ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 15 "Welcome new baby girl"






Action11 −面々−






 全システムがダウンしている中でも、船に襲った震動で敵襲と瞬時に悟ったクルーは多い。メイアも、その一人だ。

第一種警戒態勢どころか警報すら鳴らなくても、彼女は自分の愛機であるドレッドに乗り込んで、発進する。

停電によりカスタマイズが行えず、通常武装のみだが、彼女は毎日のように愛機の調整を行っている。抜かりはなかった。


「ニル・ヴァーナは機能していない。迎撃パターン、デルタ4で行くぞ!」


 メイアが率いるドレッドチームも既に、発進は完了している。ガスコーニュのサポートにより、出撃もスムーズだった。

システムが機能していないので不便はあるが、不備は生じていない。過去の教訓は生かされている。

地球母艦戦時に起きた様々な不都合はメイア達を危機に陥れたが、非常事態における対応も学んでいた。

パイロット自身もまた、困難を乗り越えて成長している。サブリーダーを務めるジュラも遅れず、メイア機の隣に並んでいた。


『もう、折角赤ちゃんが産まれるところを見たかったのに!』


 パイウェイによる号外は、ニル・ヴァーナ全域に知れ渡っている。クルーの誰もが、一人の母親の出産を待ち望んでいた。

その矢先にシステムダウンに停電、そして敵襲である。愚痴が零れ出てしまっても致し方ない。

サブリーダーの任に就く人間が口にしていい言葉ではないが、メイアは注意はしない。出撃を渋らなかっただけでも、進歩はしている。


逆に、出撃していない人間の方が気掛かりだった。


『メイア、カイと例の宇宙人の事は聞いてる?』

「ガスコさんより話は聞いている。全く、トラブルの絶えない男だ』


 ディータ機、メイア機、ジュラ機、そしてカイ機。この四つの機体は、ペークシス・プラグマにより改良されている。

改良された機体は機体サイズから通常の規格と異なる為、本来の格納庫には保管出来ず、メイン格納庫に収められている。

出撃の際四人が居合わせる事も多く、誰が出撃していないのかすぐに分かってしまうのだ。

最戦前で戦うカイが出撃していない事を知ったメイアは、医務室に連絡を取っていた。


『宇宙人さん、大丈夫かな……あの子に苛められていないかな……?』

『何言われたって、カイが落ち込んだりする筈がないでしょう』

「むしろ何故一緒に行動していたのか、気にはなるがな……」


 オロオロするディータを、ジュラは杞憂だと笑っている。メイアも心配はないと思うが、不安ではあった。

激しく言い争っていた人間と、エレベーターという密室の中に閉じ込められている。妊婦を、乗せて。

カイは男か女かで人間を区別したりはしないが、博愛主義者という訳でもない。カイも自分と同じ、感情を持つ人間なのだ。


戦いとなれば自身を厭わず戦えるが、人間関係となると途端にややこしくなる。自分も半年は、悩まされた。


彼が望む英雄の如く万人に慕われる人間であれば問題はないのだが、カイは型破りな人間だ。賛否はどうしても生ずる。

ミスティと名乗る女の子は、カイを嫌う素振りを見せていた。一日と経たず仲良くなれるとは思えない。


『エズラが誘ったんだと思います。あの子と宇宙人さん、ずっと喧嘩していたみたいだったから』

『ディータはどう思ってるのよ、あの子の事』

『悪い宇宙人さんだよ、きっと! 宇宙人さんはすごくいい人なのに、あんなに悪く言うなんて!』

「ディータがそこまで他人を嫌うとは珍しいな……」


 ディータ・リーベライは宇宙人という未知なる存在を信じる、少し変わった少女である。

何処の世界でもそうだが、異端な思考の人間が嫌われがちだ。おかしな言動や行動が気に障り、悪く思う人間が出てしまう。

彼女達は海賊、任務に私情は挟まない。感情で任務に支障を出すような人間に、海賊業に携わさせたりはしない。

だが集団生活をしている以上、近しい者達との間で輪が出来る。ディータはその輪からはみ出していて、仲の良い人間は少ない。

彼女自身も自覚はしているが、自分から誰かを嫌ったりはしない。疎まれても笑顔を絶やさず、歩み寄ろうとする。

ディータの美点だとメイアは思っているだけに、意外に感じられた。どこかムキになっている。

自分自身はどうだろう? カイが嫌うミスティをどう思うか……?


嫌悪はないが、カイの評価が低い事には――不満を、感じる。


「ともかくカイが出撃出来ない以上、我々で対処する。敵の新型には気をつけろ!」

『了解、同じ手は食わないわよ!』

『がんばりまーす!』


 三者三様カイについては思うところあるが、深く考えるのを止めて戦闘へ身を乗り出す。

気掛かりには思うが、カイもそれは同じだろう。エレベーターの中に閉じ込められているのだから、歯痒く感じている筈だ。

彼の気持ちを思うのならばせめて、彼の分まで戦って勝利しなければならない。


新しい宇宙人はともかく――刈り取り兵器は明白な、自分達の敵なのだから。 















 メイア達の噂となっている男も、敵襲を感じていた。今すぐにでも出撃したいが、エレベーターから出られない。

こんな状況で攻めて来る敵に、カイは歯噛みしていた。敵もこの状態を分かっている訳でもないのだろうが、卑怯だと思ってしまう。

正々堂々など到底望めない相手ではあるが、常に困難な状況を狙い撃ちする敵にカイは舌打ちする。

精密検査による休暇をもらって、身体も大分回復している。戦える状態なのに戦えないのは、パイロットとして辛かった。


「うう‥…あぅっ!」

「エズラさん、しっかり!?」


 カイ達にとっては慣れた震動だが、お腹に子供がある妊婦には微動でも辛い。身体に負担がかかるからだ。

鑑の外での戦闘が激しくなるに連れて、震動も増してエレベーター内が激しく揺れる。一揺れする度に、エズラは苦痛を訴えていた。

ミスティも手を握って懸命に励ますが、心が落ち着きを取り戻しても揺れそのものは収まらない。

症状を和らげるには、医者に頼るしかない。カイは通信機の電源を入れた。


「ドゥエロ、おふくろさんが痛がっている! どうしたらいいんだ!?」

『今、調べる』

「調べるって、お前!?」


 医療の仕事を行う時ドゥエロは一切無駄な会話を挟まないが、今回は経験も知識もない仕事である。

逐一調べていかなければならないのは理解は出来るが、猶予がない。カイは苛々しながら、通信機に表示されているバッテリー量を見る。

着実に貴重な電力が消費されていき、残るバッテリー量が少なくなっている。必要な時以外は使いたくなかった。

カイの焦燥を感じたのか、ドゥエロは通信機越しに電源を伝えてくる。


『カイ、副長がミスティに連絡を求めている。彼女と今、話せるか?』

「分かった、ちょっと待ってろ」


 緊急時、しかも通信機のバッテリー量も残り少ない。何の話か聞き出す時間もゆとりもない。快諾して、ミスティを手招きする。

カイに呼ばれて不審げな顔をするミスティだったが、この鑑の副長が呼んでいると聞いて慌てて駆け寄ってきた。

年功序列及び階級の重要性はきちんと理解しているらしい。上を敬う姿勢は、むしろカイよりも立派だった。

苦しむエズラの看護はひとまずカイに任せて、ミスティが通信機に出る。向こうも、コンピュータールームに回線を繋げたようだ。


『私はこの鑑の副長を務めているブザムだ。君に、聞きたい事がある』

「は、はい、何でしょう?」

『この停電の原因は、君が持っていたカプセルに混入していたウイルスが発症した為だ。急ぎ、パスワードが知りたい。
音声入力である事は、既に突き止めている。パスワードが分かれば、ウイルスの活動も停止する。

君はこのカプセルのメッセンジャー、パスワードを知っている筈だ。教えてくれ』

「……分かります。ですが――」

『我々は祖先の星地球が企てている臓器の刈り取りを阻止すべく、現在行動している。
カプセルに入れられているメッセージは、極めて重要なものだ。慎重になるのも理解出来るが、今は緊急事態。多くの人命がかかっている。

決して悪いようにはしない。パスワードを、教えて欲しい』


 ミスティはエレベーターが止まった原因を、薄々勘づいていた。分かっていて、口にはせず黙っていた。

このタイミングで突然停電が起きるなんて、ウイルス以外に考えられない。確証はなかったが、間違いないと思っていた。


だからこそ、パスワードを教える事に躊躇があった。ウイルスは、正規の手段では発症しないからだ。


パスワードが分からず入力出来ないからといって、ウイルスは発症しない。そこまで無慈悲なセキュリティではない。

そもそもカプセルを渡した覚えはない。自分が医務室で眠っている間に、彼女達が持ち出したのだろう

ウイルスが発症するのは何らかのトラブルか、不正な手段・・・・・で解析を行ったかのどちらかだ。

人間は、偶然を信じない。トラブルでないのなら、許可無く中身を見ようとしたという事になる。


(……信じてもいいの、この人達を……?)


 少女は託された任務の重みにより、口が開かない。容易く、人類の運命を託せなかった。

通信越しにブザムは何度も応答を試みるが、ミスティは考えあぐねた挙句に――電源を、切る。

メッセージの内容は、知っている。メッセージを託したのは、誰であるかも。

裏切られる事に、怯えているのではない。


裏切られたら、人類は終わる――海賊という彼女達を、はたして信じていいのか……?


そんな少女の苦悩を、海賊ではない・・・・・・少年が見つめていた。






























<to be continued>







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