VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 3 −Community life−





Action11 −期待−




---------------------------------------------------------------------------------------------


 星雲の中心である青緑色のガス雲に包まれている融合戦艦はじっと身を潜め、着々と自己修復を行う。

新たに生み出された仮初めのクリスタル柱より吹き出る蒸気が、雲の中へ溶け込んでいった。

その動きに比例して流れる氷解に洗われるかのように、機体の表面より輝かしい装甲を生み出されていく。

蛹から蝶への如く、今新たな船が生まれようとしている。

だが、宇宙の事象はそうたやすく誕生を祝福してくれる訳ではないようだ。

メインブリッジよりセンサーが反応して、内部で警告音がこだまする。

一向に復旧がままならないことに霹靂していたマグノが、驚愕の表情で顔をあげた。


「警報?今度はどうしたんだい」


 度重なる不可解な現象にウンザリした様に、ブリッジクルーの一人であるアマローネに呼びかけるマグノ。

コンソールを操作して外部観察レーダーを扱っていたアマローネが、送られてきたデータに顔色を変える。


「接近警報です!こちらに向かって、小惑星規模の氷塊が向かっています!
このままでは船にまともに激突してしまいます!」


 アマローネの報告を聞いたマグノが、顔色を変えた。

小惑星規模の氷塊、それ程の大規模の塊が船に激突すれば装甲はおろか船ごとペチャンコになる。

本来ならたやすく回避できる事であるが、主力のドレッドは全機作動不能。

機関部、電力源は未修復状態、ブリッジデータ復旧50パーセント未満。

氷解を破壊する事もできなければ、逃げる事すら満足にできないのが現状だった。

頼みの綱は・・・・・


「聞いただろ、兄ちゃん!今すぐ何とかおし!」


 今までコントロール不能であった状態ではあったが、マグノは一縷の望みを胸にバートに懇願する。

だが追い詰められた状態で力を発揮出来る程、バートの精神力は強くはなかった。

マグノへの答えとなるのかどうかはいざ知らず、バートからの返答は泣き声であった。


『わ、わー!!デッカイ塊が飛んでくる〜〜〜〜!!
誰かー!!誰か何とかしてーーー!』


 クリスタル空間でもがいているであろうバートの姿を想像し、マグノは深いため息を吐いた。

聞いていたアマローネも、改めて男の頼りなさを認識して呆れた表情を見せる。

どうやらまだまだ女が男が見直されるのは先のようである。

ブリッジ内のそんな騒動を嘲笑うかのように、圧倒的な質量を誇る氷塊は少しずつ船へ近づいていく・・・















「ふーむ・・・表示はオッケー、画面とかも異常はないよな・・・」


 旧艦区主格納庫へとやってきたカイは、急ぐ足をそのままに自分の機体へと乗り込んで行った。

これまで出撃をこなしたのは二回。

初戦はメイア達ドレッドチーム、第二戦はキューブ型百数十にピロシキ型本体。

そのいずれも六号を同行させており、基本的動作から操作方法までを手取り足取り教わっていた。

記憶がない上に蛮型の基本的知識も満足に学んでいないカイには、蛮型操縦は未知の分野だったからだ。

だが今回六号は調査協力に狩り出されている為、カイが一人で全てをこなさなければならなかった。


「あいつの言う通り、すぐに発進は出来るみたいだな。さすがやってくれるぜ」


 いざ相棒の前に立ち、自分で全てをこなせるか内心不安があったのだが、どうやら杞憂であったようだ。

改めてブザムの手際の良さに舌を巻きながらも、出撃できる事に喜びがあった。


「ま、今回は人命救助だからな。戦いはないだろうけど・・・・・」


 元は酒場でのお手伝いに過ぎなかった自分。

薄暗いが広大な空が頭上に映し出されているのに、自分は地面から見上げる事しかできなかった。

伸ばしても伸ばしても届く事のない空。

そしてその先の悠久なる宇宙。

憧れと羨望で見つめ続けていたあの頃とはもう違う。

自分は宇宙の舞台へとやって来た。自らの意思で決断し、自分の力のみでここまで来れたのだ。

今。

そう今こそが自分の夢を叶える時であり、自分が輝いている時だ。

コックピット内に広がる操作パネル、そしてモニターより映し出される宇宙の光景。

自分の意思で、相棒の力で、どこまでもどこまでも進んでいける。

自分を受け入れる相棒と共にいる時、カイが最も強く己の夢を進んでいる時を感じる事ができる瞬間だった。


「よろしく頼むぜ、相棒!と、それはいいとしてだ。
どうしてお前まで来るんだ?」

「何か不満か?」


 嫌そうに隣を見つめるカイの視点の先に、冷静にカイを見下ろすメイアの姿があった。

カイが機関部から飛び出した際に何を思って、そのままメイアが後ろからついてきたのだ。

あれこれ文句をつけて追い返そうとしたカイだったが、メイアが聞く耳もたずについて来てこの有様だった。

元々蛮型のコックピットは一人用としては十分な広さを有しているため、

メイアが乗り込んでも操作の邪魔にはならないのだが、カイは妙な息苦しさを覚えていた。


「不満つーか、邪魔だ。降りろ、こら」

「断る」


 カイの尖った声色の命令にも、あっさりとメイアはそう答えた。

こめかみに青筋を立てながらも、冷静に冷静にと小声で呟いてカイは反論する。


「俺と来る必要ないだろうが。お前は他に仕事があるだろう?そっち行って来い」

「生憎、私はディータ達の探索の任に就いている。
ならばこそ、こうして救助に向かうのだが」

「これは俺の機体だ。人様の相棒に勝手に乗るのはやめてもらおうか。
お前は自分の船で来ればいいだろう」

「話を聞いてなかったのか?私の船は動かす事はできん。
今現在動けるのは、お前のヴァンガードだけだ」

「だったら、尚更留守番しとけばいいだろう。救助ぐらい俺が一人で何とかする。
お前はパルフェの手伝いとか、色々やる事があるだろうが」


 カイの言葉は間違えてはいなかった。

艦内各所ブロック内では現在もクルーが総動員で、懸命にそれぞれの部署の復旧にあたっている。

猫の手も借りたいこの状態、メイアのような有能な助手は喉から手が出るほど欲しい人材である筈である。

だが、メイアは首を縦には振らなかった。


「・・・お前に逃げられると困るからな」

「はあ?」

「お前がこのヴァンガードでひとたび外へ出て、そのまま逃げない保証はどこにもない。
我々の監視から逃れるチャンスはこれ一度だけだ」

「あ、あのなあお前・・・」


 メイアの生真面目な言い分に、頭痛がするように額を抑えるカイ。

言いたい事は分からないでもなかったが、そこまで信用されていないのかと思うと、

怒りを通り過ぎて呆れ果てるしかなかった。


「どこに逃げるんだよ、どこに。
こんなどこかも分からない所で相棒と飛び出しても、迷子になるのがオチだろうが」

「考えなしに逃げるのは、お前の得意技だろう」

「うぐ・・・・・」


 言葉の裏に監房から勝手に脱走した事を指摘され、言葉に詰まるカイ。

確かに助けに行くと言って逃げると疑われても仕方がない事をしたのは事実である。

だが、それにしてもメイアのこの執拗な行為には理解できないものがカイにはあった。


「さっきも言ったけど、ちゃんと赤髪は助ける。
考えてもみろよ。
俺がここから飛び出して、お前らの仲間を見捨てて逃げてみろ。
この船に残っているバートとドゥエロの立場まで危なくなるだろう?
自分可愛さに仲間シカトこけるほど、腐っちゃいねーよ」


 コックピット内のシートに座りながら、上目遣いにメイアをじっと睨むカイ。

その視線には意志の強さがこめられており、真実の光が瞳の奥で輝いていた。

メイアはしばしじっとスカイブルーの瞳をカイに向け、そして外部モニターに視線をずらした。


「急ごう。ディータ達に何かあっては手遅れだ」

「こら!お前、降りろっつーの!」

「それは断る」

「お前な、いい加減に・・・・!?」


 思わず胸倉を掴みかけるカイだったが、ふとメイアの真剣な表情を見て閃く。


「お前さ、ひょっとして・・・」

「?なんだ」

「赤髪が心配なのか?」

「・・・・・・・・・・・」

「取り残された仲間が気懸かりだから、だからこうして無理に俺に着いていくつもりなんじゃねーのか」

「それは・・・・」

 違う、とはっきりメイアは言わなかった。

いや、ひょっとすると言えなかったのかもしれない。

頑なさゆえに、自分の心のブレーキゆえに・・・・・・・・・・

躊躇するメイアの態度を見て、カイはやれやれと苦笑した。

「しっかり掴まってろよ」

「え?」

「飛び出す時、急激に圧力がかかるんだ。しがみ付いてないと倒れるぞ」

「あ、ああ・・・・・・分かった」


 カイを不思議そうに見つめ、メイアは大人しくシートに手を掛けた。

暗闇のみのモニターの電源をオンにし、カイは小声で穏やかに言った。


「お前、結構いい奴なのかもな・・・・」

「なに?」

「独り言だ。さ、出発するぞ」


 コックピットに一人の同行者を乗せて、カイの蛮型は力強い火花を散らして発進を開始した。















   カイとメイアが救助に向かったその頃、ディータもまた船への進路を取り続けていた。

宇宙空間において一筋に並んでいるマーカーを頼りに、一直線にドレッドを走らせているのだ。


「早くしないと、ガスコさんが・・・・」


 胸の奥で沸き起こる不安と恐怖を無理やり抑えて、ディータは一路助けを求めて操作し続ける。

マーカーの特色として一つ一つを宇宙に設置する事により、データを送受信できる働きがある。

結局の所、レーダーに反応しやすいこのデータ自身が広大な宇宙での『道標』の役割を果たしているのだ。

ディータのドレッドもこのデータを受信しており、一つ一つを辿って船の行き先をチェックしていた。

このまま記された先に一直線に駆け抜ければ、船へ辿りつけるのは容易であろう。

ところが、


「きゃあっ!?もう追ってこないでよ!!」


 自機の全体から叫ばれる悲鳴と振動に、ディータは涙目で観測レーダーをチェックする。

そこには自身の機体とマーカーの反応、そして逃走者を追い続ける者達の反応が背後に存在していた。

先程までディータ達が探索していたピロシキから解き放たれたキューブ数体である。

本体内部の格納庫で眠っていた筈の無傷の機体が稼動して、追ってきているのだ。

背後から次々と攻撃を仕掛けてくるキューブの執拗さに、ディータは表情に恐怖をにじませる。


「しつこい宇宙人なんて大嫌い!
やっぱり宇宙人さんはいい宇宙人さんでないと嫌〜〜〜〜!!」


 ぶっきらぼうながらも自分を心配してくれた一人の男の姿を思い出し、ディータは涙ぐんだ。

たった一時離れていただけなのに、心に染みる寂しさは果てしなかった。

ガスコーニュを置いてきてしまった悲しみ、敵への恐怖、仲間の助けがない孤独な状況。

降り積もる不安は全身を覆い始め、操舵レバーを握る手にも汗が滲む。


「宇宙人さん・・・・・」


 小さく悲壮に呟き、それでもマーカーを辿りながらディータは船を疾走させ続ける・・・・・















 深遠なる闇に閃光がぶつかり合う光景を見つめ、ガスコーニュは嘆息する。


「あっちもあっちででこずっているようだ・・・・・
これはあの世からのお迎えが来る方が早いかもしれないね」


 ガスコーニュの視線の先には、ディータが高速で飛んでいった方向にあった。

気丈な筈のガスコーニュから思わず飛び出した弱音であったが、それも無理はなかった。

ピロシキ内部では次々と起動するキューブが、それぞれの破損箇所に沿って活動を始めている。

驚くべき事にカイとの戦闘で起動不能となっているキューブの残骸やバラバラになった本体の破損部品、

もしくはいまだ眠っているキューブを取り入れて、着々とピロシキ本体は復旧作業を行っているのだ。

一つ一つは本体駒にしか過ぎないキューブではあるが、作業効率は絶大さを誇る。

着実に修理を施していくキューブの手際の良さに、ガスコーニュは感心したようにコメントする。

「ここまでバラバラになっていながらも再生が可能なのかい・・・・・・
アタシらを狙ったあんたらは余程の技術力を有しているようだね。
うちでスカウトしたいくらいだよ」


 自分を勇気付けるように、ガスコーニュはキューブをそう皮肉った。

ガスコーニュのその言葉を理解したのかどうか、作業をしていたキューブの一体が彼女に意識を向ける。

無慈悲なカメラアイが触手に囚われたガスコーニュの全身を嘗め回すように見つめる。

感情が読み取れないその視線に、ガスコーニュは嫌悪感を露にする。

やがて分析を終えたのか、そのキューブはゆっくりとガスコーニュに近づいていった。


「ふ、どうやらアタシも材料にされるみたいだね・・・・」


 他人事の様に述べるガスコーニュではあったが、仮面越しの額にはびっしりと冷や汗が浮かんでいた。















「うえ〜ん、これじゃあ攻撃もできないよ〜」


 ガスコーニュが命の危険に晒されつつあるその頃、ディータも徐々に追い詰められつつあった。

逃げても、逃げても、ディータ機をターゲットにしているキューブ数体は止まる事を知らずに、

連係プレーを見せながら、ディータ機に白刃ばりの熱線を撃ち込んでいっている。

ディータのドレッドはペークシスにより改良されているとは言え、限界は無論存在する。

このまま逃げ切って船へと辿り着くのが先か、キューブ数体に破壊されるのが先か。

今の状態では後者の確率が高くなりつつあるようだ。

泣き言を呟くながらも逃げ続けるディータ、そこへ追い討ちをかける様にレーダーに情報が送られる。


「えー、嘘!?前からも来てる〜〜〜!!」


 観測レーダーに映し出されたデータによると、前方より一機が急速にディータ機へと進路を取っていた。

このままでは前と後ろ両方から攻撃を加えられ、挟み撃ちされる体勢となってしまう。

そうなると逃げる事はおろか、生き残る可能性も少ない。


「もう、あっちに行ってよ!」


 誰とはなしにそう叫んで、ディータは思わずトリガーを握り締める。

するとディータ機前部よりエネルギーが構成され、前方へと白く輝くビームが発射された。

同時に観測レーダーに、前方の機体へのビーム直撃の表示ランプが点灯する。


「え、当たった?」


 撃った当人もまさか当たるとは思っていなかったのか、着弾した前方をモニターで見やった。

映し出されるモニターには、ビーム着弾による輝かしい閃光が宇宙を彩っている。

幻想的ですら感じさせるその光景にディータが呆然となっていると、

コックピット内のスピーカーより受信された声が響き渡る。


『おんどりゃあーー!!!!わざわざ助けに来てやった俺への礼がこれか、こら!』

「そ、その声!?」


 聞き覚えのある口の悪さに、ディータは涙を光らせてモニターより前方を見やった。

ビーム着弾からの華々しい爆発をくぐり抜けて来る一体の機体。

まぎれもなく、それはディータが心のどこかで待ち望んでいたカイのヴァンガードだった。


『おい!!返事しろ、テメエ!!
場合によっては許さんぞ、この野郎!!人様に攻撃なんぞ仕掛けやがって!!』

『恐らく誤射だろう。ディータらしいと言えばらしいが・・・・』

『誤射で火傷食らわされたらたまらんわ、こっちは!』


 ぶつくさ文句をいい続けるカイの啖呵を聞いて、見る見るうちに明るい表情を取り戻すディータ。


「宇宙人さん!?宇宙人さんなんでしょう!」

『その呼び方はやめろっての!』

「ディータを助けに来てくれたのね!アハ、ありがとう!」


 満面に喜びの笑顔を浮かべるディータは、心の底から感激したように声を上げた。

最早背後からのキューブの攻撃も気にならなくなり、ディータは機体を再発進させる。


『頼まれたから来てやったんだよ。って、それより誤魔化されないぞ!
攻撃かましてきた事をまず謝・・・・』

「やっぱり宇宙人さんはいい宇宙人さんだぁ!偽者じゃないんだ!!
宇宙人さ〜ん!!!」

『へ?お、おい!?馬鹿!!
そんなに早く船を飛ばしてくるな!!』

『ディータ、速度を緩めろ!!こっちは回避でき・・・・・』

「今すぐそっちに行くからね、宇宙人さん!」

『来るな、ぼけぇぇぇぇぇ!!』


 カイやメイアの通信も耳に入らないのか、ディータは嬉しさ満開でドレッドに急加速をかける。

マーカーの示される進路を頼りに、金色の輝きを保つ目の前のヴァンガードへ迫っていく。

当然ながらマーカーを頼りに救助に向かっていたため、蛮型もディータ機とは反対に直線コースを進む。

対の進路を取っている二機が、同じ直線コースをそのまま進んでいくと末路はどうなるのか?

華々しいスタートを切った初出撃の際のメイア機との激突を思い出し、カイは顔を青ざめた。


「馬鹿野郎!こっちに来るな!!ぶつかるだろう!!」

『宇宙人さん!会いたかったよ〜〜〜!!』


 凄まじい加速力で迫り来るドレッド相手には、カイの蛮型はあまりに非力であった。

武器で撃墜する事も出来ないカイは、モニター眼前にありありと映し出されるドレッドに対し絶叫した。


「人の話を聞けよ、お前!!ってわぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」


 回避も攻撃も加える事が出来なかったカイ機は、成す術もなくディータ機に激突した。

同時に来るであろう衝撃に防御姿勢でいると、突如カイの眼前を青緑色の光が包みこむ・・・・





















<Chapter 3 −Community life− Action12に続く>

--------------------------------------------------------------------------------




小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。

お名前をお願いします  

e-mail

HomePage






読んだ作品の総合評価
A(とてもよかった)
B(よかった)
C(ふつう)
D(あまりよくなかった)
E(よくなかった)
F(わからない)


よろしければ感想をお願いします



その他、メッセージがあればぜひ!


     










戻る