ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 17 "The rule of a battlefield"






Action4 −便宜−







 中継基地ミッションの調査と住民との接触と聞いた時、カイ・ピュアウインドの脳裏をよぎったのは一人の男だった。


「――まさか、ラバットのおっさんも此処に……?」

「どうだろうな……居れば話もしやすいのだが、油断の出来ない男でもある。お前にとっても奇縁だな」

「仲良しこよしという訳でもねえけど、怪我したセランを運んでもらった借りがあるからな。
どうせ生きているんだろうし、無事なツラくらいは拝んでおきてえよ」


 過去、別のミッションで遭遇した男ラバット。奇妙な出で立ちをした、商人を名乗る男。地球を相手に商売もしていた。

地球母艦との死闘で重症を負ったカイの友人セランを、故郷メラナスまで送り届けてくれた。

敵か味方か判別すると敵寄りに位置する男なのだが、借りもあってカイは憎めずにいる。


「カイは旅先での現地民との交流、ミスティは現地での取材をかねてから希望していたな。
二人の同行は許可はするが、仕事もしてもらう」

「俺はブザム達交渉チームとは別に蛮型で出撃し、"万が一"が起きた場合の対処」

「あたしは交渉のお手伝いですね、副長さんの話に合わせればいいですか?」

「相手は植民船の通信パターンを知っていた。もしかすると、母星であるタラークやメジェールの事情も知っているかもしれない。
比べてこちらは、相手側の事について何も分かっていない。外の世界についての情報が、決定的に不足している。

――故郷で学んだ知識にも、偽りがあるのかもしれない。交渉事における情報不足は致命的だ。

相手に弱みを握られたくはない。交渉そのものは私が進めるが、いざという時は助言を頼む」

「分かりました、任せて下さい」


 以前ラバットに翻弄されたのは情報不足による面も大きい。相手を知るのと知らないのとでは、まるで違う。

どれほど知識があってもタラーク・メジェールより教えられたものである以上、偽りがあるとどうにもならない。

故郷で何より重んじられていた男性像・女性像が現実とはまるで異なっていたのだ。疑ってかかるべきであると、ブザムも己を戒める。

これまでは相手側が友好的だったので構えずにすんだが、今回は相手に警戒されている。時と場合によっては、交戦もありえる。


物資を求めているが、物乞いをするつもりはない。あくまでも取引、相手から譲歩を引き出さねばならない。


その点ミスティは冥王星生まれの異星人。若いながらも物知りで、メッセンジャーに選ばれるほど弁が立ち物怖じしない。

今回の交渉においても、大いに期待されている人材だった。


「交渉が上手く言ったら、向こうと色々話してもいいか?」

「かまわない。物資を手に入れても、運搬と検品で時間もかかるだろうからな。ただし、職務を忘れるな」

「分かっている、人命優先だ。あちらさんも含めてな」


 いざとなれば、ミッションの住民も守るつもりらしい。彼らしい職務意識に、ブザムは内心苦笑する。

誰とでも仲良くなれるのだと、平和ボケして浮ついているのではない。この少年は、誰からも好かれる人間ではない。

他ならぬ自分達が長きに渡って敵対して、何度も諍いを起こしては睨み合ったのだから。

カイの場合、相手が敵であろうと助けようとする。味方だろうと敵だろうと同じ生命、助け出す価値は同じなのだ。

夢見るだけの子供ではなく、カイは多くの人々と繋がりを持って地球に対抗しようとしている。

アンパトスとの友情、メラナスとの同盟――海賊とは違う、絆の力。機会は、与えてやりたかった。


「あっ、だったらあたしも突撃取材する!」

「遊びじゃねえんだぞ、おい」

「あんたにだけは絶対、言われたくない!」


「……お前達、いつからそんなに仲良くなったんだ」


 ともかくカイとミスティがメンバー入り、この交渉メンバーの構成についてもブザムに一任されている。

大勢でバタバタと行っても相手に警戒される上に、いざ対立となれば人数の多さが逆に足枷となってしまう。


今回の任務は、救命ではない。労りの気持ちよりも、腕っ節の強さが求められる。



「ええっ、ディータはまた留守番ですか!?」

「交渉チームには、私が加わる。ディータは敵襲に備えて、ニル・ヴァーナで待機していてくれ」

「でもでも、刈り取りが来た場合を想定して合体する必要があるって、副長が!」

「ミッションは施設が老朽化している。通信システムでさえも相当ガタが来ているらしい。
ヴァンドレッド・ディータの火力では防衛戦となった場合、ミッション全体に深刻なダメージを被る危険性がある」



 当初はメイアが待機する予定だったが、ミッションの構造をモニタリングして考えを改めたのである。

むしろこの事に気づかないディータを、メイアは叱責する。


「ディータ、その様子だとリーダー教育過程が進んでいないな」

「だ、だって、難しいから……」

「ならば尚の事、勉強が必要だろう。待機中、勉強しておけ。帰ったら試験をする」

「うう、満点以外不合格は厳しいよー」


「――あの子、夜遅くまでお姉様の部屋でああして頭を抱えているのよ」

「――減点を許さないとか、鬼だろあいつ」


 リーダー候補生としてディータは日々猛勉強している。寝る間も惜しんでと言うよりは、日夜しごかれているというべきか。

ディータは実戦経験半年の新人パイロットではあるが、命がけの戦いを克服して一流パイロット並の精神力を身に着けている。

とはいえ知識や経験がなければ、素質があっても開花しない。結局は、努力の量で補うしかない。

毎日叱られて悲鳴を上げているが、逃げ出したりはせず厳しくも優しい先輩に指導されて何とか頑張っていた。


「あの子がリーダというのも、ぞっとしない話だけどね」

「黒髪、お前身体は大丈夫なのか?」

「リハビリよ、リハビリ。ドクターの許可はもらっているわ。病気にかかるなんて、気が緩んでいる証拠よ。
ここはパァーと憂さ晴らしをして、いつもの調子を取り戻そうと思って」


 シャーリー同様、バーネットもテラフォーミングによる浄化により、汚染されていた身体も改善された。

星を旅立った後しばらく医務室に通い詰めとなっており、通院中のシャーリーに懐かれてしまった微笑ましいエピソードもある。

そんな彼女の趣味が銃であり、射撃の腕も一流。病み上がりの彼女がメンバーに入れたのも、本人の意志と腕を買われての事だった。


「ピョロ君、準備できてる?」

「持ち運びは万全だピョロ」

「――機関士のパルフェはいいとして、何でお前も一緒に?」

「荷物持ちとナビゲートだピョロ。ミッションの内部構造は複雑だから、イザという時案内役が必要なのだピョロ」

『ユメもいるよ、ますたぁー! たんけん、たんけーん!』

「たんけん、たんけーんピョロ〜!」


「……いいコンビだな、お前ら」


 呆れはするが、緊急に備えてあらゆる便宜を図っているブザムにカイは感心する。考えられる全てを考慮している。

交渉が上手く行けばパルフェがミッションの施設を整備、決裂すればピョロやユメの出番というわけだ。

中継基地であるミッションの構造は迷路のように入り組んでおり、案内もなく歩きまわるのは自殺行為。

交渉が決裂して戦いになれば地の利でも向こうが圧倒的に有利、不案内なまま戦えば追い詰められかねない。

ピョロがいれば防壁やシャッターが邪魔しても破壊できるし、ユメがいればミッションのシステムに介入が出来る。

撃ち合いになればバーネットの独壇場だ、旧型の銃器でも数と射手が揃えば立派な戦力となる。


つまり――ミッションの制圧も、視野に入れている。



(……海賊、か)



 交渉がうまくいくことを、カイは心から願った。仮に――仮に全てが最悪の方向へ、向かってしまえば。


マグノ海賊団と戦うことも、覚悟しなければならない。





























<END>







小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けると、とても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。


<*のみ必須項目です>

名前(HN)

メールアドレス

HomePage

*読んで頂いた作品

*総合評価

A(とてもよかった)B(よかった) C(ふつう)D(あまりよくなかった) E(よくなかった)F(わからない)

よろしければ感想をお願いします





[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ]

Powered by FormMailer.