ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 19 "Potentially Fatal Situation"






Action18 −反戦−







「ラジャー!」

「どうしたの?」


 思い掛けない大成功、予想を超えた殊勲賞。無人兵器含めて全てのシステムが停止した母艦内で、大成果を出したディータとミスティを載せたドレッドが滑空している。

事故で母艦内に墜落したカイ達の援護と救援をすべく、ディータ機に乗り込んだミスティ。パルフェ開発中の未完成兵器"パニックン"を発射して、地球母艦の全てを停止させたのだ。

本人達は気付いていないが、母艦内の奥底に直撃させたおかげで、システムの根幹まで強制分断させられた母艦のコンピューターは、全システムを緊急停止させて再起動。

巨大システムの再起動は長い時間がかかってしまい、本来効果時間の短い筈のパニックンが思いもよらない形で長い空白時間を与えてくれたのだ。


母艦の破壊を第一とするこの作戦に、寄り道を許されるほどに。


「副長から緊急通信。至急デリ機を捜索、ガスコさんとバーネットの二人を救出するように命令が出たの」

「あんた、作戦中でしょう。しかも、チームリーダー。あんた本人が行く時間があるの?」

「うん、多分大丈夫だよ!」

「多分って、あんたね……」


 呆れたように言うミスティだが――彼女こそ作戦中のディータ機を無理やり呼び出した張本人である。天然なディータならともかく、他の人間なら大いに反論していただろう。

ミスティも普段これほど自分本位な真似はしないのだが、今の彼女は緊急事態という後押しがあって、行動力が突出してしまっていた。

テンションに任せた行動と言えなくもないが、彼女本人の気質である気の強さと優しさが絶妙に噛み合っていたのだ。

彼女のこうした自発的な行動を、ディータはリーダー候補としていたく尊敬してしまっている。


「それにしても凄いね、パルフェの新兵器。兵器さんがみーんな、止まっちゃってるよ」

「効果は一瞬とか言っていたのに、メチャメチャ利いているじゃない。あの眼鏡の人って、意外と謙虚なのね」

「うーん、どうなのかな。パルフェはすごく優しくて、カッコイイ機関士さんだけど」


 両方共に機械に弱く、メイアや副長ほどの状況判断力がない二人は、自分達の成果でさえもパルフェの発明品の効果と信じて感心しきりである。

母艦内部へパニックンを撃ちこむように指示したのはミスティなのだが、彼女本人もここまで効果絶大とは思っていなかったのだ。

人間、あまりにも自分の都合の良い結果が出てしまうと、逆に不審になってしまうものだ。

ミスティやディータも、そこまで自信過剰ではない。この予想外を、自分達以外の誰かの功績だと思い込んでしまっていた。


「まあ、いいわ。店長さん達を探しに行くんでしょう、こうなったら最後まで付き合うわよ」

「いいの、ミスティ? この先はきっと、危険だよ」


 ――いいも悪いもない。ミスティ本人が乗り込んで来たのだし、ディータが自発的に内部へ突入したのだ。これ以上ないほど、自分達の行動結果である。

停止している今なら確かに逃げ出せるが、外は大量の無人兵器が飛び交っている。母艦内外全てが激戦区、逃げようがないのだ。

今更問いただす必要性のない覚悟を、ミスティは大真面目に答える。


「いいわよ、別に。文字通り、乗りかかった船よ。最後まで付き合うわ」

「でもでも、本当に危険なんだよ」

「だったら尚更、放ってはおけないでしょう」

「う、うん、ガスコさんも、バーネットも心配だけど……」

「馬鹿」

「……?」


「あんただって、心配なの。友達を心配して何が悪いのよ」


「っ、ミスティ〜!」

「わっ、こら!? 運転中に抱きつくな!」

「えへへ、ディータもミスティが大好きだよ!」

「はいはい」


 この二人には、共通点がある。ディータも、ミスティも、友達と呼べる人間が少ない。特にミスティは異星人、コールドスリープから目覚めた彼女は独りだったのだ。

二人共良い子ではあるのだが、良い人間に友達が多いという法則は残念ながら無い。社交性も必要であるし、人の縁にも恵まれなければならない。

趣味も、考え方も、価値観も異なる二人ではあるが、友達がいないという点だけは同じ。そういう人間は、出来た友達をとても大切にする。

友達と過ごす事への憧れもあるのだろう。二人の仲は休息に進展していって、同じ船の中で意気投合している。

視線を乗り越えた吊り橋効果もあるのだろうが、少なくとも気は合っていた。


「行くよ、ミスティ。しっかり掴まっていてね!」

「安全運転でお願いね。あたし達まで事故ったら、シャレにならないから」

「あはは、任せて!」


 広い母艦内を、ドレッドが駆け抜けていく。コックピットに映し出される観測データ、表示されるマップ、マニュアル操作されている機器類。

それらを一つ一つ目の当たりにして、不意にミスティに閃くものがあった。


操縦中のディータに、彼女は背中から寄りかかる。


「ディータ、頼みがあるの!」

「わわっ、ミスティしがみつかないで!?」

「この観測データ、全部記録してあたしにちょうだい! 後カメラも持ってきてるから、外の撮影させて!」

「ど、どうしたの、急に!?」


「あたしはイベントクルー見習い、撮影兼取材係。自分の本分を全うし、あたしの職務で地球に反撃してやるのよ!」


   そう、これこそミスティ・コーンウェルの領分。彼女の本質はパイロットでもなければ、ドレッドに乗船して無茶をすることではない。

母艦相手に非戦闘員である彼女が立ち向かうことは出来ない。無人兵器相手に戦っても、勝てるはずがない。戦闘では、彼女は活きない。


この時代、この世界で見出した、自分なりの生き方。そして、地球への意趣返し。それが――取材であった。


「情報機密の漏洩――と、あんたに言っても難しくて分からないか。ようするに、地球が隠している全てを全世界に告発してやるの!」

「えーと、恥ずかしい秘密を喋っちゃうみたいな感じかな」

「そうそう、冴えてるじゃない」

「ふふふ、ありがとう!」

「この母艦が、あいつらの切り札なんでしょう。内部構造を片っ端から全部撮って、お偉いさんとかに見せてやるのよ。
それにこんなでかい船使って、人間の臓器とか刈り取っているんでしょう。もしかしたら、この船の中にも――」

「ええっ!? そ、そうなの、かな……?」

「グロ画像――というと聞こえは悪いけど、もしかしたらスプラッタなものもあるかもしれない。
そこまで晒す真似は被害者にも悪いからしないけど、少なくとも刈り取り用の施設は絶対あるわ。それも、ばらしてやる。

地球の狂気、祖先の実態の全てを明らかにする。それが、あたしの役目よ」


 地球の母艦は、問答無用の巨大兵器。大量の無人兵器や驚愕の戦闘システムに目を奪われがちだが、そもそもこの母艦の目的は刈り取りである。

構造の広さは兵器を積み込む役目もあるのだろうが、運搬するのは兵器ばかりではない。地球が求めている人間の臓器も、含まれているのだ。

地球のやり方は残虐そのもの、人道など無縁に容赦なく刈り取る。この仕組が、この母艦の中にも構築されているのは間違いない。


ミスティの想像はえげつないが、的外れではない――カイ達も必死で奮闘しているが、残念ながら彼らの救済の手が伸びず、犠牲者が出た星もある。


地球が保有する母艦の全隻が今タラークとメジェールに向かっているのは、カイ達が過去母艦を撃破したからだ。

他の母艦はそもそも、タラークとメジェールを目標にはしていない。別の惑星に向けて、刈り取りを行うべく差し向けられていたのだ。

カイ達の奮戦によって彼らが進路を変えたが、五隻全てが何の役目も果たしていないと考えるのは楽観的であろう。


犠牲者は出ている。最低でもこの母艦には、刈り取り用の施設がある。


「分かった、ミスティ。ガスコさん達を助けだしたら、その施設も探してあげる」

「ありがとう、ディータ。ごめんね、もしかしたらその……残酷な結果を見せてしまうかもしれないけど」

「辛いことを分かり合うのが、友達でしょう」

「……うん。ディータ、あたしもあんたの事結構好きだよ」

「うん!」


 カイ達は母艦の破壊、ガシコーニュ達は母艦の確保――そしてディータ達は母艦の真実を求めて、それぞれ行動に出る。

目的はそれぞれ違うが、目標は一緒。刈り取りを阻止して、地球を倒す。一つ一つが布石であり、全てに意味がある。


彼らの行動が実を結ぶその時こそ、地球への大いなる反戦となる。


























<to be continued>







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