ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action18 −戦友−







 地球側が送り込んで来た生体兵器は今回、殲滅を目的としている。臓器の刈り取りを主としていない彼らは、人間を生かす気は毛頭なく攻め込んで来ている。

メンテナンスもされていなかったセキュリティシステムは文字通り虫食い状態で、中継基地ミッションを全方位から取り付いて内部に侵入してきていた。

基本的に逃げ場は一切無く、彼らも標的に逃げ道など与えない。避難する側にも、攻める側にも、生体兵器は差し向けられている。


ブザム達がミッションの住民を連れて逃走する最中、カイやメイアは生体兵器を倒すべく行動していた。


「――まずいな」

「……一応聞くけど、何が?」

「敵の侵攻速度が予想以上に早い。副長やラバット達も善戦しているようだが、完全に食い止めるのは難しい。急ごう」


 メイアの手にある携帯型コンソールには、敵反応の動きが表示されていた。ブザム達の避難経路を追うように、生体兵器が続々と向かっている。

敵反応がポツポツ消えているのは、ブザム達が戦って数を減らしているのだと予測は出来る。ただ、多少数を減らしても大群が押し寄せてくれば焼け石に水でしかない。

悪化の一途は辿ってはいないが、状況は少しも改善されていない。そもそも逃げ場がないのだから、籠城以外に道はなく時間稼ぎの域を出ない。


悪くなっていく状況に、メイアは美貌に焦りの汗を浮かべている。


「向こうが頑張ってくれている分、こっちにはまだ敵は来ていない。好都合ではあるじゃないか」

「楽観は出来ない。気を引き締めろ、カイ」

「焦るなと言いたかったんだけどな」


 考えてみれば、昔は自分が戒められていた。その時彼女が言ってくれた忠告や叱責の数々を、全て厳粛に受け止められていたとは言い難い。

厳しい言葉の裏に、大切な意見が隠されている。きちんと受け止められなかった自分を、苦笑と共にカイは内心反省をした。

とはいえ今の自分の忠告も相手に伝わっていないのだから、案外メイアも不器用なのかもしれない。


「ほれ、この梯子を登れ」

「随分高いな……向こう側にエレベーターがある」

「あのエレベーター、調子が悪くて時々止まるぞ。運にかけてみるか?」


 案内役を名乗りでたミッションの少女、彼女が選ぶルートは子供らしいと言うべきか裏道が多い。ようするに、一般のナビゲーションマップが推奨していないのだ。

ミッションは元々植民船時代の遺物で、中継基地として利用されていた施設。内部構造は複雑で、通路もセキュリティ面も苦慮して入り組んでいる。

勝気な少女にとっては胸踊らせる冒険の舞台であり、自分の遊び場でもある。警備員やセキュリティにも引っ掛かりにくいルートもよく知っていた。

その分平坦とは言い難く、今回のように錆び付いた梯子一本で繋がっているだけの道も存在する。


「青髪、急ぐ気持ちはよーく分かるんだが……エレベーターにはその、あんまりいい思い出が」

「……バクチに出ない方がいいな、お前と一緒の場合は」


 引き攣った顔で耳打ちするカイに、メイアは呆れた顔で息を吐いた。カイは過去、ニルヴァーナで停電となってエレベーターの中に閉じ込められた事がある。

あの時の停電はウイルスが原因、今回も病原菌が兵器化された敵。関連性はないにしろ、一度ケチのついた勝負に再び挑む程メイアはギャンブラーではない。

自分一人でならば勝負に出てもいいのだが、今は時間との勝負。急げば回れ、危うい近道よりも確実な遠回りの方がまだ早い。


とはいえ――錆が色濃く浮いている梯子を見ると、些か以上に不安は掻き立てられる。カイも、げんなりした顔で上を見上げた。


「お前、こんな高い梯子をよく登れるな」

「へへへ、尊敬したか」

「呆れているんだよ」


 梯子は無駄に長く、その上安全性も考慮されていない。万が一途中で手でも滑ってしまえば、落ちて大怪我するだろう。子供ならば、命も危ない。

得意げに冒険譚を語る少女の逞しさに、カイはふとタラークにいた頃の自分を思い出す。あまり、他人の事は言えないかもしれない。

いずれにしても、他にルートがなければ梯子を登るしかない。生体兵器と鉢合わせするくらいならば、高さに怯えるリスクくらいは何とも無い。


梯子の前に三人並んだところで、足が止まる。


「……言っとくけど、アタシは先頭に行かないからな」

「何でだよ。お前が案内役だろう」

「この変態野郎、アタシのパンツがそんなに見たいのか!」

「緊急事態に何言ってるんだ、お前は!?」


 実にくだらない言い争いに、メイアが手で顔を覆う。罵倒するべきか、聞き流すべきか、一瞬真剣に悩んでしまった。


「だったら、カイが先頭で登れ」

「俺が先頭……? 何だか、嫌な予感がするんだけど」

「贅沢を言っている場合か。早く登れ」

「だったら、お前が先頭で登ればいいだろう。二番俺、三番こいつ」

「――お前、まさかとは思うが、本当に女の……」

「パイロットスーツの分際で、何を勘ぐってやがる!?」


 カイの指摘に、むしろメイアがハッとなる。パイロットスーツは身体にフィットしているので、身体のラインが綺麗に浮かび上がる。お尻の形まで、くっきりと。

それ自体は今更だが、その今更に今頃になって羞恥を感じている自分に驚かされた。敵ではないのにカイの視線を意識してしまう、妙な感覚。


不快なのではない。むしろ不快であるのならば、遠慮なく文句を言えばいい。得体の知れない感覚だから、明確に理由を述べられないのだ。


カイもカイで、居心地の悪さを感じている。変に照れ臭くて、ぎこちなさを感じる。意識しても仕方がないのに、相手の目が気になって仕方がない。

女の体を、男が気にする。タラーク・メジェール両国家間にはない感覚は、両者の心に妙な意識を感じさせた。


「分かったよ、俺が先頭で登ればいいんだろう」

「周囲に敵はいないようだが、万が一の用心の為に私が後ろを守ろう。君は、我々の間だ」

「まあ、それならいいや」


 バタバタやってしまったが、任務中なのは二人も承知している。カイは腰にぶら下げた十手を抜き、メイアはリングガンをはめ直した。

長い梯子を登っている間、三人は無防備になってしまう。常に警戒はするが、携帯型コンソールを確認出来ない以上敵の動きは読み辛くなってしまう。


今のところ、近くに敵の気配はない。ならば安全――などという見方は、しない。地球が差し向ける敵に、常識など通じない。


武器を携帯する二人を、少女も茶化したりはしない。自分の拳を強く握って、戦うアピールをする。少女の奮闘ぶりに、二人は視線だけで笑い合う。

まずカイが梯子に手をかけて、状態を確認する。三人分支えられるのを確認した上で手をかけて、ゆっくりと登り始めた。

二番手に少女、最後にメイアが周囲を警戒しながら登っていく。基本的に運動神経は良い三人、登り始めれば進むのは早い。


「この上に行けば、発着場に繋がるのか」

「一番上まで行けば横に通路が伸びていて、その奥に緊急避難口がある。ちょっと狭いけど、そこを潜れば着くぞ」

「いざという時の避難経路か。梯子を使っているのが、いかにも旧時代的だな」


 恐らくこのルートは緊急時システムが壊れて、エレベーターが止まった場合を想定した避難経路。中継基地でのシステムダウンは、場合によっては死を意味する。

避難経路を人力に頼ってしまうのも無理からぬ事なのだろう、とメイアは推察する。実際、こうして皮肉にも役立ってしまっている。

案内役を買って出た少女のナビゲーションは、正しかった。もしシステムに頼っていれば、エレベーターで立ち往生していたかもしれない。


「……妙に、静かだな」

「くっちゃべっている場合じゃねえだろ」

「いや、確かに敵が動く気配もない」


 カイの感想に少女が反発し、メイアが逆に同意する。歩みこそ遅いが、特に問題なく順調に進めている。その事に、引っ掛かりを感じたのだ。

勘繰り過ぎといえばそれまでかもしれないが、被害妄想だと捨ててはかかれない気持ち悪さ。少女に感じられないのは、経験の差なのか。


周囲を常に警戒しながら、上へと登っていく三人。口を開かず、黙々と登る三人の目に頂上が見えてくる。


「あの横に伸びているのがそうか。通路というより、配管みたいなもんだな」

「手摺も何もないな。あまり遊び歩かない方がいいぞ」

「う、うるせえな、アタシのおかげで助かったんだろう」


 カイならまだしも同性の年上には弱いのか、メイアの注意には少女の勢いも弱い。見た目厳格なので、余計に怖く見えてしまうのかもしれない。

その光景を真上から見て、カイは口元を緩めてしまう。口は悪いが、可憐な容姿の少女。しょんぼりしていると、何だか可愛げがあるというものだ。


メイアもカイを見つめ返し――顔色を、変えた。


「カイ、上だ!」

「馬鹿な、何処にも――げっ!?」


 セキュリティシステムが敵に破壊されて、非常灯まで落ちている。その為周囲は薄暗く、天上までは見通せない。

――天上に張り付いている、ゲル状の物体。薄く、広く、限界まで伸びきっていてカイ達の頭上を覆い尽くしている。気配まで、薄くして。

咄嗟に手にしていた十手を、一閃。危機意識の高さが、間一髪カイの命を救った。垂れ落ちてくる生体兵器を振り払う事には成功する。


だが、足を滑らせてしまう。



「あっ」



 自由、落下。落ちたら、大怪我。天井からは、敵。


全てに対応しきれず、カイはまっ逆さに転落した。





























<to be continued>







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