VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 4 −Men-women relations−





Action3 −喧嘩−




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メイアとカイ、二人は互いに視線を交えている。

両者の視線には温かみはまるでなく、互いに冷たい負の感情しか浮かんでいない。

カイの相棒であるSP蛮型を背景に緊張感すら漂う二人の間は、言い様のない苦々しさが感じ取れる。


「で、話って何だ?お礼でも言いたいのか」


 キューブとの戦いの疲れも見えない様子で、カイが最初に口火を切った。

メイアはじっとカイを見つめ、やがて淡々とした口調で話し始める。


「お前の単独行動は危険すぎる。次からは私の指示で動いてもらう」


 普段のカイならば、メイアの刺のこもった口調に怒るにしても理由を持って答えていただろう。

だが今回の出撃後のブリッジでのアマローネ達との深刻なもつれの後であったがために、

収まらない苛々が過剰反応をカイに起こさせてしまった。


「やなこった。お前みたいな奴の言う事なんて聞けるかよ」

「・・・・何だと?」

「お前、全然戦いの役に立ってないだろうが。役立たずはすっ込んでろ」


 普段より嫌悪する男に役立たず呼ばわりされ、メイアの瞳に静かな怒りがちらついた。


「自惚れるな!すごいのはお前じゃない、この兵器だ。
お前自身の力ではない!」


 カイの蛮型を指差して指摘するメイアに、カイは態度を豹変する。

自分自身心のどこかではそう思っていたのかもしれない。

いや、自覚そのものはあった。

事実、初戦でのメイア達との戦闘も機体が半壊してしまう程にカイを助けてくれたのが相棒だった。

だが、それがあればこそ自分自身がもっと強くなろうと今まで頑張って来た。

実際に先程のキューブ戦では自力で必死で戦って、見事倒せたのだ。

その成果を機体が全てだと断じるメイアがカイには我慢がならなかった。


「もう一度言ってみろ・・・・俺の成果じゃねえってのか!」

「そうだ。自覚がない奴ほどいざという時に足手まといになる。
分かったら、私の指示に従ってもらおうか」

「へ、結果も満足に出せない奴がよく言うぜ。
仲間のピンチも助けられない奴に言う事なんて何で聞かないといけないんですかぁ〜?」


 完全に馬鹿にした言い方に、隣で聞いていたジュラは怒りに染まる。

そこへそっとジュラを制したメイアが一歩前に出る。


「お前の成果は偶然に過ぎない。このままずっと続くとでも思っているのか」

「当然。俺は宇宙一になるからな。このまままっしぐらに進んでいくさ。
てめえらは後ろで黙って見てろよ」


 カイの傲慢な言い方は逆にメイアを落ち着かせる結果となったようだ。

口元に冷笑を浮かべて、メイアは投げやりに言い放った。


「ふ、弱い犬ほどよく吠えるとはこの事だな」


 無論皮肉られたのを黙って聞くほど、カイは大人しい男ではない。


「俺は吠えて噛みつくけど、てめえはだらだら文句言うだけだからな。
どっちがみっともなくてカッコ悪いか、傍から見れば一目瞭然だな」


 自分を中心に物を話すカイの勝手な言い分は、大きな波紋をもたらした。

波立った水面は全体を巻き込むかのように、流れを思いも寄らない方向へと変えてしまう。

公私混同を嫌うメイアにしてみれば、自由気ままに行動を起こすカイが気に入らない存在であった。

そして今、嫌悪へと変換される・・・・・・・


「お前は捕虜だぞ!いつまでも自分の思い通りにできると思うな!」

「ばあさんは俺をクルーだと言ったぞ!」

「それはあくまで建前だ!本来の立場はまるで変わってはいない。
お前のような男が我々の仲間など冗談ではない」


 メイアの言い分に嘘はない。

男と女の協力関係はあくまでもマグノが決めた事であり、事後承諾という形に過ぎない。

言ってみれば、現在の困難な状況があってこその関係である。

クルー達もとってもあくまでマグノの命令だからであって、内面はいまだ男を嫌っている。

これがメジェール内や海賊達の縄張りであったならば、カイ達男三人はどうなっていたか分からないのだ。


「け、俺だってお前らなんぞ仲間なんて思ってねえよ。
どいつもこいつも恩知らずな奴ばっかりだしよ」


 先程のアマローネ達の尖がった態度で通信を切られた事を思い出して、カイは吐き捨てる。


「そうか、なら我々には関わらないでもらおうか。迷惑だ」


 このメイアの一言が決定的となった。

カイはぎりぎりと歯を食いしばり、メイアのパイロットスーツの胸元を力任せに掴んだ。

思いもやらないカイの行動に、冷静だったメイアも目を見開いた。


「・・・・上等だよ・・・・
俺だってこれ以上お前らの面倒なんぞ誰が見るか!」

「ぐ・・・ぐぐ・・・・・・・」


 気丈に振る舞っているメイアが、同世代のカイの力任せな締付けにまともに対抗できなかった。

苦しそうに美貌を歪めるメイアに、ずいっとカイが顔を近づける。


「もううんざりだ、今日限り俺はもう二度とお前らのために戦わねえ!
お前なんぞこの先くたばろうがどうしようが、俺の人生には何の影響もねえからな。
どっかで勝手に死ね、ぼけ!」


 そのまま勢いよく傍にたたずむジュラへメイアを突き飛ばして、カイはそのまま格納庫を出て行った。

一度も振り返る事もなく・・・・・


「あ、宇宙人さん!ちょっと待って!!」


 おろおろと口も挟めないまま二人の様子を見ていたディータも、カイの突然の変貌には驚きの一言だった。

いつも見ていたカイは怒ったような口調であれ、決して暴力的な行動には出ない。

むしろ口調こそ乱暴であっても、カイは無闇に喧嘩まがいの行動はしなかった。

なのに、目の前で起こった騒動は決別とも言える程根の深い争いであった。

このままほっておいては本当に関係が消滅してしまうと危惧したディータは、

口元を抑えて息を荒げているメイアを心配そうに一瞥し、カイの後を追って格納庫を出る。

残されたジュラは事態の成り行きに半ば呆然としていたが、慌てて胸元に飛び込んできたメイアを見やる。


「ちょっと大丈夫、メイア!?」

「こほっ!こほっ!
・・・大丈夫だ、大した事はない・・・・」


 やや苦しそうに、それでもジュラの助けを借りずに自力で起き上がるメイア。

若干顔色を悪くしているメイアに、ジュラは改めてカイへの怒りを募らせる。


「何よ、あいつ!
自分勝手に行動して迷惑をかけておいて、謝りもせずにメイアに手を出すなんて!
本当、最低よね」


 カイへの不満を口々にぶちまけるジュラの言葉を半ば朦朧と受け流しつつ、

メイアはじっとカイが出て行った格納庫の出口を見やっていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 男は野蛮な生き物である事はメジェール星では学んではいた。

海賊内でのチームリーダーを任される程の有能な女性であるメイアは、運動能力も卓越している。

護身術はお手の物であるし、実戦も幾度となく経験している。

並みの男が何人かかってこようと打ち倒す自信はメイアにはあった。

なのに、まるで反応できなかった。

いや、予想すらできなかったと言っていい。


「あの男・・・」


 掴まれた胸元より伝わるのは息苦しさと、こめられた男の手の熱さであった・・・・・・・
















  ――仲間意識があったわけではなかった。

タラーク星でも散々聞かされた女の悪しきイメージ像。

自分のいる船を襲撃されて、無理やり監房に入れられて、いい様に扱われる。

あくまで協力しているだけだと、自分がヒーローを目指しているから仕方なくだとそう思っていた。

だが・・・・・・・



−我々には関わらないでもらおうか。迷惑だ−



「くそっ!」


 カイは通路内を歩きながら、無造作に壁を拳で横に殴りつける。

新しく生まれ変わった融合戦艦内の壁の素材は至って頑丈で、殴った拳から痛みが生じる。

だが、今のカイには胸の奥に悶々とする煩わしさの方が強かった。


「あの女といい、ブリッジの奴といい・・・・・
どいつもこいつも人を何だと思ってやがる!」


 自分は確実に敵から船を守り、艦内の人間の危機を救った。

なのに、肝心のクルー達の反応はどれもこれも温かみのない辛辣な言葉だらけであった。

アマローネ達のおなざりな反応にメイアからの叱責。

誉めてもらいたい訳でもない、崇めてほしい訳でもない。

だが少なくとも感謝の言葉の一つくらいあってもいいのではないだろうか?


「もうぜってえ戦ってやんねー!」


 カイはぐちゃぐちゃと頭を掻いて、そのまま荒い足取りで通路を歩いていく。


「宇宙人さ〜ん、ちょっと待って!
はあ、はあ・・・・」


 軽いながらも一生懸命な足取りと声に振り返ると、手を振って駆けつけるディータの姿があった。

カイは黙って足を止めて、ディータが追いついてくるのを待った。


「んだよ?」

「え、え〜と・・・」


 カイの睨みを利かした声にややびくつきながらも、笑顔でディータは尋ねる。


「ほ、本当にやめちゃうの?」

「何がだ?」

「あ、アタッカーの仕事・・・・」

「・・・ああ、もうやめる。もううんざりだ。
少なくとも二度とお前らと一緒には戦わん」


 質問に答えると、カイは話は終わりとばかりに足を運んでいく。

ディータは顔色を変えて、前へと進むカイの前に立った。


「何だよ!邪魔だ、どけ!」

「本当にやめちゃうの!?
ディ、ディータとの合体は・・・・・・?」

「お前と合体なんてもうしねえよ。分かったらどけ」

「そ、そんな!?せっかく、せっかく仲良く戦えると思ったのに!!
頑張ろうよ、ね?
リーダーやジュラだってきっと宇宙人さんの事分かってくれるよ!
ディータも一生懸命頑張るから!」


 何とか元気付けようと、ディータは健気に励ましの言葉をかけ続ける。

カイは腕を組んで無表情にディータのそんな笑顔を見つめ、ぼそっと小さな声で呟いた。


「・・・・・・お前さ、何なの?」
「・・・・え?」

「人の前をいつもちょろちょろちょろちょろまとわりつきやがって。
迷惑だってのがわからねえのか?」

「あ・・・・・・・・」


 カイが何を言っているのか分からないと言うように、小さく首を振るディータ。


「青髪に言った言葉、お前も例外じゃねえぞ。てめえだって女だ。
腹の中じゃ俺の事せせら笑ってるんじゃねえのか?
味方づらして、人の事いつも観察しやがって」

「あ・・・あ・・・・・」


 カイの一つ一つの言葉が、ディータの純粋な心に突き刺さる。

刺さって抜けない刺の様に痛みは広がっていき、全身に震えをもたらした。


「いいか?もう二度と俺の前に姿を見せるな。
お前みたいな図々しい奴はな、大っ嫌いなんだよ!」


 苦々しくそう断言して、呆然としているディータの横をすっと通りすぎるカイ。

まるでそこにディータがないかのように、空気のように無視して去っていった。

スタスタと遠のいていく足音のみが、ディータの耳に届く。


「・・・・嫌い・・・・・」


 白昼夢を見たように虚ろな眼差しで、通路の真ん中に座り込むディータ。

通りがかる人間は誰もおらず、静寂間に満ちている通路は長く孤独を感じさせる。


「宇宙人さん・・・・・・ディータが・・嫌い・・・嫌い・・・・」


 少しずつ、少しずつカイの言葉の意味が全身に染み渡っていく。

頬に暖かい何かが一筋流れ、通路に儚い湿り気を一粒一粒落ちていく。

ディータがそっと頬に手を触れ、自分が泣いている事に気がつくと顔を覆って嗚咽する。


「う、うう・・・・ふえ・・・ふえぇぇぇぇぇぇん・・・・・・・
嫌い、嫌い・・・・宇宙人さん・・・宇宙人さん・・・・・」


 ただ純粋に、邪気のない好奇心と憧れで接していた少女。

しかし、人は他人はおろか自分も中々満足に理解できないもの。

通じ合えない気持ちとすれ違ってしまったカイとの関係に、ディータはただ悲しみに身を沈めていた。
















少女の涙はまだ止まりそうにない・・・・・・





















<続く>

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