relations−





Action18−確執−




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 補給を終えたメイア達は再びウニ型との再戦に望むものの、成果はあげられずにいた。

基本的ポテンシャルの違いのせいもあるが、重なる敵側の熾烈な攻撃にドレッド数を減少しているのもある。

リズムのいい攻撃だった当初も、今では散発的な攻撃が目立って来ている。


『メイア、あいつの動きをどうにかしないと止められないわ!』

「く・・・母船への攻撃を第一に食い止めるんだ。致命的なダメージを食らえば元も子もない」


 ジュラに助言し、メイアは更なる加速を持ってウニ型に接近を行う。

だがメイア機の高速を持ってしても、敵を追いかけるのが精一杯であった。

バーネットやジュラも懸命に攻撃を仕掛け、仲間達の体勢を整えるのに躍起になるが効果は薄かった。


『あだだだだっ!?お頭〜、何とかしてくださいよぉ〜
もう限界っすよ!』


 メイア達の努力も空しく、第四波が母船に激突する。

ウニ型表面の刺から発するプラズマが融合戦艦上部の装甲を掠め取り、痛烈な痕跡を残す。

ナビゲーション席で船とリンクするバートは、既にあちこちに痛々しい蚯蚓腫れが生まれていた。


「我慢おし!男だろう!」


 バートの重々しい負担はマグノにも分かってはいるものの、

有効な手立てが思いつかない以上気休め程度の言葉しか投げかける事はできなかった。

傍らでコンソールを操作して敵の弱点をデータより算出を試みているブザムも、表情は晴れない。


「ドレッド三機大破!回収作業、開始!」

「敵、反転!こちらへと向かっています!」


 戦況を逐一報告するベルヴェデールやアマローネの表情にも、いつもの元気さはなかった。

自分がモニターする目の前で、仲間が無残に戦闘不能とされているのだ。

自分が何もできない歯痒さと驚異的な能力を持つ敵への恐怖に、心が少しずつ侵食されていた。

前線で戦うメイア達、そして後方で必死で対策を講じるマグノ達には暗い影が過ぎり始める。

誰もが諦めている訳ではない。

今まで海賊となって、苦境に立たされた事は一度や二度ではない。

皆己の人生において、心が引き裂かれんばかりの過酷な境遇に耐え抜いてきた人間達なのだ。

この現状においても、それぞれが必死になって自分のできる事を行っている。

だが、それでも負の感情はなかなか消えるものではない。

置かれた自分達の立場、状況、環境。

ましてや若い女性達には、命すら危うい今の状態はあまりに過酷なプレッシャーであった。

泣き出す者がいないだけでも、まだ鍛えられていると言えるかもしれない。

オペレーター席でブリッジを見守るエズラも、アマローネ達やマグノ達の陰鬱な表情は見るに耐えなかった。

心優しいエズラにすれば心を痛めんばかりの光景だったであろう。

見ていられなくなって手元に視線を移したエズラは、コンソールより送られて来た外部状況に目を丸くする。

そこには母船に切迫するウニ型に追いかけるドレッド達に加わるように、

横脇から急加速で接近する機体が表示されていた。

機体信号よりそれが何か分かったエズラは、表情を明るくしてブリッジの皆に呼びかける。


「ヴァンガード一機、敵側に接近!カイちゃんです!!」

「えっ!?カイ!?」


 思いもよらぬ名前を聞いたベルヴェデールは驚愕に目を見開き、

マグノ達も一様にブリッジの中央モニターに視線を移した。














 伝わる振動が身体に浸透し、隅々まで奮わせる。

モニターより散りばめられた宇宙の宝石が視界一杯に広がり、心を躍らせた。

コックピット内の主人と一体化するように、蛮型は忠実に宇宙に触れる己の感覚を伝えていく。

躍動感をそのままに、カイは漲る闘志で戦場へと接近していく。

遠巻きより独自の攻撃力を展開していたディータが、いち早く蛮型に気がついた。


「ああっ!!宇宙人さ〜〜〜〜〜ん!!!」


 喜びを一杯に表情に表して、ディータはカイ機をモニターに捕らえる。

作戦実行中だったがために通信回線を全開に広げていた事もあって、ドレッド達にも声が伝わった。


「げっ!?あいつ!?」

「あの馬鹿、やっぱり来たわね・・・・」


 露骨に嫌そうな表情を浮かべるジュラに、どこか来るだろうと確信があったような声色で呟くバーネット。

ウニ型への攻防を続けていたチームも蛮型の接近をキャッチし、動揺が全体に広がっていく。

結果として作戦を乱されたメイアは表情を歪ませて、全機に通信を入れる。


「皆、ヴァンガードに惑わされるな!各自自分の任務を続行しろ!」


 必死で檄を飛ばすが、一度起きた波紋はなかなか静める事はできない。

編成はより顕著に乱れており、ウニ型もこれ幸いと攻撃を重ねていく。

状況を確認したサブリーダーであるジュラも、仲間達に命令を試みる。

このままでは危ういながらも均衡を保っていた指揮系統に、致命的な亀裂が走る可能性があったからだ。

ドレッドはチ−ム単位で行動を起こさなければ、全能力を発揮する事はできない。


「皆、あんな男気にしちゃ駄目よ。一切考慮する必要はないから」

『えっ!?で、でもそれでは・・・・』


 命令を受けたチームの一人が、戸惑いの声をあげる。

ジュラの言葉は万が一ウニ型への攻撃の妨げになっても、何ら攻撃を躊躇うなとの含みがある。

完全な邪魔者扱いであり、悪く言えば敵と同列であった。


「いいのよ。あいつはどうせ男じゃない。死んだって何の影響もないわ」


 あまりに冷酷な言葉だったが、メジェールとしての観点で見るならば平常であった。

海賊の全てを束ねる頭目のマグノの命令であるからこそ、ジュラはカイ達との共存を甘んじている。

だが今回メイアとの一連の事件で、カイに対しては完全に敵として認識していた。

いやジュラからすればタラーク軍よりも、カイ個人を憎らしい男として見ていると言える。

ジュラのそうした言葉はメイアも聞こえていたが、敢えて口は挟まなかった。

心情的にはジュラと同意見であり、メイア自身もカイは敵と同じ削除すべき対象であった。

サブリーダーとはいえ、ジュラの発言力は大きい。

カイが起こした事件にパイロット達が激怒していたのを承知であり、皆が命令を受理すると思っていた。

だが――


『そ、それはちょっとひどいんじゃないですか?』

『あいつ、私達を助けに来たんだと思いますけど・・・』

『一応協力しあえってお頭が言ってたから、ジュラの命令は違反になるんじゃ・・・』

『そんなに悪い奴じゃないよね、あいつって・・・』


 返って来たパイロット達の返事は戸惑いこそ含んではいたが、ジュラの言葉には乗り気ではないようだ。

それぞれの性格ゆえか意見こそ違っていたが、内容は一貫してカイを弁護している。


「ちょ、ちょっとどういう事よ!どうして皆あんな奴を庇うのよ!」


 ジュラにとって信じられない事だった。

戦いに出る前まではパイロット達は皆、カイには負の感情を抱いていた。

拒絶、嫌悪、怒り、憎悪。

言葉こそ違うものの、メイアを傷つけたカイにはパイロット達は疎んじていた筈なのだ。

いきなりの変わり様に、ジュラは訳が分からなかった。

無論パイロット達も全員が全員カイ参戦を歓迎している訳ではない。

一方的な怒りを抱いていた彼女達であったが、レジでのディータとのやり取りを見て認識を改めてはいる。

噂に聞きつけたカイを目の前にして、その純粋な内面を感じ取ったからであった。

だがカイがメイアと喧嘩をし、他のクルー達と揉め合ったのもまた事実である。

ジュラの言葉には反感するものの、では好きなのかと問われれば首を傾げてしまうだろう。

結局の所、カイがどういう人物なのか把握できていない状況なのだ。

困惑するチームメンバーにジュラが厳しい言葉で叱責しようとしたその時、コックピットに通信が入る。


『ジュラ〜、聞こえる?』

「バーネット!ちょっと、あなたからも言ってやってよ!
皆ジュラに反対しているのよぉ〜」


 孤立無援になりかけているのが応えたのか、ジュラは途端に泣き声になる。

対するバーネットはモニタリングの向こうで、深くため息を吐いて言った。


『ごめんね、ジュラ。弁護したいのは山々なんだけど・・・・』

「な、何よ?」

『あいつ、もう来てるわよ』


 バーネットの声にはっとなって外部モニターを見ると、

自分達ドレッドの間隙を縫って一機の蛮型が通過していった。

どうやら揉めている内に追いついたらしく、そのまま敵側へ突撃を開始して行く。

呆然とするジュラに焦った顔のメイアがモニターに飛び込み、叫ぶ。


『揉めるのは後だ!今は敵を追うぞ!」

「ラ、ラジャー」


 話し合いもうやむやになって釈然としないまま、ジュラ機が光の軌跡を描いてウニ型を追っていった。
















「何ぼけっとしているんだ、あいつら?ま、いいか」


 飛び出したままの勢いで背中のブースターを最大噴射させて、カイはウニ型へ接近していく。

ぐんぐん宇宙が流れ、やがて中央モニターに戦いの火花が散る戦場へと到着した。

ドレッド達に更なる攻撃を加えようとしているウニ型を発見して、カイは表情を厳しくする。


「てめえの相手は今から俺がしてやるぜ!」


 背中から愛用のブレードを引き抜き、カイはウニ型に対して正面から斬り込みをかける。

敵側も急激に近づいて来る蛮型を認識し、ターゲットを変更して真っ向から突撃をかけた。

一直線上で互いに相手に対して肉薄する蛮型にウニ型。

点と点が交差する境が戦いの行方を決める。

全身の刺をスパークさせて体当たりを決行するウニ型に、カイ機は逃げずそのまま加速する。

戦況を遠目から見ていたバーネットは顔色を変えて叫んだ。


「ちょ、ちょっと!自爆する気!?」


 ウニ型の外見的な大きさは、優にカイ機を上回る。

このまま両者がぶつかり合えば、ブレードが届く前に凶悪な刺が全身に突き刺さるだろう。

なのに速度を緩めないカイの無謀さに、見ていた他のパイロット達もカイの正気を疑った。

一同が固唾を飲んで見つめる状況の中、コックピット内のカイは敵のみに集中して視線を向けている。

その瞳に死に逝く者特有の色はなく、むしろ気迫に満ち溢れていた。

やがてモニター全開にウニ型が映し出されたその時、カイは行動に移した。


「食らいやがれぇ!」


 互いにぶつかり合うその瞬間、カイは蛮型を斜め四十五度機体を傾ける。

直後両機が交差するものの突然体勢を変えた蛮型に一瞬対応が遅れ、ウニ型は攻撃のタイミングを狂わせる。

無数の刺はカイ機を軽く撫でるだけに止まり、カイは瞬間ブレードを袈裟切りに振るった。

ペークシスに改良されたブレードはその切れ味を発揮し、刺を数十本切り裂く。

そのまま交差して離れたカイ機は加速を緩める事無く、ウニ型を残して前へと進んでいった。

一方のウニ型はその速度ゆえにかなりの距離を開いた後で反転し、突き進むカイ機を追いかけ始める。

どうやら初めてダメージを与えたカイを完全に敵とみなしたようだ。

コックピット内にて敵が追ってくる様子をモニターでとらえたカイは、にやりと笑った。


「よしよし、そのままついて来いよ。いい気になっていれられるのも今の内だぜ」


 敵が追う事はカイの計算どおりなのか、迫りつつある敵にも動揺は見受けられなかった。

元々バージョンアップされているとはいえ、蛮型は陸戦用であり接近戦に適した構造となっている。

加速力もドレッドより低いがために、カイ機は徐々にウニ型に距離を狭められつつあった。

なし崩しに始まった鬼ごっこは、やがてカイ機は定めていた目標地点で終了する。

そこは敵の最終目標であり、カイが自らが立案した作戦に最適と判断したポイント。

融合戦艦、メインブリッジ前であった・・・・・・・













「カイ機、停止。敵側、こちらへと急速に向かっています!」


 カイの行動の意図する所がよめず、困惑を隠せない様子で叫ぶアマローネ。


「い、一体何考えてるのよ!?敵に攻撃したかと思えば、船に逃げてなんて・・・」


 手元のコンソールを操作して外の様子を探るが、カイが何か罠を張っている様子もない。

かといって何か行動を起こそうとする動きもなく、ただ純粋に停止していた。


「この船の防衛に務めようとしているのか?」


 席を立ったブザムが中央モニター先のカイ機に尋ねるかのように、小さく呟いた。

精錬された軍事力を束ねるブザムの明晰な頭脳でも、カイの考えは読み取れない。

何か考えがあるように見えて、何も考えなく構えているようにも見える。

一見すると融合戦艦に背を向けて、迫り来るウニ型と対峙しようとしているようではあった。


「背水の陣ってところかね・・・・」


 深き瞳に光をたたえて、マグノはじっとカイの行動を見つめる。

レジに所属したと聞いていたカイが、変わらず独断で出撃した事に対する非難はまるでなかった。

あれほど否定したパイロットに何故戻ったのか?何故今こうして戦っているのか?

理屈ではなく感覚で、マグノはカイの心情を何とはなしに理解していた。

ウニ型の後方よりドレッド達も最高速度で母船に向かっており、正に舞台に役者が揃いつつあった。


「おいおい、どういうつもりだよ。僕が逃げられないじゃないか〜」

『バート、聞こえるか?』

「カイ?」


 クリスタル空間にて敵の接近を確認しているバートが逃げ腰になっている所へ、通信が飛び込む。

バートの眼前に出現した通信モニターには、カイが笑顔で映し出されていた。


『相変わらず裸だな。風邪ひかないようにしろよ』

「う、うるさいな!それよりお前どういうつもりなんだよ!
いきなり戦いに出たかと思えば、こっちに逃げてきて!
船に何かあったら、僕が怪我する羽目になるんだぞ。分かってるのか!」

『はいはい、そうギャーギャ喚くなよ。これも作戦の内なんだからよ』

「作戦?」


 戦いでの積りに積もった不平不満が次々と口から飛び出すバートに待ったをかけるように、

カイは真剣な表情で頷いた。


『おうよ。俺様が考えたパーフェクトな作戦だ。
お前に被害を一切与えるつもりはないから安心しろって』

「本当か?本当なんだな!?嘘だったら泣くぞ!」

『そ、そういう情けない脅しはやめろよ。怖くなるだろうが。
いいか?お前はこのまま動くな。あの針野郎が接近しても絶対に逃げんなよ』


 思いもかけない内容を聞かされて、まともに顔色を変えるバート。

これまで散々衝突されて手痛い負傷を被ったのだ、無理もない。


「ちょ、ちょっと待てよ!敵に攻撃されたらどうするんだよ!」

『安心しろって。俺が命がけであいつを止めるからよ』

「え・・・・・・?」


 バートはあっさりと言ったカイの言葉の内容に愕然として、硬直する。

そのままカイはバートと通信を繋げたまま、今度は全回線を開いて堂々とした声で語る。

艦内及びドレッドチーム全域に渡っての通信に、どの者も驚愕を隠せずにいた。


「いいか?皆、よく聞け。
俺が今から向かってくるあの針野郎を力づくで止める。
相棒ごと特攻かまして動きを封じるから、その隙にドレッド全機で集中攻撃仕掛けろ。
ミサイルは利かないから、ビームの類でやれよ。
タイミングは一瞬。チャンスは逃すな」


 内容を全て語ったカイは、背中からブレードを常に搭載している盾形フォルダーを取り出す。

そのまま前方に厳として構えるその姿は、カイの本気を何より物語っていた。

通信の内容に度肝を抜かれたドレッドパイロット達は、次々に慌てた様子でカイへ通信を送る。


『ちょっとちょっと!?何考えてるのよ!』

『そんな事したら、一緒になったあんたも巻き込まれるのよ!!』

『自爆でもする気!?』


 ブリッジより通信を聞き入れたブザムも、カイの行動内容を理解して半ば呆然としていた。

突撃を仕掛けて敵にダメージを与え、逃走。

当然敵は追ってくるから、そのまま逃げつつも誘導して敵をおびき寄せる。

後は敵が必ず向かってくるための保険として母船の前まで逃げて、敵が襲い掛かるのを待つだけ。

予めポイントを決めて固定させれば、敵の驚異的な速度は問題にはならず、集中砲火を加えることは可能。

理屈は確かに適ってはいた。

敵を固定する役目を負う者が集中砲火に巻き込まれる以外は・・・・・・


「うっせえな!これしか方法はないだろうが。
失敗したら殺すぞ、お前ら」

『あんたが危険だって言ってるのよ!』


 一同の意見を代表するように、バーネットが激昂する。

彼女自身なぜこんなに怒っているのか、自分でも理解はしていない。

ただメイアと揉めたと言う話を聞いた時以上に、感情を荒げていた。


『何考えてるの。いきなり戦いに乱入したと思えば、こんな事!
はあ、はあ・・・・・・・・・・・・
・・・・・私達を、命懸けで助けるつもり?』


「・・・・・・・・・・・・・」


 ウニ型が速度を緩めずに、急速に自分に向かって特攻を仕掛けてきている。

頭の片隅で認識しながらも、カイは静かな笑みをバーネットに浮かべて言った。


「ちっちっち、お前はどうやら分かっていないらしいな。この世の法則というものを」

『え・・・?』

「頭に叩き込んでおけ。ヒーローは必ず勝利する存在なのだ。
お前らの攻撃如き俺には屁のカッパなんだよ。
分かったか?分かったなら、絶対に躊躇せずにやれよ」

『あんた・・・・・』


 ぞんざいな口の利き方だがバーネットは感じ入るものがあったのか、それ以上言葉を口にはできなかった。

そこへさらにコックピット内に回線が開き、大写しでディータの涙顔が飛び込んでくる。

カイの通信を聞きつけたのだろう、必死の表情で訴えて来た。


『宇宙人さん、ディータと合体しよう!そうすれば・・・!』

「駄目だ」


 涙ながらに申し込むディータに、カイはそっけなくそう言った。

呆気なく断れた事にショックを受けたのか、ディータは可憐な容貌をさらに潤ませる。


『う、宇宙人さん、まだ怒ってるの?ディータは・・・』

「あーーー、もう!違う違う!!怒っちゃいねえよ。
え〜とだな・・・・・」

『うん、何?』

「と・・・・とりあえず駄目なものは駄目だ!」

『えっ!?ちょっと待って、宇宙人さ・・・!!』


 身を乗り出して言い募ろうとするディータの回線を無理やり切るカイ。

どうしてもカイの性格上言い出せなかった。

もし合体をすれば敵の攻撃に晒されるがゆえに、ディータを巻き込んでしまう。

この作戦が自分で立てた以上は、最後まで責任をもって自分一人で背負うとは・・・・・

そうこうする内に、ウニ型はいよいよ蛮型の間合いぎりぎりまで近づいてくる。

カイは操縦レバーを握り締め、突撃を試みようとしたその時だった。

モニターに広がる光景にカイは目を見開き、舌打ちをした。

ウニ型後方に接近したメイア機が、ビームを高出力で発射しているのだ。


「おらぁ、青髪!!何してやがる!!
俺の話聞いてたか、てめえ!」


 メイアが攻撃を仕掛ければ、敵の注意はメイアに向いてしまう。

それではカイの作戦は途端に意味がないものになってしまうのだ。

怒鳴りつけるカイに、メイアは通信モニター越しに睨む様にして言った。


『お前の指図は受けない。私は私のやり方でやる』

「何言ってんだ!お前一人で勝てる相手じゃねえ!!
すぐに離れろ!!その位置じゃ反撃食らうぞ」

『お前こそ戦線から離脱してもらおうか。迷惑だと言ったはずだぞ』

「今になって何言ってんだ!そんな事言い合ってる場合じゃねえだろうが!
皆がやべえって時だぞ!!」


 今回の討論はカイが正論である。

意地を張っているのはカイも同様だが、状況はきちんと把握していた。

逆にメイアは自分達の力のみでやり遂げようとする頑なさがあった。

『我々を思いやるなら尚更下がっていろ。お前がいるだけで、皆が混乱するんだ!』

「意地張ってる場合か!おま・・・・!?」


 何とかメイアを説得しようと躍起になっていたカイだったが、次の瞬間表情を強張らせる。

ウニ型がメイアの攻撃に感化されたのか突如急停止し、全身を輝かせた。

無数に広がる針が閃光を先端から放ち、鋭さが込められた刺が急回転する。


「青髪っ!!」


 カイは嫌な予感に全身を波立たせ、操作レバーをこなして機体を発射させた。

直後無数の穴から刺がまるで投げ槍の様に凄まじい勢いで発射され、メイア機へ向かう。


「なっ!?」


 今までにない遠距離攻撃で、メイアの対応が一瞬遅れてしまう。

数十本もの刺が先端を煌かせて襲い掛かって来ているものの、回避行動すら取れなかった。


『メイア、危ない!』


 美貌を絶望に染めて、ジュラが危険を宣告するが既に手遅れだった。

四方にいた全ドレッドも対応ができず、メイアの惨劇にパイロット達は身体を震わせる。


「っく・・・・・・・」


 コックピット内のモニターに広がる無数の刺に、メイアは恐怖と絶望が過ぎる。

いくらドレッドが強化されていても突き刺されば只ではすまない。

全てが暗転する中で、戦場から機体の機体へ突き刺さる音がメイアの耳の奥で乱舞する。

瞬間目を閉じていたメイアだが、幾度立てど痛みすら来ず、顔を上げると、


「なっ・・・・・!?」


 口元を小刻みに揺れ動かせて声を上げるその先に・・・・・・・・・・










全身を串刺しにされたカイ機が、無残な姿を曝け出していた。










「あ・・・あ・・・・・ああ・・・・・」


 目の前で起きた事が信じられない様に、メイアは呻き声を発する。

顔色は真っ青になり、身を覆うパイロットスーツに震えが走る。

自分を、庇った・・・・・・・・・

あれほどまで嫌っていた筈の、嫌われていた筈のカイが、自分を助けた。

己の身を呈して・・・・・・・

全てを投げ出して・・・・・・・・

命懸けで助けてくれた・・・・・・・・





『お前なんぞこの先くたばろうがどうしようが、俺の人生には何の影響もねえからな。
どっかで勝手に死ね、ぼけ!』





「カイーーーーーーーー!!!!」


 我知らずメイアが叫んだその瞬間、メイア機とカイ機より青緑色の光が放たれる。






















<続く>

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