ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 15 "Welcome new baby girl"






LastAction −地球−







『――まずは、メッセージに面倒な仕掛けをしてしまったことをお詫びする。
新たな命の産声こそが、顕然たる人類の繁栄の証であると考えたからだ。
このメッセージを受け取った諸君が、本来あるべき人間の営みを送っていることを切に願う。


君達が故郷である地球を離れてから情勢が大きく変わってしまった。
殖民船団に乗った諸君らを送り出し、人間の更なる繁栄を願うはずの地球が――狂気に走ってしまったのだ。


知っての通り、我々人類は遺伝子交配確率の飽和を迎えた。
すなわち、地球上にいる限り我々は進化の可能性を失った事になる。
その為に我々は地球外への移住を選択したはずだった。


人類の、進化のために』





『――ご覧ください、我々の故郷だった星です。

地球の表面には巨大な歯車がまるで檻のように張り巡らされ、衛星であった月を強引にはめ込みました。

重力異常を起こした地球の大気は慢性的に豪雨が吹き荒れ、地表はまるで巨大な洗濯機のような状態です。
わずかに残った地球人は、歯車の内側に都市を建設ししがみ付く様に生きています』





『人類の希望を託して諸君らを見送ったはずの地球は――
孤立感からか、いつしか自分達のみが純然たる地球人と思い込み、自己保存という後退した考えを抱くようになってしまった。
しかし、進化の可能性を失った彼らだけでは、クローニングもままならない。


そこで彼らは……苛酷な環境下で生き延びた諸君等の臓器を、自分達の保存のための材料であると言い出したのだ。


……何故、地球がこのような考えを持つに至ったのかは解らない。
しかし彼らは唯一残ったオリジナルのペークシスを使用し、無人の収穫艦隊まで建造した。

無慈悲に、そして確実に諸君らを刈り取るために』





『地球の選択は、明らかに間違っています。
この狂気を食い止めるために、我々はメッセンジャーを送ります。いつ、どこで出会えるかは解りません。

しかし、本来あるべき人類の姿を取り戻すために、そして、受け継ぎ託していく人類の営みを守るために――


このメッセージをご覧になった皆さん、どうか立ち上がってください。


命の灯火を守るために』















 ミスティ・コーンウェルの父親と母親、二人が愛娘に託したメッセージ。過去からの手紙が、現在を生きる人達に届けられる。

無人兵器まで駆り出して抹消せんとした情報とは、地球の現在の状況。彼らの過ちが、赤裸々に語られていた。

知られてはならない情報だったのだろう。無理もない、彼らが語る地球の現実は、愚考と愚行による結果なのだから。


人間の臓器を刈り取る目的とは、自分達を保存する為の材料。彼らはもう、自分達で未来を築く事が出来なくなったのだ。


生命に溢れていた地球の大地は死に絶え、海は荒れ狂い、空は汚染されてしまった。

地球そのものが荒廃してしまえば、人間もまた滅びを迎えるしかない。生存環境を失って、彼らは狂ってしまった。

死にたくないという思いが加速して狂気を生み出し、刈り取りという暴挙に出てしまったのだ。


タラークやメジェール、アンパトスやメラナス等、過酷な環境で生き延びた人々の臓器を手に入れて、地球人の生きる糧とする。


カイやマグノ海賊達を苦しめた彼らの狂気の源は、生存本能。死に物狂いだからこそ、彼らもまた強くなった。

進化の可能性を失った末の自己保存、本来ならば妄想のままで終わっていただろう。地球人はもう、生きる力もなかったのだから。



男達は、決意する。



(失われていた記憶――俺の過去に、決着をつけてやる。俺自身と、大事な人達の未来を掴む為に)

(僕はこれまで、ペークシス・プラグマに助けられてきた。今度は、僕の番だ。
アイツらが使ってるオリジナルのペークシスを、僕が助ける。こんな事に悪用するなんて、絶対に間違ってる!)

(哀れなものだ。生命とは尊きもの、生命の営みを自己保存という形でしか残せないとは。
この先――旅を続けていれば、必ず地球人と接触する機会を得られるはずだ。彼らに説くのだ、生命の喜びを)



女達は、決意する。




「メッセージはしかと受け取ったよ、あたしらが受け継いでやろうじゃないか!

あの子が、笑顔で育っていける世界のためにも」



そして、少女も決意する。



(パパ、ママ、メッセージはちゃんと届けられたよ。あたしもパパとママの志を継いで、戦っていくね。
本来あるべき人類の姿を取り戻すために――皆に、伝えていくわ。男と女の、本来の姿を)


 人類の存亡をかけた戦い。戦うのは、同じ人間同士。神が存在していれば、この罪深い存在をどう思うのか。

裁くのは、神ではない。罪を犯した人間を罰するのは、同じ人間。そして人は、罪を許す事も出来る。


人類が向かう未来は衰退か、繁栄か――今はまだ、誰も分からない。






























<END>







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