ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action20 −熾烈−







 ディータ・リーベライが指揮するドレッドチームは、案の定苦戦していた。彼女の指揮の不味さというよりも、本作戦の難易度が彼女の現在の力量を上回っていたのである。

不幸中の幸いにも、今回の刈り取り兵器に新型は存在しない。敢えて言えば生体兵器だが、この兵器は人間の殲滅を目的としており宇宙戦には適応していない。

刈り取り部隊の主力はキューブとピロシキ、どちらも改良型ではあるが既存。既にパルフェやガスコーニュにより分析はされており、おおよその戦力は掴めている。


問題なのは本作戦が敵の殲滅よりも、味方の防衛を主としている事。自分達の生き残りのみならず、ミッションも守らなければならない。


「Aチームはフォーメーションをαからβに切り替えてください。それとCチームは――きゃっ!?」

『こちら、Cチーム。ディータ、こっちはミッションを堅固するから、アンタは敵の切り離しを優先して!』

「りょ、了解。お願いします!」


 新米リーダーの力量不足は、皆がよく分かっている。そして何より、彼女自身が自分を理解している。だからこそリーダーである事に堅持せず、頼りべき時は積極的に頼る。

ベテランがディータを上手く補佐し、ディータも先輩達の意見をよく聞いて柔軟に対応する。我を張らず、さりとて部下に任せっぱなしにもしない。

メイアのようなリーダー主体のチームとは統率力・指揮力共に劣ってしまうが、二足三脚のチームは次第にバランスも取れて劣勢であっても崩れずに済んでいた。

とはいえ副長のブザムやチームリーダーのメイアがいないと、攻め手に欠けた。


「運転手さん、どうですか!?」


 本作戦はミッション防衛を第一とする。よってまずは中継基地に取り付いた敵を引き離した上で、刈り取り兵器を一掃する。ディータなりに考えたプランである。

中継基地からの敵の切り離しは、ドレッドチームが囮となって引き付ける。加速力と機動性に優れたドレッドならではの作戦であり、何より一流パイロット揃いの彼女達なら可能な作戦。


ただ可能であっても、簡単では決してない。下手な攻撃はミッションを傷付けてしまう可能性もあるので、攻撃より回避を優先しなければならないのだ。


改良型キューブは旧式と比べて機動力が段違いで、攻撃力も増している。赤い光の影響はヴァンドレッドに顕著ではあるが、通常のドレッドにも手痛いダメージを与える。

何よりピロシキ型が防御力が高まっており、一度や二度の攻撃では落とせない。結局、ドレッドのレーザーやミサイルは引き付けにしかならず悪戦苦闘を強いられていた。

彼女達の望みの綱は、ニル・ヴァーナ。操舵手バート・ガルサスの武器であるペークシスアームと、ホーミングレーザー。

強力無比な新しい武器だが、この二つには欠点があった。


『くっ――だ、駄目だ。ごめん』


 欠陥というには大袈裟で、あくまでも欠点に近しい。ペークシス・プラグマより授かった二つの力は、強力であるがゆえに使い所に悩まされていた。

ペークシスアームはペークシス・プラグマのエネルギーを敵を殴りつける勢いで放射する超火力砲、此処で使用すればミッションも巻き込んで破壊してしまう。

その点ホーミングレーザーはエネルギーに指向性を持たせられ、敵を狙い撃ち出来る高精度のレーザー砲。砲門も百を軽く超え、大多数の敵を粉々に出来る。

バート・ガルサスも、本作戦ではホーミングレーザーを迷わず選択。操舵席より集中して刈り取り部隊に狙いを定めているのだが――照準を絞り込めない。


『そっちは壊せても、"衛星都市"が巻き添えになる』


 中継基地ミッションのセキュリティを担当する、衛星都市。皮肉にもミッションを守る施設類が、ホーミングレーザーの狙いを妨害していた。

刈り取りの襲撃で幾つか破壊されてはいるが、衛星都市は高密度にミッションを取り囲んでいる。精度の高いホーミングであっても、全てを回避するのは不可能だった。


――逆に言えば、巻き添えを恐れなければ今この時点で敵を破壊できる。最小の犠牲で、最大の戦果を上げられる。


メイアにはまだまだ及ばないが、ディータとてその事実は認識している、ブザムより遥かに劣るが、バートとてその程度の認識力は持ち合わせている。

心優しき少女であっても、ディータは海賊として生きてきた。根は優しい青年であっても、バートは軍人として教育されている。

犠牲を恐れていては、海賊や軍人は務まらない。犠牲ありきで考えるのは問題だが、理想だけを追い求められる職業では断じて無い。


彼らとて、己の本分を見失った訳ではない。自分達が未熟であり、取捨選択などおこがましいのも承知している。人命優先、理想は後回し。当然のことだ。


『もう少し――もう少しだけ、引き離してくれ!』

「了解、任せて!」


 そして、その当然を良しとしない。バートの無茶な注文に、ディータは高らかに呼応する。妥協するつもりなど、彼らにはなかった。

困難であればあるほど、自分達の試練として受け止める。任務優先は勿論だが、完璧を追求し続ける。青臭さを肯定した上で、現実に実現せんとする。


その心こそ地球に勝る何よりの武器だと、彼らは頑なに信じている。心在る人間が心無き兵器に勝てる、何よりの強さであると。


「全く、もう……新しいリーダーも、簡単に言ってくれちゃって」

「あたしらを差し置いて、リーダーやろうってんだ。これくらい、大口叩いてくれないと」

「あはは、そうそう」


 馬鹿馬鹿しい命令を、海賊達は高らかに笑って承諾する。無茶であればあるほどに、挑戦心が芽生えてくる。熱き血潮を持つ、海賊達。

故郷に捨てられて気持ちも冷え切っていた彼女達の魂を、点火したのは一体誰なのか。悩むまでもなく、答えは出ている。


女を情熱的にさせたのは、熱き男達であった。


「行くよ、皆!」

『ラジャー!!」


 未熟者達の戦いが、熱く激しく――熾烈に、火花を散らす。















 マズルフラッシュが、激しく燃える。銃音が壁を打ち鳴らし、弾丸が空気を切り裂く。放射された火炎が天上を舐め尽くし、敵を蹴散らしていく。

歴戦の戦士達が基地内で死闘を繰り広げて、生体兵器を容赦なく蹂躙する。強力な重火器は思う存分性能を発揮し、用途に見合ったダメージを保証してくれる。

人間をダース単位で皆殺しに出来る重火器を躊躇もせず使用し、確実に敵を葬り去る。戦場に出た彼らに情けなど存在せず、惨たらしく破壊して回った。


無慈悲な殺人マシーン達が、徐々に追い詰められていった。


「もう、こいつら何匹いるのよ!」

「ぼやかさないの!」


 ジュラとバーネット、多くの戦場を共に渡り歩いた戦乙女達。生体兵器の破壊数は既に三桁を超えているのだが、少しずつ後退させられている。

弾数の多い重火器は威力は申し分ないのだが、弾薬も多く消費する。生体兵器を蜂の巣にした銃器の弾丸が切れてしまい、バーネットは舌打ちしてハンドガンを取り出した。

愛用だから持ちだしたのではない。重火器類を次から次へと使用してしまい、弾丸が残り少なくなっているのだ。


ジュラも、同じ。バーネットから借りられる銃器も無くなりつつあり、攻撃主体も切り替えを余儀なくされつつある。


戦える人数が少ないのに、敵は無数に押し寄せてくるのだ。少数精鋭も、圧倒的な数には無力。傷一つ負わされてはいないが、戦える道具は減っていく一方であった。

ブザムも銃器の無駄遣いは控えており、鞭との併用で何とか凌いでいる。それでも防衛戦は維持できているのだから、彼女の戦闘能力はずば抜けていると言わざるをえない。

その技巧には敵ながら尊敬の念を抱いてはいるものの、リズも自分達の劣勢には歯噛みしていた。


「次から次へと……ちっ、こっちはもう限界だよ」

「しょうがねえ、一旦退いて体制を立て直すぜ」


 弱気とも取れるリズの現状認識に、ラバットは疑問も持たず撤退を宣言する。一対一でブザムに敗れたとはいえ、ミッションのボスを張れるリズの洞察力を信頼していた。

リズの持つ火炎放射器は銃弾こそ消費しないが、無尽蔵ではない。ラバットとコンビを組んで適切に使用していたが、そろそろ限界が見えつつあった。


ジュラにバーネット、ブザムにリズ、ラバット。素手での格闘能力にも秀でている彼らだが、生体兵器に徒手空拳は通じない。その点が、非常に厄介であった。


レーザーやエネルギー弾のようなコストパフォーマンスのいい武器は、敵のプリズム効果で無効にされてしまう。となれば重火器しかないが、弾には限度がある。

敵も決して、無限ではない。数にも限度はあるはずなのだが、それが見えなければ結局押し切られるだけだった。


「ジュラ、バーネット、急げ!」

「了解!」

「あーん、置いて行かないで!?」


 流石の彼らも、焦りを隠せない。追い詰められる、ネズミ。ミッションの構造を把握でもしているのか、確実に逃げ場のない空間へ追い立てられている。

彼らが逃走先に選んだ中央フロアは確かに堅固なのだが、密閉空間である為に逃げ場は完全に失われる。正に籠城、攻められるのを待つのみ。

籠城が最大限に効果を発揮するのは、増援が期待できるから。時間稼ぎが、彼らの戦略であった。


増援が間に合えば、の話だが。


「お前さんが手を組んだあの坊やは、本当に間に合うんだろうね」

「おや、知らねえのか?」


 追い詰められた焦りを吹き飛ばすかのように、ラバットは野太い笑みを浮かべる。



「ヒーローってのは、遅れてやってくるものらしいぜ」





























<to be continued>







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